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2024年6月30日 (日)

村上JAM@すみだトリフォニーホール参戦記

Jam

私は作家としての村上春樹のファンではあるが,彼のラジオ番組を聞くところまでのファンではない。しかし,このライブが告知された時,高いなぁと思いつつ,メンツがメンツ,更に「熱く優しいフュージョン・ナイト」と題されては,おぉっ,これは行かざるをえまいということで,高いチケット代を払いながらの参戦となった。場所はすみだトリフォニーホール。ここに来るのはPat Metheny Unity Bandのライブ以来か。最初からBlue Note東京でもやるのがわかっていたら,Blue Noteに行くという選択肢もあったが,告知が出たのはチケットに応募した後であった。まぁいいんだけど。

それにしてもプレミアム席¥38,000,私が買ったSS席が¥22,000って,海外のオケか!と言いたくなったが,それでも席としては比較的前方ど真ん中という決して悪いものではなかった。そこにプレミアム席との¥16,000というギャップはちょっとでか過ぎやしないか?と思ったのも事実。どこまでが¥38,000なんだろうなぁなんて思っていたが,それでも一番安い¥12,000の席まで座席が完全ソールド・アウトってのはやはり村上春樹パワー?なんてことを思いつつ,いそいそと錦糸町まで出向いた私であった。会場に着いてみると,やはりこの手の音楽のいつもの聴衆とかなり違うように思えた。やっぱり村上春樹パワーだな(笑)。

今回の告知を見て,私が不安を感じたのが音楽監督を務めるのが大西順子ってことであった。私はこの人の音楽は評価しているのだが,どうもライブでの相性がよろしくない。演奏は最高だったオーチャード・ホールでの「バロック」再現ライブのPAのひどさ,Blue Noteでのライブでも増幅されたピアノ音やどうでもいい喋りなんかが気にいらず,大西順子のライブはもうええわと思っていたクチなのだ。だが,今回はイベントがイベントだけにそんなことは言っていられない。だって,マイキーことMike Sternはいるし,リズムはJohn PatitucciにEric Harlandと鉄板だからねぇ。

そして村上春樹と坂本美雨のトークに続いて始まった第一部は"Jean Pierre"でスタート。メンバーのソロ回しが続く中で,最初からマイキーことMike Sternは上機嫌でノリノリ,なのはいいのだが,ギターの音にクリアさが感じられない。おいおい,と思っていたら,追って別の曲で大西順子が弾いたRhodesの音もくぐもった感じがするし,またもPAの問題ありなのか?と思っていた。それはさておき,マイキーのオリジナルやら,"Spain"やらをプレイした訳だが,やはり急造バンドとしての粗さは否めないと思っていた。まぁ「せ~の」でやっているような感じだから,多少粗くたって,このメンツの演奏を純粋に楽しめばいいやってところか。

第二部は20分の休憩後,記憶が確かなら"Directions"でスタートしたと思うが,PAは若干改善したように思えたのは気のせいか?その一方,この"Directions"のテンポ設定は私は明らかに失敗だと思っていた。このメンツであれば,MilesやWeather Reportがプレイしていたぐらいのテンポでも演奏できたはずだし,その方が聴衆にももっと受けたはずだと思っていた。そのほかにこれまたこのメンツに合っているとは思えない"Cantaloupe Island"から,曲名を失念したマイキーのオリジナル・バラッド,そして本編の最後はなんと"Chromazone"であった。そしてアンコールはtp,saxの2管という編成からプレイすることを予想していた”Some Skunk Funk"で終了し,その後はトーク・セッションという構成であった。

演奏を聞いていて,今回の音楽監督である大西順子は,最年長のマイキーを結構立てていたように思える。ソロ・スペースは結局マイキーが一番多かったように思えるし,マイキーの曲は結局3曲やったはずだから,気を使っていたのは間違いないところだろう。一方のマイキーもいつもならオーバードライブを踏み込んで,ハードなソロをもっと続けそうなところを,ほかのメンバーにソロを回すという大人の対応をしていた。まぁそれでも,全編を通じて最も機嫌がよく,かつノリノリだったのは間違いなくマイキーであった。とても古希を過ぎているとは思えないのはさすがマイキーである(笑)。

演奏そのものについては,急造バンドに完璧を求めるのは野暮だと思うので,演奏はまぁよしとするとしても,私にはこのバンドにおけるKirk Whalumがどうしてもミスキャストとしか思えなかった。ソロは必要以上にフリーキーに流れる瞬間もあり,フィット感がイマイチなのだ。日頃やっている音楽とのギャップが大きいことは否めまい。まぁこのライブの前にBlue Note東京へ出演していたというタイミングもあろうが,どうも合ってないよなぁという印象は最後までぬぐえなかった。むしろラッパの黒田卓也は鋭いフレージングも聞かせて,善戦していたと思う。また,Eric Harlandが純粋なフュージョンを演じるというのはこれまであまりなかったと思うが,やはり実力者,何でもできるところは示したと思える。John Patitucciは両刀使いの代表みたいなところもあるので,あれぐらいできて当たり前とも言えるが,今回の演奏でもソロもバッキングも見事なものであった。

そして音楽監督の大西順子であるが,緻密なアレンジを施すことも難しい中で,無難にバンドをまとめたと思うし,彼女のピアノやキーボードのフレージングはやはり鋭いと思った。まぁそれでも上述の通り,バンドとしての粗さが出てしまうのは仕方がないところだろう。コンベンショナルなジャズならまだしも,フュージョンはアンサンブルやユニゾンが崩れると,粗が目立ってしまうのも事実であり,今回もエンディングに乱れが感じられる部分はあったと思う。純粋な音楽ライブ・イベントだと思うと文句も言いたくなるような部分もあるが, 今回の場合,「村上春樹のイベント」としての位置づけもあるので,ここは大目に見ることにしておこう。私としては村上春樹本人が演奏をどう思っていたのかが興味深いところではある。

ついでに言っておけば,最後のトーク・セッションは蛇足だし,運営上もう少しやりようがあったと思うのは私だけではあるまい。ステージ上に椅子を並べながら,時間切れでEric Harland,Kirk Whalum,黒田卓也は座っているだけだったってのはさすがにねぇ...。村上春樹はマイキーにいくつか質問をしてかなり時間を使ってしまったのが理由の一つだが,実は村上春樹もマイキー好き?なんて思っていた私である(笑)。

更にその後,メディア向けフォト・セッションもあったようだが,一般人は撮影禁止だし,そこまで付き合うことなく会場を後にした私であった。フォト・セッションの様子はネットから拝借。

Live at すみだトリフォニーホール on June 29, 2024

Personnel: 大西順子(p, key, music-director), Mike Stern(g), 黒田卓也(tp), Kirk Whalum(ts, ss, fl), John Patitucci(b), Eric Harland(ds), 村上春樹(mc),坂本美雨(mc)

Jam-vol3

2024年6月29日 (土)

Enrico Pieranunziかくあるべしと思わせるライブ音源。

_20240627_0001 "Hindsight: Live at La Seine Musicale" Enrico Pieranunzi (CAM Jazz)

Enrico Pieranunziが長年の盟友,Marc Johnson,Joey Baronを伴って,トリオ結成35周年を記念してフランスで吹き込んだライブ音源がリリースされたので,早速聴いてみた。現物が届く前にストリーミングで聴いていてもそのよさはわかっていたが,これは実によい。多作ゆえ,とても全部は追いきれないEnrico Pieranunziなので,私にとっては久々のEnrico Pieranunziの新作アルバム購入となったのだが,やはりこのトリオによる演奏は格別だと思えるアルバムであった。

このアルバムを端的に表現するならば,Enrico Pieranunziらしい美的なフレージングを聞かせながら,ダイナミズムも兼ね備えたものであり,主題の通り,私にとっては「Enrico Pieranunziかくあるべし」と思わせる演奏となっている。Cole Porterの"Everything I Love"を除いて,残る7曲がEnrico Pieranunziのオリジナルだが,改めていい曲書くよねぇと唸ってしまった。こんな素晴らしい演奏を5年も寝かせて,トリオ結成40周年の2024年になってリリースするってのはどうなのよ?って気もするが,いいものはいいのである。

ライブゆえの若干の粗さを感じさせる部分がない訳ではないが,そんな瑕疵をものともしないアルバム。長年のファンにとっても実に嬉しい作品と言ってよい。星★★★★☆。このメンツで来日してくれないものかと思ってしまう。

Recorded Live at Auditorium de La Seine Musicale in Boulogne-Billancourt on December 13, 2019

Personnel: Enrico Pieranunzi(p), Marc Johnson(b), Joey Baron(ds)

本作へのリンクはこちら

2024年6月28日 (金)

ようやく入手した高橋アキのXenakis集。

_20240625_0001 "Xenakis: Works for Piano" 高橋アキ(Mode)

現代音楽のピアノ好きとしてはずっと聞いてみたいと思っていたCD。これがなかなか入手が難しかったのだが,ようやく某サイトで入手である。改めてここでの演奏を聞いてみて,Xenakisの音楽というのはかなり動的な部分が多いなぁと思わせる。

レコーディングは1998年から2005年に渡って行われているが,Xenakisの死後の2005年に録音された「6つのシャンソン」の初レコーディングはXenakisへの追悼を込めたって気がする。この曲はXenakis初期(1950-51とある)の作曲らしいが,この時期に書かれた曲の多くが破棄されてしまった中で,かろうじて現存する曲らしい。ここでの高橋アキの演奏を聞いていると,これってかなり真っ当なメロディ・ラインを持つ曲だったように思えるところが面白い。基本的に調性の枠内で書かれた曲であり,それがそのほかの曲との対比が明確なのが面白い。

