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2024年4月17日 (水)

まさに待望:Lizz Wrightの新作。

_20240416_0001"Shadow" Lizz Wright (Blues & Greens)

主題の通り,まさに待望の新作が届いた。私はLizz Wrightには全幅の信頼を置いてきたと言ってよく,アルバムがリリースされるたびに無条件購入している。しかし,前作のライブ盤(これも素晴らしかった。記事はこちら)はストリーミング/ダウンロード・オンリーで,フィジカルのリリースはなんと2017年の"Grace"以来となった。その"Grace"も年間最高作の一枚に選ぶほど,私はLizz Wrightを評価しているのだ。

そんなLizz Wrightの新作がリリースされたので,早速聴いてみた。今回はギターのChris Bruceがプロデューサーを務め,Lizz Wright自身はエグゼクティブ・プロデューサーとなっている。もう冒頭の"Sparrow"が流れた瞬間から私の心は鷲掴みにされてしまった。ここにゲストでAngelique Kidjoを入れるところなど,まさに適材適所。今回もオリジナルにカヴァー曲を交えるといClう構成だが,Clarence Carterの"Sweet Feeling"のブルージーな感覚なんて最高である。このカヴァー曲の選曲のセンスはまさに絶品なのだ。今回はClarence Carter以外はCaitlin Canty,Toshi Reagon,Sandy Denny,そしてGillian Welchといったフォーク,アメリカーナ系の女性シンガーのカヴァーが多くなっている。

それらの曲を含めてアルバム全体を通して素晴らしい歌唱が続くのだが,1曲だけCole Porterの"I Concentrate on You"が雰囲気が違うのはどうかなぁと感じてしまったのも事実。私としてはこの曲の歌のうまさは感じられるとしても,アルバム全体としては少々バランスを崩しているのではないかと疑問に思った。それでもLizz Wrightへの私の評価が揺らぐことはないのだが。星★★★★☆。

Personnel: Lizz Wright(vo), Adam Levy(g), Chris Bruce(g, key, b, perc), Lynne Earls(el-p, g, hand perc), Glenn Patscha(p,el-p, org), Kenny Banks, Sr.(p, org),  Rashaan Carter(b), Meshell Ndegeocello(b), Deantoni Parks(ds), Abe Rounds(perc), Brandy Younger(harp), Tina Basu(vln), Arun Ramanurthy(carnatic vln), Katherine Hughes(vln), Elizabeth Brathwaite(vln), Jeff Yang(vla), Melissa Bach(cello), Hanna Benn(strings arr)

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2024年4月16日 (火)

いい意味で暑苦しい"Out of Chaos"(笑)。

_20240415_0001"Out of Chaos" 峰厚介 (East Wind)

主題の通りだ。1970年代中盤の日本のジャズ・シーンを感じさせるアルバムと言ってよいのではないかと思う。この暑苦しさを生み出しているのはリーダーのテナーはもちろんなのだが,それを激しく煽るのが日野元彦のドラムス。これだけバスドラをキックし続けるってのも激しいが,とにかく叩きまくりである。2曲目の"Little Abi"だけは峰厚介と菊地雅章のデュオだが,冒頭の"Recollection"も3曲目の"Cross Wind"も長尺で激しい応酬がクァルテットにより展開される。音楽そのものはアルバム・タイトルのように「混沌」としたものとは思わないが,この激しさそのものを示していると言ってもよいかもしれない。

2曲目の"Little Abi"がデュオであり,ほかの2曲と相当雰囲気が違うが,録音されたタイミングと場所の違いも影響しているようだ。いずれにしても,"Recollection"と"Cross Wind"に挟まれたこの曲によりその2曲の激しさを中和するような効果もある。もしこれがなければ,確実に胸焼けするだろう(笑)。

いずれにしても,こういう熱い演奏は聞いていて爽快感を覚えるところもあって,大いに楽しめるし,当時のミュージシャンのレベルの高さを実証したアルバム。峰厚介がテナー一本に絞ったアルバムとして,本人としても相応の覚悟を以て臨み,ちゃんと結果に結びついたというところは立派。星★★★★☆。

Recorded on July 15 & 30,1974

Personnel: 峰厚介(ts), 菊地雅章(p), 岡田勉(b),日野元彦(ds)

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2024年4月15日 (月)

「愛のメモリー」と言っても松崎しげるじゃないよ,映画だよ(笑)。

Obsession 「愛のメモリー("Obsession")」(’76,米,Columbia)

