2025年3月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
フォト
無料ブログはココログ

« 2023年12月 | トップページ | 2024年2月 »

2024年1月31日 (水)

お知り合いに感化されて,私もJoe Farrellのブートを。

_20240130_0001 "The Lighthouse Tapes" Joe Farrell (Bootleg)

ブログのお知り合いがこの演奏と同じソースのブートレッグについて書かれていた。そう言えば,私もこれって持っていたが記事にしていなかったなぁということで,取り出して改めて聞いてみることにした。

この音源がレコーディングされたLighhouseは現在も営業スタイルは変えながらLighthouse Caféとして営業しているものの,このブートの裏ジャケに"Closing Night of the Lighthouse"とある通り,この時の演奏でいったんライブハウスとしては閉店するというメモリアルなタイミングでの録音だったため,音源として残そうとした人間がいたというかもしれない。Dave LiebmanとSteve Grossmanを擁するElvin Jonesや,Lee Morganの名ライブ・アルバムも残した店がクローズするというのはそれはある意味「事件」なので,それも当然のことと思える。

このブートレッグを入手したのはそんなに前のことではないと思うが,これを購入したのは偏にJoe Farrellのワンホーンというところが大きい。Chick Coreaとの"Friends"にしても,CTIの諸作にしても,Joe Farrellのワンホーンは実に魅力的に響いたからだが,このブートでもその期待は裏切られることはない。ある意味手慣れたプログラムと言ってもよいものなので,緊張感に満ちた演奏とかそういった類のものではないが,心地よく時間を過ごすことができる演奏だと思う。フルートで演じる"My Funny Valentine"を除いてテナーで通すのもポイントが高いのだ。まぁ"St. Thomas"については...って感じだが(苦笑)。

最後のアナウンスメントでこれは1stセットとJoe Farrellが言っているので,残りの音源もあるのかもしれないし,Wikipediaにも,おそらくこの時の演奏が"Last of Lighthouse"(Unreleased)と記されて,同地におけるレコーディングのディスコグラフィに載っているので,正式に録音されたものの未発表だったものが発掘されたのかもしれない。いずれにしても世の中にはいろいろな音源がまだまだ眠っていることの証である。まぁブートはブートなので,音源のご紹介ということで。

Recorded Live at the Lighthouse on March 29, 1981

Personnel: Joe Farrell(ts, fl), George Cables(p), Bob Magnusson(b), Peter Erskine(ds)

2024年1月30日 (火)

先日16年ぶりの来日を果たしたBilly Joelの"The Stranger"を改めて聞く。

Stranger "The Stranger" Billy Joel (Columbia)

私は行っていないが,先日,16年ぶりの来日公演を東京ドームで開催したBilly Joel。彼ももはや74歳というのだから,時の流れは早いと思ってしまう。実を言えば,このアルバムは既にこのブログを開設した年に取り上げていて,偶然にも約16年半ぶりに再登場となったのも何か縁と思っておこう(その古い記事はこちら)。

数々のヒット曲を持つBilly Joelだが,日本でブレイクしたのは,本作からタイトル・トラックがシングル・カットされた頃だと思っている。それ以前にも"Piano Man"や"New York State of Mind"等の名曲をものにしていたBilly Joelだが,それらも日本では後追いで認知されたというところだろう。

"The Stranger"のシングルがリリースされたのは77年もしくは78年だと記憶しているが,イントロの口笛が印象的で,確かに日本ではやりそうだと思える曲調であった。この曲は本国ではシングル・カットされていないし,私が保有するベスト盤"Piano Man: The Very Best of Billy Joel"の輸入盤にもこの曲は入っていない。そんな曲をシングル・カットして,ヒットさせたのは当時のCBSソニーの戦略的な成功だったと言ってよい。因みに現在私が保有しているのは紙ジャケCDであるが,そこに復刻された当時の帯の宣伝文句が「今アメリカで人気最高のビリー・ジョエルを知ってる?大都会ニューヨークに息づく様々の人生。独特のリリシズムとメロウな旋律が君の心にしみる!」と来たのには受ける(笑)。当時は「知ってる」と答える人の方が少なかったと想像する。

それまでも本国ではそこそこアルバムは売れていたが,トップ10入りしたのは本作が初ということで,Billy Joelの黄金期はここからだったということになるだろう。次作"52nd Street"や次々作"Glass Houses"は全米#1ヒットとなったが,当時のBilly Joelは勢いが違った。

改めてこのアルバムを聞いてみて,後にベスト・アルバムにも収録されるお馴染みの曲が入っており,いい曲書いていたよなぁって思う。中でも私にとって"Just the Way You Are"の印象が強いのはPhil Woodsのアルト・サックス・ソロがあってこそってところだが,それ以外も耳に残るメロディ・ライン満載のアルバムであった。

因みに私がBilly Joelのライブを観たのは過去に一度だけ。私のNYC在住中の,Don Henleyが主催した"Concert for Walden Woods"と題されたベネフィット・コンサートであった。一夜にBilly Joel,Sting,Don Henleyが登場するというライブが開催されたのが1991年10月。YouTubeにはその時の模様のビデオ(隠し撮り)がアップされていてびっくりしてしまったが,懐かしいので貼り付けておこう。画像も音もボロボロではあるが,まぁ雰囲気,雰囲気(笑)。因みに東京ドームのライブの模様もYouTubeにアップされているが,ちょいと見ただけとは言え,ちゃんと声が出ているのにはこれまたびっくりした。

それにしても,古い記事を眺めながら,私の文体もちっとも成長していないと思ってしまった(苦笑)。そもそもこの歳になると正調なんて期待できないか...。ということで本作へのリンクはこちら

Personnel: Billy Joel(vo, p, key), Doug Stegmeyer(b), Liberty DeVitto(ds), Richie Canara(reeds, org), Steve Khan(g), Hiram Bullock(g) with Phil Woods(as), Richard Tee(org), Hugh McCracken(g), Steve Burgh(g), Dominic Cortese(accordion), Ralph MacDonald(perc), Phoebe Snow(vo), Lani Groves(vo), Gwen Guthrie(vo), Patti Austin(vo)

2024年1月29日 (月)

追悼,Dean Brown

Dean-brown

かねてから癌で闘病中であったDean Brownが去る1/26に亡くなった。クラウド・ファンディングで医療費を補おうという動きもあったが,願いは届かなかった。享年68歳とは若過ぎる死である。

私は彼のライブを二度観るチャンスに恵まれたが,ロック魂も感じさせるいいギタリストであった。

Dean_brown_and_i_mosaic

2014年に来日した時に,一緒に写真を撮ってもらったのも今となってはいい思い出だ。Dean Brownを偲んで再掲しておこう。彼が連れてくるメンツを見れば,音楽界での人望もわかるというものだったと思う。惜しい人を亡くした。

R.I.P.