Xenakisは作曲家であると同時に数学者であり,建築家でもあったらしいが,そうした職業柄の「理知」の部分が音楽に表れるという気もしてくるから不思議だが,だからこそ「6つのシャンソン」がその後のXenakisの活動の根底にあったということが興味深い。「6つのシャンソン」の終曲"Sousta, dense"こそやや現代音楽的響きを持つが,それでもまだまだおとなしい。敢えて言えば,後世のジャズ・ピアニストによるやや激しいピアノ・ソロ・ピースと言っても通じるような響きと言えばよいかもしれない。その後のXenakisの音楽からすれば,これが本質だったとは言えないかもしれないが,こういうベースがあったのだということを知ること自体が重要だと思えた。

70分を越す長い演奏を収めたCDだが,私としては実に面白く聞いた。星★★★★☆。

Recorded on March 28-30, 1998, Feburary 24-25, 1999 and March 17, 2005

Personnel:高橋アキ(p), Jane Peters(vln), The Society for New Music<Paige Morgan(oboe, eng-h), E. Michael Richards(cl, b-cl), Lee Goodhew(bassoon), WilliamRove Bernatis(horn), James Krehbiel(vln), Lisa Hegyi(vln), Deborah Moree(vla), Elizabeth Simkin(cello), Darrin Howell(b), Robert Bridge(perc), Charles Peltz(cond)>

本作のCDの入手は難しいかもしれないが,ストリーミング(こちら)では簡単に聞くことができる。

2024年6月27日 (木)

Amazon Primeで映画「マンハッタン」を見た。

Manhattan「マンハッタン ("Manhattan")」(’79,米,UA)

監督:Woody Allen

出演:Woody Allen, Diane Keaton, Michael Murphy, Mariel Hemmingway, Meryl Streep

振り返ってみれば,私はWoody Allenの映画とほとんど縁のない生活を送ってきたと思う。これまでまともに見たことがあるのは「カイロの紫のバラ」ぐらいだ。更に,Woody Allenが出ている映画は「カジノ・ロワイヤル」一本だけだから,本当に縁がないのである。しかし,今回,この映画がAmazon Primeでの見放題が間もなく終了ということで,見てみることにした。タイトルが「マンハッタン」と言うぐらいだから,わずか2年足らずとは言えNYCで過ごした私のノスタルジーをくすぐってくれることも期待した上のことである。

端的に言ってしまえば,くっついたり離れたりの恋愛模様,更には大人げない身勝手さとかが描かれた映画であり,そこに相当理屈っぽいせりふ回しが加わるってところで,ある意味スノビッシュな映画だと感じさせる。しかし,相当年齢を重ねた登場人物の中で,一番大人だったのは17歳~18歳のTracyを演じるMariel Hemmingwayだったというのが皮肉がきいている。しかし,これは皮肉とばかり言っていられず,Woody Allenその人自身がティーンエイジャーに手を出すというエロ親父的なところがあったことの反映かもしれないが...。こうした皮肉ともリアリティとも言えない部分や,理屈っぽさがWoody Allenの映画にはあるだろうなぁという予断もあって,私はWoody Allenの映画を避けてきたような気もする。そして役者としてのWoody Allenのクセの強さはやっぱり苦手だと思ってしまった。

いずれにしても,この映画に出てくるマンハッタンを中心とするNYCの風景は,私の郷愁を誘うに十分ではあったが,映画を見ていて,ストーリーよりもそっちに反応しているような気もして,いい映画なのかどうなのかという判断に迷ってしまうところではある。それでも白黒で撮られてもNYCはNYCだし,その印象が更に強まるようにさえ思わせる魅力的な街だということを再認識するにはいい映画であった。円安のこの時代,かつ仕事でもNYCを訪れる機会など期待できない私にとって,このノスタルジーの高まりは少々危険な気もするが,それでもまたNYCを訪れたいと思わせるには十分な映画であった。星★★★☆。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年6月26日 (水)

祝再発:宮澤昭の「野百合」。

_20240622_0003 「野百合」宮澤昭 (East World→C.A.E.)

レコーディングとしてはこれが宮澤昭の遺作となるアルバムが再発された。このアルバム,浅川マキのプロデュースでリリースされたのは30年以上前のことになるが,晩年の宮澤昭のアルバムを買い揃え始めたのが遅きに失した私は,このアルバムを聞くこともできないまま時が過ぎた。その後"Sea Horse"がリリースされていたので,音源としてはそちらが最後のアルバムになるのだが,それでも晩年の宮澤昭の演奏の素晴らしさは鉄壁と言ってもよいものだったので,このアルバムは長年聞いてみたいと思っていた。それがようやく再発ということでめでたく入手である。

本作は渋谷毅とのデュオだが,渋いながらも,まさに芳醇なテナー・サックスの響きと言うべきものと思える。全8曲ながら,収録時間は32分余りと短いものだが,そんなことは全く気にするべきでないアルバムと言ってよい。一部で渋谷毅はオルガンもプレイするが,基本はピアノ。このレコーディングも宮澤昭が渋谷毅をパートナーに指名していたと浅川マキのライナーにはあるが,8曲中6曲を占める宮澤のオリジナルも渋谷毅を想定して書かれたというところのようだ。

宮澤昭のテナーの響きも,渋谷毅のピアノの響きも実に素晴らしく,遅ればせながらこの素晴らしい音源に触れられただけで嬉しくなってしまった私であった。星★★★★★。

そんなに売れるアルバムとは思えないので,再度廃盤化する前にご関心のある方は是非。

Recorded on December 5 & 6, 1991

Personnel: 宮澤昭(ts),渋谷毅(p, org)

本作へのリンクはこちら

2024年6月25日 (火)

Netflixで見た「首」:暴力的なシーン満載の中で,たけし自身はコミック・リリーフみたいだ。

Photo_20240623111601 「首」(’23,東宝/KADOKAWA)

監督:北野武

出演:ビートたけし,西島秀俊,加瀬亮,浅野忠信,大森南朋,中村獅童,木村祐一,遠藤憲一

劇場に観に行こうかなと思いつつ,見損なっていた映画がNetflixで見られるようになったので,週末に見てみたのだが,まぁタイトルではないが,首が飛ぶわ,飛ぶわって感じの暴力的なシーン満載の映画であった。

題材はお馴染み「本能寺の変」であるが,世の中綺麗ごとばかりではすまないという観点で,こういう描き方もあるとは思えるが,シナリオはもう少し整理のしようがあったのではないかと感じていた。ポスターにある「狂ってやがる」というのは表現できているが,出てくる合戦シーンの描き方には,これって必要?って感じながら見ていた私である。その一方で肝心の本能寺のシーンはこれだけ?って感じなのだ。

そもそも私は北野武の映画に思い入れが全くない人間で,劇場で見たことはないはずだし,ほとんどが出張時の機内エンタテインメントでの見たに過ぎない。だが,時代劇好きの私としては,本能寺の変をどのように描くのかというところは少なからず興味があったが,これだけ血まみれの映画を見せられると,お腹いっぱいになってしまう。そうした中で,ビートたけしとして演じる秀吉は,ここでも「バカヤロー」連発で,コミック・リリーフみたいになっているのはどうなのかねぇとも思っていた。

劇中で信長を演じる加瀬亮の切れっぷりは相変わらずだが,やり過ぎ感なきにしもあらず。むしろこの映画はこんなところにあんな人がのようなキャスティングを楽しんだ方がいいのではないかと思っていた。「アウトレイジ」シリーズと同様のヴァイオレンス路線を時代劇でやっただけって感じで,私にとっては大した作品だとは思えなかった。星★★☆。選んだ自分が悪いとは言え,正直見なくてもよかったってところ。

2024年6月24日 (月)

6,000件目のエントリーはBrad Mehldauにしよう。

_20240622_0002 "House on Hill" Brad Mehldau (Nonesuch)

今年でブログを始めて18年目になるが,年月の経過とともに記事も積み上がり,これが6,000件目のエントリーである。我ながらよく続いてきたと思うが,もはやボケ防止の手段となりつつあるような気もしているものの,まだまだ続けられる限りは続けたいと思っている。毎日アップしたとしても,1,000件書くのには2年9か月程度かかるから,10,000件までは11年程度要することになるが,そうなるとその頃には私も後期高齢者間近だ。そこまで根気(及び体力,寿命?)が続くかどうかってところだが,取り敢えず10,000エントリーを目指していこうと思う。

そんな節目のエントリーを何にしようかと考えた時,相応に好きなミュージシャンを取り上げてきた。2,000件目以降のキリ番はそれぞれJoni Mitchell, Neil Young, Miles Davis,Fred Herschであった。5,000件目のエントリー時にも書いているが,Brad Mehldauを取り上げなかったのは不思議と言えば不思議ながら,Brad Mehldau関係では既にアップしている記事数も多いので,何を取り上げればいいかを決めるのがなかなか難しいと思っていた。しかし,今回はこのブログ開始前にリリースされていて,当ブログにも登場したことがなかった"House on Hill"をチョイスすることにした。

実を言えば,このアルバムは私があまり評価していない"Anything Goes"と同じタイミングでのセッションでの演奏が中心になっている。"Anything Goes"と異なり,こちらはBrad Mehldauのオリジナルで固められていることが大きな違いであり,そしてリリース時には既にトリオを退団していたJorge Rossyとの演奏となっているのが特徴である。そしてここでの演奏には私が"Anything Goes"に感じた違和感はなく,この長年のトリオらしい演奏となっていて,楽しめるものになっているのが不思議であった。

