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2023年12月31日 (日)

皆さん,よいお年をお迎え下さい。

Manhattan-fireworks
今年も大晦日となった。コロナ禍も5類へ移行し,ようやく通常の生活に戻ったという感を強くした一年であった。それは来日ミュージシャンの増加によって,私のライブ通いが増えたことからも明らかだ。5類移行で生活上の閉塞感からは解放されたものの,異常気象と言うべき夏の猛暑にはほとほとげんなりしてしまった。そのせいで,それまで続けていた散歩もおろそかになり,体重が増加傾向になってしまったのは困ったものだが,先日の人間ドックでは特に大きな問題はないとのことだったので,よしとしよう。

この一年も大きな変化もなく過ごしてきたが,おそらくは来年以降も仕事は在宅が基本,更に仕事のペースには変わりはないだろうから,年相応の働き方をしていけばいいってことだろう。その一方,「還暦を迎えた際に買ったベースの練習もさぼりっぱなしなので,年明けからはちゃんと取り組むようにしたいと思う」なんて去年も書いているが,全然触っていないので,来年こそは1日30分程度でも触るようにしたい。

ということで,読者/ヴィジターの皆さま,本年もありがとうございました。よいお年をお迎え下さい。

2023年12月30日 (土)

2023年の回顧:音楽編(その2:ジャズ)

2023-cds_3

今年の音楽を回顧する2回目はジャズ編である。振り返ってみれば,今年のジャズの新譜はやや小粒な感じがして,決定的な1枚というのを選ぶのが難しい気がする。そんな中で印象に残っているのが上掲のアルバム。

ライブの場においても,現代最強のサックス奏者であることを実証したChris Potterであるが,さまざまなフォーマットでの演奏をする中で,今回のクァルテットでのライブ音源"Got the Keys to the Kingdom"は,テナー一本で通しているところが実に素晴らしいと思った。本作に留まらずJohn Paritucciとの"Live in Italy"もよかったので,来年リリースされるBrad Mehldauらを迎えた新作を首を長くして待ちたい。

Ralph Townerの"At First Light"は,リスナーが求めるRalph Townerの音が詰まった演奏で,もはやOne & Onlyの世界と言ってよい。来年には84歳となるRalph Townerであるが,このアルバムを聞く限りは衰えたと感じさせるところは皆無。まだまだ元気に演奏を続けて欲しい。

Brian Blade Fellowship Bandの"Kings Highway"も,まさに彼ららしい演奏で,期待を全く裏切らない出来であった。ほぼ固定メンツで演奏を続ける強みのようなものを感じさせるに十分。

BlankFor.msの"Refract"は果たしてジャズのカテゴリーに入れていいのか悩むところだが,アンビエント的な響きでは同じように感じる"Life in Exile"を昨日選んでいて,若干の違いを出すためにこちらに挙げることにした。これはJason Moranの貢献度も高く,フリーとアンビエントの融合のような実にユニークな音楽であることを評価したい。

ということで,通常ならば,ここにBrad Mehldauのアルバムが入ってきそうなものだが,"Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays the Beatles"は既にブートレッグで演奏を聞いていたこともあったし,それよりも何よりも紀尾井ホールでのライブの印象が強く,アルバムとして選ぶことを躊躇したことは書いておかねばなるまい。

Evenings-at-the-village-gate_20231228110501 昨日も特別賞なるかたちでBob Dylanを挙げたので,こちらではJohn Coltraneの"Evenings at the Village Gate"を挙げておこう。決して音はよくないが,流れ出る音楽には興奮させられた。まさに鮮烈とはこのことだろう。

ということで,こうして記事にしてみると,それぞれのアルバムによさはあるものの,ジャズ以外で選んだMeshell Ndegeocello盤のように決定的な思いを抱かせるものはなかったかなぁって気がする。来年やいかにと思いつつ,今年の回顧としたい。

2023年12月29日 (金)

2023年の回顧:音楽編(その1:ジャズ以外)

2023-cds_1

今年もいよいよ押し詰まってきたので,今年の音楽に関して回顧しよう。まずは恒例に従い,ジャズ以外の音楽から。

ここ数年,ストリーミングへの依存度が高まり,CDの購入枚数が減少していることはこれまでに何度も書いてきた。それは必ず買うだろうミュージシャンを除けば,新譜もストリーミングで聞いて出来を判断した上で買うようにしているから,当然購入枚数も減るのだ。そうした中で最も印象に残っているのが上掲の4枚。我ながらちょっと変わったチョイスになったようにも思えるなぁ。

まずはMeshell Ndegeocelloの"The Omnichord Real Book"だが,最初に聞いた瞬間からこのアルバムは今年のNo.1アルバムだと思っていたし,その後もこれを上回るアルバムはなかったと言ってよい。実に優れた作品であり,来年の来日が本当に楽しみだ。

Everything But the Girlの24年ぶり(!)の新作"Fuse"も全く期待を裏切らない出来で,彼らが活動のインターバルがあろうと,極めて優れたミュージシャンであることを改めて実証したアルバムだと思う。

Arooj Aftab / Vijay Iyer / Shahzad Ismailyによる"Love in Exile"はカテゴライズ不能と言ってもよいが,このアンビエントな響きが実に面白かった。Vijay Iyerもいろいろやるもんだと思いつつ,こうした本流からはずれた活動を経て,来年ECMからリリースされる予定の新作への期待も高まる。

そして今年最後の新譜として取り上げたIsabelle Faustの"Solo"の味わい深さは,記憶が新鮮なこともあるにはあるが,ここに挙げるに十分な魅力を持ったアルバムだったと思う。

これ以外ではJoni Mitchellの復活を記録した"At Newport Featuring the Joni Jam"は涙なくして聞けないものだったし,アーカイブの第3弾も素晴らしかった。また,Rolling StonesやIggy Popの新作は,音楽に年齢は関係ないと思わせてくれたのが嬉しかった。

今年の特別賞はBob Dylanの"The Complete Budokan 1978"ということになるだろう。発掘されたこと自体が素晴らしいし,Bob Dylanの若々しい歌いっぷりは感慨深かった。ただ,正直に言ってしまえば,音楽としてはRolling Thunder Revueのボックスの方が私としては好みなのも事実。"Shadow Kingdom"もよかったしねぇ。だが,これはリリースされたことを評価の対象にすべきと思うので特別賞なのだ。

ということで,私の全方位的な音楽の聴き方が反映された選盤になった気がするなぁ。明日はジャズ編をお届けする。

2023-cds_2

2023年12月28日 (木)

2023年の回顧(番外編)

今回は自分自身の音楽鑑賞において特殊な事象が起こったということで,その点について回顧してみたい。既に2回記事でも書いているが,それは私がブルックナーの交響曲全集のボックスを2組も購入したことだ(その記事はこちらこちら)。私を知る人からすれば,私がこれまでほとんどブルックナーの音楽とは縁のない生活を送ってきたから,一体何があったのかと思われても仕方がない。しかし,はっきり言ってしまえば気まぐれ,そしてお買い得だったということに尽きて,特に他意はない。

実を言えば,ブルックナーの交響曲全集は2022年になって,Eugen Jochumがベルリン・フィルとバイエルンを振ったボックスを購入しているので,全く無縁であった訳ではない。一方,来年がブルックナー生誕200年ということもあり,更なる盛り上がりを示すかもなぁということも意識したのは事実だが,そもそも全集2組を聞き通すのは,ほかのアルバムも多数あるのだから,なかなか進まないとは言え,そこそこは聞いてきたつもりだ。まぁこういうのはゆっくり聞き進めていけばいいと思うが,それにしてもやっぱり気まぐれとは言え,我ながら意外な行動だったと言えるだろうなぁ。

ついでに言ってしまえば,Mario Venzagoが読響を振ったブルックナーの4番も聞きに行って,人生初のブルックナーの生演奏となったし,Jochumボックスはさておき,2023年は私にとっての真の「ブルックナー元年」となったと言えるかもしれない。友人からは遅ぇ~よと言われそうだが(爆)。

2023年12月27日 (水)

Isabelle Faust:これが今年最後の新譜と思う。

_20231225_0001 "Solo" Isabelle Faust (Harmonia Mundi)