監督:Brian De Palma

出演:Cliff Robertson, Geneviève Bujold, John Lithgow, Sylvia Kuumba Williams, Wanda Blackman

日本で松崎しげるの「愛のメモリー」がヒットしたのが1977年のことであったが,この映画が日本で公開されたのは翌78年ということで,おそらく松崎しげるに便乗しての邦題だったのではないかと疑わせる(笑)。Alfred Hitchcock好きで通るBrian De Palmaが「めまい」にオマージュしたと思われるのがこの映画。ストーリーは全然違っても「そっくりさん」が出てくるってところでそれは明らかなのだ。

詳しく書くとネタバレになってしまうので控えるが,正直言ってこのストーリーには無理があると思わせるし,そしてラスト・シーンも実に違和感を残したまま終わるという不思議な映画。そもそもCliff RobertsonとGeneviève Bujoldというキャスティングが地味と言えば地味なので,日本でヒットしたという話は聞かない。映画としては大した出来ではないのも事実だ。それでもそういう映画があったなぁと覚えていたから今回Amazon Primeで観た訳で,劇中に出てくるポンテ・ヴェッキオやシニョーリア広場などのフィレンツェの風景が,2013年に訪れた同地への旅を思い出させてくれたのも懐かしかった。

私としてはまぁそこそこ見られるって程度の映画だが,Brian De PalmaのHitcock好きが高じて,音楽もBernard Herrmannというのがこだわってるねぇ。星★★★。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年4月14日 (日)

Daniil Trifonov@紀尾井ホール参戦記。

Trifonov

いやはや凄いものを聴いてしまったってところか。Daniil Trifonovが"Decades"と題して,20世紀の音楽を10年に区切って,00年代から80年代までの曲を演奏するというプログラムは2018年にカーネギー・ホールで演奏して評判になったものである。今回はその再演ということになるが,演奏した曲目は18年と全く同様の以下のものであった。

  • ベルク:ピアノ・ソナタ op.1(1907-08年作曲)
  • プロコフィエフ:風刺(サルカズム)op.17(1914年作曲)
  • バルトーク:戸外にて(1926年作曲)
  • コープランド:ピアノ変奏曲(1930年作曲)
  • メシアン:「幼子イエスの注ぐ20の眼差し」から 幼子イエスの接吻(1944年作曲)
  • リゲティ:「ムジカ・リチェルカータ」から 第1、2、3、4番(1951-53年作曲)
  • シュトックハウゼン:ピアノ曲Ⅸ(1955年作曲)
  • J.アダムズ:中国の門(1977年作曲)
  • コリリャーノ:ファンタジア・オン・オスティナート(1985年作曲)

ほとんどが私にとっては聞いたこともないような曲が並んでいるが,冒頭のベルクからして強烈なテンションで迫ってくる。メシアンまでが第一部で約70分,リゲティからアンコールまでが50分ぐらいというプログラムで,やる方も聴く方も物凄い集中力を要するものだったと言えるが,見事に乗り切ったTrifonovであった。そしてなんとアンコールは「4分33秒」である。会場で"I Love You,Daniil!"と声を上げた外国人がおそらくタイム・キーパーだったのではないかと疑っている私だが,身じろぎもせずピアノの前に座るTrifonovを見ながらニヤニヤしていた私であった。

それにしても,超強力な打鍵もあれば,ミニマルな響きも交えるというこのプログラムは,ピアニストとしての技量もさることながら,相当疲労を強いるものであることは間違いないところで,まだ33歳という年齢ゆえに可能という気もする。デビュー当時の紅顔の美少年というイメージからは随分雰囲気が変わったが,それでもまだ33歳なのだ。

私はTrifonovのアルバムはデビュー作(?)のチャイコフスキーのP協しか持っていないから,別にファンでも何でもないのだが,今回このリサイタルに足を運んだのは,このプログラムゆえである。私が現代音楽のピアノ曲にはまって結構な時間が経ったが,生で聴いたことがなかったこともあり,告知を見た時,これは...ということでの参戦となったが,冒頭の表現に戻って凄いものを観てしまったと思った。こんな演奏した後,サイン会までやるっていうんだから,寿命縮まるで(爆)。マジでチャレンジャーだよなぁと思いつつ,こちらとしては心地よい疲労感を覚えながら,サイン会はパスして家路についたのであった。