私は"Anything Goes"にはこのトリオの「煮詰まり感」のようなものを感じていたのだが,こちらではおそらくオリジナルを演奏していることによって,フレッシュな感覚が残せたというところではないかと思える。また2曲だけながら蔵出しではない「新録」が含まれていることもそういう印象を与えるのではないか。また,ここでの3者の演奏をビビッドに捉えた録音もよく,このトリオの実力を余すところなく収めたと言ってもよいだろう。この辺りはエンジニアを務めたJames Farberの貢献度も大きい。

Brad Mehldauの場合,カヴァー曲のセレクションに興味深いところがあり,そちらへの関心も高くなるわけだが,アルバム単位で全部オリジナルというのは本作以外では"Elegiac Cycle","Places","Ode"の3枚だけのはずなので,ある意味珍しいセッティングと言ってもよいのだが,ここでの演奏ぶりは相応に魅力的に響く。"Anything Goes"と本作におけるカヴァーvsオリジナルという関係性は,後の"Where Do You Start"(こちらは1曲だけ"Jam"というオリジナルがあるが...)と"Ode"に引き継がれることになる。後者においては"Where Do You Start"をより高く評価した私であったが,前者においては本作の方を高く評価したくなるという逆の反応になったのは我ながら面白いと思った。星★★★★☆。

尚,本作の国内盤には"Wait"というボーナス・トラックがど真ん中の5曲目に入っているのは珍しいが,Brad Mehdauコンプリートを目指す私は国内盤,輸入盤の双方を保有していることは言うまでもない(笑)。

Recorded on October 8-9, 2002 and March 12, 2005

Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jorge Rossy(ds)

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2024年6月23日 (日)

20年の時を経て公開されたTomasz Stańkoのライブ音源。素晴らしい。

_20240622_0001 "September Night" Tomasz Stańko Quartet (ECM)

早いものでTomasz Stańkoが亡くなって今年の7/29で丸6年になる。所謂七回忌ってやつだが,そのTomasz StańkoがMarcin Waselewskiのトリオを従えた20年前のライブ音源が今頃になってリリースされた。この時のイベントからは既にECMでもEvan ParkerやRoscoe Mitchellの音源がリリースされているから,そもそもライブ・レコーディングも意図を持って行われていたと思われる。それから20年という節目にようやく陽の目を見たということなのかもしれないが,これがまた実に素晴らしい演奏であった。

Tomasz StańkoはそれまでにもMarcin Waselewskiのトリオとはレコーディングもしていたし,共演経験も豊富だったはずなので,コンビネーションには問題ない。そもそもが現代最強の一つという評価に値するピアノ・トリオがバックに付いているというだけで,成功は保証されたようなものだ。そしてその期待は全く裏切られることがない。

ライブ・レコーディングであるにもかかわらず,この緊張感を持った美学の発露は見事としか言いようがなく,冒頭の"Hermento’s Mood"から心を鷲掴みにされてしまう。これをライブの場で聞いていたら,私はきっと金縛り状態だったはずだ。このCDを通じてさえも,全編を通じてレコーディングされてから20年の時間が経過しているとは思えぬ新鮮さを以て迫ってくるもので,これはいいわぁと聞きながら思っていた私である。改めてこの編成で吹・き込んだECMのアルバムを聞き直したくなること必定の優れたライブ音源。文句なしに星★★★★★。9月録音だけにアルバム・タイトルが"September Night"ってのは少々芸がないが...(笑)。

いずれにしても,蔵出し音源ではあるが,私にとっては今年のベスト作の有力候補がまた現れた。

Recorded Live at Muffathalle, Munich on September 9, 2004

Personnel: Tomasz Stańko(tp), Marcin Wasilewski(p),Salwomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

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2024年6月22日 (土)

これも久々に聞いたBranford Marsalisの"Renaissance"。

_20240620_0001 "Renaissance" Branford Marsalis (Columbia)

Marsalis兄弟がシーンに登場して,リーダー作で先陣を切ったのは弟のWyntonの方だったが,初期の頃はまだよかったとして,ジャズ原理主義的な発言によりついつい反感を買うことが多くなったことは否めないし,その後のやっている音楽は必ずしもジャズ的なセンスで言えば魅力的に響かない部分もあった。一方,若干遅れた兄貴のBranfordについてはほとんど悪く言われることがないように思える。Stingとやった時にも批判は出ていないと思うし,Buckshot LeFonque名義でファンクをやっても,多少の批判はあっても,反感まではいかなったと思える。それはこの人がやっている音楽の本質が,多くのジャズ・ファンの心をつかむものゆえだからと言ってもよいだろう。エスタブリッシュメント的なところが鼻につくこともあるWyntonに比べると,結局ジャズ・ファンに好かれる人なのだと思うし,私にとってもそうだ。

そんなBranford Marsalisのアルバムも相当な数になったが,本作はジャズ・アルバムとしては第3作に当たるもので,キモはTony Williamsとの共演だったと思う。しかし,ここでのTony Williamsはミキシングのせいもあると思うが,いつもより控えめな感じがして,リーダーを立てている感じがする。そうは言っても,6曲目の"The Wrath (Structured Burnout)"のドラムス・ソロは十分に激しいが(笑)。

前半はよく知られたスタンダード,ジャズ・オリジナル,後半はTony WilliamsとBranford Marsalisのオリジナルで,最後がオマケ的にBranfordのソロで"St. Thomas"という構成。前半には1曲だけ"The Peacocks"でHerbie HancockとBuster Williamsとのトリオ演奏が収められているが,これも含めて前半は味わい深い演奏集と言えるもので,いい意味で抑制が効いたものと感じるが,後半のオリジナルになるとスリリングな展開を聞かせて,私としてはやっぱりBranfordはこういう感じの方がいいかなぁとも思ってしまう。

それでも,ここでの演奏を聞いていると,やっぱりこういうのはジャズ・ファンの理解を得やすいだろうと思わせるし,魅力的に響くのは事実で,久しぶりに聞いても十分楽しんだ私であった。星★★★★。

Recorded on December 31, 1986, January 26-28,1987 and Live at Concerts by the Sea on January 25, 1987

Personnel: Branford Marsalis(ts, ss), Kenny Kirkland(p), Herbie Hancock(p), Bob Hurst(b), Buster Williams(b), Tony Williams(ds)

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2024年6月21日 (金)

"We Live Here":Pat Metheny Groupは総じて好きだが,プレイバック頻度が低いものもある。

_20240619_0002"We Live Here" Pat Metheny Group (Geffen)

私は長年のPat Metheny,そしてPat Metheny Group(PMG)のファンだ。最初の出会いがECMでの"Pat Metheny Group"であったし,来日するたびにライブにも通っていたから,PMGへの思い入れは特に強い。そうは言っても,そんなPMGにもプレイバック頻度があまり上がらないアルバムがある。これもその一枚。

おそらく私と同じように感じるリスナーも結構いると思うのだが,このアルバムに聞かれるドラム・ループのような打ち込み感のあるリズムへの違和感が強いのだ。別に演奏に破綻はないし,リズムを除けば,いつものPMGって気もする訳だが,このアルバムには印象に残る曲が少ないという難点もあると思う。このアルバムがリリースされた時のツアーはさておき,その後のライブでこのアルバムからの曲をやった記憶はあまりない。換言すれば,PMGを代表する曲が含まれていないというところにも問題がある。そんなこともあって,プレイバック頻度の低さは"Quartet"と双璧って感じだ。

結局リスナーにはそれぞれの好みがあるから,合う,合わないが出てくるのは当然だが,求めるサウンドとの乖離ゆえに,私の中ではどうしても評価が上がってこない。演奏のクォリティに免じて星★★★☆ってところだが,これを聞くぐらいなら"Pat Metheny Group", "Travels",そして"Still Life (Talking)"を選んでしまうというのが私のパターンだな。ほかのアルバムはどうした?って声も聞こえてきそうだが,先述の3作が私の中ではPMGとしては鉄板なのだ。

Personnel: Pat Metheny(g, g-synth), Lyle Mays(p, key), Steve Rodby(b), Paul Wartico(ds), David Blamires(vo), Mark Ledford(vo, tp), Luis Conte(perc)

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2024年6月20日 (木)

Billy JoelのShea Stadiumでのライブ盤を改めて聴く。

_20240619_0001 "Live at Shea Stadium: The Concert" Billy Joel (Columbia)

今年の1月に久々に来日したBilly Joelのライブは大いに盛り上がったようだ。Billy Joelのエンタテインメント精神を考えれば,盛り上がるのも当然という気がして,行かなかったことを悔やんでも後も祭りであった。それを補う意味もあって(笑),久々に取り出したのがこの2008年のライブ盤。私が保有しているのはDVD付きの3枚組だが,映像は見たことがない(爆)。

このライブのヴェニューとなったShea Stadium(以前はシェア・スタジアムなんて呼ばれていたが,人名から取っているSheaは,カタカナならば「シェイ」とするのが正しい)は2009年に解体され,現在はその場所はCiti Fieldに引き継がれている。Shea Stadiumで最初にライブをやったミュージシャンがBeatlesで,最後にやったのがBilly Joel。NYCにおけるこの歴史的なヴェニューの最後のライブ・コンサートをやるには,生粋のニューヨーカーであるBilly Joelは適材だった。

