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2024年5月14日 (火)

Brad Mehldauの"After Bach"第2弾は前作に勝るとも劣らない出来。

After-bach-ii "After Bach II" Brad Mehldau (Nonesuch)

ジャズの世界を越境して,クラシック音楽とのはざまを行き交うBrad Mehldauの音楽だが,成功しているものあれば,失敗と思わせるものもある。私から言わせれば,ピアノ・コンチェルトは明らかな失敗作だったと思うが,基本的にはうまく越境しているという印象は与えていると思う。そこがBrad MehldauのBrad Mehldauたる所以であるが,今回は本作とフォーレをテーマとした2作を同時リリースという離れ業である。

端的に言えば,"After Bach"第1作を聞いた時には,ついついこちらも構えていたようにも思えるが,前作の出来のよさによる安心感もあって,今回は「身構える(笑)」ことなくこの音楽に接することができたように思う。聞く側の「気負い」のようなものがないだけに,純粋にBrad Mehldauがバッハと,「バッハ的なるもの」にどう取り組むかを聞くことができたと感じられ,それだけに本作は,私にとっては前作を更に上回る印象を与えるものであった。

端的に言えばバッハによって書かれた音楽と,Brad Mehldauによる即興のバランス具合が実に楽しい。前作には収録されていなかった"After Bach: Toccata"はそもそも委嘱により"Three Pieces after Bach"の1曲として作曲されたものであるが,この曲がやや突出している印象はある。しかし,そのほかについてはバッハの曲とBrad Mehldauのオリジナル(即興)が見事に調和している感じがするのだ。特に私が楽しんだのが"Goldberg Variations"に素材を求めた7曲から成る組曲,"Variations on Bach’s Glodberg Theme"。あのゴルトベルク変奏曲の雰囲気を濃厚に残しながら,Brad Mehldauらしいメロディ・ラインが続々と出てくるさまには,正直言ってウハウハしてしまった私である。

世の中のバッハ好きからすれば,それだったらバッハの曲だけ聞いていればいいではないかということも聞こえてきそうだが,これはバッハを素材としながら,新たな音楽を生み出すチャレンジだと思えばいい話である。正直言ってしまえば,曲の出来には少々ばらつきを感じるのも事実だ。しかし,これは作品としては実に面白く,Brad Mehldauの進取の精神を大いに評価したいと思う。甘いとは思いつつ前作に続いて星★★★★★としよう。

Recorded on April 18-20, 2017 and on June 21, 2023

Personnel: Brad Mehldau(p)

本作へのリンクはこちら

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コメント

最近一週間かけてJacques Loussierの「Play Bach」約LP5枚と10枚のCDを全て聴きました。
Brad Mehldauは全くの別世界、私が1960年代にジャズを聴くようになったきっかけですので、懐かしさと共に最高でした。2000年以降の第3期は今聴いても録音も良いですね。
そこでMehldauですが、おっしゃるように
>これはバッハを素材としながら,新たな音楽を生み出すチャレンジだと思えばいい話である。
と、いうことですね。又私自身はソロよりはトリオの方が楽しめる質なので・・・ちょっとその点は空しいのですが・・・After Bachものより、やっぱりBachもののほうが良かったです。深く聴き込むと又違ってくるかもしれませんが・・・・

photofloyd(風呂井戸)さん,こんばんは。コメントありがとうございます。

>最近一週間かけてJacques Loussierの「Play Bach」約LP5枚と10枚のCDを全て聴きました。

そりゃまた懐かしいですねぇ。それにしても大変な分量ですよね。

>私自身はソロよりはトリオの方が楽しめる質なので・・・ちょっとその点は空しいのですが・・・After Bachものより、やっぱりBachもののほうが良かったです。深く聴き込むと又違ってくるかもしれませんが・・・・

トリオにはトリオのよさがあると同時に,ソロゆえの魅力もあるので,私はどちらもOKですが,結局追っかけですから(笑)。Bachの演奏はストレートにやっていますが,オリジナルの方もバッハの香りは残っていると思いました。記事にも書きましたが,"After Bach: Toccata"がやや突出した感覚を与える部分が影響しているかも知れませんね。私としてはトリオ演奏も聞きたいという欲求はありながらも,今回も大いに楽しませてもらいました。

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