今年も押し詰まってきて,新譜を取り上げるのもこれが最後である。Isabelle Faustは極めて平均点の高いヴァイオリニストで,私も数はそれほどではないが,彼女のCDを保有している。無伴奏ということではバルトークのソナタも痺れさせてくれたが,バッハはまだ聴いていないということで,私のスタンスもいい加減なものだ。しかし,私がこれまで購入したCDは全て満足のいくアルバムばかりであった。

そうした中,Isabelle Faustの新作としてリリースされたのが本作だが,プログラムが17世紀から18世紀のバロック期の作曲家の無伴奏曲集。ここで演じられる作曲家については,私は不勉強にして名前も知らない人ばかりだったのだが,逆に言えば何の先入観もなしで聞ける曲ばかりだったと言ってもよい。

そして,それらが何と魅力的に響くことか。知らぬこととは言え,こんな音楽があったのかということに気づかされるという意味においても,このアルバムは実に素晴らしい。もちろん,Isabelle Faustの音色,テクニックには文句のつけようはなく,年末にいいものを聞かせてもらったと言いたい。目の前でこんな演奏をされたら悶絶間違いなし。星★★★★★。尚,Isabelle Faustがここで弾いているのは1658年製作のJocobus Stainer。この芳醇な響きに徹底的に酔いたい。

余談ながら,Isabelle Faustは来年来日して,バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータを全曲演奏するらしい。本作を聞けば,絶対聞きたいと思わせるに十分だ。

Personnel: Isabelle Faust(vln)

本作へのリンクはこちら

2023年12月26日 (火)

Chico Freemanの"Kings of Mali"のアナログをゲットした。

King-of-mali "Kings of Mali" Chico Freeman (India Navigation)

私は70年代後半から80年代前半のChico Freemanのアルバムを結構高く評価している。特にIndia Navigationレーベルに残した作品はどれも優れていると思っているが,India Navigation盤はCDで購入する中,残っていたのがこのアルバムである。本作はCD化されていない模様で,アナログ盤でしか入手の手立てがないのだが,ネットで探していてもなかなかいい状態のものに出会うことはない中,某ショップで状態の良い中古が出品されたという情報が入り,財布には痛かったが入手したものが到着した。私にとっては,自費で購入したホリデイ・ギフトのようなものだ(苦笑)。

メンツによるところもあると思うが,まさにChico Freemanらしい,フリーっぽさも持ちながら,基本的に伝統の中に留まりつつ,スピリチュアルな感覚も響かせていて,嬉しくなってしまったのであった。それはInida Navigationというレーベルのカラーともフィットしたものというところであるが,やはりこの時期のChico Freemanは光っていたと思わせるに十分なアルバムであった。この手のサウンド好きにはたまらないし,入手できただけの嬉しさも含めて星★★★★★(笑)。だからと言って,万人にお勧めするものでもないというのも事実なので,念のため。

Kings-of-mali-back-cover_20231225095401 それにしても,私が入手した中古盤はシュリンク・ラップされた状態のものなのだが,なぜか裏ジャケ本体(シュリンクにではない)にChico FreemanとCecil McBeeらしきサインが入っている。これをどう解釈すればいいのかわからないが,付加価値ということにしておこう。このシュリンクをはがしてしまうと,「書き込みあり」となる訳だが,シュリンクされた状態なら,元からそうなっていたということで,買い叩かれることもない。しかし,右下には"2300 RSI ph"(?)という謎の書き込みもあり,これは一体何なのかという謎は深まるが,まぁいいや。

Personnel: Chico Freeman(ts, ss, fl, a-fl, african bailophone), Jay Hogaard(vib, african bailophone), Anthony Davis(p), Cecil McBee(b), Famoudou Don Moye(ds, perc, african bailophone, gong, whistle)

2023年12月24日 (日)

年の瀬にPaul Williamsを聞いてまったりする。

_20231222_0001"A&M Greatest Hits" Paul Williams(A&M)

本作はA&Mレーベルに残されたPaul Williamsからコンパイルされたベスト・アルバム。Paul Williamsは歌い手とし Paul てはヒットした訳ではないが,作詞作曲家として,数多くのヒット曲に貢献しているのはよく知られたことだろう。Carpenters然り,Three Dog Night然り。更にはBarbra Streisand主演の映画「スター誕生」の主題歌,"Evergereen"(本盤の最後に収められている)ではオスカーも受賞しているから,音楽界の大御所と言ってもよい人だ。

そんな私が初めてPaul Williamsという名前を知ったのは映画「最後の猿の惑星」を通じてであったが,子供心に見ても,全く面白くも何ともない映画だったことしか記憶にない。そもそもPaul Williamsも特殊メイクを施していたから,その素顔も認識できなかったのだが(笑)。しかし,後にCarpentersの「雨の日と月曜日は」や「愛のプレリュード」等がPaul Williamsの手になるものと知ったのであった。まぁ順番が逆だよなってところだ。

それはさておき,Paul Williamsの書く曲は,秀逸なメロディ・ラインを持つ落ち着いたポップ・ソングという印象が強く,本作も聞き流しでも傾聴でもOKという感じだ。歌手としてのPaul Williamsについては,軽い小唄のような感じもあり,見た目がパッとしない(笑)こともあって,華には欠けるところがあるので,やはり歌手というより作詞作曲家として捉えるべき人だと思う。まぁ,それでもここに収められた曲を聞いていると,やっぱりいい曲を書くねぇと思ってしまう。

何かと忙しない年の瀬に聴いて,まったりするのも一興と思えるアルバムであった。

Personnel: Paul Williams(vo)

本作へのリンクはこちら

2023年12月23日 (土)

久々にMosaic SelectのLiebman~Beirach音源からQuestを聞く。

Mosaic-select-liebman-beirach_20231220134801 "Mosaic Select 12: David Liebman and Richie Beirach"(Mosaic)

このボックスを取り出すのも久しぶりだ。最近はリリースのペースもスロー・ダウンしているMosaicレーベルであるが,以前はかなりの数のアルバム群をリリースしていた。その中のSelectシリーズは明確な編集ポリシーを持ちつつ,比較的地味なミュージシャンのアルバムもリリースしていた。私が保有しているのはこのボックスと,"Pendulum"ボックスのみであるが,どっちもDave LiebmanとRichie Beirach関係ということになる。

このボックスがリリースされたのももはや20年近く前のことになるが,3枚のCDにLookout Farm,二人のデュオ,そしてQuestの音源を収めるというナイスなボックスなのだ。今日はそのうち,Disc 3のQuestを取り上げよう。全5曲のうち,前半2曲が88年ドイツ,後半3曲が91年東京での録音となっている。

メンツは長年固定されたお馴染みのクァルテットだが,相変わらずテンションが高い。後半3曲がレコーディングされた91年の東京と言えば,バブルも末期だったはずだが,そこでの聴衆にこの演奏がどのように受け入れられたかは実に興味深い。その頃,私はNYC在住中で,同じような時期に彼らを見たのはNYCのVisionesのことであったが,その時を思い出させるものがある音源だ。私は経済的には決して楽な状態ではなく(そのせいで自炊が増え,料理が苦にならなくなったが...),バブルに浮かれていた訳ではないから日本の聴衆の反応が興味深いのだ。

いずれにしても,このテンションの高さは,かなりのハイブラウさで迫ってくるから,ヴェニューがどこだったかはわからないが,Pit Innならさておき,こじゃれたクラブでの開催だったとしたら,間違いなくデートには不向きだったはずだ(爆)。

詳しく比較した訳ではないが,おそらくここに収められた音源は,後に"Quest Live 1988 + 1991"にトータル5時間近いダウンロード音源としてリリースされたものの一部と同じと思われる。それにより希少性は下がったかもしれないが,こういうものが媒体として出ていたということは改めて素晴らしいことだったと思わざるをえない。

Personnel: Dave Liebman(ss), Richie Beirach(p), Ron McClure(b), Billy Hart(ds)

2023年12月22日 (金)

