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2024年2月29日 (木)

不思議な編成のJohn Surmanの新作:でも昔のECMならこういう編成は結構あったような...。

_20240227_0002 "Words Unspoken" John Surman (ECM)

私は最近は以前ほどECMのアルバムを追わなくなっているが,それでも食指が動くミュージシャンというのは存在する。John Surmanもそんな一人だ。そうは言いながら,John SurmanのECMの前作"Invisible Threads"は購入していないみたい(買ったかもしれない:爆)だし,アルバムだってそれほど保有している訳ではないのだから,結構適当なものなのだが,今回はついついこの編成につられての購入となった。何てたってJohn Surmanにギター,ヴァイブ,ドラムスというなかなかにユニークな編成なのだ。

70年代から80年代のECMなら,様々なメンツの組み合わせでのアルバムは結構あったと思うが,最近ではなかなかこういう編成は少なくなった。それでもやはりこういうのが出てくるのがECMだなぁと思わせる。

総帥Manfred EicherはExecutive Producerとなっているので,これはおそらくJohn Surmanの持ち込み音源なのだが,レコーディングはRainbow Studioだし,出てくる音も実にECMライクなのだ。静謐に流れる部分もあれば,メロディアスな曲もあって,これがなかなか面白い。ベースレスということが全く気にならないというのも,この編成の妙というところだろう。激しさは皆無な中で,淡々と音楽は流れていくのだが,結局はこのサウンドがかなり耳に残るという点では,John Surmanの術中にはまったと感じる私であった。

John Surmanも今年で80歳になるが,そのクリエイティビティにはまだ衰えはないと感じさせるに十分なアルバム。星★★★★。

Recorded in December 2022

Personnel: John Surman(bs, ss, b-cl), Rob Luft(g), Rob Waring(vib), Thomas Strønen(ds)

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2024年2月28日 (水)

相変わらずのScott Hendersonの新譜。

_20240227_0001 "Karnevel!" Scott Henderson(自主制作盤)

Scott Hendersonはだいたい4~5年に1枚のペースで新作をリリースしているが,レコード会社との契約はないようで,このアルバムもレコード会社の企業情報が全く記載されていないところを見ると,今回も自主制作ということでよいだろう。一部ではカルト的な人気を誇るスコヘンのような人でも契約を取れないというのは何とも不幸なことだが,そう売れるって訳でもないだろうから仕方なしってところか。

本作は前作"People Mover"と同じメンツでレコーディングされており,これが現在のスコヘンのレギュラー・バンドってことになるだろうが,リズムは欧州ベースのようなので,現在行っているツアーも3月いっぱいは欧州ということになっている。その後中国~インドと回るようだが,日本でのライブはなかなか難しそうなのが残念。情報によるとブッキングしてもらえないそうだ。中国まで来ているんだから呼べばいいのにと感じざるをえないが,やっぱりこの人はライブで観ると燃えるよねぇと思っているので,また日本にも来て欲しいものだ。

それにしても,ここでの音楽を聴いていると,Scott Hendersonが今年古希を迎えるとは信じがたいが,やる音楽に年齢は関係ないって感じで,相変わらずのスコヘン節炸裂である。むしろこの人の場合,変わりようがないって方が正しいんだろうが,いかにもスコヘンらしいフレージングや音を聞いているだけでファンは嬉しくなること必定。アルバムとして突出した出来とは思わないが,このレベルを維持してくれれば私としては文句も出ない。そして"Sky Coaster"みたいな曲でギターとドラムスのバトルみたいなのをやられてしまえば,こっちはウハウハになってしまうのである。ということで今回も星★★★★。

尚,ベースのRomain Labayeのサイトにバンドでのライブの模様の写真がアップされていたので貼り付けておこう。

Personnel: Scott Henderson(g), Romain Labaye(b), Archibald Ligonniere(ds), Scott Kinsey(e-perc), Roland Ajate Garcia(conga)

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Scott-henderson-band

2024年2月27日 (火)

高橋アキが弾く佐藤聰明:このミニマルな響きがたまりません。

_20240226_0001「佐藤聰明:橋」高橋アキ(カメラータ東京)

昨年秋にリリースされていた本作に気づかないでいたのだが,先日CDをまとめ買いしようと思ってサイトを見ていて見つけてしまった。まだリリースから半年も経っていないので新譜扱いとさせて頂く。

これはまさに私の好物と言ってよい曲であり,演奏なのだが,この連作ピアノ曲「橋」は2000年より8年に渡り全5曲が作曲され、高橋アキに献呈されたものということで,高橋アキが弾くべくして生まれた曲と言ってよい。流れ出る音はMorton Feldman的なミニマリズムと言ってよいが,朝日新聞のインタビューで高橋アキは「聡明さんの音楽は『一音成仏』。ぽつん、ぽつんと置かれた数少ない音のすべてに魂が込められている。一瞬もおろそかにできないんです」と語っているが,まさにそういう感じの音楽である。

更に高橋アキは「音の数が少ないから誰でも弾けるけど、それじゃ『音楽』にならない。本当に難しい」とも言っているが,こういう話を聞いていると,この音楽への理解レベルが我々と違うという気がする。それこそ献呈された高橋アキにしか出せない音である。まさにミニマルであるから,人によっては何がいいのかわからないと言われても仕方ないが,とにかくここでの演奏には強くひきつけられてしまった私である。好きなものは仕方ないのだ(笑)。星★★★★★。

Recorded on April 18, 2023

Personnel: 高橋アキ(p)

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2024年2月26日 (月)

祝来日:James Taylorってことで,彼の旧作を。

_20240223_0001 "Never Die Young" James Taylor (Columbia)

この4月に来日公演を行うことになっているJames Taylorである。公演が東京で1回だけというのが,日本における今のJames Taylorの受け入れられ方なのかと思ってしまうが,かく言う私も都合がつかないため行く予定はない。都合がつきさえすれば,多分行っていたと思えるだけにちょっと残念ではある。何と言っても米国の国民的な歌手という位置づけは揺るがないところだけに,やはり見ておきたいという思いは強いのだ...。

ということで,ライブには行けそうにはないが,私としても結構な数のアルバムを保有しているから,久しぶりに聞いてみるかということで取り出したのが1988年リリースの本作。正直言って,James Taylorのアルバムには奇をてらったところはないので,いつでも安定のJames Taylorを楽しむことができる。その中でアルバムにはそれぞれ良し悪しはあるとしても,平均点は高いのがこの人のアルバムの特徴だと思う。

このアルバムも,突出した曲はないとは言え,まぁいつもJames Taylorである。まぁ,"Sun on the Moon"なんかはワールド・ミュージック風味を感じさせるのが新機軸ってところではあるが,それでも大筋は変わらない。この人の声さえあれば成立してしまうんだろうなぁという感じもするが,私はJames Taylorはそれでいいと思う。そしていつも思うことだが,James Taylorの音楽を支えるバックのメンツの豪華さである。そうしたところにJames Taylorの米国音楽界におけるポジションが表れていると思ってしまうのだ。これだけのメンツが揃えばおかしなことにはならんというのが正直なところだが,このアルバムはちょっと甘いかなと思いつつ星★★★★ってところだろう。James Taylorと言えばこれって作品ではないが,私が保有するアルバムに限ってということにはなるが,つくづくJames Taylorに駄作はないと思わされるアルバム。

Personnel: James Taylor(vo, g), Leland Sklar(b), Carlos Ve, g), Leland Sklar(b), Carlos Vega(ds, perc), Bob Mann(g), Dan Dougmore(pedal-steel, banjo), Don Grolnick(key), Arnold McCuller(vo), Rosemary Butler(vo) with Michael Brecker(ts), "Cafe" Edson A. daSilva(perc), Jay Leonhart(b), Jeff Mironov(g), Mark O'Conner(vln), Bill Payne(synth), Greg "Fingers" Taylor(hca), David Lasley(vo), Lani Groves(vo)

本作へのリンクはこちら

2024年2月25日 (日)