ということで,紀尾井ホールではないが,2018年にCarnegie Hallでやった時の写真をアップしておこう。雰囲気はほとんど同じ。写真はNew York Timesから拝借したもの。

Live at 紀尾井ホール on April 12, 2024

Personnel: Daniil Trifonov(p)

Trifonov-at-carnegie_20240413061101

2024年4月13日 (土)

久しぶりにHuman Elementを聴く。

_20160616 "Human Element" (Abstract Logix)

本作を聴くのも久しぶりだ。振り返ってみれば,彼らのBlue Noteでのライブを観たのももう8年近く前だ。本作を聴くのはその予習で聴いて以来ではないか(爆)。確か招待券をゲットして行ったはずのライブでは,集客は捗々しくなく,空席が目立つ中の演奏となったが,全くの手抜きなしで,実にタイトな演奏を堪能したことはよく覚えている。本作のジャケにはその時に4人からもらったサインが入っているが,いい思い出である。

そんな彼らのアルバムは本作とAbstract Logixのライブ盤に2曲が入っている(但しドラムスは私が嫌いなRanjit Barotがトラで入っている)だけだと思ったら,2018年にセカンド・アルバムを出していたようだ。しかし自主制作で流通経路には乗っておらず,Scott Kinseyのサイトで購入できるだけのようだ。

それはさておきであるが,本作を改めて聴くと,Weather ReportあるいはZawinul Syndicate色が濃厚に表れていて,ワールド・ミュージック的フュージョンという感じだ。変拍子を交えての演奏は,ライブ同様タイトなものであり,76分越えという大作ながら,だらけることなく,時間を感じさせないのはなかなか立派だと思う。そして彼らの演奏のスパイスとして効いているのがArto Tunçboyacıyanのヴォイスであろう。このバンドの個性の一端は確実にArto Tunçboyacıyanが担っていたと感じさせるものとなっていると思う。

まぁこのメンツ,知っている人は知っているという人たちばかりだが,知らない人にとっては,「誰それ?」になってしまうレベルの人たち,換言すれば決してメジャーではないが実力者集団ということになるが,その実力は遺憾なく発揮されたというアルバム。星★★★★。

Personnel: Scott Kinsey(synth, p, vocoder), Arto Tunçboyacıyan(perc, vo), Matthew Garrison(b), Gary Novak(ds)

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2024年4月12日 (金)

久しぶりにRichie Beirachの"Ballads"を聴く。

_20240410_0001 "Ballads" Richie Beirach (CBS Sony)

ブログのお知り合いのmonakaさんが本作を取り上げられていて,そう言えば随分これも聞いていないということで,探し出してきたアルバム。正直言ってどこにしまったかははっきりしていなかったが,比較的見つけやすい場所にあったのは幸いであった(苦笑)。

いかにもという感じのRichie Beirachによるソロ・ピアノ。美的なリリカルさに重心は置かれているが,やや現代音楽的とも取れるアプローチも交えたピアノの響きが美しい。ライナーをよくよく見ると,おそらくモニター・ルームで撮られたであろうRichie Beirachと武満徹が並んで写る写真(ついでに謝辞にも武満の名前がある)もあって,このアルバムを聞きながら,そういうつながりもありうるよなぁなんて思ってしまった。

著名なスタンダードと,比較的よく知られたRichie Beirachのオリジナルから構成されるアルバムだが,Richie Beirachによる曲目の解説も付されており,各々の演奏におけるRichie Beirachの意図が伝わって,ライナーを読みながら演奏を聞くのも一興だと思える。

まぁ企画としてはありがちなものとは言え,このクォリティであれば文句はない佳作。星★★★★。私は確か本作を中古でゲットしたと思うが,今や廉価盤で簡単に手に入る。そのうち,続編の"Ballads II"も聞いてみることにしよう。

Recorded on March 16 & 17, 1986

Personnel: Richie Beirach(p)

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2024年4月11日 (木)

これが私とJack Wilkinsの出会いだった。

Merge "The Jack Wilkins Quartet" Jack Wilkins (Chiaroscuro)

昨年惜しくも世を去ったJack Wilkinsだが,最後までメジャーな存在になり切れなかったのは実に惜しかった。アルバムはそこそこ残しているが,後年のアルバムは今一つ魅力に欠けるものが多い中で,私とJack Wilkinsの最初の出会いとなった本作は実によくできたアルバムであった。

