Victor Eriseの長編は31年ぶりってのが凄いが,これほど静謐な映画はなかなかないと思った「瞳をとじて」。
「瞳をとじて("Cerrar Los Ojos")」('23,西/アルゼンチン)
監督:Victor Erise
出演:Manolo Solo, Jose Coronado, Ana Torrent, María León, Mario Pardo, Helena Miquel, Venecia Franco
恥ずかしながら私は「ミツバチのささやき」を観たことがないのだが,その監督,Victor Eriseが92年の「マルメロの陽光」以来31年ぶりに撮った映画として話題の本作を観に行った。最近は尺の長い映画が多くて,この映画も2時間49分という長編だが,私の記憶において,これほど静謐にストーリーが展開する映画もなかなかないと思えた。
冒頭から劇中劇という意外な展開から始まるが,エンディングに向けて再び劇中劇が組み込まれるという構成はなかなか凝っていると思いつつ,ストーリーにはあまり劇的な要素はなく,静かにかつ淡々と話は進んでいくので,私が睡魔に襲われる瞬間がなかったと言えば噓になる。それでも最後まで観れば,なかなかこれは味わい深い映画だと思わせるところはあった。
原題からして「瞳をとじて」なのだが,この映画において「瞳をとじる」シーンがいくつか出てくるところが非常に魅力的に感じられた。ほぼ悪人が出てこないというのもいいし,詳しくはネタバレになるので書かないが,ある意味映画の持つ力を再認識させる意義もあったのではないかと思えるストーリー展開であった。
それでもやっぱりちょっと長いなぁと思いつつ,この味わい深さゆえに半星おまけで星★★★★☆としよう。因みに本作に出演のAna Torrentは「ミツバチのささやき」の子役だったそうだ。同作から半世紀を経て,また同じ監督の作品に登場というのも実に麗しい関係だと思えた。繰り返しになるが,本当に静かな映画である。
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