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2023年8月31日 (木)

Amazon Primeで「ノスタルジア」を見た。

Nostalghia 「ノスタルジア("Nostalghia")」('83,伊/ソ)

監督:Andrei Tarkovsky

出演:Oleg Yankovskiy, Erland Josephson, Domiziana Giordano, Patrizia Terreno

Andrei Tarkovskyの映画は難しい。格調も高いが,理解の難度も高いというのが印象である。そんなTarkovskyの映画がAmazon Primeで見られるというのは珍しいと思っていたが,間もなく配信終了ということで,慌ててこの映画を見た。

多分この映画は未見だったと思うが,やっぱり難しい映画であった。そしてTarkovskyの映画では睡魔に襲われるのが常だが,この映画でも同様。これだけ静かに映画が推移していけば,そうなるのは当然だが,劇的かつ刺激的な描写も後半に出てくる。それでも非常に静謐な映画であることには間違いない。水の表現なんていかにもTarkovskyである。

この映画は亡命したTarkovskyの心象を反映した映画と言われるが,長回しで撮られたラスト・シーンをどう解釈するかも難しいところだ。圧倒的な映像美はここでも健在であるが,この難しさを受け入れられるかどうかが評価の分かれ目だろうな。私にとっては星★★★★ってところか。スノビズムを刺激するのは間違いないところだが(笑)。

2023年8月30日 (水)

Irene Kralの"Kral Space"をようやく中古でゲット。

_20230825 "Kral Space" Irene Kral (Catalyst)

ジャズ・ヴォーカルをあまり聞かないと何度も書いている私だが,もちろん全く聞かない訳ではない。しかし,そうした中で例外的に好きなのがIrene Kralと言ってよい。多分,私にはこの人の歌い方と声がフィットするのだろうと思える。だからと言って,私が保有しているのは70年代に入って,復帰してからのアルバムばかりだが,その中で入手出来ていなかったのが本作であった。先日,その中古が出たという通知があったので,すかさずゲットした私である。

本作はピアノ・トリオ+ヴァイブ/パーカッションという4人をバックにしたもので,傑作"Where Is Love?"や"Gentle Rain"のようなピアノとのデュオではないが,どんな編成であっても,やはり私には魅力的に響く歌手であったなぁと本作を聞いても思ってしまった。

そして,有名スタンダードと,あまり知られていない曲が混じっているが,それらの曲もIrene Kralにフィットしていると思わせるもので,自分の個性に合った曲を見つけてくる才能に長けていたと思ってしまう。冒頭の"Wheelers And Dealers"からして,Dave Frishbergのオリジナルってのも,へぇ~と思ってしまうのが普通だろうが,まさに審美眼に溢れると言えばよいものであった。まぁ,このジャケは...と思わない訳ではないが,収められた音楽については,文句も出ない。やはりいい歌手だったなぁと思ってしまう。

Irene Kralの70年代の活動を支えたAlan Broadbentの貢献度も高く,入手できた嬉しさも含めて星★★★★★としてしまおう。

Recorded in June 1977

Personnel: Irene Kral(vo), Alan Broadbent(p), Fred Atwood(b), Nick Ceroli(ds), Emil Richards(vib, perc)  

2023年8月29日 (火)

Grant Green: ここでの音源が全てお蔵入りしていたというのは信じがたい。

_20230823 "The Complete Quartets with Sonny Clark" Grant Green (Blue Note)

私はGrant Greenの熱心な聞き手ではないので,保有しているアルバム枚数も限定的で,このブログへの登場回数も極めて少ない。しかし,改めてこの2枚組を聞き直してみて,驚いてしまったことがある。

本作はGrant GreenとSonny Clarkの共演音源を集成したものであるが,これらの音源が長年未発表で「お蔵入り」していたということである。そもそもここに収められた音源を発掘したのは日本のキング・レコードだったというのも凄いが,それが"Nigeria","Gooden's Corner",そして"Oleo"の3枚である。下のアルバム・ジャケのイメージを見てもらえば,一貫性を持ったデザイン・テイストにしてあることも立派だったが,こうした音源を発掘したことは世界に誇っていいのではないか。

日本でこれらの音源が発掘されたのは,偏にSonny Clarkゆえではないかと思える。Sonny Clarkは日本においては"Cool Struttin'"を筆頭に非常に人気が高いから,参加音源を探っていくと,これらに行きついたということだろう。そしてこの2枚組はその3枚のアルバムに,後にMosaicでリリースされた別テイクほか3曲を追加したもので,極めて明確な編集方針を持っている。

Grant Greenは私の中では"Feelin' the Spirit"のようなゴスペル・タッチや,"Live at Club Mozambique"のようなどファンクのどっちかを想像してしまうのだが,ここでは極めて真っ当なジャズ・ギターを聞かせると言ってもよい。2枚目に入っている"Two for One"なんて,"So What"あるいは"Impressions"の焼き直しだしねぇ。"Moon River"みたいな選曲はどうなのよ?とは思えるところもあるが,全体を通じてこれは楽しめる。それが極めて短期間にレコーディングされていたというのだから,往時のBlue Note,まさに恐るべし。そしてそれをお蔵入りさせるのもまた恐るべし。何を考えてたんだか...って気もするが,これは十分星★★★★☆には値するコンピレーション。いいねぇ。

Recorded on December 23, 1961, January 13 and 31, 1962

Personnel: Grant Green(g), Sonny Clark(p), Sam Jones(b), Art Blakey(ds), Louis Hayes(ds)

Grant-green-albums

2023年8月28日 (月)

"Stan Getz at Storyville":音の悪さを補って余りあるGetzのフレージング。

_20230818 "At Storyville" Stan Getz (Roost→Roulette)

このアルバム,いろいろなジャケットで出ているので,これが現状のヴァージョンとは限らないが,私が保有しているのは90年代初頭にリリースされたもので,ジャケ写真を見てもらえばわかる通り,"Vol.1"と"Vol.2"で分売されていたものを1枚のCDにまとめたまぁお徳用盤である。この2枚合体は現行ヴァージョンでも踏襲されているはずだ。

1951年のライブ・レコーディングとあって,音はクリアさには欠けて,正直言って大したことはない。しかし,そんな音質の瑕疵は,Stan Getzのフレージングを聞いていればどうでもよくなると言っては言い過ぎか。まぁ,Stan Getzは次から次へと繰り出される流麗なフレージングには定評があるところではあるが,51年という時点で,そうした特性はもはや完成していると言っても過言ではない。この段階でStan Getz,24歳である。まさに恐るべしというところである。

Stan Getzのアルバムとしては,比較的テンポの速い曲が多いのが特徴的であるが,そんなテンポをものともせず,Stan Getzのフレージングは見事そのもの。Getzとユニゾンをビシッと決めるJimmy Raneyのギターとも相まって,ジャズ的なスリルも感じさせてくれるナイスなアルバム。まぁ,"Move"みたいな曲がGetzに合っているかと言えば少々疑問もあるし,これで音がもう少しよければってこともあり,星★★★★☆。

Recorded Live at Storyville on October 28, 1951

Personnel: Stan Getz(ts), Jimmy Raney(g), Al Haig(p), Teddy Kotick(b), Tiny Kahn(ds)

2023年8月27日 (日)

今見ても無茶苦茶面白かった「サブウェイ・パニック」。

The-taking-of-pelham-one-two-three 「サブウェイ・パニック("The Taking of Pelham One Two Three")」(’74,米,UA)