Shea Stadiumのクロージングを迎えるにあたって,このライブには多彩なゲストを迎えて,賑々しく演奏が行われた一種のお祭りライブであるが,ゲストはあくまでゲストであって,主役はあくまでもBilly Joel。Billy Joelもこの時は還暦前で,まだまだ若々しい声を聞かせている。そして怒涛のようなヒット曲の連発には聴衆も燃えるし,歌いたくなる気持ちもわかるよねぇ。まぁそうは言っても歌わせ過ぎって気もする(苦笑)。

お祭りモードの演奏が楽しめることは楽しめるし,Paul McCartney,あるいはShea Stadiumでのライブの先駆けとなったBeatlesをリスペクトするのはいいとしても,最後を"Let It Be"で締めるという演出はどうなのかねぇ。私はここはBilly Joelに締めて欲しかったという気がする。まぁ難しいこと言いっこなしで単純に楽しめばいいんだけど。星★★★★。

因みにDVDにはSteven Tyler, Roger Daltrey,John Mellencampを迎えた3曲が追加されているので,そのうち見てみることにしよう。

Recorded Live at Shea Stadium on July 16 & 18, 2008

Personnel: Billy Joel(vo, p), Tommy Byrne(g, vo), Mark Rivera(sax, fl, g, vo), Crystal Taliefero(perc, g, sax, vo), Dave Rosenthal(key, p, org, vo), Andy Cichon(b, vo), Chuck Burgi(ds), Carl Fisher(tp, sax) with Tony Bennett(vo), Garth Brooks(vo), John Mayer(g), Paul McCartney(vo, p)

本作へのリンクはこちら

2024年6月19日 (水)

John Beasley El Trio@Blue Note東京参戦記。

John-beasley-el-trio-at-bnt

John Beasleyが結成した新トリオ,El Trioのライブを観るべく,Blue Note東京に行ってきた。John Beasleyと言えば,はるか昔に彼の1stアルバムらしい"Cauldron"を購入したことがあるが,今やクロゼットの奥深くにしまい込んでしまって(売ってはいないはずだ...),暫く聞いていないのでどんな音楽だったかも覚えていない。そのJohn Beasleyがラテン系ミュージシャンと組んだこのトリオは,John Beasleyのサイトには"a feverish mix of Cuban grooves with a '70s jazz-rock flavor"なんて書いてある。このトリオについては私は全然知らなかったのだが,ライブ・メイトからのお誘いに乗っての参戦となったが,これはなかなか面白そうだ。ってことで,"Live in Italy"をストリーミングで聞いて予習して,ライブに赴いた。

El-trio 昨今のBlue Note東京は結構客入りがよくて,先日のジョンスコのように完全なフルハウスってのもあるが,さすがにグラミーは取っていても,日本でのJohn Beasleyの知名度は必ずしも高くないこともあって,今回は6~7割程度の入りだったように思う。サイドのペア席には誰もいないというのも珍しいと思ってしまった。まぁそれでもJohn Beasleyは月曜からよく入ってるねぇみたいなことを言っていて,終始ご機嫌ではあったが。

演奏はアルバムも強烈なリズムによるエレクトリック・サウンドのグルーブが楽しいものだったが,このライブ自体も印象は同じ。正直言ってこの人たちはスローな曲ではその魅力が伝わらないと感じる瞬間もあったが,一旦リズムが激しくなると,そのグルーブ感は強烈であった。私としてはあまりにラテン・フレイヴァーが強くない方が演奏としては好みだなぁと予習で感じていたが,このライブにおいては,明確なラテン系のリズムは1曲だけだったと思うので,私としてはよかったと思っている。

そしてアルバムにも入っている"Elegant People"なんて実に彼らにぴったりだと思ったが,どの曲においても,John Beasleyはヴォコーダーやピアニカ型のシンセも駆使して,多彩な音を作り出していて満足のいくライブだったと思う。1曲ヴァイオリンのSayakaが飛び入りで参加して演奏したが,この人は自身でもCuban Projectってのをやっているから,このトリオとの相性はよかったと思う。

_20240618_0001 演奏終了後はいつにも増して客の引けが早いと感じたが,地味にサイン会をやっていたので,3人揃っているということで,"Live in Italy"のCDを購入し,3者のサインをゲットしたのであった。財布には少々痛かったし,ストリーミングで聞いてりゃいいじゃないかとも思うのだが,そこはやはりミュージシャンとの会話を楽しむのもライブならではって開き直ろう(笑)。尚,トップの写真はBlue Note東京のWebサイトから拝借。

Live at Blue Note東京 on June 17, 2024

Personnel: John Beasely(key, vo), José Armando Gola(b), Horacio "El Negro" Hernández(ds), Sayaka(vln)

2024年6月18日 (火)

"Back in the High Life Again":これがSteve Winwood最大のヒット作かもなぁ。

Back-in-the-high-life-again "Back in the High Life Again" Steve Winwood(Island)

懐かしいアルバムだ。"Higher Love"が全米1位ばかりか,グラミーを受賞したことで,非常にヒットした感覚が強い1986年のアルバム。まぁ実際には"Roll with It"の方が売れたらしいのだが,そちらを聞いていない私としては,このアルバムが印象深い。私はSteve Winwoodは長年"Arc of a Diver"を愛聴してきたが,"Arc of a Diver"がSteve Winwoodが全ての楽器をプレイしていたのと比べると,多様なミュージシャンが参加していて,随分と感じが変わったのと,一部の曲でのホーン・セクションの参加によってファンキーな風味が増しているという感が強い。いずれにしても,実にソウルフルな歌いっぷりである。

シングル・ヒットした"Higher Love"にはChaka Khanがゲスト参加しているのだが,私の保有しているCDの同曲のクレジットには彼女の名前が見当たらず,ライナーの最後のページに"Chaka Khan appears courtesy of Warner Bros. Recorの記述があるのみである。まぁ声を聴けば誰だってChaka Khanだとわかるから,敢えて書いていないってところかもしれないが,実に不思議に思ったのも懐かしい。だってリリースされたのはもう40年近く前だもんなぁ...。ついでに言っておくと,Phillip Saisseも参加しているが,これもクレジットに記載がないし,明らかにコーラスが入っている"Take It As It Comes"にもクレジットがないのはどういうこと?って感じだ。

全編を通じて,ナイスな曲が並んでいると思うが,加えて,James Taylor,Nile Rogers,更にはJoe Walsh等,適材適所のミュージシャンとの演奏を作り上げたのは,Steve Winwoodと共同プロデュースに当たったRuss Titelmanの手腕によるところが大きいってところか。いずれにしても,非常によくできたアルバムであった。星★★★★☆。

Personnel: Steve Winwood(vo, synth, org, g, prog), Joe Walsh(g), Eddie Martinez(g), Paul Pesco(g), Nile Rogers(g), Ira Siegal(g), Phillip Saisse(synth), Rob Mounsey(key, synth), Robby Kilgore(key, synth), David Frank(synth, horn arr), Micky Curry(ds), Steve Ferrone(ds), John Robinson(ds), Carol Steele(perc), Chaka Khan(vo), James Taylor(vo), Dan Hartman(vo), James Ingram(vo), Jocelyn Brown(vo), Connie Harvey(vo), Mark Stevens(vo), Randy Brecker(tp), Tom Malone(tb), George Young(as), Bob Mintzer(ts), Lewis Del Gatto(bs, ts), Jimmy Bralower(prog), Andrew Thomas(prog), Arif Mardin(synth strings arr)

2024年6月17日 (月)

Robert Glasperの新音源はアンビエント・ミュージックの趣。

Let-go "Let Go" Robert Glasper (Loma Vista Recordings)

先日,Robert Glasperによる新音源がリリースされた。これがApple Musicエクスクルーシブということで,媒体のリリースはないものと思われるが,これが主題の通り,アンビエント・ミュージック,あるいは瞑想的な響きさえ持つものとなっている。一聴すればわかるが,決して何の邪魔にもならない音楽だと言ってもよい。

"Black Radio"シリーズにも顕著な通り,Robert Glasperはジャズ,R&B,ヒップホップ等を越境した音楽を作り出しており,私はそのソリッドな響きを高く評価してきたつもりである。但し,ライブの場においてはMark Colenburgのようなろくでもないドラマーを連れてきたりして,評価を下げたことがあったのも事実だ。しかし,基本的にはやっている音楽のクォリティは高く,信頼に値するミュージシャンである。

そんなRobert Glasperが生み出した新たなサウンドは,まさに耳に心地よいことこの上なく,何をするにも「邪魔にならない」音楽である。聞き流すもよし,傾聴するもよしだが,とにかく気持ちよいのだ。1曲だけMeshell Ndegeocelloがヴォーカルを取る以外は全面インストのこのアルバムは,こういうのもありだなと思わせる。Robert Glasperは正直強面な人だが,その強面に似合わずソフトな音楽にも対応してしまうところのギャップはこれまでも感じられたが,それを突き詰めた感が実に楽しい。

こういう音楽ゆえにどう評価すればいいのかは少々難しいところがあるが,十分に星★★★★は付けたくなる作品。

Personnel: Robert Glasper(key), Bernis Travis(b), Kendrick Scott(ds), Chris Scholar(g), Meshell Ndegeocello(vo)

2024年6月16日 (日)

"Songlines":これが私とDerek Trucksの出会いだったはず。

_20240613_0002"Songlines" Derek Trucks Band (Columbia)