Amazon Primeで「ビッグ・ガン」を観た。これって映画館で観たんだよなぁ。

Big-guns 「ビッグ・ガン("Big Guns")」(’73,伊/仏)

監督:Duccio Tessari

出演:Alain Delon, Richard Conte, Marc Porel, Carla Gravina

Webの情報によれば,この映画が日本で公開されたのが1973年秋口で,記憶が確かならば,私は神戸にあったスカイシネマで2本立て(もう一本が何だったは全く覚えていない)で観たはずなので,時はおそらく1974年,私が中学生になるかならないかの頃だったと思う。ストーリーは覚えているようで,覚えていなかった部分も多々あったが,ほぼ50年ぶりに観ているんだから当たり前だ(笑)。

改めて観なおしてみると,かなり暴力的な描写が多く,それなりにエロ・シーンもあるので,現代ならR15+ぐらいになっちゃうだろうと思える映画で,これだけ女性に対する激しい暴力シーンを入れること自体,時代を感じさせる部分がある。それを中学生になるかならないかのガキンチョが一人で観に行けるというのも時代だったのだ。

Alain Delonは典型的な二枚目役者でありながら,結構な数のフィルム・ノワール的な映画に出ている。美貌ゆえの陰影みたいなところが大体のパターンになると思えるが,以前このブログでも取り上げた「サムライ」もそんな感じであった(記事はこちら)。この映画でも裏社会の殺し屋を演じつつ,足を洗おうとして組織と対立する姿が描かれる訳だが,いろいろな都市でのロケーションやらもありながら,映画としてはイマイチ。特にいけていないのがカーチェイスのシーンで,ここまでスピード感皆無だと逆に笑える。

まぁ,Alain Delonをカッコよく見せればいいやみたいな映画で,それには成功しているとは言え,ストーリーとしては無理がある部分もあり,星★★★ってところ。それにしてもCarla Gravinaって当時結構名前を目にしたようにも思うが,私にはどこがいいのかよくわからない女優だなぁ(笑)。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年2月24日 (土)

不思議なことに今まで記事にしていないJack DeJohonette Special Editionのアルバム群。ってことで,今日は"Audio Visualscapes"から。

_20240220_0001 "Audio Visualscapes" Jack DeJonette's Special Edition (Impulse!)

長年ブログをやっていても,このアルバムを取り上げていなかったかと気づいて驚いてしまうことがある。今日取り上げるJack DeJonette's Special EditionのアルバムもECM,Impulse両レーベルのアルバムを一度も記事にしていなかったのは我ながら意外であった。本来ならECMのアルバムから取り上げるべきではあるが,気まぐれでSpecial Editionとしての最終作となった本作を選ぶのが私の天邪鬼なところだが,まぁよかろう。

このメンツでのSpecial EditionはLive under the Skyにも1987年に登場していて,私は現場で観たような気もするのだが,記憶が飛んでいる。あるいはここにPat Methenyが参加したレーザーディスク(死語!)を以前保有していたので,観たつもりになっていただけかもしれない。我ながらいい加減なものだ。だが,同じ年のMiles DavisのグループとWayn ShorterとDave Liebman入りのJohn Coltrane Tributeは確実に見ている。

本作はSpecial Editionとしては,ECMからImpulseに移籍しての第2作,通算6作目のアルバムである。Impulseの初作となった"Irresistable Forces"は満面の笑みのJack DeJohnetteのジャケに違和感があって,聞いたことがない(爆)。まぁメンツは本作にNaná Vasconcelosが加わっただけなので,大きくは変わらないと想像しているが,そのうちストリーミングで聞いてみることにしよう。

それでもってこのアルバムであるが,私の中ではSpecial Editionというと,どうしてもECMの第1作の強烈なイメージが残っており,そこからはサウンド的には大きく変化したと思わせる。ここではそのアルバムでも演奏した"One for Eric"を再演しているが,曲の印象は変わらなくとも,半ばエレクトリック化したSpecial Editionもなかなか面白いと思わせる。そしてECMのアルバムよりはずっと聞きやすいようにも思える。その辺りが後期Special Editionへの評価の分かれ目になるのではないかと思える。私の場合,ECM第1作のハイブラウな感覚がどうしても頭から離れない。それぐらい強烈な印象を残すアルバムだったが,本作も凡百のアルバムに比べれば,ハイブラウであることには間違いない。

まぁ全編を通しで聞くと74分以上の長尺ではあるが,だれずに聞かせるところはやはり大したものだと思わざるをえないが,このメンツであるから,これぐらいは軽々と行けそうだというのも正直なところ。それでも硬軟取り混ぜて,この長編を聞かせるのがJack DeJohnetteのJack DeJohnetteたる所以。星★★★★。

Recorded on February 1-3, 1988

Personnel: Jack DeJohnette(ds, key), Gary Thomas(ts, fl, b-cl), Greg Osby(as, ss), Mick Goodrick(g), Lonnie Plaxico(b)

本作へのリンクはこちら

2024年2月23日 (金)

Boz Scaggs@東京ドームシティホール参戦記。

Boz-scaggs-live

Boz Scaggsも今年の6月で80歳になるそうだ。今回は5年ぶりの来日だが,次はあるのか...と考えると行かざるを得ないのが長年のファンの務めである(笑)。それにしても,世間には同じことを考えている人が多いのか,東京公演が追加公演含めて3日間ともソールド・アウトというのは凄いことだ。Boz Scaggsの神通力は衰えずってところか。ということで,私も"Hits!"を聞きながら現地に向かったのであった。いずれにしても,私にとっては約10年ぶりのBoz Scaggsのライブであったが,会場は高齢者の集まりのノリ(爆)って気もする年齢層の高さ。

演奏はアルバム"Some Change"から"Sierra"で渋くスタートし,前半はゆったりとした感覚でムーディーと言ってもよい雰囲気で進んだ。この辺りがBoz Scaggsの年齢相応?と思わせる部分もあったのだが,全編を通して新旧のレパートリーを取り混ぜ,ブルーズも炸裂させながら歌うBoz Scaggsの声の若々しいことよ。キーは幾分下がったのは仕方がないところだが,ファルセットも含めてちゃんと声が出ているのは,まさに日頃からのヴォイス・トレーニングの賜物だろうと言いたくなるような歌いっぷりであった。

聴衆に受けるのが"Silk Degrees"や"Middle Man"からの曲であることは仕方なかろうが,現在のBoz Scaggsのよりブルーズ指向を強めた歌と演奏も十分楽しめるものであった。Boz Scaggsはギターを何本か変えながら演奏していたが,やはりこの人,ギターの腕は相変わらず達者なものだ。この日弾いたのも,アコースティック,セミアコ,ストラト・タイプ,レスポール・タイプ,そしてSGタイプの5種類だったと思うが,ソロもちゃんと行けているところが素晴らしい。

そして,本編で約90分歌い続け,更にアンコールで4曲歌うというその体力に感心し続けた還暦過ぎの私であった。そうは言っても,"We’re All Alone"は2013年に渋谷で観た時も厳しいと思ったが,人気曲ゆえに外せないとしても,やっぱり今のBoz Scaggsにはこの曲は厳しかった気がする。"Harbor Lights"で聞かせた歌唱の真っ当さに比べるとやはり粗が目立つ気がした。

それでも,日頃からレギュラーで演奏しているバック・バンドとのコンビネーションもよく,バンド自体も非常に引き締まった演奏で応えていた。昔であったらバッキング・ヴォーカルに女性シンガーを入れることが多かったBoz Scaggsだが,ドラムスのTeddy CampbellとパーカッションのBranlie Mejiasがその役割をきっちりこなしていたのにも感心してしまった。少々ギターのMike Millerの音がでか過ぎると感じる一方,Boz Scaggs自身のギター・ソロのボリュームが低かった気もするが,PAのバランスとしては大きな瑕疵はなく,全体的に満足のいくライブであった。私の目はついついベースのWillie Weeksに向けられることも多かったが,やはりこの人の安定度は素晴らしいと思えた。