2023年の回顧:映画編

2023-movies

年内に映画を見に行く予定もないので,回顧の2回目は映画である。今年の劇場通いは13本に留まり,Blu-rayでフライングで観た「オッペンハイマー」を入れても14本なので,回顧もへったくれもないではないかと言われればその通りだ。そのほかにストリーミングやソフトで観たのが30本ぐらいだと思う。ストリーミングで観たものはそれこそ玉石混交と言ってもよいが,劇場で観た作品群はそれなりに満足感が得られるものが多かったと思う。その中で,星★★★★★をつけた映画は上に掲げた4本(左から観た順番)。

「Air/エア」はNikeのAir Jordan誕生に至る話が描かれるが,Ben Affleckの演出,適切な尺に加え,私がこういうストーリーが好きっていうのもあって,大いに楽しめた。

「Tar/ター」はクラシック音楽好きにも楽しめる内容であるとともに,Cate Blanchettの演技が物凄く,強烈に記憶に残っている。これらの2本は既にAmazon Primeで観られるので,お時間のある方は是非。

「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」は実話ベースというのが恐ろしいような話であるが,ドラマとして深いものに仕立てたMartin Scorseseはもはや巨匠としか言いようがない。演技陣も見事であった。

そして「オッペンハイマー」をここに挙げるのは反則という気もするが,ここまで日本公開を遅らせたことに対する抗議の意味も込める。記事にも書いた通り,これは実に真面目に撮られた映画であり,ちゃんと評価すべき作品であった。

ということで,ここに挙げた4本中3本が実話ベースということになり,オリジナル脚本は「Tar/ター」だけになってしまったのは,シナリオの大切さを重視している私としてはちょっと残念な気もする。最後に,「アラビアのロレンス」を大スクリーンで再見できたことで,やはり映画は映画館でという感を強くした私である。

2023年12月21日 (木)

「リマリックのブラッド・メルドー」という書籍について。

Photo_20231219180901「リマリックのブラッド・メルドー:<ポスト・ジャズからの視点>I」牧野直也(アルテスパブリッシング)

先日,書店をうろついていて,この本が目に入ってしまった。帯には「ジャズ空間の拡張に挑み続けるピアニスト,ブラッド・メルドーの軌跡を軸に現代ジャズの状況を読み解く!」とあって,ほぉ~と声を発し(笑),中身もチェックせず購入した私である。この本,実は2017年の半ばに発売されたものであり,新刊でも何でもないことには後から気づいたのであった。

帯にある「軸に」というのが実は曲者で,この本,Brad Mehldauには相応のページ数は割いているが,Brad Mehldauに関する考察から逸脱して余談に走るページの多さがどうも納得がいかない。そもそもやたらに小難しい表現を用いる序論からしてこの本に必要なのかと思わせるが,著者は序論を読み飛ばして「第1章から読み始めてもらってもまったく問題ない」なんてするところもいかがなものかと思ってしまう。そもそも裏帯に書いてある次のような表現を見てもらえば,私の言いたいことはわかるはずだ。

『ブラッド・メルドーはよく耐えている。かつてセシル・テイラーやコルトレーンたちが理路を進もうとした果てに踏み越えていったジャズ本来の「語法」,その共通言語としてのフレーズという「構築物の枠組み」の中にとどまって,メルドーは原初的衝動へ踏み出すことなく耐えている。そして,半歩あるいは一歩,前へにじり出て,その枠組みを内側から拡張している。これは決して小さなことではない。』

何のこっちゃ?(爆) 同じことはもっとシンプルな表現で言えそうなものだが,意図的に小難しくしているとしか思えない。

それはさておき,著者のBrad Mehldauに対する意識の根底にはArt of Trio時代のトリオがまずあって,おそらくそれに加えて,Fresh Sound New Talentでのアルバム群へのシンパシーが感じられる。そして,ソロ・ピアノについてはライブ盤を「コンサート」として捉え,トリオ演奏以上には評価しないというスタンスが表れている。しかし,この本が発売された頃には既にリリースされていたあの超ド級"10 Years Solo Live"に言及しないのはあまりにも中途半端だろう。執筆のタイミングと違ったということはあるとしても,出版までには間に合ったはずで,明らかに聞くべき音を聞かず,取るべき対応を取っていないとしか言いようがないのだ。

音楽は個人の好みが反映するものだから,好き嫌いがあることは別に否定しない。その一方で"Largo"や"Taming the Dragon"を手放しで褒めるような感覚を与えるのは著者の単なる音楽的嗜好だろうと言いたくなるのだ。しかも後者に関してはMark Giulianaを論じたいのかと思えるような感じなのだ。

ということで,私としては余談の多さ,話の逸脱感,Brad Mehldau自身の音楽のカバレッジの半端から全然面白いと思えなかった。結局読んでいて「ふぅ~ん,そうかねぇ...」としかならなかったと言っておこう。どう考えても頭でっかちな本で,こういう本を読んでいると,四谷「いーぐる」の店主,後藤雅洋の,難しいこと一切なしで,ジャズの魅力を的確,適切に伝える能力は実に素晴らしいと思ってしまうのだ。本書の著者,牧野のような書き方をしていれば,ジャズに関心のない人々の心はジャズという音楽からますます離れていくだけだと思える。ということで,全部読んだものの,中身をチェックしてから買うべきだったと反省した私である。

2023年12月20日 (水)

今更ながらのNick Drake。素晴らしいアルバムであった。

_20231218_0001 "Five Leaves Left" Nick Drake (Island)

わずか3枚のアルバムを残してこの世を去ったNick Drakeのこれがデビュー・アルバム。リリースされた当時は全然売れなかったが,その後,評価がどんどん上がっていき,傑作としての評価が固まったのは1990年代に入ってからのようだ。しかし,本作が再評価されるずっと前から,ブラックホークの99枚のうちの1枚に選んでいた松平維秋の審美眼は素晴らしかったと思わざるをえない。

このアルバムが持つ内省的でメランコリックな響きはリスナーの心の琴線を揺さぶるものと言ってもよいが,こうした響きがおそらくはBrad Mehldauにも影響した結果,彼のレパートリーにこれまでのところ(多分)4曲,Nick Drakeの曲が選ばれることにつながったと思える。そのうち3曲("Time Has Told Me","River Man",そして"Day Is Done")は本作に収められていることを踏まえれば,Brad Mehldauの追っかけたる私にとってもこのアルバムは極めて重要だということになる。

プロデュースを名匠,Joe Boyd,更にゲストにRichard ThompsonやDanny Thompsonを迎えていることからしても,当時のIslandレーベルの期待値の高さが表れていると思うが,残念ながらセールスにはつながらなかった。それは60年代末という時代のなせる業だったのかもしれない。しかし,この音楽が持つ魅力は時代を越えて不変だと思わせるに十分であり,素晴らしいメロディ・センスに,必要最小限の編成における的確なアレンジメントが加わって,今の耳にも魅力的に響く。ストリングスとの共演なんてまさに痺れる出来で,やっぱりこれは傑作だと改めて思わせる。星★★★★★。

Personnel: Nick Drake(vo, g, p), Richard Thompson(g), Danny Thompson(b), Tristan Fry(ds), Rocky Dzidzornu(perc), Clare Lowther(cello), Lyn Dobson(fl), Harry Robinson(arr), Robert Kirby(arr)

本作へのリンクはこちら

2023年12月19日 (火)

ネットを徘徊していて見つけたNiels Lan Dokyほかによる"Modern Standards"。

Modern-standards "Modern Standards" Bill Evans / Niels Lan Doky / Darryl Jones / Harvey Mason

ネットを見ていたら,興味深いメンツによるアルバムを発見したので,早速ストリーミングで聞いてみた。"Modern Standards"というのはロック/ポップス畑の曲をアダプテーションするというのが主で,そこにメンバーのオリジナルが加わるというもの。まぁ企画としてはHerbie Hancockがかつてやった"New Standard"と同様ってことになる。そんな企画ならスルーしてもよいのだが,ベースがDarryl Jonesってことで,コンテンポラリー度が高まりそうだという期待もあった。

2022年に欧州で行われたこのツアーの仕掛人はNiels Lan Dokyのようだが,ドラムスにHarvey Masonを選んだのはやや意外な気もする。Harvey Masonは何でも叩ける人なので,演奏は心配ないが,このメンツならもう少しパワフルなドラマーを選ぶというオプションもあったはずだ。そうは言ってもHarvey Masonは無難に叩いているが。