2024年1月28日 (日)

Amazon Primeで「暴走機関車」を見た。こんな映画だったか...とほぼ記憶から飛んでいた(爆)。

Photo_20240121165001 「暴走機関車("Runaway Train")」(’85,米)

監督:Andrey Konchalovskiy

出演:Jon Voight, Eric Roberts, Rebecca De Mornay, John P. Ryan, Kyle T. Heffner

懐かしい映画だ。この映画,黒澤明が書いた脚本を翻案して製作されたということで,公開当時に劇場に行ったか,あるいはヴィデオで見たかは記憶が曖昧なのだが,ほぼリアルタイムで見たはずだ。しかし,ストーリーは主だったところは断片的には覚えていても,細かい部分はすっかり忘れていたこの映画をほぼ40年ぶりに再見した。

黒澤明本人はこの映画の出来(あるいは改変されたシナリオ)が気に入らなかったらしいが,それなりに見られる映画だと思った。もちろん,黒澤本人が撮っていれば,よりサスペンスフルな展開になっただろうなぁとは想像しつつ,まぁ許せる範囲だということにしよう。

Jon Voight扮するMannyとEric Roberts扮するBuckが脱獄する前の刑務所における描写等は面白みに欠ける部分もあるし,機関車が暴走を始めてからのテンションももっと高めようがあったようにも思える。そのほかにもケチをつけようと思えばいくらでもつけようがあるというところだが,黒澤が考えていたエンディングとは異なっても,これはこれでありだと思える部分もあった。だが,やはり私にとっては,これを黒澤が撮っていたらどうだろうということを想像してしまうのが,この映画にとってはちょっと辛いところかもしれない。

主演二人はこの映画でオスカーにはノミネートされたが,受賞に至らないのは仕方ないだろうと思える程度の出来だと思う。それでもそれなりには評価されたってことだろうが,映画としては星★★★☆ってところか。むしろ敵役と言ってよい刑務所の副所長を演じたJohn P. Ryanがまじで憎々しい。ありがちと言えばありがちな造形でも,こんな無茶苦茶な公務員はいないだろうと思いつつも,この憎々しさは面白かった。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年1月27日 (土)

珍しい編成ながら,いかにもConcordらしいスウィンギーなジャム・セッション。

_20240126_0001 "Live at the 1990 Concord Jazz Festival First Set" Various Artists (Concord)

往時のConcordレーベルは,オーナーのCarl E. Jeffersonの趣味が反映された,小粋でスウィンギーなアルバムが多かった。そして例年開催されていたConcord Jazz Festivalにおいてもそうしたオーナーの意向が色濃かったと思えるセッション・アルバム。私としては贔屓にしているEd Bickertの参加が本作を中古で購入した時の動機だったはずだが,改めて聞いてみると,こんな編成だったというのはすっかり忘れていた(爆)。

このアルバムの編成は実に面白く,トロンボーン3本がフロントというのが肝である。そこにもう1本,Harry "Sweets" Edisonのラッパがゲスト的に2曲で加わるというもの。トロンボーン3本も,1本はRob McConellのヴァルブ・トロンボーンだが,なかなかこういうアンサンブルって聞けないよねぇって思ってしまう。それだけでなく,ちゃんとピアノのGene Harris,そしてギターのEd Bickertのショーケースとなる演奏もちゃんと準備してあるところが,正しいセッションのあり方である。Carl E. Jeffersonはそういう人なのだと思わせる。

はっきり言ってしまえば,このクラスのミュージシャンなら楽勝でできてしまいそうな演奏なのだが,野外で行われるジャズ・フェスって楽しいだろうねぇって感じさせてくれるところがいいのだ。小難しいところ皆無。ジャズの楽しさという面が押し出されているってところだろう。メンツからすれば地味と言えば地味なのだが,こんなアルバムに日本語版ライナー・ノートが付いていたのにはびっくりだ。所謂輸入盤国内仕様ってところだろうが,どんだけ売れたんだ?って心配になる。まぁそれでも聞いていると結構楽しいのだ。Concordのよさが出ているってところで,甘いの承知で星★★★★。

Recorded Live on August 18, 1990

Personnel: Ed Bickert(g), Alan Dawson(ds), Harry "Sweets" Edison(tp), Al Grey(tb), Gene Harris(p), Rob  McConell(v-tb), Benny Powell(tb), Neil Swainson(b)

本作へのリンクはこちら

2024年1月26日 (金)

ECMのArt Ensemble of Chicago Boxから"Tribute to Lester"を聞く。

Tribute-to-lester "Tribute to Lester" Art Ensemble of Chicago (ECM)

買ったものの,なかなかプレイバックする機会が少ないのがECMからリリースされた"Art Ensemble of Chicago And Associated Ensemble"という21枚組の強烈なボックス・セットだ。Art Ensemble of ChicagoがECMに残したアルバムだけでなく,メンバーが参加したアルバムを集成したという強烈なものだが,音楽としても結構ハードルが高いのも事実なので,CD棚の肥やしになっているようなものなのだが,今回その中から完全に気まぐれで選んだのがこのアルバム。買ってから一度も聞いていなかったのを反省しての意味もあった。

Lester Bowieが亡くなり,Joseph Jarmanが離脱している時期の演奏で,タイトル通りLester Bowieの追悼の意味を持ったものだが,3人編成のArt Ensemble of Chicagoがどういう響きなのかというところが注目のポイントだろう。結論から言えば,パーカッションの使い方や,多様な音楽スタイルを聞かせるのは実に彼ららしいという気がするが,従来のArt Ensemble of Chicagoとは雰囲気は若干異なる気がする。特にホーンが一人となったRoscoe Mitchellの多才さが際立つって感じがする。プリミティブな感じもあれば,讃美歌のように響く瞬間もあるし,更には「ど」フリーな展開もあるという何でもござれ状態なのだ。

本作はLester Bowieへのトリビュート作ということもあって,演奏には気合が入りつつ,緊張と弛緩をうまく組み合わせていて,実に楽しめるアルバムとなった。私はArt Ensemble of Chicagoのいいリスナーだったとは言えないが,そんな私にも訴求力十分のアルバム。こういうアルバムをちゃんと聞いていなかったことを反省して星★★★★★としよう。

Recorded in September 2001

Personnel: Roscoe Mitchell(as, ts, ss, sn, bass-s, fl, whistle, perc), Malachi Favors Maghostut(b, bell, whistle, gong), Famoudou Don Moye(ds, conga, bongo, counsel-ds, bell, whistle, gong, chime)

本作へのリンクはこちら

2024年1月25日 (木)

"Crystal Green"を久々に聞いた。このゆるさが心地よいってところか。まぁ,それだけだが(苦笑)。

Crystal-green "Crystal Green" Rainbow Featuring Will Boulware (East Wind)

日本発のレーベルとして,East Windは確固たるポジションを確立した名レーベルだったが,そのカバレッジはモダン,フリー,ヴォーカル,そしてフュージョンまで何でもござれみたいなところがあった。ヴォーカルやフュージョンは少数派だろうが,その中でフュージョン系アルバムとしてリリースされたのが本作であった。

まぁこのアルバム,メンツがメンツなので,それだけで話題になってしまうというところもあったと思える。何と言ってもRichard TeeとChris Parkerを除くStuffが揃って,ソロイストはMichael Breckerなのだから,往時のクロスオーバー/フュージョンに関心があるリスナーであれば,やはり気になっただろう。と言っても私がこのアルバムを入手したのは随分後になってからのことだ。当時の私はStuffは"More Stuff"あたりは購入していたように思うが,Brecker Brothersまでは追っていなかったし,それほど沢山のレコードを買えるほどの小遣いでもなかった(苦笑)。だから当時の私にとってはレーダー・スクリーン圏外だったのだ。

当時(本作リリース時は高校生だ)これを聞いていたらどう思っていただろうと想像してしまうが,現在の私にはかなりゆるい演奏に響く。それはパフォーマンスそのものというよりも,企画そのものってところだろうが,名手が揃ったレコーディングなので演奏に破綻はない。だが,傾聴に値するアルバムかと言えばそうでもない。今にして思えば,Michael BreckerはどうやってもMichael Breckerで,そこが一番の聞きどころかと思いつつ,これはリテール・ショップでプレイバックしていれば,購入意欲が高まるような音楽ではないかと思えるのだ。この演奏の持つ適度なメリハリは心地よく響くのだが,それ以上でもそれ以下でもないというところだ。このメンツならもう少しタイトな演奏もできただろうが,やはりゆるい。聞き流すには丁度いいレベルだと思えば腹も立たないが,振り返れば,なぜこれがEast Windから出たのかというのは不思議だと思えてしまった。ってことで可もなく不可もなくなので,星★★★。でもMichael Breckerの吹きっぷりは好きだが...。