監督:Joseph Sargent

出演:Walter Matthau, Robert Shaw, Martin Balsam, Hector Elizondo, Earl Hindman, James Broderick, Jerry Stiller, Tony Roberts

この映画を見るのも久しぶりだ。この映画についても実は2009年にこのブログにアップしているが,多分でDVDで見たのもそれ以来になるのではないかと思えるが,何年経っても面白いと確信を持って言える映画である。

今回,私は舞台となった地下鉄に注目して見ていたのだが,私が在米中というより,出張中によく利用していたLexington Lineである。何だか懐かしい駅名ばかりが出てくるだけでも郷愁を誘われてしまった。Pelham 123は6番線という設定だから,Lexington Localであるが,私がNYCに住んでいた頃も,映画にも出てくる51st.でE Lineに乗り換えて家によく帰ったものだなんて思うと懐かしいこの上なかった。

そして地下鉄のシーンと並行して出てくる地上の風景を見ていると,何とも私に馴染みのある風景が多数出てきて,そういう意味で楽しんでしまったのであった。

映画としての面白さは保証できるが,それにしても渋い役者揃いである。それこそいぶし銀のような役者ばかりというのも凄かった。Ben StillerのオヤジのJerry Stillerが出ていたと気づいたのは今回が初めてだったが,本当に適材適所のキャスティングとはこれのことであった。改めてとなるが星★★★★★。後にリメイクされたものもそこそこ見られたが,こっちの方がはるかに優れた作品であることは言うまでもない。未見の方には一見をお勧めしたい。隠れた傑作とはこれのことだ。

2023年8月26日 (土)

Barry Harrisでくつろぐ。

_20230817 "At the Jazz Workshop" Barry Harris (Riverside)

Barry Harrisのアルバムは大した枚数保有していない私だが,久しぶりに聞いてみるかってことで取り出したのが本作。"Star Eyes"のエンディングとか聞いていると,おぉっ,Bud Powell直系だよなぁと感じさせるが,ライブ盤らしいリラクゼーションを感じさせるナイスなアルバム。

Barry Harrisを支えるリズムは,往時のCannonball Adderley Quintetを支えたSam JonesとLouis Hayesなのだから,これは楽しいに違いないと思わせるが,その想像が外れることはない。そう言えば,Cannonballのクインテットも同じくこのJazz Workshopでライブ盤を残していたが,本作は実に軽快でノリのよいピアノ・トリオ・アルバムになっていて,心地よい時間を過ごしてしまった。まさにジャズはエンタテインメントだと感じてしまう作品と言ってよい。リーダーと並んで,Sam Jonesのベース・ソロも楽しい。こういうアルバムを聞いてダメというリスナーがいれば,その人はジャズと相性が悪いと考えた方がいいだろうな。

だたねぇ,私が保有しているOJCのCDは,ボーナス・トラックを入れてくれるのはいいのだが,同じ曲を2テイク続けるってのは私はあまり好きではない。ボートラはボートラとして,最後にオマケでつければいいのである。人によってはテイクごとの違いを聞きたいということもあろうが,私はオリジナルのアルバムの流れは尊重すべきであって,それを安易に崩すべきではないと思っている。この辺の編集の雑さがOJCだよなぁと思えてしまうのがちょっと残念ではある。

演奏には文句はないが,この編集方針もあって,星★★★★。でも好きなんだが(笑)。

Recorded Live at the Jazz Workshop, San Francisco on May 15 & 16,1960

Personnel: Barry Harris(p), Sam Jones(b), Louis Hayes(ds)

2023年8月25日 (金)

なかなかユニークな編集方針のMM増刊「モダン・ジャズ」。

Modern-jazz 「モダン・ジャズ」原田和典(ミュージック・マガジン)

先日,お盆でお墓参りに行った際に,帰りの電車で読むものはないかということで,現地の書店で買ったのがこの本であった。ミュージック・マガジンからはアルバム・ディスク・ガイドとして,様々な増刊が出ているが,同社からジャズ関係の本が出たのはこれが初めてかもしれない。著者はマガジン誌ではJポップ/歌謡曲のアルバム・レビューを担当する原田和典だが,この人,もとは「ジャズ批評」の編集長もやっていたし,Blue Note東京ではライブ・レポートをアップしているので,ジャズについて語る資格は十分である。

一方,「モダン・ジャズ」を論じる上で,アナログ盤が似合うとしながら,更には選盤の期間を1945年から68年という時間で区切ったのはなかなかユニークと言えばユニークである。まぁ,確かにモダン・ジャズ黄金期は50~60年代というのは異論の出ないところだとは思うが。

この手のディスク・ガイドを見ていると,大体において「あのレコードはどうした? なんでこれが入っていて,あれが入っていないんだ?」みたいな指摘が出てくるものであり,この本でもなんでこれが...みたいなアルバムもある(例えばPerry RobinsonのSavoy盤とか) 。そもそも「Milesのエレクトリック化前(~68年)」「アメリカ人アーティストによるアメリカ吹き込み」「楽器奏者がリーダー」という編集方針は現在のジャズ・シーンを考えれば,相当偏っていると言われて然るべきものだ。しかし,よくよく考えてみれば,今や私も相応に欧州ジャズを聞くようになったとは言え,往時のジャズ喫茶でプレイバックされて,ついつい反応して,ジャケットを手に取って眺めてしまうというのは,ここで紹介されているようなアルバム群であったようにも思える。

そういう意味で,いかにも「モダン・ジャズ」らしいアルバムが選ばれているとも言える。一般的には敷居が高いと思われがちなジャズも,こういうところを入口にして,自分の好みの音を見つけていけばいいだろう。しかし,自分にフィットする音を見つけて,ジャズの泥沼にはまっていくには,それなりに場数を踏む必要もあるだろうし,そこへ至るハードルはそんなに低くはないだろうなぁ。それでも,往時であればジャズ喫茶に入り浸って触れた音に,今ではストリーミングで触れられるのだからいい時代ではあるのだが。

いずれにしても,私のようなロートルが気楽にパラパラと眺めるには丁度よかったということにしておこう。墓参りには老眼鏡を持って行っておらず,電車の中では結局読めなかったのだが(爆)。

2023年8月24日 (木)

今でもたまに聞きたくなるSwing Out Sister。

The-living-return"The Living Return" Swing Out Sister (Fontana)

彼らの1stアルバム,"It's Better to Travel"がリリースされたのが1987年だったことを考えれば,日本においてはバブル経済と同期して,こじゃれた音楽として受けた部分があったと考えられる。その後,バブルがはじけても,日本では人気を維持したのが不思議ではあるが,このこじゃれた中にメロウなグルーブを感じさせる音楽が日本にはフィットしたのではないかと思う。

そんなSwing Out Sisterであるが,私が買ったのは2001年に出た"Somewhere Deep in the Night"までで,その後については全くフォローもしていないし,まぁまぁしょっちゅう聞いていたのはこの4枚目の"The Living Return"あたりまでだったように思う。とにもかくにも私にとっては1stアルバムが決定的なのだが,それでもライブ盤"Live at the Jazz Café"も相当好きだったし,この辺りまでは結構はまっていたのは事実だ。

しかし,改めてこのアルバムを聞いてみると,結構まだまだいけていて,彼らの音楽的な資質は高かったということを感じさせるものだけに,海外での人気の失速はもったいなかったように思える。まぁ彼らの音楽がある種の型にはまっていることは事実なので,その辺が飽きられたということかもしれないが,私にとっては,現在であればMoonchildに感じるであろう心地よさを持っていた。

