ネットを徘徊していて見つけたNiels Lan Dokyほかによる"Modern Standards"。
"Modern Standards" Bill Evans / Niels Lan Doky / Darryl Jones / Harvey Mason
ネットを見ていたら,興味深いメンツによるアルバムを発見したので,早速ストリーミングで聞いてみた。"Modern Standards"というのはロック/ポップス畑の曲をアダプテーションするというのが主で,そこにメンバーのオリジナルが加わるというもの。まぁ企画としてはHerbie Hancockがかつてやった"New Standard"と同様ってことになる。そんな企画ならスルーしてもよいのだが,ベースがDarryl Jonesってことで,コンテンポラリー度が高まりそうだという期待もあった。
2022年に欧州で行われたこのツアーの仕掛人はNiels Lan Dokyのようだが,ドラムスにHarvey Masonを選んだのはやや意外な気もする。Harvey Masonは何でも叩ける人なので,演奏は心配ないが,このメンツならもう少しパワフルなドラマーを選ぶというオプションもあったはずだ。そうは言ってもHarvey Masonは無難に叩いているが。
ここで選ばれている"Modern Standards"はNirvana,Seal,Soundgarden,Patti Smithに加えて,Miles Davisの"Jean Pierre"である。正直言ってしまえば,Patti Smithの"Dancing Barefoot"を除けば,ジャズ界でも取り上げられてきた曲がほとんどで,Nirvanaの"Smells Like Teen Spirit"とSoundgardenの"Black Hole Sun"はBrad Mehldauもカヴァーしている。だからそこに彼らなりにどういう新味を出すかがこのアルバムのポイントだろう。
出だしのBill Evansオリジナルの"Dixie Hop"はなかなかいいねぇと思わせるし,実力者の集まりなので,演奏自体に破綻はないが,"Modern Standards"と呼ぶ曲の演奏が想定内というところは少々残念。Niels Lan Dokyがエレピを弾く瞬間が私には魅力的に響いたが,Darryl Jonesがスラッピングをしないというのも何だかなぁという気がする。最後の"Jean Pierre"も全然いけていないしねぇ...。私はこのメンツならもう少し激しいグルーブで演奏できるはずだと思うが,おとなしめに感じるのは彼らも相応に歳を取ったということか。ロックをカヴァーするならそれなりのやり方があってもよかったと思う。ライブの場なら別の感慨もあろうし,演奏そのものは別に悪いとは思わないが,星★★★が精一杯ってところ。
尚,本作はアナログ2枚組はリリースされているが,CDでの発売はないようだ。まぁ,ストリーミングで十分だが。
Recorded Liive at the Leverkusener Jazztage in Germany on November 11, 2022
Personnel: Niels Lan Doky(p, el-p), Bill Evans(ts, ss), Darryl Jones(b), Harvey Mason(ds)
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