このアルバムがリリースされたのは1978年のことなので,私がジャズを聞き始めてまだ時間が経っていない頃である。当時のスウィング・ジャーナルの記事を読んで購入に至ったと思うが,想像以上にワクワクさせられるアルバムだったという記憶がある。これをきっかけにかなりの枚数のJack Wilkinsのアルバムを購入した訳だが,なぜかこの後に出た"You Can’t Live Without It"をスルーしていたのは今でも不思議だ。

まぁその後CDに本作とほぼ2 in 1みたいなかたちの"Merge"として聞けるようになったから,それはそれでよい。しかし,「ほぼ2 in 1みたい」と書いたのはCDでは本作の"Brown, Warm and Winterly"がカットされているので,このアルバムのアナログは手放す訳にはいかない。まぁその"Brown, Warm and Winterly"はJack WilkinsとJack DeJohnetteによるピアノのデュオなので,収録時間を考慮した編集においてはカットも仕方なかったかなとも思えるが,実はそれも結構味わい深いのだ。

それに限らず,このアルバムは快演揃いであるが,Jack Wilkinsのギターがよいのはもちろん,実はRandy Breckerが全編で演じるフリューゲル・ホーンが素晴らしいのだ。当時はフュージョンの人という意識しかなかったが,ちゃんとコンテンポラリー・ジャズの文脈でも吹けるということを実証していた。結局うまい人は何でも吹けるということの証だが,それにしてもここでの演奏は見事であった。スリリングな響きもあれば,リリカルな部分もあり,非常にバランスの取れた好アルバムであった。星★★★★☆。

Recorded in February 1977

Personnel: Jack Wilkins(g), Randy Brecker(fl-h), Eddie Gomez(b), Jack DeJohnette(ds, p)

本作の再発CDへのリンクはこちら

2024年4月10日 (水)

Bobby Tenchを偲んで,今日はHummingbird。

Bobby-tench

"Diamond Nights" Hummingbird (A&M)

_20240406_0001 少し前のことになるが,去る2/19にBobby Tenchが亡くなった。Bobby Tenchと言えば第2次Jeff Beck Groupのヴォーカルであり,そしてその残党を中心としたHummingbirdの創設メンバーである。リーダーとしての活動には目立ったところはないにもかかわらず,その存在が認識されている人であった。そんなBobby Tenchを偲んで聞くならば,Hummingbirdということで取り出したのがHummingbirdとしての最終作,"Diamond Nights"である。

Hummingbirdはロックとソウルを絶妙にブレンドした感覚を生み出すバンドだったが,そこにはBobby Tenchのソウルフルなヴォーカルが貢献していた。このアルバムを初めて聞いた時にびっくりしたのが冒頭の"Got My Led Boots on"であった。そう。Jeff Beckの"Wired"冒頭を飾った"Led Boots"の歌付きヴァージョンである。ホーン・セクションも従えたこの曲は同じ曲と思えないほどフレイヴァーが違う。そして全編を通してこのアルバムはソウル/R&B色が非常に強いのが特徴であり,少なくとも一般的なロックの感覚ではない。だって,EW&Fもやっていた"You Can’t Hide Love"までやっちまうんだから当たり前だ。この辺りはリスナーによっては好き嫌いもわかれるだろうが,時として演じられるフュージョン風味のインスト曲も含めて,私にとってはつくづくいいバンドだったと思えるのだ。

そんなこともあって,2007年に本作を含む彼らのアルバムが紙ジャケCDで再発された時には「ほとんど奇跡!」とこのブログに書いている(記事はこちら)。裏を返せばそういうファンも一定数はいたってことになる。

そんなバンドのヴォーカルを務めるだけでなく,一部ではリード・ギタリストとしての役割も果たしたBobby Tenchであった。もっと陽のあたる道を歩めた人だと思うが,ちゃんと記憶に残る仕事を残したことは幸いであった。

R.I.P.

Personnel: Bobby Tench(vo, g), Max Middleton(key, moog), Robert Ahwai(g), Clive Chaman(b, fl), Bernard Purdie(ds, perc), Airto Moreira(perc), Poncho Morales(perc), Venetta Fields(vo), Maxine Williams(vo), Julia Tillman(vo), Paulette McWilliams(vo), Lisa Freeman Roberts(vo)

本作へのリンクはこちら。 

2024年4月 9日 (火)

時代の徒花感ありありのChris Hunterのアルバム。

Chris-hunter-atlantic "Chris Hunter" Chris Hunter (Atlantic)