当日のセットリストは下記で間違いないと思う。

  1. Sierra
  2. Miss Riddle
  3. Last Tango on 16th Street
  4. Jojo
  5. The Feeling Is Gone
  6. Slow Dancer
  7. Rock and Stick
  8. Thanks to You
  9. It’s Over
  10. Harbor Lights
  11. Look What You Have Done to Me
  12. Radiator 110
  13. Loan Me a Dime
  14. Lido Shuffle

Ec.1

  1. What Can I Say
  2. Lowdown
  3. We’re All Alone

Ec.2

  1. Breakdown Dead Ahead

尚,当日は写真撮影NGだったので,上の写真は昨年のライブの模様をWebで拝借したもの。下の写真はウドーのサイトにアップされていた2/19の公演時の写真。当日の雰囲気もこれとほぼ変わらないものであった。

Live at 東京ドームシティホール on Feburuary 21, 2024

Personnel: Boz Scaggs(vo, g), Mike Miller(g), Michael Logan(key, vo), Eric Crystal(ts, ss, key, melodica, g), Willie Weeks(b),  Teddy Campbell(ds, vo), Branlie Mejias(perc, vo)


Boz-scaggs-live_udo1_20240222085701

2024年2月22日 (木)

こんなのも持ってましたってことでJoe Jacksonのライブ盤。

_20240219_0002 "Afterlife" Joe Jackson Band (Rykodisc)

CDラックを見ていて,おぉ,こんなのも持っていたなぁなんて思うことが結構あるが,このアルバムもそんな感じである。しかもよくよく見ればボーナス・ディスク付きの2枚組。すっかり忘れていたわ(爆)。

このアルバムは2002年から2003年にかけての再編Joe Jackson Bandのライブの模様を,ツアー後半の米国西海岸4か所での演奏を集中的に収録したもの。ミキシングのせいもあると思うが,かなりラフな感じのサウンドに仕上がっていて,ライブ感が横溢している。逆に言えば,ちょっとうるさく感じさせるところもあるが,ロックだと思えば腹も立たない。但し,Joe Jacksonと言えば"Steppin’ Out"でしょとか思っていると,イメージが随分違うように思える。こんな激しかったっけ?と感じる部分もあって,私が聞いていて思ったのはデビュー直後のElvis Costelloみたいに響く部分もあるってことか。

Joe Jacksonという人は,キャリアの途中でうつ病になったりして,なかなか波乱万丈の人生を歩んでいるようだが,このアルバムがレコーディングされたのは復活後の吹っ切れた姿ってところかもしれない。オリジナルのバンドを再編しての気安さもあったかもしれないが,勢いのあるライブ盤となった。星★★★★。

尚,ボーナス・ディスクには同じツアーから,約3か月前のアムステルダムでのライブの模様が収められていて,こっちも同じような感じながら,収録時間はこちらの方が長く,多分ライブの場での演奏はこの曲順だったんだろう。構成されたショーとしての盛り上がり感は実はこっちの方が楽しめるかもなぁ。こちらではBeatlesの"Girl"を弾き語りでやっているのも面白かった。ということで,ファンの皆さんは2枚組をゲットしましょう(笑)。

Recorded Live at the Fil,ore, San Francisco on August 27, at the House of Blues, LA on August 28, at the House of the Blues Anaheim on August 29 and at 4th and B, San Diego on Augisut 31, 2003

Bonus Disc Recorded Live at the Heineken Music Hall, Amsterdam on May 30, 2003

Personnel: Joe Jackson(vo, key, melodica), Graham Maby(b, vo), Dave Houghton(ds, vo), Gary Sanford(g, vo)

本作(ボーナス・ディスク付き)へのリンクはこちら

2024年2月21日 (水)

"Secrets":Herbie Hancockのファンク・アルバムだが,ゆるくて燃えないなぁ...。

_20240219_0001 "Secrets" Herbie Hancock (Columbia)

Herbie HancockのColumbiaボックスから本作を聞いた。本作の次に出るのが”V.S.O.P."となるのだが,アナログならそのD面に収められているファンク・チューンを演奏しているのが,このアルバムの主要メンツなのだが,随分印象が違う。"V.S.O.P."の演奏がファンク度が強い演奏だったのに比べると,ここでの演奏はよく言えばメロウ度が高く,悪く言えばゆるい。特にアナログで言えばA面の3曲はいけていない。典型的なのが"Cantaloup Island"の再演だろうが,なんじゃこれは?のレベルではがっくり来る。

まぁ,アナログだとB面に転じて,"V.S.O.P."にも収められた"Spider"はライブ音源同様の演奏で許せる出来だと思えるし,後にLee Ritenourがバンド名とした"Gentle Thoughts"はソフトながらもなかなかの佳曲だとは思う。Paul Jacksonのベースかくあるべしと思わせる"Swamp Rat"や,ラストのBennie Maupin作"Sansho Shima"もHerbie Hancockのピアノ・ソロがいかにもでいいのだが,全体的にもう少しヘヴィな感覚があってもよかったように思える。

ということで,私が本作をアナログで保有していれば,おそらくB面しか聞いていなかったであろうアルバム。こういうのを聞くと,やっぱり"Flood"って最高だったよなぁなんて思ってしまう私である。星★★★。このアルバム,7曲中5曲にMelvin Raginなる人物が作曲で絡んでいるが,これはWah-Wah Watsonのことだそうだ。ということで,このアルバムのサウンドにはWah-Wah Watsonの関与度が高いということになるな。

Personnel: Herbie Hancock(p, el-p, key, synth), Bennie Maupin(ts, ss, saxello, b-cl), Wah-Wah Watson(g, synth, b, vo), Ray Parker Jr.(g, vo), Paul Jackson(b), James Levi(ds), Kenneth Nash(perc), James Gadson(ds, vo), Art Baldacci(vo), Fred Dobbs(vo), Don Kerr(vo), Chris Mancini(vo)

本作へのリンクはこちら

2024年2月20日 (火)

Wayne Shorterのブートレッグ:テンション高過ぎである。

Zero-gravity-2016 "Zero Gravity 2016" Wayne Shorter Quartet (Bootleg)

早いもので,Wayne Shorterがこの世を去って間もなく1年になる。私がWayne Shorterのライブを観たのは2014年に遡る(その時の記事はこちら)が,それは物凄いテンションで迫ってきたのが今でも忘れがたい。このWayne Shorterが率いた最後のクァルテットはアルバムでも,ライブでも無茶苦茶高度な演奏をしていた訳だが,こういうブートを聞いていると,それを改めて追体験するには最適だと思えてしまう。

このブート,Definitive Blu-ray Editionとなっていて,演奏の模様がBlu-rayに映像でも格納されていて,音源は映像をソースとするものだと思う。ただ,私の場合,音楽に関しては映像よりも音指向なので,音だけでも十分なのだが,まぁ付加価値として映像が付いていることに文句はない。

それにしても,2014年に聞いた彼らのライブを思い起こさせる緊張感には改めて驚いてしまうが,この時,Wayne Shorterは80歳を過ぎていたということには驚愕させられる。後に"Children of the Light"としても活動を続けるバックのトリオも超優秀で,この4者の一体感も素晴らしい。

しかし,これだけのテンションの高さゆえ,しょっちゅう聞きたいとは思えないのも事実だが,Wayne Shorterのクリエイティビティを振り返る意味では避けては通れない音源である。まさにこの時点でWayne Shorterは人間国宝と呼ぶに相応しい人であった。

Recorded Live at Bela Bartok National Concert Hall, Budapest, Hungary on April 11, 2016

Personnel: Wayne Shorter(ts, ss), Danilo Perez(p), John Patitucci(b), Brian Blade(ds)

2024年2月19日 (月)

Amazon Primeで観た「情無用の街」

Street-with-no-name 「情無用の街 ("The Street with No Name")」(’48,米,Fox)

監督:William Keighley

出演:Mark Stevens, Richard Widmark, Lloyd Nolan, John McIntyre, Ed Begly

最近,入浴中に川本三郎と逢坂剛の趣味趣味対談本「さらば愛しきサスペンス映画」を再読しているのだが,そこに出てくる映画が気になって仕方がなくなってしまい,AmazonやNetflixで観られそうなものを探していたら,あった,あったということでこの映画である。

