年末年始に読んだ姫川玲子シリーズ最新作。新たなキャラ登場でシリーズも安泰?(笑)但し私としては文句ありだが。
なんだかんだと言って姫川玲子シリーズを読んでいる私である。昨年暮れに久々のこの長編新作が出て,読み始めてはいたものの,ちょっと時間が経ってしまったので,改めて年末年始で音楽を聴きながら読んだのであった。
ストーリーとしてはなるほどと思わせる部分もあるが,今回の作品におけるポイントは,新たなるキャラクターとして登場する魚住久江巡査部長だろう。明らかに姫川玲子と異なる造形で,今後,この二人の対比でストーリーを創造できそうだと思ってしまう。そうした部分も含めて今回も小説として面白く読めたのは否定しない。
だが,私が気になったのは誉田哲也の明らかな右翼的な言説であった。私がリベラルだからということもあるだろうが,あまりにも露骨なある意味「ネトウヨ」もどきとでも言いたくなるシチュエーション設定や思想的な表現は,姫川玲子シリーズがいくら好きでも,さすがに行き過ぎだと感じさせる部分があった。エンタテインメントにこうしたイデオロギー的なところが入り込んできてもろくなことはないと言っておこう。
誉田哲也がどのような思想に与しようと彼の勝手だし,私はどうこう言う資格はないが,エンタテイメント小説というメディアを使って,自分の考える方向に読者を誘導しようとするのには同調できない。それこそこの小説のタイトルの言うところの「悪意に満ちたアングル」を自分でやっているということではないのか。はっきり言って,ストーリーテリングはよりニュートラルな視点で創作してこそ,私は価値が高まると思う。ストーリーには大して文句はないが,そうした批判も含めて星★★★。
姫川玲子シリーズのストーリーが次も同じように展開されるのだったら,その次はない(きっぱり)。
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