Daniil Trifonov@紀尾井ホール参戦記。
いやはや凄いものを聴いてしまったってところか。Daniil Trifonovが"Decades"と題して,20世紀の音楽を10年に区切って,00年代から80年代までの曲を演奏するというプログラムは2018年にカーネギー・ホールで演奏して評判になったものである。今回はその再演ということになるが,演奏した曲目は18年と全く同様の以下のものであった。
- ベルク:ピアノ・ソナタ op.1(1907-08年作曲)
- プロコフィエフ:風刺(サルカズム)op.17(1914年作曲)
- バルトーク:戸外にて(1926年作曲)
- コープランド:ピアノ変奏曲(1930年作曲)
- メシアン:「幼子イエスの注ぐ20の眼差し」から 幼子イエスの接吻(1944年作曲)
- リゲティ:「ムジカ・リチェルカータ」から 第1、2、3、4番(1951-53年作曲)
- シュトックハウゼン:ピアノ曲Ⅸ(1955年作曲)
- J.アダムズ:中国の門(1977年作曲)
- コリリャーノ:ファンタジア・オン・オスティナート(1985年作曲)
ほとんどが私にとっては聞いたこともないような曲が並んでいるが,冒頭のベルクからして強烈なテンションで迫ってくる。メシアンまでが第一部で約70分,リゲティからアンコールまでが50分ぐらいというプログラムで,やる方も聴く方も物凄い集中力を要するものだったと言えるが,見事に乗り切ったTrifonovであった。そしてなんとアンコールは「4分33秒」である。会場で"I Love You,Daniil!"と声を上げた外国人がおそらくタイム・キーパーだったのではないかと疑っている私だが,身じろぎもせずピアノの前に座るTrifonovを見ながらニヤニヤしていた私であった。
それにしても,超強力な打鍵もあれば,ミニマルな響きも交えるというこのプログラムは,ピアニストとしての技量もさることながら,相当疲労を強いるものであることは間違いないところで,まだ33歳という年齢ゆえに可能という気もする。デビュー当時の紅顔の美少年というイメージからは随分雰囲気が変わったが,それでもまだ33歳なのだ。
私はTrifonovのアルバムはデビュー作(?)のチャイコフスキーのP協しか持っていないから,別にファンでも何でもないのだが,今回このリサイタルに足を運んだのは,このプログラムゆえである。私が現代音楽のピアノ曲にはまって結構な時間が経ったが,生で聴いたことがなかったこともあり,告知を見た時,これは...ということでの参戦となったが,冒頭の表現に戻って凄いものを観てしまったと思った。こんな演奏した後,サイン会までやるっていうんだから,寿命縮まるで(爆)。マジでチャレンジャーだよなぁと思いつつ,こちらとしては心地よい疲労感を覚えながら,サイン会はパスして家路についたのであった。
ということで,紀尾井ホールではないが,2018年にCarnegie Hallでやった時の写真をアップしておこう。雰囲気はほとんど同じ。写真はNew York Timesから拝借したもの。
Live at 紀尾井ホール on April 12, 2024
Personnel: Daniil Trifonov(p)

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