この映画の主役はFBIの潜入捜査官を演じるMark Stevensではあるのだが,この映画のポスターを見ればわかる通り,Richard Widmarkの存在感が圧倒的な「フィルム・ノワール」となっている。ここでのRichard Widmarkを見ていると,黒澤映画で「用心棒」や「椿三十郎」で三船敏郎に対峙する仲代達矢のひな形と言いたくなるような造形であった。若干Richard Widmarkの方が粗野には写るが,風貌と言い,ついつい私は仲代達矢を思い出していたのであった。

ストーリーとしては実際の事件に基づくものを描いていて,FBIの捜査手法がそうなっていたのか~なんて思わせる部分もあるが,まぁストーリーとしては大したことがないと言えば大したことはない。しかし,こういう映画を見ていると古き佳き時代って気もして,結構楽しんでしまったのであった。星★★★☆。また,こういう古い映画を探してみようと思わせる動機づけには確実になった。

本作のDVDへのリンクはこちら

2024年2月18日 (日)

デンマークの叙情派ピアニスト,Søren Bebeの新作がまたも到着。今度は未発表曲の拾遺集。

First-song"First Song" Søren Bebe Trio (From Out Here Music)

先日,Søren Bebe Trioの新作"Here Now"を取り上げたが,非常に短いインターバルで,またまた新作が届いた。新作と言っても,これはこれまでリリーズ済みのレコーディングで,未発表となっていた演奏の拾遺集という位置づけなので,純粋な新作とは言えない。しかし,この人が紡ぎ出す美的フレージングは,北欧ジャズ・ファンには訴求力を以て迫ってくるはずなので,今回も本人のサイトから直接仕入れたもの。

そして今回のアルバムのキモは,Charlie Hadenの名バラッド,"First Song"の収録だと思えるが,冒頭に収められたこの曲の演奏はこちらの期待値にちゃんと応えるものとなっていて,相変わらず美しいピアノが楽しめる。そのほかの曲も実に美的でうっとりしてしまうような演奏ばかりだと言ってもよい。

まぁ,そうは言っても,未発表音源を集めたものなので,オリジナル・アルバムと同列に扱ってはいけないとは思いつつ,かなり満足度は高い。ただ,Ravelの「亡き王女のためのパヴァーヌ」だけは,どうもそもそもの主題のメロディ・ラインが生硬な感じがするのは惜しいと思えた。アドリブ・パートになれば気にならなくなるのだが,それでもこの曲に関してはちゃんとテーマを弾いてこそ評価されるべきだということを差し引いて星★★★★。

それでも,これだけの演奏を聞かせてもらえれば,相応に満足度は高い。結局,何だかんだと言って,私がSøren Bebeのアルバムを買い続けていることからすれば,彼のマーケティング戦略にはまっていることは間違いないのだが,それでもより幅広いオーディエンスに知られてよいピアニストということで,これからも応援していきたいと思う。

Recorded in November 2015, January 2019 and April 2023

Personnel: Søren Bebe(p), Kasper Tagel(b),Knut Dinsrud(ds), Anders Mogensen(ds)

2024年2月17日 (土)

Little Feat: このファンキーさがたまらない。

_20240215_0002 "The Last Record Album" Little Feat (Warner Brothers)

Warner時代のLittle Featのボックス・セットをオークション・サイトで仕入れてから1年以上が経過しているが,まだ全部聞いていない(爆)。まぁ時間を掛けてゆっくり聞いていこうと思っていたが,それにしても時間を掛け過ぎって言われれば返す言葉はない。それでもって,今回は彼らの5枚目のアルバム。タイトルからして,最終作かと思ってしまうが,そんなことはない。このタイトル,映画"The Last Picture Show"のパロディだそうだ。

この次の6作目,"Time Loves a Hero"で随分雰囲気を変えるLittle Featだったが,ここではいかにもLittle Featな音に満ちていて,こういう音が好きなリスナーにとってはたまらない。やれ,Paul BarrèreやBill Payneのジャズ/フュージョン指向が表れたとも言われるが,私には全くそういったところを感じない。敢えて言うならば若干サウンドの洗練度が増したってところではないか。

ここでのサウンドを聞いていて感じるのはLowell Georgeのスライドがキモであることは事実としても,私はBill Payneのエレピの音が全体像を決定づけているように思える。もちろん,バンド全体でLittle Featなのだが,私にはBill Payneのエレピが何とも魅力的に響いてきた。前作も好きだったが,私にとっては同様に魅力的なアルバムであった。前作との差をつけるために星★★★★☆とするが,やっぱりLittle Featっていいねぇと思わせるに十分。

Personnel: Bill Payne(key, vo), Richie Hayward(ds, vo), Lowell George(g, vo), Ken Gradney(b), Sam Clayton(perc), Paul Barrère(g, vo), John Hall(g), Valerie Carter(vo), Fran Tate(vo)

本作へのリンクはこちら

2024年2月16日 (金)

Vijay Iyerの新作:これは凄い!近年稀に見る傑作と言いたい。

_20240215_0001"Compassion" Vijya Iyer (ECM)

プレイバックを開始した瞬間から心を捉えられてしまう音楽というのはなかなか出会えるものではない。先日のMeshell Ndegeocelloのライブの素晴らしさにも似た感覚を,CDで味わってしまったというのがこのVijay Iyerの新作である。

鋭いテンションに満ちた演奏が続き,一部フリーな展開もあることはあるのだが,決して聞きづらい音楽ではない。全編を通じてジャズ的なスリルを感じさせながら,熱量だけではないVijya Iyerらしい理知的な部分を持ち合わせた音楽は,近年のピアノ・トリオのアルバムでも最も傑出した一枚と言ってもよいかもしれない。私はVijay Iyerのアルバムは参加作を含めて高く評価し続けてきた。昨年も異色のアンビエント・ライクな"Love in Exile"さえベスト作の一枚に選んでいる(同作に関する記事はこちら)ぐらいなので,基本的に評価に値する活動を継続していると思っている。そんな中でもこのアルバムは,私の中でのVijay Iyerへの評価を更に高めるアルバムとなった。まだ2月ではあるが,今年のベスト作の有力候補であることは間違いないところ。

Vijay Iyerの魅力的なオリジナルに加えられたカヴァー曲がまた見事。Stevie Wonderの"Overjoyed"をこれほどスリリングな演奏にアダプテーションしたところからして興奮させられるし,Roscoe Mitchellの"Nonah"のフリーな展開も,アルバム中のChange of Paceとして適切。そして最後を飾るのがJohn Stubblefieldの"Free Spirits"とGeri Allenの”Drummer’s Song"のメドレーなのだが,Geri Allenをカヴァーするのはわかるが,John Stubblefieldというのが意外でありつつ,この"Free Spirits"というのがなかなかの佳曲でびっくりであった。大した審美眼である。

本作は体裁としてはManfred EicherとVijay Iyerの共同プロデュースってかたちになっているが,おそらくEicherとしてもVijay Iyerにかなり自由にやらせたって気がする。いずれにしても,Linda May Han Oh,Tyshawn Soreyという強力な共演者に恵まれたことも有効に作用して,これこそ真の傑作と評価したくなる逸品。星★★★★★。素晴らしい。

Recorded in May 2022

Personnel: Vijay Iyer(p), Linda May Han Oh(b), Tyshawn Sorey(ds)

本作へのリンクはこちら

2024年2月15日 (木)

Meshell Ndegeocello@Billboard Live東京参戦記。

Meshell-ndegeocello-at-billboard-live

Meshell Ndegeocelloが,先日のグラミーでBest Alternative Jazz Albumを受賞したばかりというタイミングで来日を果たしたので,Billboard Live東京に出かけてきた。私はMeshell Ndegeocelloの最新作,"The Omnichord Real Book"を昨年のベスト作の一枚に選んでいることもあり,私はチケット発売のタイミングで購入して,このヴェニューではいつも利用するカジュアル・シートで演奏を聞いてきた。純粋に音楽を聴くだけなら,ワンドリンクの付いたカジュアル・シートで十分なのだ。いずれにしても客席はカジュアル・シートを含めてソールド・アウトの聴衆で埋まっていた。