ここで選ばれている"Modern Standards"はNirvana,Seal,Soundgarden,Patti Smithに加えて,Miles Davisの"Jean Pierre"である。正直言ってしまえば,Patti Smithの"Dancing Barefoot"を除けば,ジャズ界でも取り上げられてきた曲がほとんどで,Nirvanaの"Smells Like Teen Spirit"とSoundgardenの"Black Hole Sun"はBrad Mehldauもカヴァーしている。だからそこに彼らなりにどういう新味を出すかがこのアルバムのポイントだろう。

出だしのBill Evansオリジナルの"Dixie Hop"はなかなかいいねぇと思わせるし,実力者の集まりなので,演奏自体に破綻はないが,"Modern Standards"と呼ぶ曲の演奏が想定内というところは少々残念。Niels Lan Dokyがエレピを弾く瞬間が私には魅力的に響いたが,Darryl Jonesがスラッピングをしないというのも何だかなぁという気がする。最後の"Jean Pierre"も全然いけていないしねぇ...。私はこのメンツならもう少し激しいグルーブで演奏できるはずだと思うが,おとなしめに感じるのは彼らも相応に歳を取ったということか。ロックをカヴァーするならそれなりのやり方があってもよかったと思う。ライブの場なら別の感慨もあろうし,演奏そのものは別に悪いとは思わないが,星★★★が精一杯ってところ。

尚,本作はアナログ2枚組はリリースされているが,CDでの発売はないようだ。まぁ,ストリーミングで十分だが。

Recorded Liive at the Leverkusener Jazztage in Germany on November 11, 2022

Personnel: Niels Lan Doky(p, el-p), Bill Evans(ts, ss), Darryl Jones(b), Harvey Mason(ds)

アルバムのダウンロード・リンクはこちら

2023年12月18日 (月)

「オッペンハイマー」をBlu-rayで観た。人間ドラマとして観るべき映画。

Oppenheimer 「オッペンハイマー("Oppenheimer")」(’23,米/英,Universal)

監督:Christopher Nolan

出演:Cillian Murphy, Emily Blunt, Robert Downey, Jr., Florence Pugh, Matt Damon, Jason Clarke, Rami Malek, Kenneth Branagh

いつまでたっても日本で公開されないままになっていながら,先日24年になっての公開がようやく決まったこの映画であるが,本国ではもうソフト化されているので,しびれを切らした私は本国からリージョン・フリーのBlu-rayを入手して,本作をようやく見ることができた。

「原爆の父」と言われるJ. Robert Oppenheimerを描くというテーマがテーマだけに,その被害を被った日本での公開が躊躇されることはわからないでもない。映画内の表現にも,日本人にとってはやや微妙なところもあるのは事実だ。しかし,これは真面目に撮られた人間ドラマであって,原爆開発の背景や,Oppenheimerの考え方や苦悩,更には赤狩りの時期にOppenheimerがどのような扱いを受けたかを知ることは,決して我々にとっても無駄なことではないと思える。

約3時間の長尺ではありながら,だれることなくストーリーが展開されているが,Christopher Nolanらしいアクションや派手な視覚効果を期待すると多少肩透かしを食らう可能性もある。だが,上述の通り,この映画はあくまでも人間ドラマなのであって,アクションや視覚効果を求めることは適切なこととは思えない。

それよりもむしろ,適材適所に配されたキャスティングを見ているだけでも凄いと思ってしまったのだ。「アベンジャーズ」とは全く違うキャラを演じるRobert Downey, Jr.や,私が鈍いだけだが,最後まで誰が演じているか気づかなかったMatt Damon,そしてなんでここにRami Malekが?と思わせつつ,ちゃんと落とし前をつけるところにも感心してしまった。

これらの意味を含めてこの映画は星★★★★★に値するのだが,ケチをつけたのはあの「バーベンハイマー」のバカげたプロモーションだったと思わざるをえない。ああいうことをするから,日本での公開がこれほど遅れることに少なからず影響したであろうことは,この映画の真面目さを考えれば本当に無駄なことをしたものだと声を大にして言いたい。

尚,私が今回入手したBlu-rayには英語音声及び字幕しかないので念のため。本編終了後に著作権関連の表示が各国語で延々5分ぐらい続くのには笑ってしまったが。

2023年12月17日 (日)

Tony Williamsの「白鳥の歌」とでも言うべき"Young at Heart"。

_20231214_0002 "Young at Heart" Tony Williams (Sony)

早いもので,Tony Williamsがこの世を去ってから既に四半世紀以上の時が経過している。51歳での死はあまりにも早く,生き急いだ感があるようにも思えるが,ティーンエイジャーの時にMiles Davis Quintetでシーンに登場し,まさに神童と言うべき才能を最初から示していた。一時はLifetimeでロック・テイストの演奏もしながら,晩年は自身のクインテットで優れたアルバムを連発していたのも懐かしい。

そんなTony Williamsの最後のリーダー・アルバムがこれで,自身の名義では最初にして最後のピアノ・トリオ・アルバムである。Tony Williamsのピアノ・トリオでの演奏と言えば,Great Jazz Trioもあれば,Herbie Hancockとのトリオもあるから,珍しいという訳ではないが,このアルバムのレコーディングから半年ぐらいで亡くなってしまうことを考えれば,実に感慨深いアルバムである。

このアルバムは当時のクインテットのリズム・セクションによるものだが,このアルバムを聞いていて思うのは,日頃のTony Williamsのような叩きっぷりではないということだ。Tony Williamsのドラムスはパワフルなもので,通常であれば,あぁ,Tony Williamsだと思わせるのだが,ここはミキシングのせいもあるかもしれないが,結構抑制的に叩いているように聞こえる。それが悪いというのではなく,このトリオ演奏には実にフィットしているように感じさせて,それこそ成熟というものを感じさせる演奏とは言えないか。顕著にTony Williamsっぽいなぁと思わせるのは"This Here"だと思えるが,それ以外は楚々としたバッキングを行っているように聞こえる。

だが,Tony Williamsがこの当時,病魔に冒されていたということではないようなので,これはそういうプロダクションなのだということになるだろうが,結果的にはこれが所謂"Swan Song"のようになってしまった。だが,こういうアルバムでキャリアを締めくくるというのは,ある意味出来過ぎという気がしないでもないとしても,このアルバムは実に味わい深いものだ。その一方で亡くなる直前にはBill LaswellやPharoah Sandersと"Arc of the Testimony"のようなアルバムもレコーディングしていたようだから,一体どっちが本音だったの?と言いたくなる。そっちはそっちで改めてストリーミングで聞こうと思うが,このアルバムから感じられる滋味は素晴らしいものだと思う。星★★★★☆。このアルバムが東京でレコーディングされたことを我々は喜ぶべきだ。

Recorded on September 24 & 25, 1996

Personnel: Tony Williams(ds), Mulgrew Miller(p), Ira Coleman(b)

本作へのリンクはこちら

2023年12月16日 (土)

高橋アキによる早坂文雄のピアノ小品集。小難しいところ一切なし(笑)。

_20231214_0001 「早坂文雄:室内のためのピアノ小品集」高橋アキ(カメラータトウキョウ)

作曲家早坂文雄がコンサート用ではなく,室内で誰に聴かせるでもなく,自らが弾いて自らが楽しむような曲として書いた17曲からなる小品集に数曲のピアノ曲を加えて高橋アキが吹き込んだアルバム。

作曲者の意図からしても想像がつくが,テンションとかは無縁の,耳にも心地よい小品が並んでいて,こういうのを小音量で流していると,仕事も捗るってものだ(笑)。

私にとっての早坂文雄は黒澤明の映画音楽を手掛けたことの印象の方が強いのだが,こうしたピアノ曲を聞いていると,いかにも素描的な響きのようなものを感じる。日本的な旋律を持ちながら,映画音楽とは随分と異なる響きだが,これはこれで早坂文雄の個性ということになるのだろう。

これらの曲を吹き込んだのはこれまで高橋アキだけというのも,全く彼女らしいと思いつつ,こういう音楽はひそかに楽しみたいと思う私である。星★★★★☆。現代音楽のカテゴリーには入れるが,現代音楽的な難しさはないので,多くの人にも受け入れられるはずだ。