そうしたことを考えると,このアルバムなどは今一度評価し直してもいいのではないかと思えるし,"La La (Means I Love You)"なんて彼らによくあったカヴァー選曲だった。いずれにしても全編を通じて,メロウ・グルーブを満喫し,心地よく身体をゆするにはいいアルバム(笑)。星★★★★。

Personnel: Corrinne Drewery(vo), Andy Connnell(key), Derrick Johnson(b), Myke Wilson(ds), Tim Cansfield(g), Chris Manis(perc), John Thirkell(tp, fl-h), Gary Plumley(sax, fl), Richard Edwards(tb), Erica Harrold(vo), Sylvia Mason-James(vo), Derek Green(vo), Matt Backer(g)

2023年8月23日 (水)

「私を愛したスパイ」:Roger Mooreの007シリーズにしてはましな方か...。

The-spy-who-loved-me「私を愛したスパイ("The Spy Who Loved Me")」(’77,英,MGM/UA)

監督:Lewis Gilbert

出演:Roger Moore, Barbara Bach,Curt Jurgens,Richard Kiel, Caroline Munro, George Baker

Roger Mooreの007シリーズは評価しないと言いつつ,またAmazon Primeで見てしまったのがこの映画。シリーズ10作目ということで,気合いを入れて作ったということらしいが,海中シーンは「サンダーボール作戦」の焼き直しのようでもあるものの,英ソが協力して作戦に当たるってのがなかなかユニークなストーリーであった。

悪役を演じるのがCurt Jurgensであるが,この人はやっぱり「眼下の敵」だよなぁと思いつつ,ここでの役柄はさておき,老けてもカッコいい役者であった。この映画はソ連側のトップ・スパイ,トリプルX役を女優Barbara Bachが演じるというところも,まぁ時代の先取り感はあるものの,昨今の役者のように派手なアクションを演じる訳ではないのが70年代映画の限界か。その後,Barbara BachはRingo Starrのカミさんとなる訳だが,ボンド・ガールとしての魅力は,私としてはイマイチな感じがあったというのが正直なところ。

一方,007ものの仕掛けとしては,スキーあり,カーチェイスあり,潜水艦ありと,それはまぁいろいろ出てくる,出てくるってところだし,荒唐無稽さもありありで,まぁこれはちょっとやり過ぎではないかと思えるほどのサービスぶりであった。後の作品にも登場するRichard Kiel演じるJawsが初めて登場したのもこの映画であったしねぇ。砂漠のシーンに「アラビアのロレンス」の音楽をかぶせるのは悪乗りが過ぎるが...。

そうは言っても,まぁこれまでに私が見たRoger Mooreの007の作品よりはまだましというところで,星★★★☆としておこう。

2023年8月22日 (火)

Oregonとオーケストラの共演を改めて聞いた。

Oregon-in-moscow "Oregon in Moscow" Oregon (Intuition)

このアルバムについては,一度このブログで取り上げたことがある。もうそれも15年前のことだ。光陰矢の如しではあるが,久しぶりにこのアルバムを聞いて思ったことを書いてみたい。

私はこのアルバムのオーケストレーションを,Oregonのメンバーが施していることに驚きを隠せなかった訳だが,それについては今回も同じだった。実に真っ当かつ適切なアレンジメントだと言ってよい。だが,聞きようによっては,このオーケストレーションを過剰なものと捉えるリスナーがいても不思議ではない。それは聞く側の嗜好によるものであるから,人それぞれである。

だが,私にとっては,これほどOregonの音楽そのものを壊すことなく,むしろ引き立てると言ってもよいオーケストレーションは,Oregon単体の音楽の魅力を更に倍加させたとさえ感じられる。作曲者によるオーケストレーションだけに,やはりどうすべきかが「わかっている」ということだろうと思う。

Oregonの音楽はある意味室内楽的な部分があると言ってもよいが,それとオケの共演は実に素晴らしいものだったと改めて思った傑作音源。まぁこれをジャズと捉えていいのかについては議論のあるところとは思うが,やはり私はこのアルバムは高く評価するべきだと思う。星★★★★★。ジャンルを気にせず音楽を聞けるリスナーには心地よく響くはずだ。

Recorded in June, 1999 in Moscow

Personnel: Ralph Towner(g, p, synth), Paul McCandless(oboe, eng-horn, ss, b-cl), Glen Moore(b), Mark Walker(ds, perc), with Tchaikovsky Symphony Orchestra of Moscow conducted by George Garanian

2023年8月21日 (月)

先日,久しぶりに聞いた"Tales of Another"。

Tales-of-another_20230815163601 "Tales of Another" Gary Peacock (ECM)

先日,夏休み中に家人が出掛けた隙に(笑),アナログ爆音再生祭りをやっていた私である。通常から在宅勤務がほとんどなんだから,いつでもやろうと思えば爆音再生できるのだが,さすがに仕事をしている時に爆音再生,しかもアナログは結構難しい(と,真面目なサラリーマンを気取る)。

正直言って,在宅勤務中はバックでCDを適切な音量で再生しながら仕事をしている私だが,今回休み中とは言え爆音再生をしてみて,こういうのもたまには必要だと思ってしまった私である。

それはさておきであるが,このアルバム,私がジャズを聞き始めた頃に出たアルバムである。当時の国内盤についていたタイトルが"ECM"だったというのも凄いが,ある意味ECMレーベルの典型,あるいはECMを代表するミュージシャンのアルバムなのだから,当時の国内配給元だったトリオ・レコードがそう呼びたくなるのもわからないでもない。しかもこれが後のスタンダード・トリオの出発点になったことを考えれば,実に感慨深いではないか。

思えば,私がこのアルバムを買ったのは随分後になってからであるが,その当時からアナログ盤でB面ばかり聞いていたような気がするが,おそらくはB面の方により美的な感覚や音楽的なスリルを覚えていたのではないかと思える。そもそもではあるが,私は昔はKeith Jarrettがあまり好きではなかった。Keithのうなりに耐えられなかったという感じもあったが,今となっては全然気にしていないのだから,人間変われば変わるものだと思ってしまう。

改めて聞いてみて,実によく出来たアルバムだったと思うが,その後のECMの録音に比べると,エコーの過剰感も抑制されているように思えるのが面白かった。まぁもう45年以上前の録音なので,テクノロジーも変化しているのは当然だが,それでも最近のECMとは随分違ったんだなぁと感じたことは記しておかねばなるまい。往時のエンジニアであるMartin Wielandを懐かしく思ってしまった私であった。音楽としてはECM好きにとっては正直言って文句のつけようがないものであり,星★★★★★しかないが,本当に素晴らしいアルバムであったと再確認。ジャズの快楽を感じたと言っては大袈裟?