Gil Evans Orchestraでも活躍したChris Hunterの1986年にリリースされたこれが初リーダー作だったはず。プロデュースとアレンジはDon Sebesky,バックのミュージシャンも有能な人たちが揃っているが,いかにも売れ線狙いの臭いがプンプンするって感じのアルバムである。

Gil Evans Orchestraにいる時から,その音色やフレージングはDavid Sanbornの影響が顕著で,バンドを抜けたDavid Sanbornの後釜としてはChris Hunterは相応に機能していたと思うが,リーダー・ミュージシャンとしての実力はどうなのかはよくわからなかった頃のアルバムである。以前Gil Evansの音楽に相当はまっていたこともあって,私はこのアルバムをアナログの時代に購入したのだが,正直言ってこれは失敗だったなぁと思っている。売るタイミングを逃して今も手許にあるものを引っ張り出して聞いてみたのだが,その印象は変わらなかった。

このアルバムの問題はChris Hunter自身というよりも,プロデュース,アレンジに加えて選曲にも携わったであろうDon Sebeskyの責任が大きいように思う。時代が時代だけにわからないでもないが,"Purple Rain"を仰々しくやったり,"Georgeia on My Mind"やら"Respect",更には"America the Beautiful"のような曲が本当にChris Hunterにフィットしているかと言えば,決してそんなことはないだろう。"Purple Rain"に女声コーラスを入れるアレンジメントも古臭い。もはや80年代はDon Sebeskyの時代ではなかったことが明らかになるだけなのだ。

一方,Chris Hunterはプロデュースを任せたことにもよろうが,何をしたいのかよくわからないレベルに留まってしまったというのが実感だ。曲で大衆受けを狙ったところで,David Sanbornのアルバムのクォリティには遠く及んでいない。Atlanticというメジャー・レーベルからのデビューはChris Hunterにとってはラッキーなものだったが,そのチャンスを活かせなかったというところ。こういうのを凡作と言う。星★★。

そして,このアルバムのエグゼクティブ・プロデューサーがJohn Snyderなのも笑ってしまう。HorizonやArtist Houseでいいアルバムを作りながら,全然売れなかったJohn Snyderだが,その後,A&Mでもメジャー・レーベルには不釣り合いな硬派なアルバムをプロデュースして,セールスに失敗した。そんな人がここでこの売れ線狙いのアルバムの指揮をしていたという事実には笑ってしまった私であった。

Personnel: Chris Hunter(as), Hiram Bullock(g), Richard Tee(p, el-p), Clifford Carter(synth), Anthony Jackson(b), Darryl Jones(b), Steve Jordan(ds), Joe Bonadio(perc) with strings and chorus

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2024年4月 8日 (月)

Wayne Shorterの"Speak No Evil"のアナログを入手。

Speak-no-evil "Speak No Evil" Wayne Shorter (Blue Note)

何を今更言っているのかというような主題だが,これには理由がある。私はWayne ShorterのBlue Noteレーベルでのアルバムについては,初作"Night Dreamer"から"Super Nova"までは何とかアナログで揃えたいとずっと思っていた。それぐらい好きだということなのだが,ほかのアルバムはアナログで入手済みだった中で,唯一CDでの保有となっていたのが本作であった。"Odyssey of Iska"と"Moto Grosso Feio"はどうした?と聞かれそうだが,この2作はCDで十分だと思っている(笑)。

しかし,昨今の著しいアナログの復権を受けて,Blue Noteのアルバム群もアナログでの再発が続いている。そして,この再発シリーズのリマスタリングをしているKevin Grayの評判がブログのお知り合いの間でも高い。正直言ってオリジナルでいいのがあればそっちをと思って探してはいたのだが,なかなかいいものが出てこないし,高価なこともあり,この再発盤を購入することとした。

音楽については文句のつけようのない傑作だと思うし,出てくる音には私のしょぼいオーディオでも嬉しくなってしまう。そしてやはりこのジャケットの質感こそアナログ・レコードを保有する喜びだと思ってしまうのである。値段はそこそこしてしまうが,まぁいいやと思えるのが高齢者の大人買い(と言うほどの価格ではないが...)。それにしても昨今のレコードは盤質が本当によくなったと思う。昔の輸入盤の盤質の粗さを知る人間にとっては隔世の感があるが,どこでプレスしているのかねぇ。それでもやっぱり最後に微妙なスクラッチが入るのはご愛嬌。

Recorded on December 24, 1964

Personnel: Wayne Shorter(ts), Freddie Hubbard(tp), Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Elvin Jones(ds)