Recorded on April 2 & 3, 2003

Personnel: 高橋アキ(p)

本作へのリンクはこちら

2023年12月15日 (金)

久しぶりにRickie Lee Jonesの"The Magazine"を聞いて思ったこと。

_20231212_0001 "The Magazine" Rickie Lee Jones (Warner Brothers)

なんだかんだと言いながら,私は結構な数のRickie Lee Jonesのアルバムを保有しているが,プレイバック回数が多いのは1stと2ndになってしまっている。これってなんでなんだろうと思いつつ,EP"The Girl at Her Volcano"をはさんでリリースされた彼女の3枚目のフル・アルバムとなったこの"The Magazine"を今回聞いてみて,その理由がはっきりした。

このアルバム,8曲目の"Runaround"までは2ndアルバム"Pirates"の雰囲気を踏襲していると言ってもよい。確かに冒頭の"Prelude to Gravity"のオーケストレーションとかは,それまでのRickie Lee Jonesのアルバムの雰囲気と異なるので,多少面食らうことは事実であるが,そこからの演奏や歌いっぷりは"Pirates",更には1stに通じるものを感じる。しかし,問題は9曲目からの"Rorschachs"と題されたパートにあると思うのだ。全3曲から成る組曲と言ってもよさそうなこのパートは,明らかにそれまでとテイストが違い過ぎて,違和感が非常に大きい。

これが私がこのアルバムに手が伸びない最大の理由だと今回聞いてわかったと言うべきか。LP時代ならA面しか聞いていなかっただろうなとついつい感じてしまったのであった。この"Rorschachs"の部分は,Rickie Lee Jones自身のプロデュースとなっていて,そのほかは今や映画音楽の巨匠と化したJames Newton Howardとの共同プロデュースであるのと異なる。即ち,Rickie Lee Jones自身の意思がより強く反映されていると考えてもよいだろうが,私にとってはそれが裏目に出たというところだ。そうした点で評価も半端なものになり,星★★★☆。なんだか惜しいという感じだ。

Personnel: Rickie Lee Jones(vo, p, synth), Steve Gadd(ds), Jeff Porcaro(ds), Nathan East(b), David Hungate(b). Dean Parks(g), Buzz Feiton(g), Jeffery Pevar(g, mandolin), Sal Bardani(g, vo), Steve Lukather(g), Greg Phillinganes(el-p), James Newton Howard(synth, arr), Neil Larsen(synth, el-p), Nick De Caro(accor), Lenny Castro(perc), Victor Feldman(perc), Michael Boddicker(prog), Marty Paich(arr, cond), Jerry Hey(arr)

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2023年12月14日 (木)

2023年の回顧:ライブ編

今年はもうライブに行く予定がないので,ちょっと早いが今年の回顧をライブから始めたいと思う。今年は結局ジャズ,ロック,クラシック等でトータル23本のライブに参戦した。コロナウイルスの5類への移行により,海外ミュージシャンの来日も以前のようになってきて,私のライブ通いも増えてきたということだ。2022年は9本しか行っていないから,大幅増というか,従来のペースに戻ったというだけだが...。

そうした中で,今年最高のライブは何だったかと言えば,2月のBrad Mehldauの紀尾井ホールのピアノ・ソロだった。その後,ピアノ協奏曲も聞きに東京オペラシティにも行ったが,あれを失敗作だと思っている私ゆえ,このソロのポイントは無茶苦茶高いのだ。私がBrad Mehldauの追っかけということもあるが,現代最強のピアノの一人だということを見事に実証したライブであった。

ジャズ系で記憶に残るのはクリポタ入りのSF Jazz Collective。1st,2ndでレパートリーを完全に変えるプログラムには燃えに燃えさせてもらった。そしてつい先日観た挟間美帆のm_unitも想定以上によかった。そのほかではLars Jansson,Domi & JD Beckも記憶に残る。

クラシックは4本。そのうち3本がオーケストラでそれなりに楽しんだが,一番よかったのはCharles Dutoitが新日本フィルを振った「幻想交響曲」。私が「幻想」を偏愛していることもあるが,この演奏は生でオケを聞く至福を改めて感じさせてくれたと言ってよい。仕事の関係でFabio LuisiがN響を振る「幻想」を聞けなかったのは惜しかったが,Dutoitの演奏の満足度が高かったからそれでよしとしよう。

ロックはTedeschi Trucks Bandしか行っていないが,つまらないテナー・サックス・ソロに辟易とした以外はいいライブだったと思う。"Beck’s Bolero"で燃えなきゃ嘘だよな(笑)。

そのほかにもいろいろなライブに行ったが,特に不満を感じることもなく,生の音楽を楽しんだ私である。因みに番外編として,21年ぶりに来日したJewelのBlue Note東京でのライブ時の写真に私がばっちり写り込んでいるので,「しゃれ」でアップしておこう。私のことを知っている人には簡単に見つかっちゃうだろうなぁ(笑)。

Jewel-at-blue-note-tokyo

2023年12月13日 (水)

デンマークの叙情派ピアニスト,Søren Bebeの新作が本国より到着。

_20231211_0001"Here Now" Søren Bebe Trio (From Out Here Music)

ブログのお知り合いの世界でも昨今注目されているのがSøren Bebeである。いかにも北欧的な叙情的な響きを持つそのピアノは,この手の音を好む日本のリスナーには確実に受けるはずだと思う。

そもそも私がこの人を知ったのは今年になってからのことである。既にこのブログでも記事にしたが,Facebookでアルバム"Echoes"を送料だけで販売というのにつられて,購入したのがその"Echoes"と"Hope"の2枚であった(記事はこちら)。更にその後,それ以前にリリースされたアルバムも3枚入手しているから,私も相当はまってしまったということになるだろう。その新作がリリースされたということで,本国から飛ばしたものが到着した。

早速プレイバックしてみると,悪く言ってしまえば,どれを聞いても同じように聞こえるのだが,そう言っては身も蓋もない。だが,良い意味でもワンパターンには中毒性があることは,私が全然音楽のタイプは違うが,Mike Sternが好きなのと重なる部分がある。

そして,本作も若干毛色の違う曲も交えてはいるものの,美的で静謐で叙情的な響きはこれまでのアルバム同様である。例えば9曲目の"Summer"なんかはフォーク的な響きを持っていて,へぇ~と思わせる。それでも全編を通して聞けば,最近はあまり使わくなったフレーズであるが,「膝を抱えて聞きたくなる音楽」と言ってもよい。この響きに静かに身を任せていれば,世の中の大概の憂さは忘れることができるのではないかと思えてしまう。心の平安をもたらすヒーリング効果さえ期待できるピアノ・トリオ。今回はドラマーがノルウェイのKnut Finsrudを迎えているが,ドラマーが変わったことの影響は全くない。今回もこちらの期待には応える作品と思う。ちょっと甘いかもしれないが,星★★★★☆としよう。

Recorded on April 17 & 18,2023

Personnel: Søren Bebe(p), Kasper Tagel(b), Knut Finsrud(ds)

アルバムのダウンロード・リンクはこちら

2023年12月12日 (火)

祝来日!も兼ねて,改めてElvis Costelloのデビュー・アルバムを聞いた。全く色褪せない傑作。

_20231207_0001 "My Aim Is True" Elvis Costello (Stiff)

来年(2024年)の4月に盟友Steve Nieveとの来日が決まっているElvis Costelloである。8年ぶりということで,随分久ぶりとなったが,コロナ禍のみならず,本人の癌の治療もあったようだから,それぐらいのインターバルは仕方ないかもしれない。Elvis Costelloの再来日を祝して,改めてこのデビュー・アルバムを聞いていたのだが,リリースから45年以上経過しても全く色褪せることのない傑作。

そもそもこのアルバムがリリースされた1977年は,パンク/ニュー・ウェイヴ・ムーブメントの真っ最中って感じだろうが,Elvis Costelloもニュー・ウェイブのような文脈で語られることが多かったように思う。私はパンクやニュー・ウェイヴには関心がなかったので,当時は完全にスルーしており,Elvis Costelloのアルバムを初めて聞いたのは随分後になってからのことであった。しかし,食わず嫌いというのは実に恐ろしいというか,このアルバムを聞けば,メロディ・ラインも素晴らしい真っ当なロック・ミュージックであり,私ですら全く抵抗がなく受け入れられるものだった。