Recorded in February 1977

Personnel: Gary Peacock(b), Keith Jarrett(p), Jack DeJohnette(ds)

#GaryPeacock #TalesofAnother #KeithJarrett #JackDeJohnette #ECM

2023年8月20日 (日)

一時期,Pacific Jazzにはまっていた私。ってことで,今日はBud Shank。

Bud-shank-quartet "Bud Shank Quartet Featuring Claude Williamson" Bud Shank (Pacific Jazz)

長年ジャズを聞いていると,本流から外れた線に向かう時期ってのはあるのではないかと思う。天邪鬼な私は,たまにこういうのが聞きたくなるのだ!とか言って,結構Pacific Jazzレーベルのアルバムをアナログで購入していた時期がある。これもそうした一枚。

誤解を恐れずに言えば,ジャズの世界ではBlue Note,Prestige,Riversideが王道だとすれば,Contemporaryはまだしも,西海岸のPacific Jazzなどは言い方は悪いが,傍流と言ってもよいレーベルではないかと思う。日本のジャズのリスナーはどちらかと言えば,東海岸指向が強いと思えるので,Pacific Jazzはそこそこ人気があっても,思い入れが無茶苦茶強い人ってのはそんなに多くはないだろう。そこへ突っ込んでいくのが天邪鬼の私だった訳だ。

Pacific JazzのBud Shankと言えば,これと同タイトルの,ジャケにBud Shankのイラストをあしらったアルバム(PJ-1215)の方が人気が高いだろうが,これは同盤と同じメンツで吹き込まれた作品。冒頭は「チュニジアの夜」で始まるが,いきなりフルートで演奏するのがいかにもなのだが,いずれにしても,Bud Shankという人は良し悪しは別にして,音が軽い。同じアルトでもArt Pepperとも,Herb Gellerとも明らかに違う個性だよなぁと改めて思ってしまうが,陰影のようなものには乏しいものの,こういう軽快さをよしとして聞いていた時期が私にもあったということだ。B面には人気曲,「Softly as in a Morning Sunrise"も入っているが,やっぱり軽い。また,"Polka Dots and Moonbeams"のような曲をフルートで演奏すると,イージーリスニング的になってしまうのも,ゴリゴリのジャズを好む向きからは好かれないだろうなぁと感じてしまうところはある。ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」をアダプテーションした"Lamp Is Low"も,冒頭のフルートはそんな感じなのだが,途中からアルト・ソロに転じて,こっちの方がずっといいねぇと思ってしまうのだ。

しかし,改めてプレイバックして見ると,こういう音源は小難しいことを言わず,気楽に聞くのが一番だ。まぁ演奏としては星★★★☆ぐらいだろうな。

Recorded on November 7 & 8,1956

Personnel: Bud Shank(as, fl), Claude Williamson(p, celeste), Don Prell(b), Chuck Flores(ds)

#BudShank

2023年8月19日 (土)

休み中にAmazon Primeで見た「オクトパシー」。

Octopussy「007/オクトパシー("Octopussy")」(’83,英,United Artists/MGM)

監督:John Glen

出演:Roger Moore, Maud Adams, Louis Jourdan, Kristina Wayborn, Kabir Bedi, Steven Berkoff

お盆休み中も酷暑が続いていて,出掛ける気にもなれずということで,家でAmazon Primeで見たのがこの映画。007シリーズは好きでも,Roger Mooreの時代はどうも...と思っている私は,まだ見ていない作品もあって,これもそうした一本。

本作に出演したMaud Adamsは,「黄金銃を持つ男」にも出ていて,役柄は違うが,2回目の登場という珍しいパターン。私は「黄金銃を持つ男」ではBritt EcklandよりMaud Adamsの方がいいように書いているが,どうも役側が重くなったこの作品でのMaud Adamsにはイマイチ感が強かったのはちょっと不思議な気がしたが,この映画ではそんなに別嬪とも思えずってのが正直なところであった。

それはさておき,Roger Mooreが出ているこのシリーズはコミカルな要素が強いのが特徴であるが,本作ではそうした要素は控えめながら,インドにおける追跡シーンのドタバタ感はやはり...って感じで,なんだかなぁってところである。「ターザン」をパロっているのもあまりに無意味だろう。ストーリーもあまり面白みがなく,スパイ映画としてはどうもねぇって感じだったのも残念。気楽に見られるのはいいのだが,やはり私はRoger Mooreの007シリーズの作品は評価できないなぁ。星★★☆。

2023年8月18日 (金)

これがQuatreとしての1枚目:随分長いこと放置したものだ。

_20230812 "Quatre" Rava/D'Andrea/Vitous/Humair (Gala→Platinum)

このバンドがLabel Bleuに吹き込んだ"Earthcake"については,随分前に記事にしたことがある(その時の記事はこちら)。その時にも「このバンド,別のレーベルにもう1枚アルバムがあるようだから,そっちも聞いてみたいなぁ。」なんて書いていたが,その後,そのアルバムを入手していながら,そのことすらをすっかり忘れていた私である。入手していたことを忘れているのだから,記事にもしないまま,どれぐらいの時間が経過したのか...。そしてどうやって入手したのかすら全く記憶になかったが,よくよく記事を見返してみたらコメント欄に「eBayでゲット」って書いているではないか。我ながらやはりボケが進んできたと思わざるをえない(苦笑)。

これはLabel Blue盤に先立つ1989年にレコーディングされたアルバムであり,こちらがこのバンドとしての第1作となる。"Earthcake"の出来並びにこのメンツからして悪いはずはないと思わせるが,やはりこれが緊張感を持った実にいいアルバムである。フリー的なものから比較的コンベンショナルな響きまでがバランスよく収録されていて,やはりこの人たちならではの音となっていて嬉しくなってしまう。欧州ジャズには昨日記事にしたSøren Bebeのアルバムのような美的で清冽な響きもあるが,その一方でこういうサウンドも存在することが魅力的だと思える一枚。星★★★★☆。

それにしても,こういうアルバムもストリーミングで聞けてしまうのだからいい時代である(笑)。

Recorded in February and May, 1989

Personnel: Enrico Rava(tp), Franco D'Andrea(p), Miroslav Vitous(b), Daniel Humair(ds)

2023年8月17日 (木)

Fleetwood Macの"Mirage":悪くはないけど,曲のキャッチーさに欠ける気が。

_20230812-3"Mirage" Fleetwood Mac (Warner Brothers)

何だかんだと言ってFleetwood Macのアルバムはかなりの数保有している私だが,このバンドの黄金期のラインアップで吹き込まれたアルバムで,本作と"Tusk"は保有していなかった。"Tusk"は何かと実験的という評価もあり,まずはこっちからということで,ストリーミングでもよかったのだが,アルバムを購入したのがつい先日。今更なんでってところだが,これが気まぐれってやつである(笑)。

それでもって,このアルバムを聞いてみると,どうも収録された曲に,Fleetwood Macらしいキャッちーさが不足しているように思える。曲ごとのクォリティそのものはそこそこ維持されているとは思うのだが,曲毎に「光る」ものが足りないって感じだろうか。最初にシングル・カットされた"Hold Me"やセカンド・シングル"Gypsy"はさすがに彼ららしいと思わせるのだが,そのほかの曲は"Rumours"に比べると,パワーダウンしている気がする。これに比べると,次作となった"Tango in the Night"は,Lindsay Buckingham脱退前の取り組みとして,非常に力が入っていたように思えてしまう。

ライブ明けの一時的なバンドの休息期からの復帰を図った作品ではあったが,私にとっては過渡期の作品のように思えてしまう,そんな作品。もちろん悪いとは思わないが,星★★★☆ってところだろうな。この後,"Tusk"をストリーミングで聞いたら,私は"Tusk"の方を評価したくなってしまったのであった...(苦笑)。

Personnel: Lindsay Buckingham(vo, g, key), Stevie Nicks(vo), Christine McVie(vo, key), John McVie(b), Mick Fleetwood(ds, perc) with Ray Linsey(g)

2023年8月16日 (水)

記事にするのに時間が掛かってしまったAvishai Cohenの"Shifting Sands"。

_20230812-2"Shifting Sands" Avishai Cohen (Naive)