現在はカミさんのSusanTedeschiとTedeschi Trucks Band(TTB)で活躍するDerek Trucksであるが,Allman BrothersとTTBの間に自分の名前を冠したバンドとして,Derek Trucks Bandでアルバムをリリースしていた。本作が私が購入した最初のアルバムだったはずで,主題の通り,私とDerek Trucksの出会いとなった作品だ。

実を言ってしまえば,このアルバムを聞いて驚いて,このジャケットをデザインしたTシャツまで発注してしまった(最近は全然着用しておらず,クロゼットにしまい込んだままが...)のも懐かしい。Derek Trucksのギターはもちろんだったのだが,このバンドでヴォーカルを務めるMike Mattisonの声が渋く,私としては痺れてしまったのであった。Mike MattisonはTTBにも在籍しているものの,TTBのメイン・ヴォーカルはあくまでもSusan Tedeschiなので,出番が減っているのは事実だが,正直私はもっとMike Mattisonに前面に出てきて欲しいとさえ思ってしまう。

久しぶりにこのアルバムを聞いてみたのだが,やはりMike Mattisonのヴォーカルは渋く,ここで展開される音楽とのフィット感が素晴らしい。そして何よりもDerek Trucksのスライドの切れ味は既に抜群である。まだこの当時,20代半ば過ぎとは思えぬこの成熟度に驚くのが当たり前。そしてジャズ的なインプロヴィゼーションも交えつつ,アメリカン・ロック好きなら確実に反応してしまうようなサウンドは,その後,私にDerek Trucksを追い掛けさせるに十分な出来であった。星★★★★。

Personnel: Derek Trucks(g), Todd Smallie(b, vo), Yonrico Scott (ds, perc, vo), Kofi Burbridge(key, fl, vo), Mike Mattison(vo), Count M'Butu(perc), Jay Joyce(key)

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2024年6月15日 (土)

やわなBob Bergという感じの"Back Roads"。

_20240613_0001 "Back Roads" Bob Berg (Denon)

このブログにも何度か書いているが,私は結構なBob Bergのファンである。Bob Bergの生み出すフレージングやハードボイルドと言いたくなるようなサウンドは私の趣味に合致するところが大きく,お前はアホか?と言われるのを承知で,Michael Breckerより好きなぐらいだと思っている。

そんなBob BergがDenonレーベルに吹き込んだ"Short Stories"から"In the Shadows"に至る3枚のアルバムは,Mike SternのWarner/Atlanticにおけるアルバムと表裏一体のようなところを感じさせるものだったが,このアルバムに関してはそれらと印象が違って,ちっともプレイバックの頻度が上がらないというのが正直なところである。それは冒頭のタイトル・トラックに聞かれる「やわ」な響きゆえであるところが大きいと思わざるをえない。

まぁ,このアルバムがレコーディングされたのは1991年と思われるので,当時はスムーズ・ジャズなる言葉が生まれた頃で,そういうご時勢を反映したサウンドというのを考えたのかもしれない。しかし,こういう音楽がBob Bergに合っているかと言えば,私は決してそう思わない。ようやく彼ららしいサウンドが出てくるのは3曲目の"Silverado"まで待たなくてはならないので,短気な私にとってはそれがプレイバック頻度が上がらない理由だろう。その"Silverado"さえ,ここでのミュージシャンらしいヘヴィさを感じさせないのはミキシングのせいか。

後半になるとやや持ち直してくるので,これがアナログの時代だったらLPのB面しか聞いてないなと思えてしまう,そういうアルバム。それでもやはり全体的なサウンドの軽さは否めないってところだ。こういう感覚をおぼえるもう一つの理由はMike Sternの出番が少ないところだと思う。Bob Bergのリーダー・アルバムへのマイキーの参加はこれが最後になったはずだが,それこそ「音楽性の相違」という感覚がマイキーに芽生えたからだと思いたくなるようなアルバム。Bob Bergのアルバムだと思わなければ問題ないって感じだろうが,それでも私としては星★★★程度しかつけられない。これは明らかにJim Beardのプロデュースがよくなかったってところだ。

Personnel: Bob Berg(ts), Jim Beard(p, org, synth), Mike Stern(g), Lincoln Goines(b), Dennis Chambers(ds), Ben Perowsky(ds), Manolo Badrena(perc)

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2024年6月14日 (金)

Isabelle Faustがバッハの無伴奏を弾くとあっては行かねばならん!

Faust Isabelle Faustは私の中では極めて信頼できるヴァイオリニストだと思っている。彼女のCDはほぼ私が満足できるものばかりで,現在のヴァイオリニストの中では一番だと言っても過言ではない。彼女が昨年出したバロック音源集の"Solo"も,私は昨年のベスト作の一枚に選んでいるぐらいで,何を弾いてもうまいのだ。

そんな彼女が,バッハの無伴奏ソナタとパルティータの全曲演奏会を二夜に渡ってやると知ったからには,これは行くぞ!と思って私は二夜分のチケットをすかさずゲットしていた。しかし,浮世の義理とでも言うべき「諸般の事情」により,第二夜に行くことがかなわなくなってしまい,シャコンヌが一番聞きたかったという思いを抱えていたから,ある意味忸怩たる思いで第一夜に行ってきた。

今回のヴェニューは横浜市青葉台のフィリア・ホールだったが,元町田市民の私としては,町田時代なら近場と言えたが,引っ越した現在では何とも遠いなぁと思いつつ,1時間も掛からないのだから贅沢は言ってはならん。このフィリア・ホールはキャパ500人ぐらいのホールだが,どうせなら同じようなキャパの紀尾井ホール辺りでやって欲しいというのがわがままな本音だったが,まぁそれは言いっこなしってことにしよう。私は二十数年前,このホールに子供のためのコンサートみたいな企画で当時3~4歳ぐらいの娘ともども行って以来の再訪であった。その時はジブリの音楽とかやっていたなぁ...。

それでもって私が行った第一夜はソナタの1番/3番,パルティータの1番というプログラムであったが,ステージに登場した瞬間,何と笑顔が素敵な人だと思ったというのが正直なところである。無茶苦茶第一印象の良い人だ。そんなIsabelle Faustが一旦演奏を始めると表情はぐっと引き締まりながらも,ある意味「踊りながら」のようにヴァイオリンを演奏する姿に釘付けになってしまったのであった。音色は素晴らしく,アーティキュレーションも見事なのだが,こんな曲をある意味身体を揺らしながら弾いてしまうというところに驚きつつも,演奏には満足していた私であった。

そもそもIsabelle Faustは最初のアルバムにバルトークの無伴奏を選んでしまうような人なので,ある意味チャレンジャーと言ってもよいが,今回のバッハは余裕で弾きこなしたってところか。それでも満席の聴衆からは大喝采を受けていたから,ほかのオーディエンスにとっても満足感が高い演奏だったと思う。やっぱりこの人は「できる人」だと思った。だからこそ,第二夜のシャコンヌが聞けないことは痛恨事ではあるのだが,それはCDを聞いて補うことにしたい。ってことで,帰り道も遠いなぁとは思いつつ,心地よい気分で家路についた私であった。

Live at フィリア・ホール on June 12, 2024

Personnel: Isabelle Faust(vln)

2024年6月13日 (木)

David + Davidってもうほとんど誰も認識できないかもなぁ。

_20240611_0002 "Boomtown" David+David (A&M)

David+DavidあるいはDavid&Davidと言ってももはや通じる人も少なくなってしまったかもしれないが,この1986年の唯一の彼らのアルバムはいいアルバムだったと今でも思っている。いかにも80年代のサウンドではありながら,ポップさとタイトな感覚を同居させるって感じなのだが,ポップと言っても,どちらかとマイナー・キーも交えたやや重々しいポップという矛盾するような表現になってしまう。しかし,実にレベルが高いと思わせるデュオであった。

David+DavidはDavid BaerwaldとDavid Rickettsのデュオ・チームだが,デュオ解散後の活動ではDavid Baerwaldの方が優勢って感じで,このブログにもDavid Baerwaldに関しては"Bedtime Stories"を取り上げたことがある(記事はこちら)。そこにも書いているが,「ウェットで,ひねりが効いている」という感覚は,このアルバムでも感じられるところだ。二人ともアメリカ人だが,ちょっとブリティッシュの感覚があるというところか。この二人が一緒に参加したということではSheryl Crowの"Tuesday Night Club"(これも久しく聞いていないなぁ...)があるが,そこでも貢献度が高いのはDavid Baerwaldの方だった。そうは言っても,一部のドラムスとパーカッション以外はこの二人でこなしてしまう才人コンビであったことは間違いない。

改めて本作を聞いてみると,このアルバムからシングル・カットされた"Welcome to the Boomtown"も,本作自体もリリースされた頃はそこそこ売れたものの,その後本作だけを残してすぐに解散してしまったのはちょっと惜しかった気がする。しかし,これは評価に値する佳作アルバムだったと今更ながら思ったのであった。星★★★★。

Personnel: David Baerwald(vo, various instruments), David Ricketts(vo, various instruments), Ed Greene(ds), Paulinho Da Costa(perc), Camille Henry(vo), Toni Childs(vo), Noland Void(vo), John Schenale(prog)

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2024年6月12日 (水)

Jesse 'Ed' Davisの"Ululu":このスワンプ風味がたまりません。

_20240611_0001 "Ululu" Jesse 'Ed' Davis (Atlantic)