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2024年4月 7日 (日)

髪の毛があるBruce Willis!「ダイ・ハード」をAmazon Primeで初めて観た。

Die-hard_20240408072701「ダイ・ハード ("Die Hard")」(’88,米,Fox)

監督:John McTiernan

出演:Bruce Willis, Alan Rickman, Bonnie Bedelia, Reginald VelJohnson, Alexander Godunov

先日取り上げた「ブルー・ベルベット」の記事にも書いたが,私にとっては80年代は映画館から足が遠のいていた時期で,本作のようなヒット作も劇場では観ていないし,この映画はビデオや別媒体でも観たことがないというのは正直少々恥ずかしい。このシリーズで観たことがあるのは「4.0」だけのはずだが,まぁ誰もが知るノンストップ・アクションで,この映画の撮影を担当していたのが「スピード」の監督,Jan De Bontというクレジットを見て,何となく納得してしまったのであった。

日本資本の企業のビルに押し入るテロリストのボスがAlan Rickmanというのは,後に彼が出る映画を知る私にとっては意外なキャスティングとも言えるが,何でもできる役者なのだということがよくわかるものであった。そうは言ってもこの映画はBruce Willisである。現在は失語症からアルツハイマーを患って,俳優生命は終わってしまったBruce Willisは,TVドラマ「こちらブルームーン探偵社("Moonlighting")」でブレイクして,映画界ではこのシリーズで大スターとなったのは皆さんご存じのとおりだろう。そんなBruce Willisにまだ髪の毛がある時代の作品。

まぁよくやるわってぐらいのアクション・シーンの連続ではあるが,無線越しのReginald VelJohnson演じるAl Powell巡査との掛け合いが面白く,この人が一番の儲け役だった気がする。今から35年以上前の映画だが,現在でもちゃんと見られるのは大したものと思ってしまった。世の中そんなにうまくいかないんじゃない?と言うのが野暮に思えるアクション大作。星★★★★としておこう。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年4月 6日 (土)

「デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界」:さすがにこれはやり過ぎではないか...。

Dsm「デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界」村上春樹(文藝春秋)

David Stone Martinと言っても,普通の人々にとっては誰それ?にしかならないだろうが,ClefやNorgran,Verveといったジャズ・レーベルのアルバム・デザインを担ったデザイナーである。これらのレーベルでのDavid Stone Martinの活動は1950年代が中心と随分昔のことになるので,もはやクラシックな世界と言ってもよい。このDavid Stone Martinのデザインのファンは結構多いが,村上春樹もその一人ということで,この書籍に至ったということになろう。これは私がECMのスリーブ・デザインに惹かれるのと同じようなものなので,デザインの観点から語るという行為自体には特に異論はない。

だが,音楽関係の書籍として見ると,取り上げられているミュージシャンが,Charlie ParkerやStan Getzを除けば,必ずしも私の嗜好にフィットした人たちばかりではないし,音楽についての記述も決して細かいものではないところには不満が残る。そもそもデザインが音楽のクォリティと比例しないことは村上春樹の記述からも明らかなところに,この書籍の無理矢理感を覚えるのだ。結局私にとってはどっちつかずな感じがしてしまうし,「ふぅ~ん」ぐらいの反応しか示せなかったというのが実感。星★★★。

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2024年4月 5日 (金)

渡辺香津美の快癒を祈って今日は”Mo’ Bop"を聞く。

_20240402_0002 "Mo’ Bop" 渡辺香津美New Electric Trio (EWE)

渡辺香津美が脳幹出血により,今年度の活動を自粛し,治療に専念するという突然のニュースはショッキングであった。渡辺香津美は常々若々しいイメージがあるのだが,気がついてみれば,彼も昨年古希を迎えていたので身体の不調が出てきても仕方がない年齢になっていたということだ。ということで,今日は彼の一日でも早い快癒を祈って久々に取り出したのがこのアルバム。

振り返ってみれば本作がリリースされたのが2003年で,もう20年以上前だったのかと,これまた今更気づく私であった。当時Richard Bona,そしてHoracio "El Negro" Hernandezという,バカテクかつ手数の多い濃い~メンツで結成したのがこのNew Electric Trioであった。本作はその第1作だが,この好評を受けて都合3作がリリースされたのは皆さんご存じの通りであろう。