Elvis Costelloはその後,Paul McCartneyやらBurt Bacharachらの大物とも共演することからしても,ミュージシャンとして尖った人という文脈で捉えるべきではないと思えるし,メロディ・メイカーとしての資質の素晴らしさをもっと早くに知るべきだったと後になって反省した私であった。

このアルバムも上述の通り,佳曲揃いのものであり,Nick Loweのプロデュースもあって,実に素晴らしいアルバムに仕上がった。温故知新も込めて星★★★★★。私の保有しているのはボーナス・ディスク付きの2枚組だが,いつも聞くのはオリジナル・ヴァージョンである(笑)。尚,後にDoobie BrothersのメンバーとなるJohn McFeeがギターを弾いたいることに今更ながら気づいて,へぇ~と思っていた私(爆)。

Personnel:Elvis Costello(vo, g, p, drum-stick), John McFee(g, pedal-steel), Sean Hopper(p, org, vo), Stan Shaw(org), Johnny Chiambotti(b, vo), Micky Shine(ds), Nick Lowe(b, p, drum-stick, vo)

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2023年12月11日 (月)

「ゴジラ-1.0」の海外での高評価に驚く。

Godzilla-minus-one_20231210220001 IMDbは映画の情報を入手するには実に便利なサイトだ。一般的な観客と批評家の評価ギャップを見るのもなかなか楽しいのだが,「ゴジラ-1.0」の評価がすこぶる高いのには驚きを隠せない。ユーザー・レイティングは8.5,メディアの評価のメタスコアも79というのは相当なものだ。今年屈指の傑作と言われている「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」が各々7.9/89だということを考えれば,その水準が理解できるはずだ。因みにようやく日本でも公開されることになったらしい「オッペンハイマー」は8.4/89なのだ。

映画としても米国でもヒットしているようだし,日本の映画が評価されることは悪いことだとは思わないが,そこまでのものか?と思うのも事実。まぁいいんだけど。

2023年12月10日 (日)

コレクターはつらいよ(29):"Signs LIVE!"に未発表曲が入ってアナログでリリース。

Signs-live "Signs LIVE!" Peter Bernstein (Smoke Sessions)

およそ半年ぶりにこのシリーズである。今回取り上げる"Signs LIVE!"は既に2枚組CDとしてリリースされている(記事 はこちら)のだが,それの5枚組(!)アナログ・ボックス版が出るという情報をゲットした。5枚組?と思ったのだが,5枚組とあれば,未発表音源があるのではないかと思ったら,案の定あった,あった(笑)。Bandcampのサイトに2曲の未発表音源を含むという記載があるではないか。500セット限定ということもあり,速攻発注した私であった。

それが何かは明らかにはなっていなかったが,デリバリーされた5枚組の最後の面の2曲,"My Ideal"と"Dragonfly"がその未発表音源である。後者はCDにも入っていたが,こちらは別テイク。Brad Mehldauのコンプリートを目指す以上,たった2曲のためだけでも,高かろうが,なんだろうが入手せざるを得ないというのはマジでつらい。特に今回は値段がアルバムが$125,送料が$60ということで,財布には実に厳しいものだったが,これも仕方がないと諦めた私である。

因みにCD版のクレジットではレコーディングは2015年1月4日となっていたが,このアナログ・ヴァージョンでは1月3日,4日の両日となっているので,"Dragonfly"の別テイクは少なくとも1月3日の録音ということになる。それを考えれば,3日がレコーディングに向けてのリハーサル的な意味もあって,4日がレコーディング本番だったと考えるのが妥当だが,演奏のクォリティに差はない。

改めてアナログでこの時の演奏を楽しむことにしよう。

Recorded Live at Jazz at Lincoln Center on January 3 and 4, 2015

Personnel: Peter Bernstein(g), Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Gregory Hutchinson(ds)

2023年12月 9日 (土)

挟間美帆 m_unit@Blue Note東京参戦記。

Miho-hazama-at-blue-note

私はBlue Note東京のJam Session会員になっているのだが,この会員制度,先行予約ができるほか,ライブに7回行くと,2か月有効の招待券が発行されるというオマケがある。今回,1月初旬まで使える招待券をゲットして,さてどうするかと見たところ,あまり食指が動く演目がない中で,そう言えば挟間美帆って聞いたことないなぁということで,チョイスしたが本ライブであった。通常2ndを好む私には珍しく,諸事情あって1stの参戦となったが,実に素晴らしいライブであった。

そもそもm_unitというバンドが13ピースというラージ・アンサンブルということすらわかっていなかったという無知ぶりであったが,最新作"Beyond Orbit"をストリーミングで聞いてライブに臨んだ。13ピースだから当たり前だが,写真の通り,ステージ上は大混雑(笑)って感じである。私は弦楽クァルテット前のステージに向かって左側で聞いていたのだが,このバンドから生まれるコンテンポラリーな演奏を聞きながら,こんなことになっていたのか...と今更のように感じてしまったのであった。

高齢者ゆえの記憶力の減退により,自信はないが当日演奏したのは次のようなレパートリーだったはず。過去のアルバムからもチョイスしたもので,挟間美帆の仕事に触れるにはよい機会となったと思う。

  1. Abeam
  2. Journey to Journey
  3. Under the Same Moon
  4. Exoplanet Suite:Planet 9
  5. Time River
  6. EC: From Life Comes Beauty

演奏を聞いていて思ったのは,ストリングスの使い方がうまいということで,「伴奏」あるいは「添え物」としてでなく,見事なまでにバンドの一部として機能しているところに感心してしまった。こうしたところに挟間美帆の作編曲家としての才能を強く感じるとともに,彼女のステージ・マナーは非常に好感度が高く,そういう点でもファンは増えるだろうと思ってしまった。

挟間美帆も言っていた通り,バンドのドライブ感を高めるのにドラムスの伊吹文裕の貢献度は高かったと思えたが,これをNate Smithが叩いたら,どんなことになるかなぁなんて感じていた。いずれにしても,ほかのメンバーとの付き合いも長いようで,アンサンブルもしっかりしていたし,実にいいものを聞かせてもらった。そして,これまで挟間美帆の仕事を聞いてこなかった自分を恥じたのであった。

記事のアップ後,Blue NoteのWebにステージの模様の写真がアップされていたので貼り付けておこう。

Personnel: 挾間美帆(cond), 土井徳浩(as, ss), 庵原良司(ts, ss, cl), 竹村直哉(bs, b-cl), 真砂陽地(tp, fl-h), 上里友二(fr-h), マレー飛鳥(vln), 沖増菜摘(vln), 吉田篤貴(vla), 島津由美(cello), 香取良彦(vib), 佐藤浩一(p), 須川崇志(b), 伊吹文裕(ds)

Miho-hazama-at-blue-note-tokyo

2023年12月 8日 (金)

"Gittin' to Know Y'All":正調フリー・ジャズゆえになかなかハードル高し。

_20231206_0001 "Gittin' to Know Y'All" Various Artists (MPS)

バーデン・バーデンで開催されたフリー・ジャズ・ミーティングに集った4つのグループによる演奏を集めたオムニバス・アルバム。フリー・ジャズ・ミーティングの名に偽りなく,正調フリー・ジャズばかりが収められているが,最大の聞きものは最も長大なタイトル・トラックだろう。Art Ensemble of Chicagoのメンツと欧州フリー・ジャズ・プレイヤーの合体による演奏はいかにもという響きを持つものだが,Globe Unityを想起させる部分もあった。と言いつつ,Globe Unityのアルバムも久しく聞いていないから単にイメージってことになるかもしれないが...(苦笑)。

それに加えて入っているのがKarin Krog入りのTerje Rypdalグループ,更にKarin Krogの一人多重録音(!),そしてWillem BreukerとJohn Surmanのバスクラ・デュオ(!!)という濃い~面々とあっては,こういう音楽に耐性のないリスナーにとっては相当厳しいだろうと思わざるをえない。まぁ私としてはこれぐらいなら全然問題なしというところではあるものの,プレイバック頻度は極めて低いのも事実。それでもクォリティは維持されており,往時のフリー・ジャズ・シーンはこんな感じだったのねぇという歴史的な資料として星★★★★。