このアルバムは暫く前に入手していたものだが,記事にすることなく時間が経過してしまった。聞いていなかった訳ではないのだが,どうも印象が固まらないため,暫く放置しておいたものを改めて聞いたもの。

Avishai Cohenと言えば私は"Almah"のクラシカルな響きを高く評価し,"From Darkness"もそこそこ評価したつもりだが,アルバムを買うのはそれ以来。なので,Avishai Cohenを深く追っている訳でもないのだが,一聴して,このアルバムに関してはどうも出てくるメロディ・ラインに没入できない感覚が強かった。

例えば,私はLionel Louekeのアフリカン・フレイヴァーが効き過ぎの音楽を苦手としているから,過剰なエキゾチズムみたいなものが不得意なことと関係もあるかもしれないが,ここでの音楽がそこまでエキゾチックか?と言われれば,おそらくそうでもない。だから根本的な私の違和感は,メロディ・ラインというよりも,Roni Kaspiのドラムスにあるように思える。この人のドラムスの音が,このアルバムにおける音楽にフィットしない感覚がどうも違和感の根底にあると感じられる。だからドラムス(特にタム)が目立たない"Hitragut"のような曲が耳馴染みがよいのだ。

曲によっては気にならない場面もあるので,全面的に否定する訳ではないが,どうしてもこのアルバムにそんなに食指を動かされないのはこのドラムスのせいだと考えるのが正しそうだ。もはやこうなると趣味,嗜好の問題かもなって気もするが,もう少し抑制的に叩いてくれれば評価はもう少し上がったはず。星★★★。Avishai Cohenのアルバムなら,これを聞くより私は"Almah"を聞く(きっぱり)。

Personnel: Avishai Cohen(b), Elchin Shirinov(p), Roni Kaspi(ds)

#AvishaiCohen

2023年8月15日 (火)

William Friedkinを偲んで「フレンチ・コネクション」を改めて見た。

French-connection 「フレンチ・コネクション ("The French Connection")」(’71,米,Fox)

監督:William Friedkin

出演:Gene Hackman, Fernando Rey, Roy Scheider, Marcel Bozzuffi, Tony Lo Bianco

先日,この世を去ったWilliam Friedkinを偲んで,改めてこの映画をDVDで見た。何度か見ているので,ストーリーはお馴染みであるが,この映画の凄いところは,ほぼ全編をロケーションで撮影してしまったことだと思う。そうした中で,アクション,特にカーチェイス(と言っても追い掛けるのは地上を走る地下鉄車両だが)は極めてレベルが高く,そうした点でこの映画は実に優れた映画だと思ってしまった。

今から半世紀以上前のNYCの風景は,現在とはだいぶ異なるものではあるが,往時のNYCの街の姿をこれほどヴィヴィッドに捉えた映画はないだろうと思ってしまう。そうした意味での「演出」はWilliam Friedkinの手腕や功績と評価したくなってしまった。もちろん,オスカーも獲ったGene Hackmanはじめ,役者陣も素晴らしいが,やはりここはWilliam Friedkinを立てるべきものだと思ってしまった。

William Friedkinを偲ぶのに最適な傑作映画であった。星★★★★★。

正直言って「エクソシスト」をストリーミングで見てもよかったのだが,私は肝っ玉が小さいこともあって,ホラーが嫌いなので,やっぱりこっちにしたのであった(苦笑)。まぁ,正解だとは思うが。

#WilliamFriedkin #TheFrenchConnection

2023年8月14日 (月)

抱き合わせで買ったSøren Bebeの"Hope"。サウンドが一貫している。

_20230811 "Hope" Søren Bebe (From Out Here Music)

先日,Søren Bebeの"Echoes"について取り上げ,その清冽な美的サウンドにすっかり感心してしまった私である。その際,"Echoes"と抱き合わせ販売を勧められ,併せて購入したのが本作なのだが,メンツも一緒なだけに,おそらくは似通ったトーンだろうと思っていたら,想定通りの音が出てきて,この手の美的な音楽に弱い私は,本作にも同じように感心してしまった。

ECMで言えば,Bobo Stensonあたりのサウンドや,ECM以外で言えばThierry Langあたりの音とも同質性を感じさせるから,私が嫌いな訳がないのだ(笑)。44:23という演奏時間が涼やかに過ぎ去っていき,一時周りの酷暑を忘れさせてくれる効果もありと言いたくなってしまう。レコーディング自体はコペンハーゲンで行っているものの,ミキシングとマスタリングはレインボウ・スタジオでJan Erik Kongshaugに任せていることにも,やはり...という感覚を得てしまう。

本人のバイオを見ると,影響を受けたのがOscar Peterson,Keith Jarrett,そしてAaron Parksとある。Oscar Peterson的なところは全く感じないとしても,KiethとAaron Parksはなるほどなぁって感じもするし,ピアニスト以外ではKenny Wheelerに影響を受けているというのも頷ける話だ。Lars Janssonに師事しているというのもこれまた...ってところだろう。

とにかく,欧州の美的ピアノ好きなリスナーには受けること必定。本作も"Echoes"同様に評価可能な作品として星★★★★☆。レベル高いわ。

Personnel: Søren Bebe(p), Kasper Tagel(b), Anders Morgensen(ds)

#SørenBebe

2023年8月13日 (日)

Ed Bickert入りのFraser MacPherson盤を入手。

Jazz-prose "Jazz Prose" Fraser MacPherson (Concord)

私がEd Bickertのファンであることはこのブログで公言してきたが,全ての音源を押さえている訳ではない中で,CD化もストリーミングも行われていないこのアルバムは前々から聞いてみたいと思っていた。そのアルバムが中古市場に出たのですかさずゲットであるが,値段は安いものであったので,正直嬉しい。

主役のFraser MacPhersonはEd Bickert同様カナダ出身のテナーであるが,典型的なモダン・スイングって感じで,刺激はないが,実に聞いていて心地よい。私はこの人の"Live at the Planetarium"を聞いて,なかなかいいねぇと思っていたのだが,本作ではそれを支えるのがEd Bikcertを含む,いかにもConcordレーベルという感じの面々であるから,総帥Carl E. Jeffersonの趣味に合致した演奏が行われること必定なのだ。それに加えて,そもそも私はこのアルバムはスタジオ録音だと思い込んでいたのだが,ライブ盤であったのだから,リラクゼーション度アップも間違いないってところ。

出てきた音は,全くこちらの想定通りで,スリルとか刺激とかではないジャズのよさを感じさせるものであり,これはこれで楽しめばよいと思えてしまう。時と場合によって,フィットする音楽は変わるが,ちょっと体調を崩していた私にとっては,これぐらいの音楽が穏やかで丁度よかったと言うべきだろう。そして,相変わらずEd Bickertのバッキングとソロは素晴らしいと思ったのであった。星★★★★。逆に言えば刺激を求める人にはお勧めしませんわ。しかし,これと同時に入手したのが坂田明の2枚というのは,私もつくづく変態である(爆)。

Recorded Live at the Concord Pavillion in August 1984

Personnel: Fraser MacPherson(ts), Ed Bickert(g), Jake Hanna(ds), Dave McKenna(p), Steve Wallace(b)

#FraserMacPherson #EdBickert

2023年8月12日 (土)

なでしこ,スウェーデンに屈す...。

Photo_20230811190701

スコアとしては2:1というのは接戦にも思えるが,結局のところ完敗であった。 スウェーデンの圧倒的なスピードによるプレスで,なでしこは試合終盤までボールを保持できず,パスミスも続き、マイボールにも全然できていなかった。それにより,なでしこのよいところが完全に消されてしまったと言っていい試合だった。