渡辺香津美の活動は年々幅を広げたと言ってもよいと思うが,やはりこの人のエレクトリック・ギターは人を興奮させる術を知っていると思える。もちろんアコースティック・ギターでも素晴らしい手腕を発揮するが,私が惹かれてしまうのはどちらかと言えばエレクトリック・サイドなのだ。

このアルバムでもこの3人らしい音は随所で聞かれるが,もっとぶちかますかと思いきや,意外と渋い演奏も含まれていて,何をやってもうまい人たちだと思わせてくれる。例えば冒頭のタイトル・トラックはファンク風味,2曲目の"Dada"などはコンテンポラリーなジャズ・フレイヴァーを感じさせる一方,その次の"Robo"ではロック的なハードなサウンドと,目くるめくような曲調の変化をこなしてしまうのだ。果ては"Naima"までやっちゃうし,最後の"Tricorn"には懐かしや"Unicorn"のフレーズが登場してくるしねぇ。いやいや久しぶりに聞いても多彩で強烈なバンドであった。

脳幹出血は手足に麻痺が残る可能性もあり,ギタリストとしてはかなりクリティカルな病とも言えるが,脳動脈瘤から完全復活を遂げたPat Martinoの例もある。今日はこのアルバムを聞き,渡辺香津美が病気から回復し,またこのような音楽を聞かせてくれることを祈りたい。

Personnel: 渡辺香津美(g, g-synth), Richard Bona(b), Horacio "El Negro" Hernandez(ds)

本作へのリンクはこちら

2024年4月 4日 (木)

TV番組に触発されて,今日は"Nefertiti"(笑)。

_20240402_0001 "Nefertiti" Miles Davis (Columbia)

我ながら単純だと呆れてしまうが,先日NHKで放送されたエジプト関連の番組を見ていて,ツタンカーメンとネフェルティティとの関係性に関する話を聞いていて,へぇ~と思いながら,このアルバムも暫く聞いていないなぁということで取り出した。

60年代黄金クインテットが全編アコースティックで演じた最終アルバムでもあり,もはや行くところまで行ったって感じの部分もあったと言ってもよいアルバムだが,若い頃,初めて本作のタイトル・トラックを聞いた時は驚いたものだ。フロントのMilesとWayne Shorterはテーマを繰り返すだけなのだが,それにばかり気を取られていて,そのバックでリズム,特にTony Williamsのドラムスが暴れまくっていると気づくには時間を要した当時はジャズ初心者の私であった(笑)。フロントとリズムの主客転倒こそがこの曲のキモであるにもかかわらずだ。

それはさておき,ジャケのMilesのポートレートを含めて,この全編を通してダークな印象が強いアルバムには,ジャズ的なカッコよさというものが凝縮されているようにも思ってしまう。まさにハードボイルド。そしてユニットとしてのまとまりはピークに達し,Milesが次作"Miles in the Sky"以降,エレクトリック路線に舵を切るのも,もはやアコースティックでやれることは本作まででやり尽くしたという感があったかもしれない。まぁこのアルバムと同じタイミングで吹き込まれた3曲は後に"Water Babies"で世に出るが,そっちも最高にカッコよく,このメンツはマジで凄かったと改めて感じざるをえないアルバム。メンバー全員素晴らしいが,中でもWayne Shorterのテナーがマジでいいですわぁ。星★★★★★。

尚,現在のCDには4曲のボートラが入っているが,"Pinocchio"がオリジナル・テイクと全然雰囲気が違うのは面白い。しかしながら,当然のこととは言え,出来はオリジナルの圧勝。

Recorded on June 7, 19, 22 and 23, 1967

Personnel: Miles Davis(tp), Wayne Shorter(ts), Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)

本作へのリンクはこちら

2024年4月 3日 (水)

ブラックホークの99選から今日はJames and the Good Brothers。

James-and-good-brothers "James and the Good Brothers" (Columbia)

時折このブログに顔を出す「ブラックホークの99選」のアルバムだが,これもその一枚。双子のGood兄弟とJames Ackroydが組んだカナダのフォーク・グループの唯一の作品と思われる。Good兄弟は現在も活動しているようだが,本作が出たのは1971年のはずだから,半世紀以上やっている息の長さがなかなか凄い兄弟バンドである。