私はこのブログでシンガー・ソングライター系のアルバムをよく取り上げてきたし,ブラックホークの99枚に代表されるような音楽は本当に好きだ。結局のところ,その系統で私の好きなアルバムというのはほぼ70年代に集中していると言っても過言ではない。そういう時代だったとのは間違いないところだ。新しい音楽に対して関心がない訳ではないが,ロック系の音楽ではやはりこの時代が一番好きだ。70年代にティーンエイジャー真っ只中だったのだから,まぁそれも当たり前と言ってもよいかもしれない。

そこでこの72年のJesse 'Ed' Davisのアルバムだが,私にとって「どストライク」の音源と言っても過言ではない。聞こえてくるスワンプ風味のサウンド然り,Jesse 'Ed' Davisの声やプレイぶり然りと言ったところだ。どこから聞いてもこれは好きだ!と言い切れるアルバムで文句のつけようがないのだ。現代の若者が聞けば,単なる古臭い音楽と思われかねないが,こっちは還暦もとうに過ぎたおっさんなのだから,趣味が違っても当たり前と開き直る(笑)。そもそもJesse 'Ed' Davisが参加したり,プロデュースしたりしたアルバムも,私の趣味にばっちりあってしまうことを考えれば,この人と私の相性がいいってことになるが。

基本的にはJesse 'Ed' Davisのオリジナルが多くなっているが,目立つのはGeorge Harrisonの"Sue Me, Sue You Blues"だろう。本家George Harrison自身がこの曲をリリースは73年だが,それに先立ってこの曲をプレイしたのは,バングラデシュ・コンサート出演への謝意を込めたことだったらしい。今更ながらそういうことを知ると「へぇ~」となってしまうが,Jesse 'Ed' Davisのオリジナルだって,全然負けていない魅力を放っていることは言っておかねばならない。そうは言いつつ,The Bandの"Strawberry Wine"をカヴァーしたりして,やっぱりわかっているねぇって感じがしてしまう。演奏しているメンツもメンツだし,私の嗜好への合致度もあり,星★★★★★。久しく彼の1stリーダー作も聞いていないから,今度また聞いてみることにしよう。

Personnel: Jesse 'Ed' Davis(vo, g), Albhy Galuten(p), Leon Russell(p), Mac Rebennack(p, org), Stan Szeleste(p), Larry Knechtel(org), Donald 'Duck' Dunn(b), Billy Rich(b), Arnold Rosenthal(b), Jim Keltner(ds), Merry Clayton(vo), Vanetta Fields(vo), Clydie King(vo), The Charles Chalmer Singers(vo), Chuck Kirkpatrick(vo)

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2024年6月11日 (火)

来日を控えるFairground Attractionのライブ盤を聞いて予習する(笑)。

_20240610_0001 "Kawasaki: Live in Japan 02.07.89" Fairground Attraction (BMG)

今年再結成して,7月に来日を控えるFairground Attractionだが,私は彼らの音楽は後追いで聞いていて,最初に惹かれたのはEddie Readerの1stソロ・アルバムであった。確か出張中のシンガポールのショップの店頭でプレイバックされていたものにひと聴き惚れしたのが最初で,それから"The First of a Million Kisses",そしてこのライブ盤に至った。

私がそもそも魅力を感じていたのはソロ作のEddie Readerの声だったが,このバンドのフォーク色の強いサウンドにおけるEddie Readerの歌いっぷりは,彼女のソロ・アルバムとは少々異なるって感じがした。それでもこのバンドのサウンドにもフィットした声だったし,このバンドにはバンドなりの魅力があると改めて感じるライブ盤となっていると思う。

このライブがレコーディングされてから35年の月日が経過しているから,Eddie Readerの声は変わっているだろうと想像するに難くないが,それでもこういう音楽性ならば,多少声質が変わっても魅力的に響くものと思う。いみじくも私が参戦する予定のヒューリック・ホールにおけるライブは7月2日開催ということで,このライブ盤から丁度35年ということもあって,実にアニバーサリーっぽいではないか。

ってことで,ライブへの期待も高めつつ,このアルバムを聞いていたのであった。6/19には新曲を収めたEPも出るらしいから,それも聞いてライブに臨みたいと思う。多分7月のライブでも最大のヒット曲,"Perfect"は終盤に演奏するんだろうなぁ。

Recorded Live at Club Citta川崎 on July 2, 1989

Personnel: Eddie Reader(vo, g, concertina), Mark Nevin(g), Simon Edwards(guitaron), Roy Dodds(ds, perc) with Roger Beaujalais(vib, glockenspiel, marimba), Graham Henderson(accor, p, mandolin, glockenspiel)

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2024年6月10日 (月)

Arooj Aftabの新作が実に素晴らしい。

Arooj-aftab_20240608163301 "Night Reign" Arooj Aftab (Verve)

Arooj AftabがVijay Iyer,Shahzad Ismailyと組んで作り上げた"Love in Exile"はそのアンビエントな雰囲気が素晴らしいアルバムで,私は昨年のベスト作の一枚にも選んでいる。そこでも魅力的な声を聞かせたArooj Aftabの新作がリリースされたとあっては,これは聞きたいと思うのも私にとっては当然であった。ということで,発注していたCDがデリバリーされたのだが,このムーディな雰囲気の中で,聞かれるArooj Aftabの歌唱のこれまた魅力的なことよ。

一部の曲においてはSadeを想起させるようなところもあるが,寡作なSadeの不在を補って余りあると言ってもよい存在だと思えた。ウルドゥー語と英語が混ざった歌詞なので,その内容の全面的な理解はできないが,歌詞にとらわれる必要がない音楽であることは間違いなく,ここは比較的静謐な中に展開されるこの音楽に身を委ねればいいという感じだ。そして「静謐」と言っても,バックを支えるメンバーの演奏は技術力も高く,そして音が生々しい。ここで聞かれるベースの音なんかは,これこそベースだって感じの音でとらえられていて,先日取り上げたV.S.O.P.のアルバムにおけるRon Carterのベースとは雲泥の差だ。

そして比較的小編成と言ってよいバックから浮かび上がるArooj Aftabの声こそが本作の最大の魅力だが,彼女を支えるバックも素晴らしい。何とElvis Costelloの名前すら見つかる多彩なゲスト陣も適材適所であり,本作が生み出すアンビエンスに身を委ねていると,心地よいことこの上ない。それこそ何度でもプレイバックしたくなる傑作と思った。喜んで星★★★★★としよう。

Personnel: Arooj Aftab(vo, key, sequencing), Maeve Gilchrist(harp), James Francies(key, p), Vijay Iyer(p), Elvis Costello(el-p),  TimaLikesMusic(p, key), Marc Anthony Thompson c/o Chocolate Genious Incorporated(p, synth, b, strings), Kaki King(g), Gyan Riley(g), Petros Klampanis(b, p), Linda May Han Oh(b), Shahzad Ismaily(b, key, synth), Jamey Haddad(perc), 小川慶太(perc), Joel Ross(vib), Darian Donovan Thomas(vln), Nadje Noordhuis(fl-h), Cautious Clay(fl), Heather Ewer(tuba), Huda Asfour(oud), Camae Ayewa(vo)

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2024年6月 9日 (日)

オリジナル・ラインアップによるU.K.のライブ音源。

Uk-in-boston "U.K. Live in Boston" U.K.(Isol Discus Organization)

プログレに少しでも関心のあるリスナーにとってはU.K.はどうしても気になるバンドだろう。オリジナル・メンバーの構成を見れば,テンションの高いプログレを聞けるに違いないと思わせるが,その期待は裏切られることはない。このライブ音源は,そのオリジナル・ラインアップの4人による演奏を収めているということが,まずはポイントが高い。その後のライブ盤もテンションは高い彼ららしい演奏だとは思うが,この4人がどういう生演奏をしていたのかを知るにはありがたい音源である。

元々は放送音源をソースにしているようだから,ブートに毛の生えたようなものだと言ってもよいし,音のバランスとかイコライジング等はもう少し手の加えようもあったのではないかと思わせる。私が保有しているCDはご丁寧に紙ジャケ仕様にした国内盤であるが,さすがに音をいじるところまでは行かなかったってところか。市中のブートレッガーなら更に音質を向上させてしまうのではないか(笑)。

John WettonはKing CrimsonからU.K.を経てAsiaの結成に至る訳だが,AsiaのポップさはU.K.が商業的にうまく行かなかったことを反省してのことだったのかなぁなんて考えてしまう。AsiaはAsiaで少なくとも1stアルバムは認める部分もあるものの,私にとっては過剰にポップなところを感じて,John Wettonの本質はそれじゃないよなぁと思っていたのも事実で,やはりこれぐらいのテンションでやってくれるのがいいのだ(きっぱり)。しかもこのラインアップにはBill BrufordとAllan Holdsworthがいるのだ。ハイブラウにしかならんだろうと思えるのも当然だ。

まぁこういうのは正規音源ではないので,好き者だけが聞いていればいいとは思えるものの,このメンツでのライブは観てみたかったなぁと思わせるには十分な音源であった。星★★★★。現在はジャケも変わってAlive the Liveレーベルから発売されているが,そっちにはここに入っていない"Forever Until Sunday”が追加されているらしい。さすがにそこまで追い掛けようというつもりもないが,ご参考ってことで。

Recorded Live at Paradise Theater, Boston on September 11, 1978

Personnel: Eddie Jobson(vln, key, electronics), John Wetton(b, vo), Allan Holdsworth(g), Bill Bruford(ds, perc)

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2024年6月 8日 (土)

