Wynton Marsalisの演奏の見事さを捉えた好ライブ盤。
"Live at Blues Alley" Wynton Marsalis (Columbia)
主題の通りである。しかもワンホーンで吹きまくるWynton Marsalisを捉えたライブは大いに楽しめる。Wynton Marsalisのトランぺッターとしての実力は折り紙付きであるとして,そのジャズ原理主義的立ち振る舞いや音楽活動に反感を覚える人は多い。特に日本には相応のアンチもいるはずだが,私もWynton Marsalisを全面的に肯定する気になれない人間である。だが,以前このブログにも書いたが,ツボにはまった時のWynton Marsalisは実に恐るべき演奏をすると思う。このアルバムはそのツボにはまったものだ。
本作はWynton Marsalisのラッパだけでなく,鉄壁と言ってもよいリズム・セクションのバッキングも素晴らしいところが聞きどころとなっているが,こういう演奏を聞いていると,つくづくWynton Marsalisがいつもこうならいいのにねぇと思わざるをえないところが,この人の損なところだ。本国においてはピューリツァー賞,日本においては高松宮殿下記念世界文化賞も受賞する大エスタブリッシュメントのWynton Marsalisであるが,ことジャズ・ファンの観点からすれば,ストレート・アヘッドな演奏にこそ魅力を感じるのとギャップが生まれてしまっているというのが実態だろう。だから私のようなリスナーにとっても,こういうアルバムは魅力的でも,全然いいと思えないアルバムも作ってしまうのがWynton Marsalisという人なのだ。誤解を恐れずに言えば,ジャズマンは文化人である前に,アドリブ一発でリスナーを魅了するプレイヤーとして魅力を発揮してい欲しいのだ。
だからこそ,ここでの演奏にはほとんど文句のつけようがない。急速調の曲におけるスムーズなフレージングはうま過ぎ!と思わせるし,"Do You Know What It Means to Miss New Orleans"のような古いスタンダードにおけるバラッド表現を聞いても,やっぱりうまい。そしてJeff 'Tain' Wattsぐらいの煽りがある方がWynton Marsalisにはいいと思ってしまうのだ。「枯葉」がこんなにスリリングになってしまうというのもこのメンツならではか。"Skain’s Domain"とか燃えちゃうしねぇ。
ということで,私としては久しぶりにこのアルバムを聞いて,やっぱりWynton Marsalisはこういう感じがいいよなと再確認したのであった。星★★★★☆。
Recorded Live at Blues Alley on December 19 & 20, 1986
Personnel: Wynton Marsalis(tp), Marcus Roberts(p), Robert Leslie Hurst III(b), Jeff 'Tain' Watts(ds)
本作へのリンクはこちら。
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