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2023年7月31日 (月)

感動...。それ以外の表現が見つからないJoni Mitchellの復活作。

_20230730 "At Newport Featuring the Joni Jam" Joni Mitchell (Rhino)

病に倒れたJoni Mitchellが,公の場に登場することはあっても,音楽活動を再開する(できる)と思っていた人は,ファンであろうと少なかったのではないか。かく言う私もその一人である。当ブログで個別ミュージシャン単位でカテゴリーを持つのはBrad MehldauとJoni Mitchellだけという扱いをするぐらい,私はJoni Mitchellの音楽を愛しているが,それでもやはり...という感じで,Archiveシリーズでリリースされる過去音源だけでも満足しなければならないと思っていた。

そんなJoni Mitchellが2022年7月24日のNewport Fork Festivalのステージに登場したというニュースは,私も驚きを以て,当ブログでも記事にした(その時の記事はこちら)。本作はその時の音源が約1年の時を経てリリースされた。今年になって,Joni Mitchellは再び"Echoes through the Canyon"と題して2日間ステージに立っているから,この復活劇が一回限りでなかったというのも実に素晴らしい。

そして,私はこのアルバムがデリバリーされて,早速聴いた時に,冒頭のBrandi CarlileのMCだけで,もはやうるうるしてしまったのであった。病気を克服したとは言え,Joni Mitchellの声は更に低いものとなり,音程も完ぺきとは言えないだろう。しかし,音楽的な観点よりも,このイベントが開催され,Joni Mitchellがステージに立ったということの重要性の方が私にとってははるかに重要であった。そして,この場だけでなく,長期に渡ってJoni Mitchellの復活を支えようとしてきたミュージシャンたちの心意気,復活を果たそうとするJoni Mitchellの強さを考えれば,このアルバムには感動以外の感覚はなく,それだけで星★★★★★しかないのだ。

私にとっては,誰が何と言おうと今年一番の「感動作」となること必定のアルバムである。せっかくだから,今年のライブ時の写真もアップしておこう。こんなところで聞いたら,感動度は更に増したことだろう。その場にいた聴衆に猛烈にジェラシーを感じざるをえない。

Recorded Live at the Newport Fork Festival on July 24, 2022

Personnel: Joni Mitchell(vo, g), Brandi Carlile(vo), Phil Hanseroth(b, vo), Tim Hanseroth(g, dulcimer, vo), Lucius<Jess Wolfe, Holly Laessig>(vo), Taylor Goldsmith(g, vo), Celisse(g, vo), Ben Lusher(p), Blake Mills(g, vo), Marcus Mumford(perc, vo), Josh Newmann(cello), Alison Russell(cl, vo), Rick Whitfield(g, vo), Matt Chamberlain(perc), Wynonna Judd(vo), Shooter Jennings(vo), Kyleen King(vo), Sistastrings<Monique Ross, Chauntee Ross>(vo), Jay Carlile(vo), Marcy Gensic(vo), Sauchuen Yu(vo)

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Ecoes-through-the-canyon

2023年7月30日 (日)

"ContoS":酷暑の中でも熱くならない音楽をってことで。

_20230727-2 "ContoS" Paolo Fresu / Furio Di Castri / John Taylor (EGEA)

ここのところの酷暑には正直辟易としているので,こういう時には暑苦しい音楽はどうしても回避したくなってしまう。ということで,今回取り出したのがこのアルバムだが,「冷たい」という感じではないのだが,内省的な響きが多少なりとも環境をクールダウンしてくれる効果があった。

Paolo FresuとFurio Di Castriには"URLO"なんてデュオ・アルバムがあったが,その二人に加わるのがJohn Taylorである。いくら奏者二人がラテン系でも,John Taylorが加わると,ラテン的な感じが抑制されている。そうした響きは昨日取り上げたBrown~Roach Quintetの直球ジャズとは全く異なるものであり,ジャズという音楽の間口の広さを改めて感じてしまう。

