Brad Mehldauの更なる越境:今度はフォーレだ。
"Après Fauré" Brad Mehldau (Nonesuch)
一昨日,"After Bach II"を取り上げたBrad Mehldauが同時にリリースした,今度はフォーレにインスパイアされたアルバムである。本来なら昨日記事をアップしようと思ったのだが,David Sanbornの訃報を受けて一日遅れとなった。
私はクラシック音楽もそこそこ聞くが,フォーレに関しては「レクイエム」以外は縁がなかった。しかし,その「レクイエム」については「天上の音楽」だと書いたことがある(記事はこちら)。Brad Mehdauがフォーレに影響を受けているとすれば,その美しいメロディ・ラインではないかと思えるが,ここでもフォーレの曲を前半と後半に配置し,オリジナルを中間に置いている。ここでの演奏を聞いてフォーレの曲はこんなに美しい曲だったのかと今更ながら気づく私であった。
本業のクラシックのピアニストによるフォーレの曲を聞いたわけではないので比較はできないが,ここでのBrad Mehldauは余計なギミックは加えることなく,真っ当にフォーレの曲を弾いているように思える。私としては抵抗感なく受け入れ可能だったが,いかんせんバッハほど私にはなじみがないので,私の感覚が正しいかどうかはわからない。
フォーレの曲にはさまれたBrad Mehldauのオリジナルは,それほどフォーレ的に感じさせないようにも思えるところが,"After Bach"シリーズとの違いと言ってもいいかもしれない。明らかに雰囲気が違うのだ。しかし,それも私がフォーレの音楽をあまり知らないことによる部分もあるだろう。"Prelude"は若干ミニマル的な響きさえ感じさせるところが面白いが,いずれにしても,両手使いを駆使しながらの演奏は,やはりBrad Mehldauの個性だと思わせる。
私としては今回同時にリリースされた2作はどちらも評価したいと思うが,作曲者とオリジナルとの関連性という観点では,どうしてもバッハの方に軍配が上がってしまう。それはBrad Mehldau自身のインスピレーションのレベルの違いという感じもあれば,私のバッハの音楽とフォーレの音楽の鑑賞体験の違いもあるだろう。しかし,私はこうしたチャレンジは大いに認めたいと思う。ということで,星★★★★☆。フォーレの音楽の美しさに気づかせてくれただけでも価値はあると思う。
Recorded on June 19-21,2023
Personnel: Brad Mehldau(p)
本作へのリンクはこちら。
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