Recorded on May 11, 1976

Personnel: Will Boulware(p, key, synth, arr), Michael Brecker(ts), Eric Gale(g), Cornell Dupree(g), Gordon Edwards(b), Steve Gadd(ds), Ralph McDonald(perc), Arther Jenkins Jr.(key), Chris Hills(key)

本作へのリンクはこちら

2024年1月24日 (水)

今聞くと新鮮に響く"Wings Over America"。

_20240122_0002 "Wings Over America" Wings(Capitol→Hear Music)

私もPaul McCartneyのライブには何度か行ったことがあるが,昨今のレパートリーはBeatlesの曲が多くなる中に,新曲やソロ曲,Wingsの曲が混ざるという感じになっているが,このアルバムが制作された頃はWingsの活動がピークと言ってよい時期だけに,Wingsのレパートリーを中心にBeatlesを交えるという今とは逆のパターンになっている。何てたって,私が保有している2枚組CDのDisc 2にはBeatlesナンバーが全く入っていないし,Disc 1だって5曲だけなのだ。それが実は新鮮に響くから面白いと思ってしまったのが,このアルバムを久しぶりに聞いての感覚。

当時はWingsがワーキング・バンドだったのだから当たり前と言えば当たり前だが,Wingsとしてもヒットを連発していたPaul McCarteneyとしても自信を持ってツアーに臨んでいたことがわかるってところだ。

今でもPaul McCartneyは元気にライブをこなしているし,ホーンは入れても,編成を大きくしないバンド形態にこだわっているように見えるのは当時から変わらないが,まだこの時はPaulも30代半ばだったので声も若々しいものだ。また,バンドにはDenny Laneもいれば,Jimmy McCullochもいて,彼らにもリードを取らせて,バンドとしても最も充実していた時期だと思えばこのアルバムの勢いもわかるってものだ。

もちろん,ライブならではの粗っぽさもあることは事実だが,久しぶりに聞いてWingsの往時のヒット曲に懐かしい思いを新たにしたのであった。星★★★★。

Recorded Live at Various Venues between May 7 and June 23, 1976

Personnel: Paul McCartney(vo, b, g, p), Linda McCartney(vo, key), Denny Lane(vo, g, p, b, hca), Jimmy McCulloch(vo, g, b), Joe English(ds, vo), Tony Dorsey(tb), Howie Casey(sax), Steve Howard(tp, fl-h), Thaddeus Richard(sax, cl, fl)

本作へのリンクはこちら

2024年1月23日 (火)

Marlena Shawを偲んで,"Who Is This Bitch, Anyway?"を聞く。

Marlena-shaw

_20240122_0001 "Who Is This Bitch, Anyway?" Marlena Shaw(Blue Note)

Marlena Shawが亡くなった。私自身はこの人の大ファンって訳でもないとしても,"Who Is This Bitch, Anyway?"(それにしても凄いタイトルだ...)は優れたソウル・アルバムであり,冒頭の会話のシークェンス(これが面白過ぎる)から,ファンク・ビートが炸裂する"Street Walkin’ Woman"を聞いたら痺れること必定であることはいつ何時も変わらないのだ。ここでのChuck Raneyのベースはまさにファンクの聖典の一つと言っても過言ではなかろう。

全編を通してMarlena Shawのヴォーカルは実に素晴らしいが,このアルバムがBlue Noteレーベルから出たというのが何とも象徴的であり,ファンクとメロウが混在するサウンドが70年代中期という時代にフィットしたアルバムだったのだと思う。もちろん本作以外にもヒット曲はあるMarlena Shawだが,私にとってはこの1枚で記憶に残る人となった。そして,1曲を除いてリズムを支えるChuck RaneyとHarvey Masonにとっても最高のバックアップ作のひとつとなったはずだ。また,提供した曲も含めて,プロデューサーとしてのBenard Ighnerにとっても最良の一枚だっただろう。

改めて,このアルバムを聞いて,Marlena Shawを偲びたい。

R.I.P.

Personnel: Marlena Shaw(vo, p), Chuck Raney(b), Chuck Domanico(b), Harvey Mason(ds, perc, wind-chimes), Jim Gordon(ds), David T. Walker(g), Larry Carlton(g), Dennis Budimir(g), Larry Nash(el-p), Mike Lang(p), Bill Mays(p), King Errison(perc)

本作へのリンクはこちら

2024年1月22日 (月)

Amazon Primeで猪木名勝負10選を見る。まずはストロング小林戦。

Photo_20240121101901

Amazon Primeで現在「アントニオ猪木名勝負10選」というのが見られる。私も往年のプロレスには血沸き肉踊らされた年代だが,現代のプロレスと比べると,戦いっぷりがのんびりとしているというか,正統的ストロング・プロレスのような感じが見られて,ついつい懐かしくなってしまった。今見るとストロング小林は太り過ぎって感じがして,猪木のレスラーとしてのスタイルのよさが目立つが,それもまた懐かしい。

この10選,暇を見つけては見ることにしようと思う。但し,この10選のセレクションには若干疑問もあるのも事実が,そういうところは大目に見よう。次はタイガー・ジェット・シンかぁ。それも楽しみだよなぁ(笑)。

2024年1月21日 (日)

中年音楽狂の都道府県制覇。

なんのこっちゃ?という主題であるが,私は仕事柄出張が多く,日本の都道府県は仕事でほぼ訪問してきて,某県だけが未踏の地として残っていた。未踏とは言っても,通過したことはあるにはあったが,降り立ったことがなかった。今回,近隣県に行く機会があって,折角なのでちょいと足をのばして同地へ行ってきた。これで全都道府県訪問完了。積年の課題(笑)がこれでようやくクリアされたという感じだ。

今後は全米50州制覇とかも目指そうと思えば目指せないことはないが,そもそも海外に渡航する機会が激減している中,これは夢のまた夢だろうし,そもそもノース・ダコタとかウエスト・ヴァージニアなんて行きそうにないしねぇ。

2024年1月20日 (土)

Rolling Stone誌改訂版"The 500 Greatest Album of All Time"でも不動のトップは"What’s Going on"

_20240119_0001 "What’s Going on" Marvine Gaye(Motown)

昨年末に改訂版が発表されたRolling Stone誌の"The 500 Greatest Album of All Time"において,改めて第1位に推されたのが本作。プロテスト・ソングの収めたアルバムとしての位置づけが評価されているということもあると思うが,Marvin Gayeの歌いっぷりは怒りを発露すると言うより,むしろ穏やかなものであり,そのギャップが実に面白い。

Marvin Gayeがシングル・アーティストからアルバム・アーティストへと変貌を遂げた端緒となったとも言われる本作の素晴らしさは私がどうこう言う余地はない。曲よし,歌よし,演奏よしの三拍子揃った傑作。タイトル・トラックや"Mercy Mercy Me"のような曲を聞けば,もはやソウル/R&Bの枠は完全に越えていることがおわかり頂けよう。

尚,私が保有しているのはこのアルバムのデラックス・エディションだが,ライブ音源のほかに,Disc 1の後半には"Original Detroit Mix"という同一音源の別ミックス・ヴァージョンが収められていて,リリースされたヴァージョンとの違いが楽しめる。同じ音源でもミックス違いでかなり印象が違うのだ。もちろん,オリジナルを聞いていればそれで十分ではあるが,ご関心のある方はどうぞ。現在はそちらも分売されているので念のため。

本作へのリンクはこちら

2024年1月19日 (金)

Wynton Marsalisの"Hot House Flowers"の続編とでも言うべきWith Stringsもの。

_20240117_0001 "The Midnight Blues: Standard Time Vol.5" Wynton Marsalis (Columbia)