Recorded on December 12-14, 1969

Personnel: The Baden-Baden Free Jazz Orchestra Concucted by Lestrer Bowie<Lester Bowie(tp), Hugh Steinmetz(tp), Hugh Steinmetz(tp), Kenny Wheeler(tp), Albert Mangelsdorf(tb), Eja Thelin(tb), Joseph Jerman(ss), Roscoe Mitchell(as), Alan Skidmore(ts), Heintz Sauer(ts), Gerd Dudek(ts), Bernt Rosengren(ts), John Surman(bs), Willem Breuker(b-cl), Terje Rypdal(g), Dave Burrell(p), Leo Cuypers(prepared-p), Barre Phillips(b), Palle Danielsson(b), Steve McCall(ds), Tony Oxley(ds), Claude Delcloo(ds)>, Terje Rypdal Group<Terje Rypdal(g), Joseph Jerman(fl), Bernt Rosengren(fl, oboe), Karin Krog(vo), Barre Phillips(b), Palle Danielsson(b), Steve McCall(ds), Claude Willem Breuker-John Surman Duo<Willem Breuker(b-cl), John Surman(b-cl)>

本作へのリンクはこちら。 

2023年12月 7日 (木)

ここまでやるか?と思わせるGov’t Muleの"The Deepest End"。

_20231205_0001 "The Deepest End,Live in Concert" Gov’t Mule (ATO)

Allman Brothersにも在籍したWarren Haynesのバンド,Gov’t Muleの2003年のライブ・アルバム。似たようなタイトルの"The Deep End"のライブ版と考えてよいであろうアルバムで,聞き通すのも大変,付属のDVDを見るのも大変というかなりのボリュームとなっている。

私は未聴だが,"The Deep End"はVol. 1とVol. 2があって,各々が多数のゲスト・ベーシスト+αを迎えての演奏となっている。これはオリジナル・メンバーであったベースのAllen Woodyの死去を受けて,解散も考えていたGov’t Muleが気を取り直して吹き込んだものらしい。それをライブでもやってしまおうという企画であるが,ライナーによれば,午後10:10に演奏は開始し,短い休憩を挟んで,午前3:50まで続いたというのだから,どういう体力だ?って思ってしまう(笑)。やっぱり食ってるものが違うんだろうと言いたくなるが,それにしてもである。

"The Deep End"同様,ベースはいろいろな人が次から次へと出てくるし,そこにゲストも加わって,実に賑々しいアルバムだが,ここまでやられるとお腹いっぱいで胸焼けしそうって感じでもある。まぁそれでも,彼らが繰り出す音は,私好みのものでもあるので苦にはならない。それでもCD2枚で2時間半越え,DVDは3時間越えとなると,ちょっとやそっとでプレイバックする気にならないのも事実なのだ。

これだけのミュージシャンを集めるのはさぞ大変だったと思えるが,New Orleans Jazz & Heritage Festivalに出演していたミュージシャンも搔き集めたというのが実態らしい。それにしても錚々たるメンツが集まっている。

そうした中で私が嬉しかったのはSonny Landrethが2曲に参加していることだが,収録されているのはCDに1曲,DVDに1曲である。私は映像に入っている"On Your Way Down"でのプレイぶりを見て,やっぱりこの人,無茶苦茶うまいと思ってしまった。昨今のスライド・ギタリストと言えば,ついついDerek Trucksとなるが,同じスライドでもスタイルが違うのだ。この技を見ている(聞ける)だけでも価値がある。もちろん,Sonny Landrethに留まらず,ゲストは見事な共演ぶりを示して,大いに楽しめる。

精緻な音楽という訳ではないが,こういうのも絶対ありだと思わせるに十分なライブ作。星★★★★。

Recorded Live at the Saenger Theatre, New Orleans on May 3, 2003

Personnel: Warren Haynes(g, vo), Matt Abts(ds), Danny Louis(key) with Jack Casady(b), Les Claypool(b, vo), Roger Glover(b), Mike Gordon(b, vo), Paul Jackson(b), Conrad Lozano(b), Will Lee(b), Jason Newsted(b), George Porter, Jr.(b, vo), Greg Rzab(b), Dave Schools(b), Rob Wasserman(b), Victor Wooten(b) and Karl Denson(ts, fl), Dirty Dozen Brass Band Horns, Bela Fleck(banjo), David Hidalgo(g, vo), Sonny Landreth(g), Ivan Neville(key), Fred Wesley(tb), Bernie Warrell(key)

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2023年12月 6日 (水)

Amazon Primeで見た「トーマス・クラウン・アフェア」。

Thomas-crown-affair 「トーマス・クラウン・アフェア("The Thomas Clown Affair")」(’99,米,MGM)

監督:John McTiernan

出演:Pierce Brosnan, Rene Russo, Dennis Leary, Ben Gazzara, Frankie Fason, Faye Danaway

先日,Amazon Primeで見たのがこの映画。Steve McQueen主演の「華麗なる賭け」のリメイク作である。私はオリジナルの方は見たことがないが,多少のプロットに違いはあっても,オリジナルに近いストーリーのようだ。

この映画,主演のPierce Brosnanがプロデュースも兼ねているので,Pierce Brosnanをカッコよく見せることに注力している感じがプンプンする(笑)。美術品の盗難というのがテーマになる中,NYCのメトロポリタン美術館が頻繁に出てくるが,本当かどうかは別にして,セキュリティってそうなっているのか~なんて思いながら見ていた。

まぁストーリーとしてはかなり無理があるところが見受けられるところが難点で,特に最後の仕掛けは...って感じだった。前作のヒロイン,Faye Danawayが出演しているのは,前作へのリスペクトもあろうが,必要だった?って気もする。時間潰しにはなるし,そこそこ見ていて楽しめる映画だとは思うが,イマイチ感が残るのはシナリオの無理矢理感ゆえだと思う。星★★★。

ところで,Amazon Primeでの見たこの映画は日本語吹替版はあるものの,日本語字幕がサポートされておらず,オリジナル音声派の私はクローズド・キャプションの英語字幕で見た。私は吹替版に興味はないので,日本語字幕は準備して欲しかったところ。

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2023年12月 5日 (火)

"Refract":実にユニークなフリーとアンビエントのハイブリッド。

_20231204_0001 "Refract" BlankFor.ms (Red Hook)

ブログのお知り合いが取り上げられていて気になったアルバム。そもそもリーダー,BlankFor.msなんて名前はこれまで聞いたこともなかった訳だが,BlankFor.ms(またの名をTyler Gilmore)がJason MoranとMarcus Gilmoreという俊英と共演ということでは注目度は上がる要素だ。ただ,それだけでは私のレーダー・スクリーンに乗ってこなかっただろうが,そうした人の音楽に触れてみようと思ったのも偏にブログのお知り合いゆえということになる。

そして,ECMレーベルでも優れた仕事を連発したSun Chungが立ち上げたRed Hookレーベルからリリースされたこの作品は,実にユニークで面白いものであった。言うなればフリーとアンビエントのハイブリッドあるいはフュージョンという表現が適切と思えるが,フリー度は抑制的なので,無茶苦茶アバンギャルドという訳でもない。BlankFor.msが操るエレクトロニクスやループにJason MoranのピアノとMarcus Gilmoreのドラムスが絡むという展開であるが,実に心地よく時間が流れていく。アンビエントと呼ぶには音楽的な刺激が強い部分もあって,そうしたパートは環境音楽として使えるかというと微妙だが,それでも静と動をうまく組み合わせた音楽は実にレベルが高い。

特にJason Moranのピアノが音楽の「核」としてその静と動を象徴的に示していると言ってもよいが,こうした三者の組み合わせの妙は,往時のECMレーベルにおいて様々なミュージシャンの組み合わせのアルバムが作られていた時代を思い出させるものであった。

今年リリースされたアンビエント的なアルバムとして,Arooj Aftab / Vijay Iyer / Shahzad Ismailyによる"Love in Exile" があった。あれも実に素晴らしい作品であったが,本作はそれに勝るとも劣らないアルバムとして評価したい。星★★★★★。そして,あっちはVijay Iyer,こっちはJason Moranという優れたジャズ界のピアニストが参加しているところは必ずしも偶然ではないと思う。