全9曲中,三者のオリジナルがFresu:4曲,Di Castri:3曲,Taylor:2曲配置されているが,トーンはほぼ一貫している。内省的ではあっても,メロディ・ラインはしっかりしている曲が多いので,聞きづらいということもなく,私はこの演奏をプレイバックしながら,心地よい時間を過ごしたってところだ。コンベンショナルなジャズを好むリスナーにとっては魅力的とは感じられないかもしれないが,こういうのもありだよなぁと思ってしまう。私が欧州系のジャズに目覚めたのはいくつかの例外を除いて,それこそこのブログを始めて以降みたいな感じだが,それから年月が経過して,私の嗜好も随分変わったなぁと思ってしまった。星★★★★。

Personnel: Paolo Fresu(tp), Furio Di Castri(b), John Taylor(p)

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2023年7月29日 (土)

半日休みを取って見に行ったDavid Hockney展。

Davidhockney05

私は長年のDavid Hockneyのファンである。今は飾っていないが,自室にはDavid Hockneyのポスター・フレームが置いてあるし,自宅の廊下には小型だがHockneyの絵が飾ってある。David Hockneyのヴィヴィッドな色使いが昔から好きなのだ。

そのDavid Hockneyの展覧会が東京で開催されるとあっては行かぬ訳にはいかないということで,金曜日午後半休を取って,東京都現代美術館に行ってきた。ここに来るのは,「館長 庵野秀明 特撮美術館」の時以来だから10年以上経過している。ペインティング,エッチング,リソグラフ,映像と相当数の展示がされていたが,私としてはもう少しいろいろな作品が見られるのではないかと期待していただけに,少々物足りない部分もあったが,それでもDavid Hockneyの作品群を堪能することができた。

それにしても,iPadを使って制作した作品も見事なら,映像のコラージュも見どころがあって,David Hockneyの芸術の幅広さを改めて感じていた私である。新作と言ってよい「ノルマンディーの12か月」が90mに及ぶ作品というのも凄いが,今回私が観られて一番嬉しかったのは「ホテル・アカトラン 2週間後」だったかもしれない。これこそ私にとってはDavid Hockneyの真骨頂って感じの色使いなのだ。やっぱり私はDavid Hockneyが好きなのだ。猛暑の中,東京都現代美術館まで足を運んだ価値はあった。

尚,私は美術館で写真を撮る趣味はない(そもそもスマホのシャッター音は邪魔以外の何ものでもない) ので,どちらの写真もネットから拝借。

2_20230728163301

#DavidHockney

2023年7月28日 (金)

Brown~Roach Quintet:今更ながらのジャズの王道。

_20230727 "Clifford Brown And Max Roach" (Emarcy)

長年このブログを運営していても,振り返ってみれば,Clifford Brownのアルバムを取り上げたのはなんと"Study in Brown"だけである。そもそもアルバムもそんなに買っている訳ではないのだが,本作も私の父の遺品である。

そんなアルバムを久しぶりに取り出して聞いたのだが,主題の通り,まさにジャズの王道と言いたくなるような演奏の数々である。彼らのライブ盤"In Concert"と,"Jordu"や"Parisian Thoroughfare"が被ることもあって,印象はかなり近いが,ジャズのいいところが強く感じられる演奏で,思わず嬉しくなってしまった。アドリブの素晴らしさもあって,Clifford Brownというトランペッターの魅力,更にはMax Roachのドラミングの凄みを再確認してしまった。星★★★★★。

いずれにしても,こういう往年の名演奏も,たまにはちゃんと聞かないといかんなぁと改めて思った私である。

Recorded on August 2, 3 & 6, 1954 and on February 24 & 25, 1955

Personnel: Clifford Brown(tp), Harold Land(ts), Richie Powell(p), George Morrow(b), Max Roach(ds)

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2023年7月27日 (木)

Cecile Licadって最近どうしているのか。デビュー作のラフマニノフを聞いて,何だかもったいないと感じた。

_20230724 "Rachmaninoff: Piano Concerto No.2 / Rhapsody on a Theme of Paganini" Cecile Licad / Claudio Abbado / Chicago Symphony Orchestra (CBS)

全くの気まぐれで,AbbadoのRCA/Sonyのボックスから何枚かを取り出して聞いていたうちの一枚。今年はラフマニノフの生誕150周年とかで,やたらに生でもラフマニノフが演奏される機会の多い年だが,それに引っ掛けて選んだと言っても過言ではない。