ツボにはまった時のWynton Marsalisが凄いことはわかっていても,原理主義的な日頃の言動やプレイぶりに,ジャズに熱量を求めるリスナーからは好かれないのは,本人にとってはどうでもよいことなのかもしれない。なんてたって,ピューリツァー賞も受賞した堂々たるエスタブリッシュメントなのだ。

しかし音楽を聴くだけのこっちの立場からすれば,やはりスリリングな演奏を期待してしまうというのが正直なところ。だから私がWynton Marsalisのアルバムに手を伸ばす機会はそう多くはない。私としては,兄貴のBranfordとバンドをやっている頃はよかったと思うが,そのWynton MarsalisがまだBranfordとの活動を続ける中で,"Hot House Flowers"でストリングスをバックにした見事なバラッド表現を聞かせたのが1984年のことであった。それから13年後の97年に改めてWith Stringsでレコーディングしたのが本作。ストリングスのアレンジメントは"Hot House Flowers"同様Bob Friedmanが務めていることからして,続編という扱いをしてもいいようなムーディなバラッド・アルバム。

こういうのを聞かされると,まじでうまいわぁ~と思ってしまう。そして何とも芳醇なバラッド・アルバムとして,夜に小音量でプレイバックしたくなること必定というところ。日頃はWynton Marsalisに否定的な私のようなリスナーも黙らせてしまう力を持っていると言わざるをえない。"Glad to Be Unhappy"のエンディングのソロ・フレーズなんて,バラッドに留まらない表現だと思えるし,そうした意味での満足度は高い。さすがにこのムーディさは過剰と思える部分もあるが,時と場合を選べば非常にフィット感が高まるアルバム。演奏の質の高さは保証できるので,星★★★★☆としよう。

Recorded between September 15-18, 1997

Personnel: Wynton Marsalis(tp), Eric Reed(p), Reginald Veal(b), Lewis Nash(ds), Bob Friedman(arr, cond) with strings

本作へのリンクはこちら

2024年1月18日 (木)

読響定期でサントリーホールに行ってきた。

Suntory-hall-20240116 今年2回目のライブはクラシック。私の場合,クラシックのライブに行くのは,大規模オケの作品,ピアノ・リサイタル,ヴァイオリン・リサイタルのいずれかという偏った機会になるが,今回はオーケストラ。サントリー・ホールでのSebastian Weigleが振る読響定期であった。ねらいはリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」。私はこの曲自体に触れたのは,冒頭部分が「2001年宇宙の旅」で使われていたのが最初だったが,全曲を聞いたのはその随分後になってから。正直言って, 曲自体は大したことはないと思っているが,オケの響きを生で聞くと感覚も変わるかもとも思っていた。

かつ,この日のプログラムは「リエンツィ」序曲に始まり,Daniel Lozakovitjをソリストに迎えたベートーヴェンのヴァイオリン・コンチェルトというなかなか濃いプログラムであったのも,チケットを購入した理由であった。私みたいな人も多いのか,会場はほぼフルハウス。

「リエンツィ」はオケの手慣らしって感じの演奏で軽く始まった。古い話になるが,私が初めて「リエンツィ」に接したのはKen Russellの映画「リストマニア」のサントラをRick Wakemanが担当していて,そこにちらっと「リエンツィ」のメロディが出てくるところからだが,それ以降も序曲以外は聞いたことはない(爆)。それはさておき,オケも聴衆も準備運動みたいなものだ。

次に演じられたのがベートーヴェンだが,Daniel Lozakovitjは弱冠22歳とは思えない達者な演奏で,カデンツァも堂々たる弾きっぷりだったと思うが,いかんせんこの曲は私には長い。曲として嫌いだという訳でもないし,今回の演奏にも大して不満はないのだが,生で聞いていても,第1楽章の長さが必要なのかと感じていた。この曲をコンサート・プログラムに織り込むのもなかなか大変だよなぁなんて思っていた次第。Daniel Lozakovitjのソリスト・アンコールで弾いたバッハは,そうした私の中でのベートーヴェンに対する冗長感を癒す効果があったと言っては言い過ぎか。

そして,「ツァラトゥストラ」だが,オケのダイナミズムを感じるにはいい曲であった。あらゆる楽器の聞かせどころを持っている曲だとは思うが,私は実はこの曲は弦の美しさが勝負どころではないのかと思っている。日本のオケは弦はかなり優秀でも,管にパワー不足な部分があるところは否めないが,そういう意味ではこの日の弦の響きはよかったと思うし,管もやらかした部分はありつつも善戦していたので,そこそこ楽しめる演奏であった。しかし,この曲,やはり冒頭部の印象が強過ぎるということもあって,何度聞いてもそのほかのメロディ・ラインが頭に入ってこないのが難点だなぁなんて思っていた。自分自身極めて邪道とも言うべき聞き方をしていたようにも思うが,生のオケの響きを楽しみに行っているからいいのだと開き直っておこう。

Live at サントリー・ホール on January 16, 2024

Personnel: Sebastian Weigle(cond), Daniel Lozakovitj(vln), 読売日本交響楽団

2024年1月17日 (水)

TOTOの初来日時のライブ音源。これはいかんだろう...。

_20240115_0002 "Live in Tokyo 1980" TOTO (Columbia)

先日TOTOのデビュー・アルバムを取り上げたが,私は彼らのColumbiaレーベルにおけるアルバムを網羅した"All In"というボックスを保有していて,これはその中に含まれている一枚。アナログEPはRecord Store Dayにリリースされたようだ。これはTOTOが初来日時のライブを捉えた音源なのだが,正直言って,これは聞いているのが苦痛になるような音源だ(きっぱり)。

そもそもバンドのメンバーもこの音源のリリースには難色を示していたらしいが,それもさもありなんと思わせるものだ。そもそもチューニングが狂ってるんじゃないの?と思わせる部分があるのだが,それ以上に私が耐えられないと思ったのがBobby Kimballのヴォーカルである。金切声としか思えない歌いっぷりは,どう考えてもうまいと思えないし,シャウトすればロックだと思っているのか?と突っ込みを入れたくなるのだ。

そもそもライブ・バンドとしてまだまだこなれているとは思えない演奏ぶりは,当時はライブでの場数が足りなかったのではないかと思えるレベル。こういうのをありがたいと思うのは根っからのファンだけだろう。私は少なくとも初期のスタジオ・アルバムについては決して悪い印象は持っていないが,これは全くダメ。とにもかくにも粗さばかりが目立つもので,とてもTOTOの音とは思えないレベルであり,リリースしない方がよかったと言っておこう。後に出るライブ盤がずっとまともに思えてしまう駄盤。星★。

Recorded Live in Tokyo, 1980

Personnel: Steve Lukather(g, vo), David Paich(key, vo), Steve Porcaro(key, electronics), David Hungate(b, g), Jeff Porcaro(ds, perc), Bobby Kimball(vo)

本作へのリンクはこちら。但し,決してお勧めはしない(爆)。

2024年1月16日 (火)

正月休みに観た映画の最後は「オペレーション・フォーチュン」。気楽に見られる笑えるアクション映画ってところだな。

Operation-fortune 「オペレーション・フォーチュン ("Operation Fortune:Ruse de Guerre")」('23,英/米)

監督:Guy Ritchie

出演:Jason Statham, Aubrey Plaza, Hugh Grant, Cary Elwes, Josh Hartnet, Bugzy Malone

正月休みに延々とストリーミングで映画を見続けた私が,最後にチョイスしたのがこの映画。次から次へと出演するJason Stathamのアクション映画なのだが,結構笑える部分もあるのが面白い。正直言ってしまえばしょうもない映画なのだが,正月休みも終わりに近づくブルーな気分においては,これぐらいお気楽な映画も結構大切だ(笑)。