結論から言えば,実に素晴らしいライブで,ヘヴィーなファンク,ソフトなソウルを交えながら,非常に質の高い演奏を聞かせてくれた。そもそもこのバンド,"The Omnichord Real Book"の主要レコーディング・メンバーでもあり,演奏能力の高さに加え,コンビネーションは熟成され,演奏の引き締まり具合は最高レベルと言ってもよかった。

私が近年ライブ・ハウスで聞いた演奏の中でも屈指のものと思えるものであり,ここまでの演奏を聞かせてくれれば大満足である。昨日,Brittany Howardの新作を褒めたばかりだが,このMeshell Ndegeocelloの演奏を聞いてしまえば,まだまだ格が違うとさえ思ってしまった私である。こんなライブを観てしまっては,ライブに求めるレベルが無茶苦茶上がってしまったではないか。そういう意味では罪作りなライブであった(笑)。もはや今年のベスト・ライブはこれだろうと思わざるをえない最高のパフォーマンスに感謝したい。

Live at Billboard Livet東京 on February 13, 2024, 2ndセット

Personnel:Meshell Ndegeocello(vo, b, key), Justin Hicks(vo, perc), Jebin Bruni(key), Chris Bruce(g), Abe Rounds(ds, perc, vo), Kyle Miles(b)

2024年2月14日 (水)

待望のBrittany Howardの2ndアルバム。これまた強烈なロックとソウルのフュージョン。

_20240213_0001 "What Now" Brittany Howard (Island)

久しぶりの新譜である。ここのところ,新譜の購入ペースは落ちるとともに,デリバリーが遅いものもあって,今年に入ってこれが2枚目の新譜記事というのも何だかなぁというところだが,まぁよかろう。

今回のお題はBrittany Howardである。2019年にリリースされた1stソロ"Jamie"から約4年半を経て,待望の2ndアルバムがこれだが,これに先立ってRecord Store DayにリリースされたライブEPは既に取り上げた(記事はこちら)。そこにもこのアルバムへの期待値を書いているが,今回も期待を裏切られることはなかった。

今回も響きこそローファイだが,音圧がかなり高くて,通常の私が聞いているボリュームだとびっくりしてしまうぐらいのレベルなのだ。これはおそらく意図的なものと思うが,これまでのBrittany Howardのアルバムも,音圧はさておきサウンドはかなりローファイな感覚が強かった。おそらく本人にとってのフィット感というのもあると思う。

そして,出てくる音楽は"Jamie"でも感じたように,ひと世代上のMeshell Ndegeocelloの方向性とかなり近しいものを感じる。ロックとソウルの境界線を自在に行き来する感覚と言ってもよいと思うが,本作ではソウル色がより強まったと思える。終盤の"Power to Undo"はPrinceの曲のような感覚さえ覚えさせるが,多様な音楽性を吸収し,これまた見事なアルバムに仕立てたというところだ。そしてここでのNate Smithの貢献度は極めて大きいが,彼のドラミングがこの音楽の魅力を増幅させたと言っても過言ではない。この音楽はリスナーを興奮させるに十分なものと評価したいい。星★★★★★。

_20240213_0002それにしても,このCD,盤面のタイトル,曲名に日本語が並記されているのはどういう理由なのか...。謎だ。

Personnel: Brittany Howard(vo, g, key, synth, b, ds), Nate Smith(ds), Zac Cockrell(b), Paul Horton(key), Lloyd Buchanan(key, vo), Brad Allen Williams(g), Thomas Bloch(cristal baschet), Rod McGaha(tp)

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2024年2月13日 (火)

軽快に楽しめるCarl Perkins唯一のリーダー・アルバム。

Introducing_carl_perkins "Introducing Carl Perkins" Carl Perkins (Dootone)

西海岸のピアニスト,Carl Perkinsの唯一のリーダー・アルバムが本作。私が保有しているのは後年再発された国内盤アナログLPだが,確かこれは今はなき町田のオスカーで中古で入手したと記憶している。

これを聞くのも久しぶりのことになるが,実に軽快で楽しめるアルバム。オリジナルにスタンダードを交える構成もよく,つくづく29歳での早逝が惜しまれる。この人は,ポリオの影響により左手が曲がったままになっていながら,ここでも聞かれるようなグルーヴィーな演奏を聞かせるということで,大変な努力家だったとも言えると思う。左手は鍵盤と平行な状態で打鍵をすることの難しさを克服し,時に肘も使って低音を弾いていたというのだから凄い。

いずれにしても,50年代半ばの西海岸ジャズのよさをつくづく感じさせるナイスなピアノ・トリオ・アルバム。

Recorded in 1955

Personnel: Carl Perkins(p), Leroy Vinnegar(b), Lawrence Marable(ds)

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2024年2月12日 (月)

ゆったりしたフュージョンって感じのElementsの第1作。

Elements "Elements" Elements (Philo)

ElementsはMark EganとDanny Gottliebが結成したバンドである。この二人と言えば,Pat Metheny Groupってことになるが,このアルバムをレコーディングした1982年1月には,Mark Eganは既に脱退していたし,Danny Gottliebも同年グループを去ることになる。自分たちのやりたいことがはっきりしてきたってところだと思うが,これがバンドとしてのElementsの第1作。

このジャケではバンドとしてのイメージがはっきりしないし,裏ジャケには海パン姿で海から上がってくる二人の姿という訳のわからないデザインはさておき,フュージョンとしてはなかなかユニークなサウンドと言ってもよいように思う。この二人なら,もう少しカチッとしたサウンドにも仕立てられるはずなのだが,それなりにメリハリをつける瞬間はあるものの,全体としては穏やかというか,ゆったりした感覚が強い音楽で,緩やかに時間が流れていく感じの音楽になっているのが面白い。半ばアンビエントと言っても過言ではないのだ。

共演者として迎えているのが,Clifford CarterとBill Evans。キーボードのサウンドにはそこはかとなくLyle Mays的なところを感じさせるのは,Pat Metheny Group出身のElementsらしいところか。Bill Evansは既に復活したMiles Davisのバンドに抜擢されていた頃だが,ここでのプレイぶりはバンドに合わせておとなしいものである。

しかし,そのサウンドのユニークさはわかるもののだが,このバンドの方向性というのはこれだけでは判断できないという感じであった。そもそも私はこのアナログLPをどのように入手したのかは全く記憶にないのだが,今回,久しぶりに聞いてみて不思議なサウンドだったなぁと思った次第。星★★★。これを聞くなら後の日本でのライブ盤"Far East"を聞く方が楽しめるなぁ。

尚,本作は後に別ジャケでリリースされていて,リンク先のストリーミング音源も別ジャケ・イメージとなっている。

Recorded in January 1982

Personnel:Mark Egan(b, perc), Danny Gottlieb(ds, perc), Clifford Carter(key), Bill Evans(sax)

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2024年2月11日 (日)

「ナイアド:その決意は海を越える」をNetflixで観た。悪い映画ではないんだけどねぇ...。

Nyad「ナイアド:その決意は海を越える("Nyad")」(’23,米,Netflix)

監督:Jimmy Chin,Elizabeth Chai Vasarhelyi

出演:Annette Bening, Jodie Foster, Rhys Ifans, Karly Rothenberg, Garland Scott, Jeena Yi

実在のマラソン・スイマー,Diana Nyadのキューバ~フロリダ間の海峡横断という実話をもとに描いた映画で,正直言ってアメリカ人が好きそうな映画である(皮肉ではない)。Netflix製作なので,配信が基本だが,映画の賞レースでは劇場公開が求められる現状からして,一応本国では劇場でも公開されているようだが,日本での状態は定かではない。私はNetflixで観たもの。

