今年のオスカーを振り返る。

今回のオスカーにおける「君たちはどう生きるか」の長編アニメーション賞,「ゴジラ-1.0」の視覚効果賞の受賞は,日本の映画界においては快挙と言ってよい。「ゴジラ-1.0」が評価されたとすれば,物量でVFXに取り組むハリウッド大作に比べて,限られた予算,限られたスタッフで映像を作り上げたことが,アカデミー会員のシンパシーを誘ったというところもあるだろう。「君たちはどう生きるか」については「スパイダーマン: アクロス・ザ・スパイダーバース」が有力視された中で,おそらく宮崎駿の最終作となろうというところで票が集まった可能性もある。まぁ,経緯はさておきめでたいことはめでたい。
今回のオスカー選考については,私から見れば評価されるべき人,作品がきっちり評価されたという気がする。作品,監督,主演男優,助演男優等の主要部門を「オッペンハイマー」がさらったのは,映画の出来を考えても当然という気がする。助演男優賞のRobert Downey Jr.も私の中では受賞確実だと思っていたが案の定であった。
そうした中で,今回,最も熾烈な競合となったのは主演女優賞だろう。「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」のLily Gladstoneと「哀れなるものたち」のEmma Stoneの一騎打ちと思われたが,Emma Stoneに軍配が上がった。私からすれば,多様性を重視するならLily Gladstoneだったろうが,純粋に演技ということで考えれば,Emma Stoneということだと思えた。「哀れなるものたち」を観た時の記事に私は次のように書いた。
『今度のオスカーの主演女優賞はLily GladstoneかEmma Stoneのどちらかって感じだろうが,Emma Stoneは「ラ・ラ・ランド」で受賞済み,かつLily Gladstoneが先住民初の候補ってこともあり,今回はLily Gladstone有利かなぁ。それでもこのEmma Stoneはマジで強烈なのでいい勝負か…。』
結局この二人はいい勝負だったとは思うが,Emma Stoneの「そこまでやる?」と思わせる過激ともいえる演技の強烈度がLily Gladstoneを上回ったということになるだろう。私はこれは正しい選出だったと思っている。
それ以外の部門も順当と言えば順当。私が脚本賞有力と思った「落下の解剖学」は受賞したし,「哀れなるものたち」の美術賞,衣装デザイン賞も予想通り。メイクアップ/ヘアスタイル賞はBradley CooperがLeonard Bernsteinになりきった「マエストロ」も有力と思ったが,「哀れなるものたち」が受賞したのは,キャスティング全体へのメイク等も含めれば頷けるものであった。結果的に見れば「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」が完全無視されたような状態だが,オスカーには縁がなかったとしても,いい映画だったことに間違いはない。
ということで,「オッペンハイマー」チーム,「ゴジラ-1.0」チーム,そしてEmma Stoneの写真をアップして,彼らの受賞を称えたい。
「オッペンハイマー」はフライイングしてBlu-rayで鑑賞済みだが,改めて劇場に行くか悩ましいなぁ。

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