このアルバムについてはCD化はされていない(ストリーミングでは聞ける)はずなので,アナログA面からプレイバックすると,その冒頭,"Ecks"におけるJames Ackroydの声に魅了されてしまう。James Ackroydの声はまさに私の好みと言ってよく,それだけでつかみはOKみたいなものである。2曲目以降にリードを取るBrian,BruceのGood兄弟の声はやや軽く響くが,このJames Ackroydの声の渋さが本当にたまらないのだ。そして彼らが聞かせるコーラス・ワークはCSN&Y的にも響き,その手の音楽を好むリスナーへの訴求力は非常に高いと思わせる。

そしてリリースから半世紀以上を経過しても,音楽の瑞々しさは不変であり,このアルバムの魅力は全く色褪せていない。レコーディングの時期を考えれば,この音のクリアさも貢献度大だと思える。いずれにしても,結構古い音源なので,まさに古き佳き時代の音楽でありながら,今でも十分いけているアルバムと評価したい。星★★★★☆。やっぱりわかってるねぇ,ブラックホーク...。

Personnel: James Ackroyd(vo, g), Brian Good(vo, g), Bruce Good(vo, autoharp), Red Shea(g), Ollie Stang(g, dobro), Mike McMasters(b), Brian Hilton(ds), Billy Kreutzmann(ds), Sammy Piatsa(ds), Larry Good(vo, banjo)

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2024年4月 2日 (火)

Original Loveのベスト盤:私にしては珍しいアルバムを取り上げよう。

_20240329_0001 "The Very Best of Original Love" (東芝EMI)

このブログの読者の皆さんにはバレバレだと思うが,私は完全に洋楽志向の人間である。そして映画も洋画指向だ。これは完全にテイストの問題と言ってもよいが,例外もない訳ではない。例外筆頭はYumingだが,今日取り上げるOriginal Loveについては私が保有しているアルバムはこれだけで,全然ファンでも何でもない。このアルバムを購入したのは「接吻」ってなかなかいい曲だと思ったからで,まさに気まぐれである。

改めてこの東芝時代のベスト盤を聞いてみると,魅力的な曲とそうでもない曲の差が大きいと感じるところもあるが,ここで聞かれるソウル的なファンク風味は一般的な日本的なサウンドから離れたところがあり,その辺が洋楽志向の私にさえフィットしたのかもしれない。特にそれを強めたのがここで聞かれるベース・ラインのように思う。この音楽を聞いて既視感があったとすれば,ヴォーカルの男声,女声の違いはあるが,Swing Out Sister的に響くところがあるというところかもしれない。

このベスト盤が出たのはもはや30年近く前だが,久しぶりに聞いて,丁度バブルの崩壊に至る時期に生まれた音楽を懐かしく聞いてしまった私であった。

本作へのリンクはこちら

2024年4月 1日 (月)

ラックを漁っていたら出てきたPat Metheny Groupのリミックス盤。

_20240328_0002 "Across the Sky" Pat Metheny Group (Geffen) 

保有していることは記憶していても,全然聞かないCDってのもある。今回,ラックを漁っていて見つけたのがこのEP。Lyle Maysが亡くなって,Pat Metheny Groupの復活はなくなったが,彼らのアルバムは全て保有するファンとしては,彼らの音源をリミックスるとどうなるのかという興味で購入したはずである。アルバム"Imaginary Day"から"Across the Sky"のオリジナル・テイクとリミックス・ヴァージョン,更に"Roots of Coincidence"のリミックス・ヴァージョンの3曲を収めたものだが,これがまた微妙なのだ。

"Across the Sky"はPat Methenyらしい美しい曲であり,その魅力についてはどうこう言わなくてもよい。しかし,ここにGoldieが施したリミックスをファンが面白いと思えるかと言えば,そんなことはないだろう。原曲の姿をとどめないと言っても過言ではないところまで手を入れることはリミックスにはよくあることとは言え,やり過ぎ感は否めない。リミックスとは「再創造」と解釈することもできるが,これでは単なる「破壊」ではないのかと思えてしまう。それはもともとがハードな曲調だった"The Roots of Coincidence"にも当てはまる。こちらのリミックスでも原曲のかけらも感じない。こういう取り組みは原曲に対する「リスペクト」があってこそ面白いものが出来上がると思えるが,ここでのリミックスにはそうした「リスペクト」を感じない。

こうした反応は私が歳を取った古臭いリスナーだからというところもあるだろうが,面白くないものは面白くないのだ。売却しても二束三文にしかならないから保有しているようなものだと諦めることにしよう。こんなものを聞く暇があるなら,オリジナルのアルバムを聞いている方がずっとまし(きっぱり)。お好きな方だけどうぞ。

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