Recorded on May 26 & 27, 2022

Personnel: BlankFor.ms(electronics, tape loops, processing), Jason Moran(p), Marcus Gilmore(ds)

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2023年12月 4日 (月)

改めて「太陽の女神」を聞く。

_20231202_0002 "Sun Goddess" Ramsey Lewis (Columbia)

懐かしいアルバムである。私はこのブログで本作の再演盤を取り上げたことがある(記事はこちら)が,それももはや12年も前のことである。再演盤は再演盤で楽しいのだが,久しぶりにこのオリジナルを取り出して聞いた。このゆる~いグルーブがたまりませんなぁ。

冒頭のタイトル・トラックと5曲目"Hot Dawgit"がEW&FのMaurice Whiteのプロデュース,そのほかはTeo MaceroとRamsey Lewisによるプロデュースだが,タイトル・トラックはヴォーカルからしてEW&F的なところを感じさせるが,Ramsほぼey Lewisのエレピはもちろん,Johnny Grahamのギター・カッティングが心地よい。しかし,心地よいグルーブはほぼ全編に渡って効いている。確かにMaurice Whiteプロデュースの2曲はテイストが結構異なっているのはご愛嬌ってところ。また,3曲目の"Love Song"のメロディ・ラインはちょっと甘くなり過ぎたかなぁという気がしないでもないが,アドリブに入って,グルーブはよりよい感じに転じていくので許す(笑)。いずれにしても,小難しいことはこういうアルバムには不向きということにしたい。エレピにしろ,シンセにしろ,時代を感じさせるが,私ぐらいの年代のリスナーにとってゃなんのも問題もない(笑)。

こういうグルーブを持つアルバムなので,全編通してそういう感じにすればよかったと思うのだが,最後の"Gemini Rising"がこれまた雰囲気が違って,この曲が少々浮いていると感じてしまうのはどうなのかねぇと思う。そういうところもあって星★★★☆ってところか。ついでに言っておくとクレジットにFender Rhodes Electric Guitarなんて記述があるが,これが明らかに間違いなのは言うまでもなかろう。

しかし,このジャケットを見ていると,ついつい「007 ゴールドフィンガー」を思い起こしてしまうのは私だけ?

Personnel: Ramsey Lewis(p, el-p, synth), Charles Stepny(el-p, synth), Johnny Graham(g), Byron Gregory(g), Verdine White(b, vo), Cleveland Eaton(b), Maurice White(ds, perc, vo), Marice Jennings(ds, perc), Df Rehew Raheem(perc, ds, vo), Philip Bailey(perc, vo), Don Meyrick(ts)

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2023年12月 3日 (日)

瑞々しいとしか言えないLaura Nyroのライブ音源。

_20231202_0001"Spread Your  Wings and Fly: Live at the Filmore East May 30, 1971" Laura Nyro (Columbia / Legacy)

ごく一部の音源を除いて未発表だったLaura NyroのFilmore Eastでのライブ音源。既にリリースから20年近くが経過しているが,久しぶりに取り出して聞いてみた。ピアノの弾き語りで歌われる数々の曲は,私の貧困なボキャブラリーでは「瑞々しい」としか言いようがないものであった。

ソングライターとしても才能を発揮したLaura Nyroであったが,ここではAshford~Simpson,Goffin~King,Bacharach~David,そしてMarvin Gaye等のレパートリーも交えて歌っているが,その審美版が素晴らしい。彼女の声にぴったりはまって,まるでオリジナルのようにさえ響いているではないか。

レコーディング後残されていたテープの状態は結構悪かったみたいだが,そこはリリースに対応したチームの努力によって,完璧ではないとしても,全然問題なく聞くことができるのが素晴らしい。やはりLaura Nyro,素晴らしい歌手であったと再認識させられたライブ・アルバム。星★★★★★。

Miles-and-laura 尚,余談ながら,1970年にFilmoreに出た時の対バンはMiles Davisだったというのは,今にして思えば信じられないような組み合わせだよなぁ。そう言えば,MilesとLaura Nyroが一緒に写っている写真があったので,ついでにアップしておこう。69年,Columbiaのスタジオで撮られたものらしいが,Milesが笑っているぜ(笑)。

Recorded Live at the Filmore East on May 30, 1971

Personnel: Laura Nyro(vo, p)

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2023年12月 2日 (土)

"The Long Run":Eaglesのアルバムとしてはイマイチだよなぁ。

The_eagles_the_long_run "The Long Run" Eagles (Asylum)

私は長年のEaglesのファンであるが,今更Eaglesを取り上げるのもどうなのかと思いつつ,久しぶりにこのアルバムを聞いて感じたことを書いてみたい。

Eaglesが"Hotel California"でそれまで以上の大成功を収めたことは言うまでもないことだが,その後のアルバムとなると,これはプレッシャーが大きいことは疑いようがない。前作から3年を経て本作がリリースされた時のこっちの期待値も異常に高かったことも事実である。しかし,先行シングルの"Heartache Tonight"が出た時の違和感は今でも記憶に残っている。前作が名曲揃いだっただけに,それとの落差にはびっくりしたと言うべきだった。「なんだこれ?」ってのが正直な感覚であった。

そしてアルバム全体を聞いても,冒頭のタイトル・トラックからして面白くない。演奏や歌唱自体はEaglesそのものだとしても,曲のクォリティが伴っていないのだ。何回も聞いているから,メロディ・ラインは覚えているとしても,優れたアルバムだとはどうしても思えないというのが正直なところである。比較の対象が"Hotel California"以前のアルバムでは致し方がないとしても,アルバムで一番まともだと思えるのが,当時新加入のTimothy B. Schmitがリード・ヴォーカルを取る"I Can’t Tell You Why"ではいかんだろう。あと認められるとすれば"The Sad Cafe"ぐらいのものだ。

商業的には成功したとしても,これが一旦のバンド解散につながったことは必然と思える煮詰まり作だと思う。これに比べれば,復活時の"Hell Freezes Over"の当時の新曲4曲はまだまともだったと思ってしまう。星★★☆。

Personnel: Don Henley(vo, ds, perc), Glenn Frey(vo, g, key, synth), Joe Walsh(vo, g, key), Don Felder(g, org, vo), Timothy B. Schmit(vo, b), Jimmy Buffet(vo), David Sanborn(as)

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2023年12月 1日 (金)

クォリティとは無関係にハードルが高いと思えるBooker Littleの"Out Front"

Out-front "Out Front" Booker Little(Candid)

夭折のトランぺッター,Booker Littleのリーダー作は4枚ある。23歳で亡くなってしまったとは言え,Eric Dolphyとの"Five Spot"盤も残しているBooker Littleではあるが,その4枚とも私は保有しているから,私なりにその業績は相応に評価しているということになると思う。

そうした中で,久しぶりにこのアルバムを取り出して聞いたのだが,実に質が高いのはわかるのだが,聞くには少々ハードルが高い音楽だと感じた私であった。3管で繰り広げられる演奏は決して熱くならない。ジャズ的な躍動感や熱量はやや低いものに感じるところがそうしたハードルだと思えた。Booker Littleのソロにしても,Eric Dolphyにしても,そのソロのレベルは非常に高いものなのだが,全曲を占めるBooker Littleのオリジナルがテンションが高く,やや難しく感じてしまうところが聞く方にとっては難点と言えば難点なのだ。

音楽的な評価はリーダー・アルバムの中で,本作が推される場合もあるが,私としてはこの緊張感よりは,Timeレーベルの"Booker Little"の方を好んでしまうため,プレイバック回数に違いが出てくるように思える。3管とは言え,トロンボーンのJulian Priesterは若干影が薄いものの,それは完全にBooker LittleとEric Dolphyで補われているので,星★★★★☆とするが,心情的には星★★★★ってのが正直なところ。結局こうしたアプローチに対する好みの問題になってしまうと言えばその通りだが,やっぱりハードルが高いと思ってしまうのだ(苦笑)。

Recorded on March 17 & April 4, 1961

Personnel: Booker Little(tp), Eric Dolphy(as, b-cl, fl), Juian Priester(tb), Don Friedman(p), Ron Carter(b), Art Davis(b), Max Roach(ds, timpani, vib) 

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