先日取り上げた「哀れなるものたち」も強烈なフェミニズムを発露していたが,この映画もそっち系列と言ってよい。還暦を過ぎフロリダ海峡横断に挑むというのは確かに凄いことだと思うし,おそらくは本国では物凄い有名人なんだろうなぁと思うが,まだ存命中というところもあり,相当持ち上げている部分も感じられるし,最近,こういう実話ベースの映画って多いなぁなんて見ながら思っていた私であった。そして一人を除いてほぼ悪人が出てこないが,世の中そんなに綺麗ごとでは済まない部分もあるよなぁと思いながら見ていた私である。

主人公Diana Nyadを演じるAnnette Beningは劇中,泳ぐシーンが相当部分を占めていて,まぁ「努力賞」的な意味合いもあって,オスカーの主演女優賞にもノミネートされたと思えるが,この映画を締まりのあるものにしたのはJodie Fosterだろう。まぁ,監督をした二人はドキュメンタリー出身らしいので,この映画の演出具合の中途半端さは仕方ない部分もあると思いつつ,ここでのJodie Fosterの演技はこの二人の監督の技量を補ったと言えるし,これを見ればノミネートされている助演女優賞も結構有力ではないかと思う。より端的に言ってしまえば,Jodie Fosterがいなければ,単なる偉人伝のつまらない映画になっていたはずだ。儲け役は航海士,John Bartlettを演じたRhys Ifansだろうが,ありがちなシナリオの中で,この映画のMVPはJodie Fosterだと言い切ってしまおう。

主題にも書いた通り決して悪い映画ではないし,それなりに楽しめる映画ではあるのだが,「哀れなるものたち」を観てしまった後ではどうにも「緩い」と思えてしまう映画であった。Jodie Fosterに免じて半星オマケして星★★★☆としよう。

2024年2月10日 (土)

優先順位は上がらないものの,無視できないBill Evansのアルバム。

Symbiosis_20240207182701 "Symbiosis" Bill Evans (MPS)

Bill Evansのアルバムは数々あれど,決して優先順位が上がってこないアルバムも存在する。私の場合,結構偏った聞き方をしている訳で,Scott Lafaro,Paul Motianとのトリオ,そしてこの世を去る前のMarc Johnson,Joe Labarberaとのトリオが中心で,そのほかのアルバムはプレイバック頻度はそんなに上がらないものの,Eddie Gomez,Eliott Zigmondとのトリオも好きだし,ソロ作やJim Hallとの"Undercurrent"もいいよなぁと思っている。そんな中で,これまで大して聞いていないのがこのアルバム。

思い起こせば,このアルバムは今はなき高田馬場のマイルストーンで何かのイベントがあった時に,マスターからもらった国内盤LPだと記憶している。それから長い月日が経過したが,その間に何度プレイバックしたかは相当怪しい。このアルバムになかなか手が伸びないのはこのジャケットのせいだって気もするが,本当に久しぶりに聞いてみた。

本作はClaus Ogerman作編曲のオリジナルを,Bill Evansのトリオとオーケストラの共演で演奏したものだが,改めて聞いてみると,なかなかに味わい深いアルバムであった。今更こんなことを言っているのは単なる「食わず嫌い」ではないかと思わざるをえないので反省せねばなるまい。まぁ極上のBGMと言ってもよい演奏であるが,Bill Evansのピアノは美しく,バックのオケも結構な大編成ながら,うるさくなることがないのがよい。下記のPersonnelには記載はないが,ストリングスも加わった相当の予算も掛かっているアルバムなのだ。

もちろん,これをBill Evansのアルバムの中でいの一番に聞くべきものとは思わないが,改めて聞いてみると,無視するには惜しいアルバムだと思えた。Bill Evansがチャレンジ精神も旺盛だったことの証だろう。星★★★★。

Recorded on February 11, 12 & 14, 1974

Personnel: Bill Evans(p el-p), Eddie Gomez(b), Marty Morell(ds), Eddie Gomez(b), MartyMorell(ds), Claus Ogerman(arr, cond), Phil Woods(as), Jerry Dodgion(as), Walt Levinsky(as), Harvey Estrin(as), Marvin Stamm(tp), Johnny Frosk(tp), Bernie Glow(tp), Marky Markowitz(tp), Victor Paz(tp), Mel Davis(tp), Bill Slapin(fl), Don Hammond(fl), Hubert Laws(fl), Urbie Green(tb), Paul Faulise(b-tb), Tommy Mitchell(b-tb), Danny Bank(cl, b-cl), Ron Jenelly(cl, b-cl), Geroge Marge(oboe), Phil Bodner(oboe), Wally Kane(bassoon),  Donald MacCourt(contra-bassoon), Don Butterfield(tuba), Brooks Tillotson(fr-h), James Buffington(fr-h), Earl Chapin(fr-h), Ray Alonge(fr-h), Al Richmond(fr-h), Peter Gordon(fr-h), George Devens(perc), Dave Carey(perc), Doug Allen(perc), Ralph McDonald(conga), David Nadien(concert master)

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2024年2月 9日 (金)

結構アルバムを持っていながら,記事化していないMahavishnu Orchestraってことで,彼らの第1作。

_20240207_0001 "Inner Mounting Flame" Mahavishnu Orchestra (Columbia)

以前にも書いたことがあるのだが,私はJohn McLaughlinの結構なファンでありながら,敢えてMahavishnu Orchestraを後回しにしてきたように思える。今や再編後も含めて相応に(と言っても全部ではないが)CDも保有するようになったが,当ブログでもあまり記事化していない。ということで,今回は彼らのバンドとしてのデビュー作「内に秘めた炎」である。

とにかく音数は多いし,うるさいって言えば実にうるさい。まさにフュージョンと言うよりもジャズ・ロックと呼ぶに相応しいサウンドであろう。誤解を恐れずに言えば,本作で聞かれるようなテンションの高さで同等なのは,私にとってはKing Crimsonぐらいではないかとさえ思えてしまう。このテクニシャン揃いのバンドが生み出すのはグルーブと言うよりも,音の塊ってところだ。

中でもやっぱりこのバンドのキモはJohn McLaughlinとBilly Cobhamのコンビネーションだろうなぁと思うが,リリースから半世紀以上を経過してもその激烈さは変わらないというのが凄い。所謂クロスオーヴァー/フュージョンとは完全に一線を画すアルバムではあるが,後のその手の音楽のひな形の一つとなったことは間違いないところ。あまりの激しさゆえ,聞き終えるとどっと疲れが出るが,それは心地よい疲れだと言っておこうお。星★★★★☆。それにしても,こんなアルバムを1日で作ってしまうとはまさに恐るべし。

Recorded on August 14, 1971

Personnel: John McLaughlin(g), Jerry Goodman(vln), Jan Hammer(key, org), Rick Laird(b), Billy Cobham(ds, perc)

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2024年2月 8日 (木)

何を今更って感じだが,ブラックホークの99選からDonnie Frittsを。

Prone-to-lean "Prone to Lean" Donnie Fritts (Atlantic)

長年ブログをやっていると,何をアップしていて,何をアップしていないかが曖昧になる。これも偏に歳のせいと片付けてもいいのだが,このアルバムなんかはとっくにアップしていても不思議ではない。Donnie Frittsのアルバムは何度かアップしているが,この彼のファースト・アルバムは何度も言及しながら,記事にはしていなかった。

「ブラックホークの99選」にも選ばれているから,知っている人は知っているが,関心のない人にとってはDonnie Frittsって誰?で終わりだろう。しかし,このアルバムを初めて聞いた時の自分のテイストへのフィット感は忘れられない。私はこのアルバムを「99選」を頼りに,中古盤を探していたのが学生時代だが,本作のカット盤(もはや死語か?)ながら中古盤を見つけた時は本当に嬉しかった。そしてアルバムを聞いた時の喜びは更に大きかったと記憶している。このスワンプ風味の効いたSSWの世界は,アメリカン・ロック好きの私の琴線をくすぐるものであった。それはその当時も,年齢を重ねた今でも変わらないが,還暦を過ぎた私にとっては更に訴求力を上げていると言っても過言ではない。

