「落下の解剖学」:よくわからないタイトルながら,これはよくできた映画だ。
「落下の解剖学("Anatomie d'une Chute")」('23,仏)
監督:Justine Triet
出演:Sandra Hüller, Swann Arlaud, Milo Machado-Graner, Antoine Reinartz, Samuel Theis
カンヌ国際映画祭で最高賞,パルムドールを獲ったのがこの映画。オスカーでも5部門でノミネートということで注目の作品を観に行った。風景も美しいグルノーブルの山荘で起きた転落事故を契機とした虚実の混じる法廷劇となっていくのだが,非常に緊張感に満ちた映画で,素晴らしい出来だと思った。
回想シーンを的確に交えながら,人間心理や人間関係の難しさをあぶりだした脚本が見事なのだが,演出,演技もそれに呼応したかたちでの出来を示していて,優れたシナリオは優れた映画の原点だという私の考えに合致する作品。そういう要素もあって,これは高く評価せざるを得ない映画だが,詳しく書くとネタバレになってしまうので,ストーリーにはここでは詳しくは触れない。だが,映像としてはギミックなんて全くなし。演出,ストーリーテリングと演技だけで2時間半余りを一気に見させること自体が素晴らしいのだ。
この味わい深さはまさに見事で,役者陣も適材適所。だいたいにおいてこういう映画では検事役は憎たらしい役割になるが,Antoine Reinartzの検事っぷりがこれまた憎々しい。でも裁判ってこういうもんだよねぇと思うのも事実で,そういうリアリティも感じられるところは評価せざるをえない。そういうことを踏まえれば,オスカーでも脚本賞の有力候補だろうな。星★★★★★。
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