前半の先制点はやむを得なかったし,後半開始早々のPKによる失点もハード・ラックであった。 しかし、1点返した後半のような動きがそれまでほとんど出ることはなかったし,攻勢に出るにはあまりにも遅すぎたのではないか? エンジンが掛かるのが遅いとしか言いようがない。そして,本来,プレスを掛ける側であるべきなでしこが,プレスを掛けるどころか,プレスを掛けられ続けるもどかしさもあり,ほぼフィジカルで圧倒されてしまったというのが現実だ。

ここで1点差になればというところで,植木がPKがはずすところのメンタルの弱さも日本的ではあるが,とにもかくにも今回はスウェーデンのプレスにやられたというのが実感。なでしこのサッカーのよさを消し去ったスウェーデンの作戦勝ちである。

今回の結果は残念だったが,次につながると思わせる収穫もあったと思う。今回ブレイクした宮澤ひなたは,海外の有力チームからもオファーが来るだろうから,更に海外で経験を積んで帰ってきて欲しい。

準々決勝敗退は残念だし,準決勝でスペインとの再戦を見たかったというのが本音ではあるが,今回のなでしこはまだまだフレッシュなメンバーが多いので,前を向いて次に向かって欲しいものだ。

#なでしこジャパン

2023年8月11日 (金)

追悼,Robbie Robertson...。

Robbie-robertson

Robbie Robertsonが亡くなった。前立腺がんで闘病中だったそうだ。思えばRobbie Robertsonも既に80歳を越えていたので,仕方ない年齢というところもあろうが,また一人の稀有なミュージシャンがこの世を去った。これでThe Bandの残党はGarth Hudson一人となってしまった。Robbie RobertsonにとってはThe Bandとしての活動は"The Last Waltz"で終わっており,その後の再結成に与することがなかったのは残念と言えば残念だが,それがRobbie Robertsonのプライドだったということだろう。

近年はMartin Scorseseの映画に関わるぐらいの活動しかRobbie Robertsonの名前を見ることはなくなっていたが,それでもThe Bandとしての活動のみならず,Daniel Lanoisがプロデュースした彼の1stアルバムは決して聞き易いということはないが,深みのある実にいいアルバムだった。プロデューサーとしてもJesse WinchesterやHirth Martinezのアルバムは記憶に残るものであり,いい仕事ぶりであった。

いずれにしても,Robbie Robertsonが特にThe Bandにおいて残した業績は不滅と言ってよいものであり,後世まで聞き継がれるに値するものだ。今回訃報に接し,私は"The Last Waltz"の拡張版4枚組CDを聞き通したのであった。

R.I.P.

#RobbieRobetson #TheBand

2023年8月10日 (木)

Ry Cooderの"Boomer’s Story":久しぶりに聞いても本当にいいねぇ。

Boomers-story"Boomer's Story" Ry Cooder (Reprise)

私は長年のRy Cooderのファンだが,このブログでは旧作については記事にしていないというのは我ながら実に不思議なことである。いいのが当たり前だと思っているから書いていないというのもあるが,それでも好き嫌いはあって,昔はLPで全部揃っていたが,CD時代になって,買い直していないものもある。例えば1stなんかはイマイチピンとこないし,"Jazz"も苦手であった。しかし,「紫の峡谷」とか本作は相当好きで,これぞルーツ・ミュージックと言いたくなるような音楽には,私も若い頃から痺れてきた。

このアルバムも紙ジャケで出た時に入手していたのだが,正直言ってちっとも聞いていなかったとは言え,改めて聞いてこういうメンツでやれば悪くなるはずがないというところだ。全編通して素晴らしいと思うが,インストで演じられる"Dark End of the Street"には改めて感服してしまった。これぞRy Cooderのギターの真骨頂。これだけでも星★★★★★にしてしまう私である。

今でも現役で活動を続けるRy Cooderであるが,このアルバムを吹き込んだ頃はまだ20代だったというのが信じがたい渋さ。いやいややっぱりRy Cooder,最高である。手持ちのCDを改めて聞き直すこととしよう。

ただ,この紙ジャケCD,確かにライナーにはいろいろ書いてあるとは言え,本来のクレジット情報が欠落しているのはいかがなものかと思ってしまう。このように再現性が低いのは日本製の紙ジャケにしては珍しい。

Personnel: Ry Cooder(g, mandolin, vo), Jim Dickinson(p, b, vo), Jim Keltner(ds), Milt Holland(perc), Tommy McClure(b), Roger Hawkins(ds),Gene Finney(hca), Charls Lawing(cl), Randy Newman(p), Sleepy John Estes(vo, g), George Bohanon(horn), Dan Penn(vo)

#RyCooder

2023年8月 9日 (水)

GTR:Steve HoweとSteve Hackettが組んだことによるシナジーを期待してはいけない。

Gtr "GTR" GTR (Arista)

Steve HoweとSteve Hackettと言えば,往時のプログレ界のギタリストとしては2大巨頭と言っても過言ではない。その二人がバンドを組めば,プログレの王道を期待してしまうのが筋ってものだ。Steve Howeは今やよいよいって感じになってしまったが,Steve Hackettは往年のレパートリーでプログレ道をいまだに歩むって感じになっているところで,現在においては私はSteve Hackettの方を支持しているが,このアルバムが出た当時はSteve Howeもまだまだちゃんとしていた(笑)。

しかしである。このアルバムで出てくるのは,まるでポップ化著しかったAsiaの焼き直しのような音ではないか。GTRというバンド名は,キーボードよりもバンドの主役はギターだぜというSteve Hackettの思いもあってつけられたって話もあるから,このバンドにはキーボードは不在である。その心意気はよかったのだが,この曲,この演奏じゃないだろうというのが,大方のプログレ好きの反応ではなかったか。そもそもプロデューサーがGeoff Downesなので,Asiaぽくなるのも仕方ないかなぁとも思えるが,今回,改めて聞いてみて,このポップさは過剰だろうと言いたくなるし,折角この二人がバンドを組成した意義はあったのかと思わざるをえない。曲としてはそこそこよくできているものもあるが,Asia以外にも何ともデジャヴを感じてしまうような音とも言え,星★★☆で十分。

Steve Hackettがバンドでのツアー後,突如脱退を表明したのは,あくまでもプログレの王道を進みたいSteve Hackettとの明らかな路線の違いだろう。物好きな私は,このバンドのライブ音源のCDも保有している。そっちはどうだったのかの記憶も飛んでいるので,探し出して聞いてみるか。

Personnel: Steve Howe(g, vo), Steve Hackett(g, vo), Max Bacon(vo), Phil Spaulding(b, vo), Jonathan Mover(ds, perc)

2023年8月 8日 (火)

日野皓正の"Daydream":懐かしいねぇ。

Daydream "Daydream" 日野皓正 (Flying Disk)

ストリーミングでこのアルバムを聞いた。前作が"City Connection"だったはずだが,フュージョン路線での日野皓正のあるばむということで,結構話題になっていたと思うが,本作については,私は往年のジャズ喫茶で聞いたことがあるぐらいで,買ったことはない。今回ストリーミングで聞いたのも,あくまでも気まぐれであった。

