"Magnetic":最もエレクトリック化したSteps Aheadはこれか?
"Magnetic" Steps Ahead (Elaktra)
1986年に来日したSteps Aheadはメンツは異なるものの,このアルバムからの曲を結構プレイしていた。その時のライブ盤を聞いて,私はエレクトリックSteps Aheadと呼んだ(その記事はこちら)のだが,このアルバムもエレクトリック化したSteps Aheadという印象が強い。もともとはフュージョン系のミュージシャンが4ビートに近い演奏をするというのがそもそものオリジナルStepsのコンセプトだったと思うが,そこからは随分離れた印象が強い。そんなアルバムを久しぶりに聞いた。
そもそもMichael Breckerが結構な割合でEWIを吹いているのにも時代を感じさせるが,ほぼ固定メンツで繰り広げられた演奏はタイトながら,私としてはライブ盤のよりスピーディーでハードな演奏に軍配を上げたくなる。全体的には決して悪くはないのだが,このアルバムには決定的な瑕疵がある。それは1曲だけGeorge Dukeがプロデュースした"Magnetic Love"なのだが,Diane Reevesをリード・ヴォーカルに迎えたこの曲は,イントロが鳴った瞬間,Gloria Estefanかっ!と言いたくなってしまうぐらい,その他の曲から浮きまくっている。明らかに異質な曲が1曲入るだけで,これはずっこける。Gloriaの名誉のために言えば,私はGloria Estefanだって嫌いじゃない。むしろ好きだと言ってもいいぐらいだ。にもかかわらず,この曲が気に入らないのは,アルバムのコンセプトとの親和性を考えないアレンジメント,演奏だからだ。これは明らかに失敗だった。
ほかの演奏がどんなによくても,この1曲でこのアルバムの印象は随分と悪くなったと言わざるをえない。だからもったいないのだが,"Magnetic Love"以外はそれなりに聞きどころがあると思っている。ということで,本来なら星4つでもいいのだが,半星減点して星★★★☆。口直しにライブ盤を聞くか(笑)。あっちはギターはマイキー,ベースはDaryl Jones,そしてドラムスはSteve Smithだからなぁ。あっちの方が絶対燃えるわ。
尚,余談ながら,これにMike MainieriにサインをしてもらったのはNYCのBlue Noteだったと思うが,それが私のNYC在住中か,出張中のことかは全く記憶がない(爆)。そしてジャケに写るは今は亡きWTC...。
Personnel: Mike Mainieri(synthsynth-vib, vib, key, synth), Michael Brecker(ts, EWI), Chuck Loeb(g, g-synth), Victor Bailey(b), Peter Erskine(ds, perc), Hiram Bullock(g), Paul Jackson(g), Kenny Kirkland(synth), Scott Martin(synth), Mitch Forman(synth), Warren Bernhardt(p, synth), Peter Schwimmer(banjo), Diane Reeves(vo), Diva Gray(vo), Janis Pendarvis(vo), Jocelyn Brown(vo), Robbie Kilgore(prog, p), Phil Ashley(prog), Jimmy Bralower(prog), Andy Topeka(sampling)
本作へのリンクはこちら。
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