Pat Methenyの"Rejoicing":プレイバックの頻度が高まらない訳...
私はPat Methenyのリーダー作はほぼ全て保有していると思うが,それらの中でプレイバックの頻度が高いものと,低いものが出てくるのは仕方がないことである。そんな中でこのアルバムはどちらかと言えば低い方になってしまうのには訳がある。
冒頭からオーセンティックなジャズ・ギター・アルバムと言ってもよい響きの中で,いかにもPat Methenyらしいフレージングが散りばめられており,実に楽しめるアルバムなのだ。しかし,その流れを完全に分断してしまうのが7曲目のPat Methenyのオリジナル,"The Calling"なのだ。ギター・シンセで演じられるこの曲はハードなフリー・ジャズとなっていて,明らかに浮いている。本作にはOrnette Colemanの曲が3曲含まれているし,Pat Methenyは後に"Song X"をOrnette Colemanと吹き込む。またアルバム"OffRamp"においても,タイトル・トラックはOrnette Colemanへのオマージュを捧げているが,この"The Calling"は更にアバンギャルドが高いので,初めて聞いた時はのけぞってしまったし,その印象が強過ぎたのであった。
アナログ盤であれば,A面だけ聞いていればいいやってことにもなるし,CDでも6曲目でプレイバックを止めてもいいのだが,私が保有しているのはCDなので,止めるのを忘れて7曲目に至るとはぁ~...となってしまう(笑)。そういう経験が何度か重なるとついついプレイバックする気が失せてくる。だから"The Calling"という曲は実に罪作りな曲なのだ。
私は決してフリー・ジャズに耐性がない訳ではない。しかし,そんな私にとっても"The Calling"はやり過ぎとしか思えないのは,アルバムとしての統一性を失わせたことによるものだ。Pat MethenyはDerek Baileyとの共演盤や"Zero Tolerance for Silence"のような破壊的なアルバムを作ってしまうこともあるから,それも含めてPat Methenyだよねということではある。しかし,いくらファンだからと言っても何でも受け入れられる訳ではないのだ。ということで,全体としてはいいアルバムだと思う一方,1曲の違和感が勝ってしまうという不幸なアルバム。星★★★★。
Recorded on November 29 & 30, 1983
Personnel: Pat Metheny(g, g-synth), Charlie Haden(b), Billy Higgins(ds)
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