冒頭の"Still Be Bop"のユニゾン・リフは聞いた記憶があって,そこからして懐かしい感じであったが,全編を通して,まぁ典型的なフュージョン・アルバムであった。私は日野皓正のアルバムをそれほど聞いている訳ではないが,そうした中で2曲で聞けるDave Liebmanのソロが圧倒的にカッコいいと思ってしまうというのが正直なところである。2曲目にBob Jamesを客演に迎えているが,このBob JamesのソロもいかにもBob Jamesって感じなのも,これが個性ってやつだろうって思ってしまう。因みにBob Jamesがここに参加しているのは,本作の共同制作者に,Bob Jamesとも縁の深いJoe Jorgensenが名を連ねるからということだろう。

日野皓正と菊地雅章のデュオで演じられる"La Hora Azul"はアルバムとしてはインタールード的な位置づけになるように思え,アナログであればB面に転じて"Antigua Boy"でカリプソ・フレイヴァーで盛り上げる展開もなかなかのものであった。まぁ,2曲のヴォーカル曲はちょっと浮いている感じがあるが,トータルではそこそこ楽しめるアルバムだと思った。星★★★★。

今から40年以上前の音源であるが,こういうのを懐かしんで聞いてしまうところが,つくづく私も歳を取ったってことだな(苦笑)。

Personnel: 日野皓正(cor, fl-h), Dave Liebman(ts), Leon Pendervis(p), Bob James(p), 菊地雅章(key), Ed Walsh(synth), John Tropea(g), Anthony Jackson(b), Steve Gadd(ds), Freddie Harris(steel-ds), Janis Pendervis(vo), Lani Groves(vo), Luther Vandros(vo), Yvonne Lewis(vo) with horn and strings

2023年8月 7日 (月)

なでしこの快進撃に思う。

Hinata-miyazawa

久々のサッカー・ネタである。出場している選手たちには申し訳ないが,今回のサッカー女子ワールドカップにおけるなでしこジャパンの快進撃を誰が想像しただろうか?

なでしこはグループ・リーグを無失点の3連勝で楽々クリアし,決勝トーナメント1回戦も3-1でノルウェーを退けた。これまでの戦いっぷりを見ていて,堅守からカウンターで得点するというシーンが多いが,見ていて思い出したのが,2018年のワールドカップで,男子日本代表がベルギーに敗れた一戦での最後のベルギーのゴールである。あれぞカウンター中のカウンターという感じで私の記憶に残っているが,今回のなでしこを見ていると,あの一戦で臍を噛む想いをさせられた日本代表と同じ思いを,今回はなでしこが相手チームにさせているのではないかと思えてしまう。特にグループ・リーグで戦ったスペイン代表にとってはショッキングな試合だったはずだ。

それほど堅守速攻という戦術が徹底されていて,かつその戦術が選手交代を行っても一切変わらないというところは,チームとしての意思統一と対応が行われていて,実に立派だと思う。そして私が何より感心してしまうのが,なでしこのゴール決定力である。カウンターで抜け出した得点シーンは,ほぼはずすことなくゴールを決めている。それを象徴するのが宮澤のこれまでの5ゴールということになるだろう。日本と言えば,セットプレーからの得点みたいな印象が強いが,今回のなでしこは明らかに違う。流れの中からゴールを決める精度が違うのだ。こんなことが今までにあったか...と思ってしまうほどの決定力には心底驚いてしまった。

次戦の準々決勝の相手はスウェーデンに決まったが,アメリカ戦でのスウェーデンの戦いぶりを見れば,身長を活かしたヘディング攻撃は注意が必要ながら,スピード感ではアメリカに翻弄され,かつパスの精度も低かった。それを踏まえれば,ロング・フィードのハイボールへの対応と,縦への攻撃からのクロスとセットプレーからのヘディングに注意すれば,今のなでしこなら互角以上に戦える相手だと思う。スウェーデンのGK,Musovicは驚異的な守備を見せたが,日本がこれまで見せてきたカウンターと決定力で,スウェーデン・ゴールを割るところを見たい!8/11の準々決勝は気合いを入れて,なでしこを応援することにしよう。

頑張れ!なでしこ!!

#なでしこジャパン #FIFAWomen'sWorldCup

2023年8月 6日 (日)

"Rumours Live"。リリースを楽しみに待ちたい。

Rumours-live Fleetwood Macの最高傑作は何かというのは人それぞれだが,やはりセールスから言っても"Rumours"だろうなぁとは思う。と言いつつ,私はBob Welch入りのアルバムもかなり好きだが...。いずれにしてもFleetwood Mac絶頂期であるが,その当時のライブ音源が発掘されると聞いてはこれは買わずにはおれん。そもそもChristine McVieが好きでたまらない私としては,無条件に発注してしまったのである。

正直言って,彼らの"Tusk"期のライブ盤はあまり評価していない私でも,本作でラストを"Songbird"で締められては,おそらく別の感慨を得られると期待したい。

#FleetwoodMac #RumoursLive

2023年8月 5日 (土)

シブくも素敵な"Rough Mix"。

_20230803 "Rough Mix" Pete Townshend & Ronnie Lane (Polydor)

The WhoのPete TownshendとSmall FacesのRonnie Laneのコラボ・アルバムなのだが,ロック的な音と,ルーツ・ミュージック的な音がいい具合にブレンドして,実に気持ちよく聞けるアルバム。むしろ後者の色彩の方が強い感じが,アメリカ指向の私のようなリスナーには心地よいのだ。曲もいいしねぇ。

音楽界の大物二人の共演だけあって,バックを支えるミュージシャンも豪華なものである。このアルバムも実を言うと久しぶりに聞いたのだが,この渋い響きを楽しんでしまった。ちゃんとバックの面々も出すべき音がわかっているというところがいいのだ。決して売れる音ではないだろうが,こういう音楽は還暦を過ぎた私のようなリスナーにも十分訴求してくるものであった。星★★★★☆。

Personnel: Peter Townshend / Ronnie Lane (vo, g, b, mandolin, banjo, ukulele), Eric Clapton(g), Graham Lyle(g), Benny Gallagher(accor), Rabbit(org, el-p), Ian Stewart(p), Boz Burerll(b), Dave Markee(b), Charlie Watts(ds), Henry Spinetti(ds), Mel Collins(sax), John Entwistle(horn, vo), Peter Hope Evans(hca), Charlie Hart(vln), Julian Diggle(perc), Billy Nichols(vo) and Others

#PeteTownshend #RonnieLane

2023年8月 4日 (金)

これまた久しぶりに聞いたPhil Manzaneraのコンピレーション盤。

Guitarissimo
"Guitarissimo" Phil Manzanera (EG)

私はPhil Manzaneraにはまっていた時期があったし,今でも"801 Live","Diamond Head","Listen Now"はアナログ,CDの双方で保有しているし,"Quiet Sun"も昔はアナログで,今はCDで保有している。Roxy Musicのアルバムはほぼ持っているし,結局好きなのだ。

そして,この75年から82年の間の音源を集めたコンピレーションを久しぶりに聞いたのだが,ラテン風,フュージョン風,プログレ風と何でもありみたいなギターだなぁと改めて感じてしまった。オリジナルのアナログは全13曲を収めたものだが,"La Escena","El Viajero","Corrida y Carnaval","La Tristeza"というテーマに分けているのもが面白い。私の保有するCDはそれに4曲のボーナス・トラックが入り,聞き終わるとお腹いっぱいみたいになってしまうアルバムであった。

その中ではやはり"801 Live"収録の"TNK (Tomorrow Never Knowsである)"がやっぱりカッコいいよなぁなんて思ってしまい,結局は私はPhil Manzaneraのアルバムとしては"801 Live"が一番好きなんだと再確認した次第。星★★★★。