世界各地でのロケを行うものの,ストーリー的にはここまで各地を転々とする必要はないだろうと毒づきつつ,観光アピールもあるだろうから,それはそれでよしとしよう。しかし,アクション映画に求められるサスペンスフルな展開とかを期待すると裏切られる展開というか,善玉側に都合よく話が展開し過ぎではないかと思えてしまう。これだけドンパチが出てくるのに,善玉側に全く危機的な要素がないというのはあまりにも非現実的だ。だからこそお気楽な訳だが,Guy RitchieとJason Stathamの組み合わせなら,もう少しシリアスだった「キャッシュ・トラック」の方がよくできていたというのが正直なところ。

エンド・ロールを見るまで,Gregを演じているのがHugh Grantだと気づかずに見ていた私だが,この人も何でもやるねぇと思ってしまった。やっぱり笑いの要素をエンド・ロールとかでもぶち込んでくれるのはHugh Grantらしいと思った。

いずれにしても暇つぶしにはなるし,休みが終わりに近づくブルーで暗い気分を忘れるにはよかったという効果も認めて星★★★。

2024年1月15日 (月)

時代が時代ならもっと売れたと思えるJess Rodenのライブ・アルバム。

Blowin"Blowin'" Jess Roden Band (Island→Big Pink)

Jess Rodenは結局メジャーな存在とはなり切れなかった人だが,私はこの人のアルバムを結構保有していて,所謂ブルー・アイド・ソウルの代表として捉えていいと思っている。何と言ってもJess Rodenの声が私には魅力的に響く。一時AOR方面に舵を切った時期のアルバムはそれほどでもないのだが,Jess Roden BandやHumansとの共演盤の音は好きなのだ。そんなJess Rodenのライブ・アルバムが,マイナーでありながら魅力的なレコードの発掘を続けるBig Pinkレーベルからリリースされていることを知り,早速入手したのであった。もともと韓国のBig Pinkはよくこんなものまで...と思わせるようなリリースもあるが,そのどんどん広がる目配りぶりには感心してしまう。この会社のオーナーは間違いなく相当のオタクだと思わざるをえない(きっぱり)。

それはさておき,Jess Rodenの不幸は,パンクの勃興期と最も活発な活動時期が重なってしまったことだと思える。パンクに走る当時の若者にとっては,ここで聞かれる音楽はおそらくは古臭いものでしかなかっただろうが,ソウル・フレイヴァー溢れる歌唱,演奏は私のような年代のリスナーのツボにはまる。今回リリースされたアルバムはUS仕様に基づくものなので,3曲目はTemptationsのカヴァー,"Can’t Get Next to You"になっているが,UK盤ではここに"Desperado"が入っていたらしい。その"Desperado"は後にリリースされたBBCでのライブ盤にも入っているし,このアルバムの曲はBBCライブにもほぼ収録されているので,ライブ盤ならそっちを持っていればいいやって感じもあるのだが,ミキシングのせいもあるだろうが雰囲気が結構違う。本作の方がホーン・セクションやバック・バンドの音の押出しが強く,ファンク色は強く感じられるのだ。

いずれにしても,ブルー・アイド・ソウル炸裂という感じの音を聞けば,やっぱりこの人,いい歌手であったと思わざるをえない。時代が時代であれば,もっと売れていても不思議ではない人だった。星★★★★。そして後のHumansとのアルバムで,ロック色を強化して私を痺れさせてくれるのであった。 

Recorded Live in England in the Autumn, 1976

Personnel: Jess Roden(vo), John Cartwright(b), Pete Hunt(ds), Steve Webb(g, vo), Bruce Roberts(g, vo), Billy Livsey(key, vo), Chris Gower(tb, perc), Ronnie Taylor(sax, perc)

本作へのリンクはこちら

2024年1月14日 (日)

正月休みにAmazon Primeで再見した「ゆれる」。思えばこれが私と西川美和の出会いであった。

Photo_20240107095501 「ゆれる」(’06,シネカノン)

監督:西川美和

出演:オダギリジョー,香川照之,伊武雅刀,新井浩文,真木よう子,木村祐一,ピエール瀧,田口トモロヲ,蟹江敬三

私がこの映画を観たのは海外出張からの帰途での機内エンタテインメントとしてであった。ブログを振り返ると,それは2009年2月のことで,既にそれから15年近くが経過しているのには我ながら驚いた。だがそれが契機となって,西川美和という人への関心が高まり,その後の彼女の映画は全て見ているし,著作も結構買っている。それぐらい印象に残る映画だったと言ってもよい。

しかし,その時は機内エンタテインメントだし,当時はまだ機材も現在の航空機のようには充実していないから,小型の画面で見てのことだった。なので,いつかまた見てみたいとは思いつつ,そのうちに15年も経過していた訳だが,今回,Amazon Primeで観られるようになったので,ようやく再見した私である。

以前の記事にも書いた通り,この映画は心理劇と言ってよいものなので,小型の画面でも問題なかったが,今回改めて見て,キャスティングの勝利のような役者陣の充実ぶりに感心するとともに,「ディア・ドクター」で見られた「風にそよぐ草のゆらめき」のシーン同様,木々がゆらめくシーンがあって,おぉ,Tarkovsky的なんて思っていた私であった。映画館でなくてもある程度の画面サイズは必要だなぁと思ってしまった。

いずれにしても,改めて見てもつくづくよくできた映画だったと思う。こうなったら,西川美和のデビュー作「蛇イチゴ」も見なければ(笑)。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年1月13日 (土)

今年のライブ初参戦は赤坂Virtuosoにおけるジャム・セッション。

Virtuoso-live

今年のライブ初参戦となったのは,最強のサラリーマン・サックス奏者,八木敬之くんも参加する赤坂Virtuosoにおけるジャム・セッションであった。一応ホスト・バンドとしてのピアノ・トリオはいるものの,メンツは入れ替わり立ち替わりって感じで,全部で何人が演奏したかは私も最後は酔っぱらっていて記憶に定かではない。演奏した曲はまぁジャム・セッション向きって曲も多かったが,最後の最後に私からの"Chromazone"をやってくれい!というリクエストに応えてくれた店主,矢堀孝一や八木くんに感謝(笑)。

ホスト・トリオは皆若い割に実力は十分だと思えたが,その中でも私が注目してしまったのが上の写真(リハーサル中)にも写っているベースの小西佑果。小柄で眼鏡姿もキュートな彼女の姿からは想像できないベースの音とフレージング。いやいや知らぬことだったとは言え,日本の若手ミュージシャンも大したものだ。これで歌ってくれれば,日本のEsperanza Spaldingになれるなんて思ってしまった。しかも今はアコースティック・ベース専業らしいというのもいいねぇ。彼女のWebサイトに音源があったので,貼り付けておこう。ここでのベース音を聞いてもらえば私の感覚も理解してもらえるのではないか。

今年のライブ生活はこうして幕を開けたが,次は読響の定期だ。

出演者全体はわからないが,ホスト・バンド+2のPersonnelを挙げておこう。

Live at 赤坂Virtuoso on January 11, 2024

Personnel: 豊秀彩華(key), 小西佑果(b), 多田涼馬(ds), 矢堀孝一(g), 八木敬之(ts) 

2024年1月12日 (金)

TOTOの旧作についてはあまり記事にしていなかったということで,今日はデビュー・アルバム。

_20240110_0001 "TOTO" TOTO (Columbia)

懐かしの「宇宙の騎士」である(笑)。TOTOが本作をリリースしたのが1978年のことであった。私はFMで小林克也がやっていた番組で,"Hold the Line"が全米チャートのトップ10に入ったということでプレイバックされたのが最初のTOTO体験だったはずだ。その後幾星霜を経たが,なんだかんだ言って,私はTOTOのアルバムは結構保有しており,このブログでも何度か記事にしている。しかし,初期のアルバムについては全然書いていなかったので,今更ながら感は強いが,このデビュー・アルバムを取り上げることとしよう。

