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2024年4月23日 (火)

これも待望:Fred Herschの新作はECMから。

_20240419_0001"Silent, Listening" Fred Hersch (ECM)

Fred HerschがEnrico RavaとのデュオでECMデビューを飾った"The Song Is You"も素晴らしい出来だったが,今回はソロとして満を持してのリーダー作である。これを期待しないFred Herschファンはいないだろうと言いたくなる。

冒頭のBilly Strayhorn/Duke Ellingtonの"Star-Crossed Lovers"からリリシズム溢れるFred Herschらしい演奏であるが,その後のFred Herschの6曲のオリジナルは,"Little Song"を除けばかなりアブストラクト度が高い。近年のFred Herschはリリシズムと美的な感覚に加えて,こうしたアブストラクトな曲を交えることが多くなった。現在は引退状態のKeith Jarrettも近年のソロ・ライブにおいては,第一部では現代音楽に近い響きさえ聞かせながら,第二部で美的なサウンドで聴衆を酔わせたことに近い感覚をおぼえる。このアルバムにおいては,プロデューサーであるManfred Eicherの意向も反映しているかもしれないし,それがFred Herschの更なる成熟ということかもしれない。Fred Herschの人柄からすれば,ここでの音楽はややクールにさえ響くが,それはECMというレーベルのカラーに合わせたものと解釈したい。

演奏そのものは緊張感を保ったものゆえ,リスナーにはある程度の集中力を求めるものとも言えるが,現代音楽のピアノ音楽への耐性の強い私にとっては何の問題もない。しかし,これまでのFred Herschのファンにとっては,従来のイメージから乖離したものと響くと言えなくもない。その辺りでおそらく本作への評価は分かれるものと思うが,例えばオリジナル曲"Akrasia"において,アブストラクトな響きから,美的なサウンドへ移行する瞬間などのはっとさせる感覚を与える。それはRuss Freeman作の"The Wind"や,最後に収められたAlec Wilderの"Winter of Discontent"にさえ感じられるから,意図的な部分はきっとあるはずだ。

リリカルで美的なFred Herschに痺れてきた私にとっては,この作品がFred Herschの最高傑作とは思わないが,ECMという新たな土俵におけるFred Herschの更なる活躍を祈って星★★★★☆としよう。

おそらくライブの場では,ここまでアブストラクト感を高めることはないと思うが,この新作を受けてFred Herschがどういうソロ・ピアノを聞かせるかは興味深い。海外では発売記念ライブが予定されているが,日本でも是非聞いてみたいものだ。最後にFred Herschのソロを観たのは既に6年以上前となった。一日も早くの再来日を願う。

Recorded in May 2023

Personnel: Fred Hersch(p)

本作へのリンクはこちら

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コメント

私も聴いておりますが結論をおわずけにしています。評価に迷っています。
まずは、HerschはECMを意識しすぎた作であったと思ってます。前半に築いた世界は感情を捨てきった空間に導く音世界は、あるものを超越した深層に迫るべく響いてきます。悪くはないです。
 しかし、後半にその世界から一歩現実的になってはみたものの私の期待する彼の本質的な哀感のある美しいメロディが欠如していることです。ECM世界と彼自身の本質をうまく描き切れていないところです。"The Wind"に一つの救いを求めるも、なんと"Softly, as in a Morning Sunrise"のややアバンギャルドっぽさのある編曲はまさに気分壊しです。結局最後の"Winter of my Discontent"は、このアルバムを納めるに中途半端となってしまいました。

photofloyd(風呂井戸)さん,おはようございます。

>私も聴いておりますが結論をおわずけにしています。評価に迷っています。
>まずは、HerschはECMを意識しすぎた作であったと思ってます。

おっしゃることはよくわかります。私もEicherの意向がかなり強く出ているようには思いました。

>前半に築いた世界は感情を捨てきった空間に導く音世界は、あるものを超越した深層に迫るべく響いてきます。悪くはないです。
>しかし、後半にその世界から一歩現実的になってはみたものの私の期待する彼の本質的な哀感のある美しいメロディが欠如していることです。ECM世界と彼自身の本質をうまく描き切れていないところです。