キラ星のごとき参加ミュージシャンのクレジットを見ているだけでも楽しくなる。まぁこれがPhil Manzaneraの人徳か。

Personnel: Phil Manzanera(g, b, p, synth, hca), Robert Wyatt(vo), Brian Eno(vo, synth), Simon Ainley(vo), Kevin Godley(vo), Lol Creme(vo), Tim Finn(vo), Ian McCormick(vo), Lloyd Watson(g), Simon Phillips(ds), Dave Mattacks(ds), Paul Thompson(ds), Charles Hayward(perc), Francis Monkman(p), Eddie Jobson(p), Billy Livsey(p), Eddie Rayner(p), Andy Mckay(oboe), Mel Collins(sax), John Wetton(b), Bill MacCormick(b, vo)

#PhilManzanera

2023年8月 3日 (木)

「北欧組曲」:今更ながらコンテンポラリー・ビッグバンドの見事な作品であった。

Photo_20230801095501「北欧組曲」高橋達也と東京ユニオン/三木敏悟(Three Blind Mice)

このアルバムがリリースされた頃は,私がジャズを聞き始めの頃と時期的に合致しているが,そんな初心者にとっては,まだまだ日本のミュージシャンのアルバムを買うところまでは行きついていない。例外はナベサダぐらいのものであった。なので,私がこのアルバムを購入したのは随分後になってからのことで,かつラックの肥しのようになってしまっていたのも事実である(苦笑)。

しかし,ここのところの酷暑続きの中で「北欧」というタイトルが魅力的に響くのも事実で,久しぶりに取り出して聞いた。そもそもこれまでだって大した回数のプレイバックはしていないはずだから,結構新鮮な気持ちで聞いたとも言える。

本作はソロイストの魅力を活かしたビッグバンド曲集であって,強烈なユニゾンとかを聞かせるものとは一線を画する。そういう意味では熱くはならないが,「北欧組曲」とは言え,涼し気なサウンドかと言うとそれほどでもない。だが,魅力的なメロディ・ラインを持つ曲が多く,心地よく聞くことができるアルバムで,実によく出来たアルバムであった。よって,その年のジャズディスク大賞において,「日本ジャズ賞」に輝いたのも頷ける話である。

私が感心したのは1977年というタイミングにおけるコンテンポラリーなサウンドが,45年以上を経過しても古びたところを感じさせない点だ。それはソロイストが魅力的な演奏をしているところにも依存しているような気がするが,それぐらい見事なソロと,それをうまく支えるバックのアレンジメントがうまく機能したというところかもしれない。コンベンショナルなビッグバンドとは一線を画するアルバムとして星★★★★★。

Recorded on May 15 & 22,1977

Personnel:高橋達也(ts),多田晴文(tp),我孫子浩(tp),鈴木基治(tp),斉尾知一(tp),宮崎英治郎(tb),内田清高(tb),岡田光一(tb),簾健一(b-tb),堀恵二(as),柳沼寛(as),井上誠二(ts),石兼武美(bs),金山昌宏(p),石田良則(b),海老沢一博(ds),荒谷憲一(g), 直居隆雄(g),今村祐司(perc),ミッキー吉野(synth),三木敏悟(comp, arr)

2023年8月 2日 (水)

Bad Company: Simple Is Bestと言いたくなるようなストレートなロック・アルバム。いいねぇ。

Bad-company_20230802102801 "Bad Company" Bad Company (Swan Song)

このアルバムがリリースされたのが1974年なので,私が中学生になった頃である。当時からスーパー・グループとか言われていたと思うし,デビュー・シングル"Can't Get Enough"がヒットしていた記憶がある。しかし,当時の私にとってはBad Companyというバンドのメンバーの出自をよくわかっていないこともあって,ラジオでかかるのを聞いていたぐらいに留まっているし,それから幾星霜を経た現在も,私が保有している彼らのアルバムはこのデビュー・アルバムのみである。今にして思えばFreeの2人とMott the Hoopleのギター,そしてKing Crimsonのベースというメンバーがスーパー・グループなのかと言えば,少々微妙なところもあるが,音楽的な価値とは無関係だと思っておこう。

昨今,ストリーミングで1970年代のロックをランダム再生していると,Bad Companyの曲に出くわすことがかなりの頻度である。一番頻度が高いのは2ndアルバム所収の"Feel Like Making Love"だと思うが,そんなこともあって,このアルバムを久しぶりに取り出して聞いてみた。するとこれが主題の通り,シンプルでストレートなロック・アルバムでありながら,曲よし,歌よし,演奏よしで実に楽しめてしまった。Led Zeppelinのレーベル,Swan Songから出るのも納得だが,まさにギミックなしのアルバムで,私のような年代のリスナーには何とも心地よく響く。来年は本作のリリース50周年というのが信じがたいが,それでも今でもいいものはいいのだと言いたくなる。言わば懐メロではあるし,サウンドに新しさがないのは当然だが,新しければいいってものではない。ここは喜んで星★★★★★としてしまおう。

そして,よくよく見てみると,この一見してインパクトのあるジャケットのデザインはHipgnosisだったのねぇ。彼ららしくないって気もするが,このシンプルなデザインでもちゃんと印象に残るところは,シンプルでも忘れられない魅力を放つBad Companyの音楽と同じで,コンセプチュアルに整合性が保たれていたのだなぁと今更ながら感心してしまった。

Recorded in November, 1973

Personnel: Paul Rogers(vo, g, p), Mick Ralphs(g, key), Boz Burrell(b), Simon Kirke(ds), Mel Collins(sax), Sue and Sunny(vo) 

#BadCompany

2023年8月 1日 (火)

Amazon Primeで見た「アラン・ドロンのゾロ」:B級もここまで行くと笑える。

Zorro 「アラン・ドロンのゾロ("Zorro")」(’75,伊/仏)

監督:Duccio Tessari

出演:Alain Delon, Ottavia Piccolo, Stanley Baker, Moustache, Adriana Asti, Enzo Cerusico

この映画の主題歌は記憶に残っている。私が頻繁に映画館通いをしていた中学生の頃,この映画の予告編を見たはずで,その時の印象が残っていたからだ。だが,子供心にも私が観たいと思うような映画ではなかったので,私がこの映画を見たのは今回が初めてだが,B級映画中のB級映画ってところで,こういう映画は難しいことを言わず,単純に楽しめばいいだろうという西洋チャンバラ映画である。

Alain Delonと言えば,日本でも高い人気を誇った往年のスター俳優であるから,ここでもあくまでもAlain Delonをカッコよく見せることが重要だったと考えれば,まぁそういう映画である。シナリオは無茶苦茶だし,アクション・シーンもさもありなんって感じなのが笑える。善玉は善玉,悪玉は悪玉とはっきりしているところも,昔ながらの映画って感じだ。なんてたって,最初に映画化されたのはDaglous Fairbanks主演の「奇傑ゾロ」だし,その後Tyron PowerやAntonio Banderasに引き継がれていった人気キャラなのだ。日本で言えば鞍馬天狗みたいなものだから,推して知るべしではある。

そういう映画に難癖をつけてもしゃあないだろうというところではあるが,さすがにここまで行くとって感じなのは否めない。はっきり言って毒にも薬にもならないが,まぁいい時間つぶしだったと思えば腹も立たないってことで,星★★☆。Amazon Primeでは英語版だったが,英語音声はAlain Delonっぽくなかったなぁ。

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