私がTOTOに抱く印象は「ソリッドなロック」だが,そうした印象はこのデビュー・アルバムから顕著だ。もともとはBoz Scaggsのバックを務めていた面々が結成したというようにも伝えられたTOTOであるが,"Silk Degrees"ではそれほどソリッド感は感じられず,"Middle Man"のサウンドの方がTOTOの印象に近いと思っている。それはTOTOというバンドにおいて,Steve Lukatherというギタリストが果たしていたサウンド的な役割が大きかったからだろう。更にJeff Porcaroのタイトなドラムス,David PaichとSteve Porcaroのカラフルなキーボードが相俟ってTOTOサウンドは形成されていた訳だ。David Hungateはどうした?って問われれば,実に手堅い(笑)。

そして,このデビュー・アルバムとなる訳だが,その後のTOTOのライブにおいても繰り返し演奏される曲が含まれていることからしても,魅力的な楽曲が結構揃っていると感じさせるが,必ずしも魅力的な曲ばかりとは言えない部分はあると思う。名曲揃いのアルバムなんてのはそう簡単には制作できないということを差し引いても,デビュー・アルバムとしてはそこそこよくできたアルバムだったと思う。星★★★★。ということで,私は彼らのColumbiaレーベル時代の音源を網羅した"All In"というボックスも保有しているので,そのうち順次記事にすることにしよう(ほんまか?)。

Personnel: Steve Lukather(g, vo), David Paich(key, vo), Steve P(g, vo), David Paich(key, vo), Steve Porcaro(key, vo), David Hungate(b), Jeff Porcaro(ds, perc), Bobby Kimball(vo) with Lenny Castro(perc), Jim Horn(winds), Chuck Findley(tp), Roger Linn(synth), Cheryl Lynn(vo), Marty Paich(arr), Sid Sharp(arr)

本作へのリンクはこちら

2024年1月11日 (木)

正月休みにAmazon Primeで観た「スピード」。これぞノンストップ・アクションってところ。

Speed-movie_20240111113501 「スピード ("Speed")」('94,米,Fox)

監督:Jan de Bont

出演:Keanu Reeves, Dennis Hopper, Sandra Bullock, Joe Morton, Jeff Daniels

正月休みにはまだまだ映画を見ていた私である。この映画は確かレンタル・ビデオで観たことがあるが,それがおそらく30年近く前で,それ以来の再見となった。映画の筋書きは覚えていたが,ここまでノンストップでアクションが続くとは記憶していなかった。

この映画はそれこそそのノンストップ・アクションが最大の特性と言ってもよいだろうが,私にはDennis Hopper演じるHoward Payneのファナティックな感じこそがこの映画で最も印象に残った。まさに怪優である。一方,主役のKeanu Reevesはほぼ出ずっぱりという感じだが,その後のKeanu Reevesの活躍はこの映画が端緒となったと言っていいんだろうと思える映画であった。ついでにSandra Bullockのブレイクもこの映画だったと言ってよいだろう。

こういう映画に難しいことを言っても仕方がないが,Dennis Hopper演じるHoward Payneがそんなに都合よく次の準備ができるのかなんてことを考えてしまうのが私の天邪鬼なところ(笑)。まぁそういうある意味雑なシナリオの穴や無茶苦茶と言ってもよいストーリーを補うのがアクションの連続ということにしておこう。何も考えずに単純に楽しめばいいという感じの映画として,ちょっと甘いと思いつつ星★★★★。

エンディングで歌うのがBilly Idolってのもこの映画らしいなぁと思っていた私だが,更に面白かったのが,私の見間違いでなければ,エンド・クレジットにSoloistとしてAllan Holdsworthの名前を見つけたことか。いろんなことをやってるんだねぇと思ってしまった。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年1月10日 (水)

Hamiet BluiettのCarlos Iでのライブ第2作を久々に聞く。

_20240106_0001 "Live at Carlos I: Another Night" Hamiet Bluiett & Concept(Just a Memory)

私のバスクラやバリトン・サックス好きはこのブログにも何度か書いているが,バリトンのアルバムとして数を保有しているのが,このHamit Bluiettである。Hamiet BluiettがNYCのCarlos Iで吹き込んだライブ・アルバムは3枚がリリースされていて,1枚目は既に記事にしているが,それももう6年以上前(その時の記事はこちら)。今日はその続編としてリリースされた枚目だから"Another Night"(因みに3枚目は"Last Night")。

以前の記事にも書いているが,常々思うのがHamiet Bluiettはフリー系ミュージシャンとしてカテゴライズされることへの違和感だ。この人のベースは私はあくまでもブルーズだと思っていて,そこに時折フリーキーなトーンやフリーっぽいフレージングが混じるだけだ。演奏もこのシリーズでもそうだが,コンベンショナルなジャズ・チューン/スタンダードも演奏していて,本作の冒頭は"I'll Close My Eyes"だし,3曲目は何と「枯葉」だ。そこに加わる3曲のHamiet Bluiettのオリジナルも決してフリーな曲調ではない。おかしなカテゴライズによって,Hamiet Bluiettというミュージシャンへのハードルが一般のオーディエンスに高まってしまったのであれば不幸なことだと思わざるをえない。

だからと言って,Hamiet Bluiettが尖ったミュージシャンであることには異論はない。だって,バリトン・サックスでソロ・アルバムを作ってしまうような人であるから,普通ではない(笑)。だが,私はこの人の音色,フレージングには大きな魅力を感じてしまうのも事実なのだ。ダラダラとしないテンションの高さもスリリングに響くのだ。ピアノのDon PullenもHamiet Bluiettと同じような感覚を持ったミュージシャンということもあり,本作でも強烈なピアノ・ソロで応えているのが楽しい。

演奏に関してはアフリカン・パーカッションのChief Beyはここに必要だったか?という疑問はあるが,全体としては楽しめる演奏と思う。星★★★★。以前の記事で「続編も聞いてみますか」なんて書いてから6年以上も経ってしまったので,"Last Night"は遠からず取り上げたいと思う。

因みにこのアルバムがレコーディングされたCarlos Iという店は私がNYCに在住した頃にはもうなくなっていたと思われる。6th Ave.と9thの角という立地なら私が見逃したはずはない(きっぱり)。そう考えると,NYCのジャズ・クラブの入れ替わりも激しいよなぁって思う。まぁ,このクラブにはBenny Carterも出ていたようだから,結構バランスの取れたミュージシャンのセレクションだったということがうかがえる。

Recorded in November 1986

Personnel: Hamiet Bluiett(bs), Don Pullen(p), Fred Hopkins(b), Idris Muhammad(ds), Chief Bey(perc)

本作へのリンクはこちら

2024年1月 9日 (火)

正月休みにAmazon Primeで観た「アンタッチャブル」。

The-untouchables 「アンタッチャブル ("The Untouchables")」(’87,米,Paramaount)

監督:Brian De Palma

出演:Kevin Costner, Robert De Niro, Sean Connery, Andy Garcia, Charles Martin Smith

正月休みには家でゴロゴロしながら,映画を結構見ていた。私には以前映画館に全然通わない時期があって,当時はレーザー・ディスクを家で見たり,ビデオをレンタルするのが一般的な映画の見方であった。そうした時期は特に80年代に集中していると言ってもよいかもしれない。この映画もその時期に重なっており,実は今まで一度も見たことがなかったので,Amazon Primeで観てみた。

