"The Return of Art Pepper":麻薬禍からの第一回(?)復帰後のアルバム。
"The Return of Art Pepper" Art Pepper (Jazz West→Blue Note)
Art Pepperと麻薬は「切っても切り離せない」ような関係と言ってよいかもしれない。特に彼が本来ならもっと活躍できていたであろう時期に,麻薬のせいで娑婆に出てこられなかったというのは,ジャズ界にとっては痛恨事だったと思ってしまう。
Art Pepperは70年代に復帰した後がいいか,50年代に活躍していた時期がいいかの議論は永遠に続いていくだろうが,これは音楽に対する好みもあるから,リスナーがどっちがいいとか,どっちもいいとか判断すればいい話で,論争するような話ではないと思っている。因みに私は「どっちもいい」である。
ただ,やはり惜しかったなぁと思うのは,初リーダー作"Surf Ride"をリリースした後,最初の収監があって,これからって時期を刑務所で過ごしたのは痛い。そして,ここでいう"Return"はまさにムショからの第一回(正確には第二回らしいが...)の娑婆への"Return"である(笑)。本作以降,50年代後半のArt Pepperの活躍ぶりは見事なものだが,またも61年に刑務所行きとなり,長期間を刑務所と療養施設で過ごしたのは本当にもったいなかった。それでもって70年代にシーンに真の意味で復帰した後には,音色やフレージングに変化があったことは衆知の通りであるが,それで好き嫌いがわかれるというのもわからないではないとしても,ミュージシャンには変化はつきものだと思えばいいのだ。
それはさておきこのアルバムである。私が保有しているのはBlue Noteから再発されたCDで,オリジナルの本作に収められていた10曲に,5曲の別セッションのボーナス・トラックが入ったもの。ジャケも写真は一緒だが,タイトル表示等には違いがある。このボートラはIntroレーベルから出た"Collections"というアルバムからのチョイスで,必ずしもArt Pepperのリーダー作と言えるものではないので,あくまでもオマケと考えればよいだろう。まぁそうは言ってもArt Pepperが比較的目立つ曲をチョイスしているように思えるので,しっかりした編集方針だと思う。最後に入っている"Straight Life"なんか凄くいいしねぇ。
"The Return of Art Pepper"本編はいかにも西海岸というプレイヤーによる2管クインテットだが,私としてはArt Pepperはワンホーンが一番と思っていることから,このアルバムの優先順位は必ずしも高くならない。しかし,久しぶりに聞いてみると,これより優れたArt Pepperのアルバムはあるとしても,決して悪くないアルバムで,西海岸らしい軽快さが楽しい。そして全10曲中8曲をArt Pepperのオリジナルが占めているところに,「復帰」への意欲が感じられるというところか。評価としては星★★★★ぐらいが妥当と思う。
Recorded in August, 1956 and on January 3, 1957
Personnel: Art Pepper(as, ts), Jack Sheldon(tp), Russ Freeman(p), Leroy Vinnegar(b), Shelly Manne(ds), Red Norvo(vib), Gerald Wiggins(p), Ben Tucker(b), Joe Morello(ds)
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