V.S.O.P.唯一のスタジオ音源にして,このメンツでの最終作なのだが...。

_20240606_0001 "Five Stars" V.S.O.P. Quintet (CBS Sony)

大人気を誇ったオールスター・バンド,V.S.O.P.の唯一のスタジオ音源,かつライブでは演奏したことのないレパートリーを収めたアルバム,更にはこの5人での最後の録音として,本質的にはこのアルバムは貴重なものとなるはずであった。しかし,私にとっては,初めてこのアルバムを耳にした時の違和感もあれば,このジャケットの悪い印象もあって,このアルバムをどうしても評価できないでいる。

このアルバムを聞いての一番の違和感は,冒頭のFreddie Hubbard作の"Skagly"からして明らかなのだ。それはRon Carterのベースの音にほかならない。そもそも私のRon Carterのベース音嫌いは筋金入りと言ってもよいが,この増幅しまくった音を,更にミキシングでベースが異常に目立つようにしているのは一体何なんだ?と思ってしまう。アルバム全体でも,Ron Carterのベースが目立ち過ぎのようにも思えるところが,私としてどうしてもこのアルバムが好きになれない理由だ。まぁ収録された4曲がRon Carterを除く4人のオリジナルということもあって,バーターでRon Carterを目立たせたって気がしないでもないが,私のようなRon Carter嫌いには聞くのも苦痛のようなサウンドなのではいかんともしがたい。

演奏のクォリティについては名手の集まりだから,相応のレベルは保たれているとは思うが,いかんせんここでのオリジナル曲があまり面白くないというのもこのアルバムの評価が上がらない理由だ。まぁこの程度なら星★★★で十分だ。

ところで,私はこのアルバムをHerbie HancockのColumbia Boxの一枚として保有しているのだが,そのライナーによれば,冒頭の4曲がオリジナルの日本版LPに収録されたもので,5曲目の"Skagly"と6曲目"Finger Painting"はLP版の1曲目,2曲目の別テイクだが,元々のCDにはこちらが収録されていたらしい。どういう事情かはよくわからないが,何だか謎めいているねぇ。まぁ,滅多に聞くこともないから,どうでもいいんだけど(爆)。

Recorded on July 29, 1979

Personnel: Herbie Hancock(p)(p), Freddie Hubbard(tp, fl-h), Wayne Shorter(ts, ss), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)

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2024年6月 7日 (金)

夏が近づくとフリー・ジャズの虫がうずきだす(笑):ってことで,今日はPeter Brötzmann。

For_adolphe_sax "For Adolphe Sax" Peter Brötzmann (Brö→FMP)

私はどうも気候が暑くなってくると,フリー・ジャズだのヘビメタだの,刺激的な音楽を聞きたくなるところがあるのだが,今年も梅雨が近づいてきて,その性向が現れてきて,取り出してきたのがこのアルバム。いやぁ,どこから聞いてもPeter Brötzmannだ(笑)。

このアルバム,1967年に吹き込まれたものだが,Peter Brötzmannとしても,かなり初期のリーダー作ってことになるが,この当時からもはやPeter Brötzmannらしいフリー・ジャズが炸裂していて,この咆哮は快感以外の何者でもないと思ってしまう私も相当変態だ(爆)。

この再発CDには1曲,Fred Van Hoveのピアノ入りの"Everything"がボーナス・トラックとして加えられているが,同じ"Everything"でもMISIAとはえらい違いだ(笑)。ただ,この1曲,オリジナルの"For Adolphe Sax"の3曲と録音のせいか,音の感じがかなり違っていて,雰囲気が異なるのはどうなのかねぇと思ってしまうが,オマケと思えば腹も立たない。

それよりも何よりも"For Adolphe Sax"である。リスナーがフリー・ジャズに求めるのってのはこういうもんじゃないかと言いたくなるほどの,典型的フリー・ジャズ。これがリリースされた当時の反応は知る由もないが,その後のPeter Brötzmannの活躍ぶりを考えれば,大いに受け入れられたと思われるし,このエネルギーの塊とでも言うべき音を聞いているだけで私は満足だ。星★★★★☆。

Reccorded in June and Septembe, 1967

Personnel: Peter Brötzmann(ts, bs), Peter Kowald(b), Sven-Åke Johansson(ds), Fred Van Hove(p)

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2024年6月 6日 (木)

John Scofield@Blue Note東京参戦記。

Jsbnt

John Scofieldが自身のトリオで来日するということで,Blue Note東京に行ってきた。ジョンスコことJohn Scofieldのライブを観るのはCombo 66の再現ライブ以来だが,もうそれも5年前になる。あの時はライブ前に飲み過ぎてやらかしてしまった(その経緯はこちら)ので,今回は万全の態勢(ほんまか?)で臨んだ私である。前回はGerald Claytonのピアノとオルガンが加わるという編成だったが,今回はトリオゆえ,ジョンスコの出番が相対的に増えるだろうという予想はあった。

John-scofield-at-bnt202406 昨今はECMからアルバムをリリースするジョンスコだが,レーベルのイメージとはかけ離れた人だと思う。私も"Combo 66"のCDは購入したものの,その後のECMのアルバムは"Swallow Tales"以外は買っていないのは,ジョンスコとECMのイメージの乖離も要因だと思っている。なので,今回はストリーミングで予習してBlue Noteに駆けつけたのであった。しかし,ストリーミングで聞いていると,ECMというのを意識しなければ,凄くいいアルバムだったんだねぇなんてことを今更ながら思っていた(爆)。

思えばジョンスコも古希を過ぎていて,かつてのようなイケイケな感じから,枯れた味わいが出てくるのは当然で,演奏に関してはコンベンショナルな感じが強くなっていたが,出てくるギター・フレーズは何も変わらないと言うか,完全に変態だと改めて思ってしまった。あのフレージングはほかのギタリストでは聞けないと思えるもので,聞きながらウハウハしていた私である。最新作"Uncle John’s Band"からの曲に加えて,"Airegin"やCarla Bleyを偲んで"Ida Lupino"等を交える渋い選曲もよかった。更に,かつてJoe LovanoもいたJohn Scofield Quartet以来だから,30年を優に越す付き合いであるビルスチュことBill Stewartとのコンビネーションもばっちりであった。

ビルスチュのドラミングは特にミディアム・テンポ以上の曲ではシャープそのもので,実は私は今回のライブで最も満足感が高かったのがビルスチュだったと言っても過言ではない。的確かつ適切,そしてダイナミックなのだ。ドラムス・ソロや小節交換におけるビビッドな叩きっぷりは聴衆を興奮させるものだと言ってよい。ビルスチュは笑顔一つ見せなかったが,そういう人柄なのか,機嫌か体調が悪かったのかはわからない。しかしあの叩きっぷりからすれば体調は悪いはずがない(笑) ので,時差ボケか?

もう一人のベースのVicente Archerであるが,音色も過度な増幅をせず,バッキングに徹している時は結構よかったのだが,この人のソロが全然面白くないのが玉に瑕ってところだ。せっかくのこのバンドであるから,この人のソロがもう少しよければ,このライブは満点の出来だったと思えてしまうのが少々残念。

しかし,総じて満足感の高いライブで,フルハウスの聴衆からもやんやの喝采を受けていた。前回のライブでやらかした私からすれば,リベンジに成功したって感じであった。上の写真はBlue Note東京のWebサイトから拝借したが,ライブ・レポートによれば,初日には"Blue Monk"とか"Confirmation",Carla Bleyは”Lawns"もやったそうだ。それまた渋いねぇ。

Live at Blue Note東京 on June 4, 2024, 2ndセット

Personnel: John Scofield(g), Vicente Archer(b), Bill Stewart(ds)

2024年6月 5日 (水)

意外や意外,当ブログにCarlos KleiberのCD初登場(笑)。

_20240604_0001 "Beethoven: Symphonie No.7" Carlos Kleiber / Bayerisches Staatsorchester (Orfeo)

主題の通りである。Carlos Kleiberが亡くなって,早いもので今年の7月で20年ということになるが,不世出の指揮者だったと思いつつ,何を今更という感もあって,ベートーヴェンの7番/4番のDVDは取り上げたことがあった(記事はこちら )が,CDに関しては一切記事にしてこなかった。まぁ聞けばいいに決まっている(笑)から,敢えて記事化する必要もなかろうと言うところもあったが,久しぶりにこの死後にリリースされた1982年のライブ音源のCDを取り出してきた。

Calos Kleiberのベト7と言えば,1986年の来日公演を思い出すが,私は演奏を聞いていて,ついつい身体が動いてしまいそうになったのも懐かしい。まさに血沸き肉躍る演奏だったが,その雰囲気はこのCDでも全く一緒である。もちろん,生で聞くのとは感慨の違いこそあれ,安定のKleiberの指揮っぷりだ。

Carlos Kleiberの場合,正規録音が多くないし,やっていたレパートリーも決して幅広いものではなかったが,それでもやる曲,やる曲のほぼすべてにおいて決定的名演を生み出すという人だったと思う。まぁベト7は相応に盛り上がりを示す曲ではあるが,この演奏を聞いていても,私の身体は勝手に動き出してしまったのであった。誤解を恐れずに言えば,ロックやジャズを聞いている時の感覚に近い反応なのだ。燃えてしまうのだ(笑)。