世の中には好き者は少なからずいて,このアルバムも紙ジャケCDでも再発されたこともあるが,私はLPは保有し続けながら,CDも保有しているぐらい好きなアルバムだ。今でもプラケース版ならCDも中古で簡単に手に入るといういい時代になったものだと思わざるをえない。しかし,若い頃苦労して手に入れたということが私にとっては重要な記憶でもあるのだ。

何よりもDonnie Frittsの声が魅力的に響くが,私はそれに加えてこのアルバムの良さを,Donnie Fritts自身あるいはBarry Beckettが弾くエレピの音に感じてしまうのだ。おぉっ,これぞ自分が欲しい音だと思ったものだ。

ジャケを見ていると,売れる訳ないと思ってしまう(笑)が,それでもいかにも南部に根差したサウンドは,リリースから半世紀となる今でも魅力的。マッスル・ショールズの面々ほか,最高のメンツに支えられた傑作中の傑作。マジで最高だ。星★★★★★。

Personnel: Donnie Fritts(vo, el-p), Pete Carr(g), Jimmy Johnson(g), Eddie Hinton(g, hca, vo), Brry Becketvo, el-p, vib, clavinet), Mike Utley(org), David Hood(b), Roger Hawkins(ds, perc), Sammy Creason(ds), Jerry McGee(g), Tony Joe White(g, vo), Spooner Oldham(vib, vo), Jerry Masters(b), Mickey Raphael(harp), Rita Coolidge(vo), Billy Swann(vo), Dan Penn(vo), Kris Kristofferson(vo), John Prine(vo), Jerry Wexler(vo) with  The Muscle Shoals Horns

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2024年2月 7日 (水)

"Grand Encounter":これを聞くのはいつ以来か...。

Grand-encounter "Grand Encounter" John Lewis/Percy Heath/Bill Perkins/Jim Hall/Chico Hamilton(Pacific Jazz)

「大いなる邂逅」とは言うねぇと思ってしまうタイトルだ。私はこのアルバムは昔から保有しているのだが,CDで買い直していないので,実のところ暫く聞いたことがなかった。少なくとも20年ぶり以上の時間は経過しているように思うほど久しぶりにこのアルバムを聞いたのだが,改めて聞いてみると,これは実によくできたアルバムだと思ってしまった。

ジャケットにも"2°East 3°West"とあって,東海岸のMJQの2人が,西海岸のプレイヤー3人と演奏したから「邂逅」となるのだが,だったら"Art Pepper Meets the Rhythm Section"も「邂逅」って意味では同じだよなぁなんて思ってしまう。まぁそれはさておき,厳密に言えば5人がリーダーと言ってもよいのだが,便宜的にはJohn Lewisのリーダー作と思われているというのが正直なところだろう。

そうは言っても,小難しいアレンジメントを施していると思えないので,これはセッション・アルバムと言ってよいものだと思うが,セッション・アルバムからこのクォリティが生まれること自体が素晴らしいことではないか。決してうるさくなることはなく,中庸なテンポでの曲が続くから,刺激は全然強くない。結局東海岸を代表すると言ってもMJQの2人だけに,何だかんだ言ってもノーブルになってしまうから,西海岸のプレイヤーと共演しても全然問題ないのだ。Johnn Lewisのオリジナル,"2°East 3°West"を除いて手慣れたスタンダードをやっているから,外しようがないだろうという気もするが,こういうのを聞いていると,激しければいいってもんじゃないよなぁなんて思ってしまうのだ。刺激的なジャズとは言えないが,それを補って余りあるリラクゼーション感豊富でナイスな演奏群。星★★★★☆。

Recorded on February 10, 1956

Personnel: Bill Perkins(ts), John Lewis(p), Jim Hall(g), Percy Heath(b), Chico Hamilton(ds)

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2024年2月 6日 (火)

今,改めてアナログで聴く"Flight to Denmark"。

Flight-to-denmark "Flight to Denmark" Duke Jordan (SteepleChase)

何も言うことはないDuke Jordanのこの傑作アルバムを,なぜ私はアナログで仕入れたのかについて書きたい。私がこのアルバムを最初に買ったのは¥1,500の廉価盤だったはずだ。今でもそうだが,廉価盤だろうがなんだろうが,その当時は聞ければいいというスタンスであったし,音へのこだわりも大してなかった。そしてCDの時代になって,アナログは売却し,CDに置き換えたから,聞いてきた期間としてはCDの方が長いということになるだろう。しかし,以前本作についてCD版で記事を書いた時にも記したように,問題はCDに収録されたボーナス・トラックなのだ。

演奏がどうこうという訳ではないし,ボーナス・トラックの付加価値を全面的に否定する訳ではないのだが,その並びがよくないのだ。私が保有しているCD版は"Glad I Met Pat"と”If I Did-Would You?"の2曲について,2ヴァージョンが収められているのはいいが,それが連続していて収録されているため,どうしても聞いていて間延びした感覚になってしまうのだ。私はLPでの並びでこのアルバムを楽しみたいのに,それをボートラが阻害するという結果になっていることには長年納得がいっていなかった。それが喉に刺さった魚の小骨のような感覚だったので,本作が本国でアナログで再発されていると知り,改めて購入することにしたのだ。CDの並びが嫌ならスキップすればいいじゃんと言われれば反論の余地はないし,無駄遣いと言われればその通りだが,自分としては納得のいくかたちで聞くために再購入せざるをえなかったというところだ。

このアルバムのCD版に限らず,ボートラを入れるのはいいが,まさに無粋な並びにしてしまう例はOJCの再発ものなんかにもよくあった。"Waltz for Debbie"等は最たる事例だ。そういうことを考えると,アナログに回帰しなければならないのかという話になりかねないが,私としては曲の並びさえ考えてくれればCDだって全然問題ないのだ。とにかく無粋な曲の挿入はやめて欲しいということだ。

と音楽に全然関係ない話を書いてきたが,アナログで本作を聞くと,やはりこのアルバムはこうでなくてはいかんという思いを強くした。再発盤はオリジナルではなくとも,音もいい具合で満足,満足。

Recorded on November 25 and December 2, 1973

Personnel: Duke Jordan(p), Mads Vinding(b), Ed Thigpen(ds)

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2024年2月 5日 (月)

今年最初の映画館通いは「哀れなるものたち」。エロでグロでブラックだ。そして強烈。

Poor-things

「哀れなるものたち("Poor Things")」(’23, Searchlight,アイルランド/英/米)

監督:Yorgos Lanthimos

出演:Emma Stone,Mark Ruffaro, Willem Defoe, Rammy Youssef

主題通りである。これが今年最初の映画館で見た作品ということになるが,R18+も仕方ないと思えるエロ・グロ度で,Emma Stoneの演技も強烈な映画であったとしか言えない。そしてこれまた強烈なフェミニズムがEmma Stoneをこの演技に駆り立てたってところか。

Emma Stone演じるBella Baxterは怪物と言ってもよい存在だが,人間の自我の目覚めというのはこういうものかと思わせ,それがまずは「エロ」の方で明らかになるというところか。Bellaの成長スピードが劇的過ぎやしないかと思われる部分はあるものの,そういうところは無視してもいいレベルだと思わせる展開は見事なものであった。そうしたストーリーに加えて見事だったのが極めて美的かつ豪華なビジュアル。オスカーでの美術賞は確実と思わせる凝り具合は凄かった。衣装デザインでの受賞もこの映画は有力だと思うが,「バービー」との争いって感じかもなぁ。

これだけのエログロ度に加え,エンディングのブラック度も笑ってしまうレベルだが,この映画には確実に好き嫌いは出てくるとしても,Emma Stoneの役者魂には感服したこともあり,星★★★★★としよう。今度のオスカーの主演女優賞はLily GladstoneかEmma Stoneのどちらかって感じだろうが,Emma Stoneは「ラ・ラ・ランド」で受賞済み,かつLily Gladstoneが先住民初の候補ってこともあり,今回はLily Gladstone有利かなぁ。それでもこのEmma Stoneはマジで強烈なのでいい勝負か…。