この映画,階段での乳母車のシーンはよく取り上げられていた記憶があるが,何よりもRobert De NiroのAl Caponeへのなりきりぶりが楽しい。そしてKevin Costnerが若い。まだこの映画の当時は30代前半なんだから,若くて当たり前だが,ある意味初々しささえ感じてしまった。そしてSean Conneryが「渋さ」を炸裂させていて,この3人を見ているだけで楽しくなってしまった。Sean Conneryは本作でオスカーの助演男優賞を獲得したが,それもうなずける演技っぷりであったと思う。

映像はヴァイオレンスたっぷりでなかなか強烈だが,Brian De PalmaのHitchcock好きが現れるのはらせん階段のシーン。「めまい」を意識していることは間違いないところだが,本当に好きなんだねぇって思ってしまう。

本来は長い期間に渡ったであろう話を2時間以内に収めているので,映画としてはスピーディで私には丁度いい感じだが,若干性急に話が進むきらいがないでもない。それでも十分に楽しめるエンタテインメント作品として星★★★★。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年1月 8日 (月)

Deacon Blue温故知新。彼らのデビュー・アルバムを改めて聞く。

_20240105_0001"Raintown" Deacon Blue (Columbia)

私はDeacon Blueの新作が出るたび,ほとんどその年のベスト・アルバムに選んでしまっている。"The Hipsters"然り,"A New House"然り,そして"Believers"然りである。その後の"City of Love"はイマイチであったものの,Ricky Rossの持つポップ・センスはいつまで経っても瑞々しさを失わないが,改めて彼らのデビュー・アルバムを聞いた。

このアルバムがリリースされたのが1987年なので,リリースから既に40年近い年月が経過していることになるが,そんな時の経過を忘れさせるような佳曲を聞いていて,ワクワクしてしまった。私は常々書いているように,ロック系の音楽は明らかに米国寄りのサウンドを好む中,例外的な存在の一つがこのDeacon Blueなのだ。そもそものバンド名をSteely Danの"Deacon Blues"から取っていることから,典型的なブリティッシュ系の音と違う部分もあるかもしれないし,Burt Bacharachもカヴァーしてしまう彼らの音楽的出自のようなものが私に魅力的に響くところもあるだろう。

改めて聞いても,このアルバムの魅力は不変だったと再認識した私であった。既にRicky Rossのポップ・センスは十分に開花しているし,私の保有するLegacy Editionのディスク2ではオリジナル・アルバムの曲順にライブやデモ音源を収めるという編集方針もナイスである。それも含めてちょっと甘いと思いつつて星★★★★★としよう。

Recorded between December 1986 and February 1987

Personnel: Graeme Kelling(g, vo), James Prime(key, vo), Ricky Ross(vo), Ewen Vernel(b, vo), Douglas Vipond(ds, perc) & Lorraine McIntosh(vo) with Chris Rae(g), B.J. Cole(pedal steel), Jimmy Helms(vo), George Chandler(vo), Jimmy Chambers(vo)

本作(Legacy Edition)へのリンクはこちら

2024年1月 7日 (日)

Amazon Primeで「夕陽のギャングたち」を初めて観た。

Photo_20240104101101 「夕陽のギャングたち("Duck, You Sucker!")」(’71,伊)

監督:Sergio Leone

出演:Rod Steiger, James Coburn, Romolo Valli, Antoine Saint-John

正月休みにAmazon Primeでこの映画を観た。Sergio Leoneの映画で観ていなかったのが本作と,遺作となった「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の2本だったのだが,遺作の方はストリーミングでも観られるのだが,4時間近い大作なので,正直なところ,なかなか見るチャンスに恵まれない。本作も2時間半越えの長編ではあるが,丁度いいかなと思って観たもの。Clint Eastwoodが出た3部作に対して,前作「ウエスタン」,本作,遺作は「ワンス・アポン・ア・タイム」3部作とも称されるとのことだが,もともとSergio Leoneはこの映画のタイトルを"Once upon a Time...the Revolution"と考えていたらしいから,なるほどってところだ。

メキシコの革命期が舞台なので,正統派(?)ウエスタンって感じではないのだが,ダイナマイトを相当量ぶっ放すってのがアクション映画たる所以である。最終的にはRod SteigerとJames Coburnの間の友情物語になっていくが,Sergio Leoneは政府軍と革命軍の間での大量殺戮合戦みたいなところに厭戦気分をまぶしたって気もする。

この映画で一番カッコいいのはJames Coburnであるが,渋さと陰影を醸し出していて,James Coburnらしいなぁと思っていた。一方の主役を張るRod Steigerは,もともとSergio Leoneがこの役はEli Warrachを考えていたということからもわかるように,若干ミスキャスト気味ではないかとも思えるのは,「夜の大捜査線」等での印象が強いせいもあるかもしれない。いずれにしても,この役はEli Warrachの持つ「味」の方がフィットしていたとは思う。

今回,この映画を初めて見て,こういう映画だったのか~と思っていた私だが,これはこれで見どころもあって,面白く観られたのであった。星★★★★。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年1月 6日 (土)

新年最初のジャズ・アルバムはジョンアバから。

Abercrombie-quartet "Abercrombie Quartet" John Abercrombie (ECM)

いろいろなことがあった正月休みも後半となってきたので,そろそろジャズ・アルバムでも聞こうということで取り出したのが本作。現在は"The First Quartet"というボックスで簡単に入手できるようになったが,一時期(と言っても結構長い期間),Richie BeirachがManfred Eicherともめたせいで,同じメンツによる"Arcade"並びに"M"同様廃盤の憂き目にあっていたアルバムである。だが,このメンツなので,当然廃盤にすべきような演奏ではない。そうした意味で,Manfred Eicherの頑固さが出たって感じだろうが,むしろそれだけ頑固なEicherがストリーミングをあっさり解禁したのには驚いたものだ(それで聞けるようになった廃盤アルバムも結構あったので,それはそれで嬉しかったのだが...)。

ジョンアバはECMにおいて,"Timeless"を出し,そして"Characters"を出した後にこうした編成のアルバムをリリースすることは今にして思えば意外なことではあるが,George MrazとPeter Donaldはジョンアバがバークリーに通っていた頃からの付き合いだったそうで,それを受けてのクァルテットだったということになるようだ。

改めてこのアルバムを聞いてみると,ECM的というよりは,コンテンポラリーなギター・クァルテットという感じのサウンドである。もちろん,ジョンアバのギターの音はオーセンティックなジャズ・ギターって感じではないが,緩急を交えた演奏は実に楽しく聞ける。曲は3曲ずつ,ジョンアバとRichie Beirachが分け合っているが,今聞いても,どれもが佳曲と言ってよい出来であった。星★★★★☆。

Recorded in November 1979

Personnel: John Abercrombie(g), Richie Beirach(p), George Mraz(b), Peter Donald(ds)

本作単体でのCDリリースはないので,ボックスへのリンクはこちら

2024年1月 5日 (金)

正月休みに観た映画:Bradley Cooperのなりきりぶりが凄い「マエストロ その音楽と愛と」。

Maestro 「マエストロ その音楽と愛と("Maestro")」(’23,米,Netflix)

監督:Bradley Cooper

出演:Carey Mulligan, Bradley Cooper, Matt Bomer, Sarah Silverman, Maya Hawke

この映画はまだ劇場でも観られるが,私はNetflixで自宅で観たもの。Leonard Bernsteinとその妻,Felicia Montealegre Cohn Bernsteinの愛憎劇と言ってよいものだが,そこはLeonard Bernsteinを扱うということで,彼に関連する音楽も多数出てくるので,音楽ファンにとっても注目の映画と言ってよい。

ストーリーはさておき,私がびっくりしてしまったのが,特殊メイクによるであろうBradley CooperのLeonard Bernsteinへのなりきりぶりであった。Leonard Bernsteinの雰囲気をよく出していて,まさに感心の一言。マーラーの「復活」等における指揮ぶりも,相当研究したんだろうなぁと思えるものだった。