同じベト7であれば,ウィーン・フィルとやった演奏を聞いていればいいじゃんという話もあるが,ここではライブならではの躍動感を楽しめばいいのではないか。終楽章なんかはまさにエグいと言ってもよい爆裂ぶり。いやぁ,久しぶりに聞いてもやっぱりいいですわ。星★★★★★。聴衆が拍手もブラボーも一瞬忘れてしまうほど驚いているというのがよくわかってしまう激演。その後の足踏みに当日の熱狂が表れている。それにしてもいい表情で指揮する人だったよなぁ。

Recorded Live at Nationaltheater, Munchen on March 3, 1982

Personnel: Carlos Kleiber(cond), Bayerisches Staatsorchester

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2024年6月 4日 (火)

Amazon Primeで「ザ・ロック」を見たのだが,Michael Bayって監督が大したことないことを実証。

The-rock「ザ・ロック("The Rock")」('96,米,Hollywood Pictures)

監督:Michael Bay

出演:Sean Connery, Nicolas Cage, Ed Harris, John Spencer, David Morse, William Forsythe, Michael Biehn

暇にまかせてAmazon Primeで見たのがこの映画である。私の記憶ではレンタル・ビデオでこの映画は見たことがあったはずなのだが,アルカトラズ島が舞台ということだけしか覚えていなかったので,初見みたいなものだ。

アルカトラズ島と言えば,Clint Eastwoodの「アルカトラズからの脱出」を思い出すが,あっちが地味ながらサスペンスフルな感じとすれば,この映画はド派手なドンパチ続きで,同じ舞台でも全然違うねぇという感じである。そもそもMichael Bayの映画ってのは物量作戦みたいな映画ばかりで,私の関心を全く惹かないのだが,この映画はSean Conneryゆえに見たってことになる。Sean Conneryを見ているだけならまぁそれもよしなのだが,このシナリオはどうなのかねぇ。そんなに都合よく話が進むことなんてないだろうと言いたくなるようなストーリー展開には最後の方は辟易としながら見ていた私であった。そもそも前半に出てくる長いカーチェイス・シーンは必要だったのかと言いたくなるし,SFの坂道の車のジャンプなんて,ありがちもありがち,そしてそんなにバンバン車を壊せばいいってもんでもないだろう。こういう演出を見ていると芸のなさが明らかになる。

まぁこの映画はSean Conneryをカッコよく見せればいいというのがメインで,Nicolas Cageは少々情ない部分も見せながら,最後は大活躍ってのをありがちな展開と言わず,何と言うってところだろう。結局はSean Conneryをカッコよく見せるって観点では,以前取り上げた「エントラップメント」に近い感じもするが,「エントラップメント」よりはましとしても,Sean Conneryももう少し作品を選ぶべきだったって気がするな。星★★★。いずれにしても暇つぶしってことで(苦笑)。

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2024年6月 3日 (月)

Derek Trucksが加入するよりずっと前のAllman Brothersのライブ盤。これがいいのだ。

_20240601_0001 "Play All Night: Live at the Beacon Theater 1992" Allman Brothers Band (Epic)

Allman Brothers Bandと言えば,私の関心はDuane Allman存命中か,Derek Trucks加入後に向いてしまい,その間に位置するアルバムや演奏はほとんど聞いたことがないと言ってもよい。しかし,2014年になってリリースされたこの1992年のライブ盤を聞いて,そういう偏った聞き方をしていてはいかんと思わされてしまった。まずはストリーミングで聞いて,その良さに驚きCD購入に至った訳だが,それぐらいこのライブ盤は出来が良いと思える。フロントのギターはDicky BettsとWarren Haynesの二頭体制であるが,ここでのWarren Haynesのバンドへのフィットぶりが素晴らしいと思えた。

Beacon-theater レコーディングされたのは彼らのNYCにおけるホームと言ってもよいBeacon Theaterである。私もNYC在住中に何度か訪れたことがあるが,キャパは3,000人弱ながら,ステージと観客席の距離感が結構近く感じられるとともに,内装にも歴史を感じさせるいいホールだった。こういう場所でAllman Brothersの演奏を聞けるということは幸せだろうなぁなんてついつい思ってしまう。

Allman Brothers Bandのライブ盤はそれこそ各々の時代の音源が山ほど出ているし,そもそもやっている曲もお馴染みのものが被っていることも多々ある。私はそれを全部追い掛けるほどのファンではないが,それでもアメリカン・ロックの一つの象徴とでも言うべきところがある人たちだと思っているし,私の音楽的な嗜好へのフィット感も強い。豪快なエレクトリックでの曲群に加えて,Disc 1後半のアコースティック・セットもいい感じで,演奏が実にレベルが高く,まさにプロの仕事って感じがする。彼らの遺伝子はTedeschi Trucks Bandへと引き継がれているが,ここでの演奏を聞いていると,ライブ・バンドとしてのTedeschi Trucks BandはまだまだAllman Brothersには及んでいないと思わせる出来なのだ。

バンドとしての実にタイトなまとまり,演奏のクォリティを考えても,これは相当レベルが高いライブ音源だったと思わせる。だからこそ22年というインターバルを経ても発掘される意義があった音源だと評価する。星★★★★☆。マジでカッコいいですわ~。よくよく考えたら私はこのアルバムがレコーディングされた時期にはまだNYCに在住中だったのだから,行っとけばよかったなぁ...(後悔先に立たず)。

Recorded Live at the Beacon Theater on March 11-12, 1992

Personnel: Gregg Allman(vo, org, p, g), Dicky Betts(vo, g), Warren Haynes(g, vo), Allen Woods(b, vo), Jaimoe(ds, vo), Butch Trucks(ds, perc, vo), Marc Quiñones(perc) with Thom Deucette(hca)

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2024年6月 2日 (日)

よくできた味わい深い映画だった「碁盤斬り」。

Photo_20240523141501「碁盤斬り」(’24,キノフィルムズ)

監督:白石和彌

出演:草彅剛,清原果耶,中川大志,奥野瑛太,音尾琢真,市村正親,斎藤工,小泉今日子,國村隼

私は洋画なら西部劇,邦画なら時代劇が結構好きなのだが,久しぶりに見たいと思える時代劇が公開されたので劇場に足を運んできた。

端的に言えば草彅剛演じる柳田格之進の復讐物語であるが,もともとは古典落語の「柳田格之進」がベースというのが企画として面白い。落語をベースにしても笑いの要素はこの映画にはないが,そこに斎藤工演じる柴田兵庫という悪役を登場させ,復讐物語に翻案したシナリオがまず面白い。

時代劇だからと言って出てくるチャンバラ・シーンはエンディング近くだけというもので,基本は囲碁のシーンが多い。囲碁のルールを知っていれば更に楽しめるのかもしれないと思いつつ見ていたが,もちろん知らなくても十分に楽しめる。さすが時代劇だけあって,観客の平均年齢が相当高かったが,こうした味わいは若い人にもわかって欲しいなぁなんて思ったのも事実だ。しかし,年齢層に関係なく訴求力を持った映画だと思った。

役者としての草彅剛は結構いい線行っていると思わせる(以前見た「日本沈没」もよかった)が,脇を固める役者陣もなかなかよかった。出てくる悪人は斎藤工だけみたいなところが,落語の人情噺をベースとするところゆえって感じもしたが,これはこれでいいのではないかと思わせる。柳田格之進の生きざまが武士の矜持を感じさせてくれるいい映画であった。星★★★★。

2024年6月 1日 (土)

オペラ聞きではないので,Tennstedtのワーグナー序曲/前奏曲集でお茶を濁す(笑)。

Tennstedt-wagner "Wagner: Overtures" Klaus Tennstedt / Berlin Philharmoniker(EMI)

そこそこクラシックを聞く私でも,オペラは敷居が高いと言うか,CDでも聞き通すのに時間が掛かるのが難点だ。なので,全曲を聞き通そうと思うと相当の覚悟と気合い(笑)が必要ってことになる。特に家人がいるところでは実質的に無理ということになるので,大体が序曲集を聞いてお茶を濁すというパターンだ。それでもって,今回はワーグナーの有名序曲/前奏曲集である。

現在,このアルバムはTennstedtの"The Great EMI Recordings"ボックスの1枚として保有している訳だが,以前は単体でも保有していたことがある。そもそもワーグナーのオペラも聞き通すことは滅多にない。NYCに住んでいた頃はMETで「さまよえるオランダ人」と「タンホイザー」は観たことがあるが,それが私の数少ないワーグナーの生体験の全てである。

そんなワーグナーやオペラに縁遠いと言ってよい私でも,序曲集ぐらいならOKということにはなるが,まぁこれを押さえておけばと言う選曲になっているという感じだ。オーケストラのアンコール・ピースに用いられることも結構ある「ローエングリン」第3幕の前奏曲はやっぱり盛り上がるねぇと思いつつ聞いていたが,そのほかの曲もよく知られた曲ばかりなので,久々にプレイバックしながら,楽しく聞いてしまった私であった。まぁ,Klaus Tennstedtにベルリン・フィルとなれば,鉄壁確実だけに更に楽しんでしまったことは言うまでもない。実によくできたアルバムとして星★★★★★。ボックスにも入っている「指環」の管弦楽曲集も聞かないとな。そう言えば,BoulezがN響とやった「トリスタン」も全然聞けていない...。さていつ聞くか。

Recorded on December 15, 1982 and April 16-17, 1983

Personnel: Klaus Tennstedt(cond), Berlin Philharmoniker

本作へのリンクはこちら。リンク先のCDは「指環」とこの「序曲/前奏曲集」の合体盤2枚組。

と思っていたらタワレコ限定で同じく2枚組でSACD化されたものが売れているらしい(リンクはこちら)。

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