2024年2月 4日 (日)

Stern~Brecker Night@Virtuoso Akasaka参戦記。

Sternbrecker-night_20240203102501

今年3本目のライブはVirtuoso AkasakaにおけるStern+Brecker Nightであった。当たり前だが,もちろん本人ではない。同地でMike Stern Nighってのがあったのが2022年6月のことだったが,その時同様のなりきりぶりを楽しみに店に駆けつけた。

それにしても,リーダー,矢堀孝一のギターは現在のMike SternよりMike Sternらしくて思わず笑ってしまうレベルだったし,サックスの札幌在住のBjörn Arköは,前回同様相変わらずのうまさであった。Björn Arköは昨年のCotton ClubでのSwedish All Starsでも聴いたが,いかようにでも吹けてしまうのには感心してしまったのであった。NYCの55 Barが閉店してしまった今,あの店で聴けたような感じの音楽が聴けるのはVirtuoso Akasakaだよなぁなんてライブを観ながら思っていた私である。

当日のライブの模様を貼り付けておこう。本人以上に本人っぽい演奏をご堪能あれ。日本のJeff Andrewsこと横田健斗のベース,大槻カルタ英宣のタイトなドラミングも注目。もう一本のサックスは早稲田留学中のイケメン・テナー,Erik Nelson。夜な夜なセッションに出没しているらしいが,若いのに大したもんだ。

Live at Virtuoso Akasaka on February 2, 2024

Personnel: 矢堀孝一(g), Björn Arkö(ts, EWI), 横田健斗(b), 大槻カルタ英宣(ds), Erik Nelson(ts)

2024年2月 3日 (土)

RMS:英国版ジャズ・ロックの楽しさ。

_20240201_0001 "Live at the Venue 1982" RMS (Angel Air)

今にして思えば,本作の国内盤がリリースされていたというのは信じがたいが,好き者から見ると,これは惹かれるメンツが揃っていると思わせるアルバムである。英国ジャズ・ロック界の有名どころ勢揃いと言ってもよいだろう。

バンド名となったRMSはRay Russell,Mo Foster,Simon Phillipsの頭文字を取っただけのもので,味も素っ気もないってところだが,私はこのバンドのGil Evansとの共演盤を本作より前に入手していて,それについても既に記事にしている(記事はこちら)。更に遡れば,Mo FosterとSimon Phillipsは"There & Back"でJeff Beckを支えたリズムである。そういうこともあって本作も中古でゲットしたものだったはずだが,本作でもホーンの4人がゲストで加わっているのはGil Evansとの共演盤と同様だし,加わっているメンツも一緒である。RMSはトリオではあるが,実質的にはここでの7人編成というのが基本だったと思われる。

この演奏を聞いていて,ジャズ・ロック的なサウンドは大いに楽しめるし,各人のアドリブもレベルは高いと思えるが,いかんせん曲の魅力がイマイチなのが惜しい。端的に言えば記憶に残らないのだ。そういう意味ではこのアルバムは曲そのものよりも,パフォーマンスを楽しむべきものという気がする。このアルバムも久しぶりに聞いたが,演奏自体は相当楽しめるし,私としてはGil Evansとの共演盤よりこっちの方が好きかなぁ。ということで星★★★★。

尚,ジャケに入っているのはSimon Phillipsのサイン。彼がMike Stern~Bill Evansバンドで来日した時のサイン会でもらったもの。それももう6年半も前のことだ。光陰矢の如し。

Recorded Live at the Venue, London on September 24, 1982

Personnel: Ray Russell(g), Mo Foster(b), Simon Phillips(ds) with Mark Isham(tp,  Mo Foster(b), Simon Phillips(ds) with Mark Isham(tp, synth), Henry Lowther(as, ss)

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2024年2月 2日 (金)

11年も記事にしていなかったSteve Smith & Vital Informationのライブ・アルバム

_20240201_0002 "Live!One Great Night" Steve Smith & Vital Information (BFM Jazz)

主題を見ると,11年って何のこと?って思われる方も多かろうが,私は2013年の2月1日に彼らのライブについて記事をアップしている(記事はこちら)。その時,このDVD付きCDを入手して,そのうち記事にしようなんて書いておきながら,記事化しないまま11年も経ってしまった。Facebookには思い出として過去の同じ日の投稿内容が表示されることで,そう言えば...と思い出した私であった。

ライブが期待以上によかったので,このCDを購入した訳だが,改めて聞いてこのタイトな演奏は楽しめるものであった。私が聞いたライブの時のようなハード・フュージョン的キメキメの世界ではないし,超絶的にハード・ボイルドって感じでもないのだが,だからと言って決してやわではない。フュージョンとしてはいい具合の締り具合なのだ。

バンドは全員実力者だし,聴衆も大いに盛り上がっている。Steve Smithはドラムスだけでなく,コナッコル(口ドラムスと言うか,口タブラと言うかのあれだ)も披露し,それにギターのVinnie Valentinoもコナッコルでユニゾンするというのもなかなかない世界だと思ってしまった。いずれにしてもライブにしても,このCDにしても,私がVital Informationに抱いていたややネガティブなイメージを完全に払拭したものであり,この演奏はより多くの人に聞いてもらってもよいと思える快演。ちょいと甘いかもしれないが星★★★★☆としてしまおう。スムーズ・ジャズとは一線を画した「タイトなフュージョン」の良さを感じる演奏である。今度来日することがあれば,また行ってもいいと思えるバンドである。

それにしても,11年前にも書いたが,このサインの雑さは今でも笑える。

Recorded Live in Ashland, Oregon on November 9, 2007

Personnel: Steve Smith(ds, konnakol), Vinnie Valentino(g, konnakol, vo), Tom Coster(key), Byron Browne(b)

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2024年2月 1日 (木)

たまにはGary Mooreでも。ハード・ロックを身体が求める時もある(笑)。

_20240131_0001 "Rockin’ Every Night: Live in Japan" Gary Moore (Virgin)

Gary Mooreに限った話ではないが,どうしてもハード・ロックを身体が求めてしまう時がある。特にストレスが溜まった時や,憤懣やる方ない思いをしている時などが私にとってのそういうタイミングだが,それはフリー・ジャズに置き換わる時もある。端的に言えば,「ぐわぁ~」という感覚を生み出す音だ(笑)。

私が保有するGary Mooreのアルバムは少数だが,全て後追いで聞いていて,リアルタイムで聞いてはいない。しかし,本作や,この時のツアーの対象となっていた"Corridors of Power"なんかは,私ぐらいの世代にフィットする典型的なハード・ロックの音で,ついついプレイバックしてしまうことがある。まぁドラムスはIan Paiceってこともあって,Deep Purpleを聞いてきた人間にフィットするのもあろうし,ここでキーボードを弾いているのも,後にPurpleに加入するDon Aireyであるから,ますます納得してしまう。

ここでの演奏はライブらしい激しさがあって,「身体が求める」際には丁度いい(笑)し,十分にロックらしいカッコよさもあると思わせるものだ。逆にそれは荒っぽさもあることの裏返しというところもあるが,これだけタイトにやってくれれば文句も出ない。それにしてもGary Moore,弾き倒しである。彼のヴォーカルは...なところもあるが,ギタリストとしてはやっぱりいけていた。星★★★★。

それにしても,本作のボートラでも入っている"Parisienne Walkways(パリの散歩道)"のような曲を,フィギュア・スケートで使ってしまう羽生結弦って改めて凄いなぁって思ってしまった。Gary Mooreと全く縁のなさそうな層にも彼の音楽を知らしめた(そして多少なりとも印税にも貢献した)という意味では,羽生君は相当の功労者だな(笑)。

Recorded Live at 新宿厚生年金会館 on January 24 & 25,1983

Personnel: Gary Moore(g,vo), John Sloman(vo, key), Don Airey(key), Neil Murray(b), Ian Paice(ds)

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