確かにFred Herschらしくないのは事実です。最後までアブストラクト度が高いですから,そこで好みはわかれてしまうだろうなぁと思いますし,私としても「最高傑作とは思わない」と書いたのもアンビバレントな感覚ゆえの部分もありました。しかし,最近のFred Herschの作品にも本作のアブストラクト感を予感させる部分はあったと思いますので,私としては様子見(笑)の部分もありますね。そうは言いつつ,Fred Herschの音楽性をぶち壊したVenusに比べればはるかにましだと思いますし,これはこれで評価したいと思いました。

まぁ,でも微妙ですよね(苦笑)。

こんにちは。

フレッド・ハーシュの一部しか(7-8枚ぐらい?)聴いていない私にとっては、彼がECMから出した、ということ自体、以前競演作を出したことはあっても、意外な出来事でした。

音楽的にはおおむねマンフレート・アイヒャーに合わせたような感じもしますけど、おっしゃるように、ハーシュの近年の演奏の方向性なのかもしれません。難解な部分もあるとともに、メランコリックなところもあるような気がしてます。でも、ハーシュのファンという視点があるとすれば、けっこう賛否両論はありそうですよね。個人的には好きな演奏になっては来るんですけど。

当方のブログアドレスは下記の通りです。

https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2024/04/post-b23bf8.html

910さん,こんにちは。リンクありがとうございます。

>フレッド・ハーシュの一部しか(7-8枚ぐらい?)聴いていない私にとっては、彼がECMから出した、ということ自体、以前競演作を出したことはあっても、意外な出来事でした。

むしろ工藤さんがあまりHerschの音源を聞かれていないのは意外な気もします。

>難解な部分もあるとともに、メランコリックなところもあるような気がしてます。でも、ハーシュのファンという視点があるとすれば、けっこう賛否両論はありそうですよね。

そうなんですよねぇ。これはこれで評価しつつももろ手を挙げてって感じにはならないところが少々微妙です。まぁ,ECMらしいんですけどね。

閣下、リンクをありがとうございました。m(_ _)m

なんだか、皆さんに少し微妙のようですが。。
まぁ、それだけ期待度が大きいということなのでしょうねぇ。
ピアノの詩人と言われてきたわけですものねぇ。。

私的には、即興力の凄さを改めて感じた次第です。

私もリンクを置いていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2024/04/post-877906.html

Suzuckさん,こんにちは。リンクありがとうございます。

>なんだか、皆さんに少し微妙のようですが。。
>まぁ、それだけ期待度が大きいということなのでしょうねぇ。

イメージとの乖離があるのは否定できませんよねぇ。

>ピアノの詩人と言われてきたわけですものねぇ。。

はい。長年のファンはもっとリリシズムが炸裂する世界を期待するというのが本音です。

>私的には、即興力の凄さを改めて感じた次第です。

そうですよねぇ。近年のアルバムにおいてもアブストラクトな感覚が増していたことは事実ですから,「純即興」の世界に向いているのかとも思いますが,それはそれで応援したいと思います。でもやはり...って部分があるのが正直なところです。

私のブログへのコメントありがとうございました。
(繰り返しになりますが、連休中から連休明けに、仕事で一杯一杯で大変失礼しました。)
私は、最近のアイヒャーのプロデュース作には??をつけまくっているので、これも悲観的な予想で聴きました。甘口のECMに辟易していたです。今回は、良い意味で外れ。
ハーシュのピアノの音響を、これでもか、と掘り下げているのはさすが、と思いました。もう少し残響が控えめだったら完璧。でも許容範囲かな。(New seriesは適正な残響なんですけどね。)
私は好きなアルバムです。

kenさん,おはようございます。

>私は、最近のアイヒャーのプロデュース作には??をつけまくっているので、これも悲観的な予想で聴きました。甘口のECMに辟易していたです。今回は、良い意味で外れ。

確かにECMは残響過多って気がしますが,昨今は私もそこまでECMに対する執着がなくなって,購入数も控えめになっています。

>ハーシュのピアノの音響を、これでもか、と掘り下げているのはさすが、と思いました。もう少し残響が控えめだったら完璧。でも許容範囲かな。(New seriesは適正な残響なんですけどね。)
>私は好きなアルバムです。

Fred Herschのこれまでの音楽を考える場合,このアブストラクトな感覚を受け入れられるかどうかってところはありますね。私は全然問題なしでしたが,おそらくライブの場では叙情性とアブストラクトの二面性を打ち出すんだろうなぁと想像しています。いずれにしても乞歳ら日ですね。

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