一方,Leonard BernsteinがFelicia Montealegre Cohn Bernsteinとの間に3人の子供がいつつ,その一方で男色から抜けられないところが愛憎のポイントだと言ってもよいのだが,その辺りはデフォルメも効いているように思えるところもあって,観る人によって感じ方は違うだろう。しかし,Bradley Cooperにしろ,Carey Mulliganにしろ,老けメイク含めての演技ということになるが,このメイクアップ技術こそ,この映画の見ものだったと言ってもいいかもしれない。

Carey Mulliganは「プロミシング・ヤング・ウーマン」とは全く異なる演技という感じで,役者としての実力発揮。そしてBradley Cooperは「アリー/スター誕生」でも監督としての技量は証明していたが,ここでも演出は手堅い。こういうところを評価して,プロデューサーにはMartin ScorseseやSteven Spielbergが名を連ねているんだろうと思う。ただ,この映画はストーリーよりもLeonard Bernsteinというクラシック界のアイコンを描いたところの方に目が行ってしまうのは仕方ないところか。映画としてはやや重苦しいところもあるが,ここはBradley Cooperのなりきりぶりを評価して,少々甘めの星★★★★ってところ。

2024年1月 4日 (木)

不穏なご時勢の中で聞いたチェロとギターのデュオ。

_20240103_0001"Franz Schebert: Die Nacht" Anja Lechner/Pablo Márquez(ECM New Series)

世の中では北陸地方の地震やJAL機と海保機の衝突炎上という衝撃的なニュースが新年早々の日本を襲う中,こちらもにぎやかな音楽を聴くことは憚られてしまうというのが正直なところだ。そうしたタイミングでは心を落ち着かせるような穏やかな音楽こそ相応しかろうということで,選んだのがこのアルバム。買ってから随分になるが,ほとんどプレイバックもしないままになっていた作品だが,聞いてみてこういう音楽こそ現在に求められるものだと思った。

このアルバムの主眼はシューベルトの歌曲をチェロとギターで聞かせるところにある。シューベルト歌曲のギター伴奏と言えば,私は「美しき水車小屋の娘」を昔から偏愛してきたと言ってもよい(記事はこちら)ので,こういう音楽には惹かれるのも当然だ。本作では歌曲のメロディ・ラインはチェロ,伴奏をギターという形と考えてよいだろうが,そこに「アルペジオーネ・ソナタ」の編曲版や,ブルクミューラーの「ノクターン」が挟み込まれるというある意味異色の構成だが,逆に言えば,こんなアルバムはECM New Series以外では考えられないというものになっている。

そして穏やかに流れる音に身を任せれば,世の中の混乱から一時的にでも解放してくれる効果は覿面だ。家族の手前,小音量でプレイバックしていた私だが,それでも十分なヒーリング効果があったと思う。我ながらいいチョイスだった。

Recorded in November 2016

Personnel: Anja Lechner(cello), Pablo Márquez(g)

本作へのリンクはこちら

2024年1月 3日 (水)

年末年始に読んだ姫川玲子シリーズ最新作。新たなキャラ登場でシリーズも安泰?(笑)但し私としては文句ありだが。

Photo_20231231164301 「マリスアングル」誉田哲也(光文社)

なんだかんだと言って姫川玲子シリーズを読んでいる私である。昨年暮れに久々のこの長編新作が出て,読み始めてはいたものの,ちょっと時間が経ってしまったので,改めて年末年始で音楽を聴きながら読んだのであった。

ストーリーとしてはなるほどと思わせる部分もあるが,今回の作品におけるポイントは,新たなるキャラクターとして登場する魚住久江巡査部長だろう。明らかに姫川玲子と異なる造形で,今後,この二人の対比でストーリーを創造できそうだと思ってしまう。そうした部分も含めて今回も小説として面白く読めたのは否定しない。

だが,私が気になったのは誉田哲也の明らかな右翼的な言説であった。私がリベラルだからということもあるだろうが,あまりにも露骨なある意味「ネトウヨ」もどきとでも言いたくなるシチュエーション設定や思想的な表現は,姫川玲子シリーズがいくら好きでも,さすがに行き過ぎだと感じさせる部分があった。エンタテインメントにこうしたイデオロギー的なところが入り込んできてもろくなことはないと言っておこう。

誉田哲也がどのような思想に与しようと彼の勝手だし,私はどうこう言う資格はないが,エンタテイメント小説というメディアを使って,自分の考える方向に読者を誘導しようとするのには同調できない。それこそこの小説のタイトルの言うところの「悪意に満ちたアングル」を自分でやっているということではないのか。はっきり言って,ストーリーテリングはよりニュートラルな視点で創作してこそ,私は価値が高まると思う。ストーリーには大して文句はないが,そうした批判も含めて星★★★。

姫川玲子シリーズのストーリーが次も同じように展開されるのだったら,その次はない(きっぱり)。

本作へのリンクはこちら

2024年1月 2日 (火)

今年最初の新譜はMoonchildのEP。正月にはこれぐらいのメロウなゆるさが適切だ(笑)。

_20231231_0001 "Reflections" Moonchild (Tru Thoughts)

正確に言えば,昨年末にリリースされているが,今年の最初の新譜として扱わせてもらおう。Moonchildの音楽はそのメロウなグルーブが魅力で,何とも心地よい音楽を届けてくれる人たちだと思っている。Moonchildの音楽はこれまでR&B/ソウルのカテゴリーで捉えてきたが,それはあながち外れていないとしても,ポップな感覚もあるから,ポップスのカテゴリーも追加しておきたい。

それでもって,今回のアルバムは既発の曲を,アコースティックでリメイクした6曲入りのEPがオリジナルだが,私が入手した国内盤は,そこに収録曲のインスト・ヴァージョンが追加された12曲入りとなっている。まぁアコースティックと言っても,Rhodesのほか,エレクトリックの楽器も弾いているから,完全アコースティックって訳ではないのだが,彼らの奏でる音楽の心地よさはここでも不変で,これまで以上にゆったりしたグルーブは本作でも魅力的だ。その心地よさのベースがAmber Navranの声にあることは間違いないが,ここでのある意味音数を絞った感じに乗るAmber Navranの囁き系の声がマジで魅力的。

のんびり過ごす年始にゆったりプレイバックするにはフィット感十分。企画盤ではあるが,この心地よさは特筆に値する。星★★★★☆。国内盤追加のインスト・ヴァージョンはあってもなくてもって感じではあるのだが,酒を飲むバックにこういう音が小音量で流れていると超気持ちいいはずだ(笑)。

オマケとして,このアルバムの制作の契機となったらしいNPRのTiny Desk Concerts出演時の映像を貼り付けておこう。私は彼らのライブに接する機会を持てていないままだが,次に来日した時は是非観に行きたいと思う。

Personnel: Amber Navran(vo, fl, p, perc, ds), Andris Mattson(fl-h, tp, g, p, b, perc, ds, ukulele, vo), Mark Bryx(cl, el-p, synth, gllockenspiel, celesta, b, ds, perc, whistle)

本作へのリンクはこちら

2024年1月 1日 (月)

あけましておめでとうございます。

Sunrise-1

皆さん,あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

コロナ禍の鎮静化により,通常生活に戻りつつありますが,年齢を重ねて自分自身に「寄る年波には勝てない」部分が出てきているのも事実です。それでも昨年よりはよい年にすることを目標に過ごしていきたいと思います。

このブログも18年目に入り,高齢者のボケ防止が目的の一つになりつつありますが,極力まめに記事を更新できるよう努めますので,引き続き当ブログをよろしくお願いします。

« 2023年12月 | トップページ | 2024年2月 »