ここでの主役であるピアノのCecile Licadはフィリピン出身で,これがデビュー・レコーディング。バックをAbbado/Chicagoという鉄壁のコンビが支えるという恵まれたデビューを飾った訳だが,当時のCBSの期待の大きさが表れていたと言ってもよいだろう。その後のキャリアでは,必ずしもレコーディングには恵まれているとは言い難いのはちょっともったいない気がする。そう感じさせる演奏であった。

私は特にラフマニノフの音楽に大した関心がある訳でもないので,演奏を評価する資格は正直言ってないのだが,ピアノ協奏曲2番はまぁそれなりの演奏って感じか。むしろ,このアルバムで私がより興奮してしまったのが「パガニーニの主題による狂詩曲」の方であった。この血沸き肉躍るダイナミズムには正直身体が反応してしまった。なので,私にとってはこのアルバムは「パガニーニの主題による狂詩曲」を聞くためのものだと思った。ということで,トータルでは星★★★★ってところ。

気まぐれでもたまにはこういうのも聞かないといかんなぁと感じるが,これを廃盤にしておくのももったいない話だ(Amazonにはジャケすら出てこない)。特に「パガニーニの主題による狂詩曲」はマジで強烈なのだ。

Recorded on February 12 & 14, 1983

Personnel: Cecile Licad(p), Claudio Abbado(cond), Chicago Symphony Orchestra

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2023年7月26日 (水)

久しぶりに聞いたJohnny Cash。超シブい。

_20230723-3 "American Recordings" Johnny Cash (American Recordings)

私が保有するJohnny Cashのアルバムはこれだけのはずだ。そもそもカントリー・ミュージックにはほぼ関心のない私だから,それはそれで仕方がないのだが,Johnny Cashについてはその名前を初めて認識したのは「刑事コロンボ」の「白鳥の歌」に出演した時だったと思う。それも今から半世紀近く前のことだ。時の経過は恐ろしい...。

それはさておきである。本作をプロデュースしたのがRick Rubinというのがまず意外である訳だが,ヒップホップやラウド系ロックのイメージが強いRick RubinがどうしてJohnny Cashなのかと思うのが普通だろう。まぁそれでもThe Chicks(以前のDixie Chicksだ)もプロデュースしているぐらいだから間口が広いのだ。そしてここではギター1本での弾き語りというスタイルが貫かれているのが渋さの所以という気もする。

LAのViper Roomにおけるライブ音源2曲に加えて,録音されたのがJohnny Cashのキャビンと,Rick Rubinのリヴィング・ルームってのが宅録感満点だが,そうした感覚が雰囲気を増幅させているという気がする。そして歌うのがJohnny Cashのオリジナルに加えて,Nick Lowe, Kris Kristofferson, Leonard Cohen, Tom Waits, そしてLoudon Wainwright III等のカヴァーが並ぶと,ついつい私のようなリスナーは反応してしまうのだ。

中でもLeonard Cohenの"Bird on the Wire"は本人やTim Hardinの歌でも知られる名曲だが,ここでのJohnny Cashの歌がこれまた渋い!ここには"Bird on a Wire"とクレジットされているが,一般的な語感としては不定冠詞"a"の方がしっくりくると思う。しかし,敢えて定冠詞"the"としたところには詩人Leonard Cohenの意図があるのかないのか...。

いずれにしても,このアルバムで聞かれる歌唱を聞けば,Johnny Cash再評価につながるのも頷けるというところであり,それを実現したRick Rubinのプロデューサーとしての慧眼は評価すべきものと聞いた。現代のリスナーにとってはとてつもなく地味に響くかもしれない。この滋味を楽しむ年齢に私も達したということだろうが,これは改めて,そして末永く楽しみたいと思わせた名アルバム。星★★★★★。

Personnel: Johnny Cash(vo, g)

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2023年7月25日 (火)

Ralph Towner & Gary Peacockつながりで,このチャリティ・アルバムを。

_20230723-2 "A Big Hand for Hanshin: The Rainbow Colored Lotus" Various Artists (Polydor)

昨日,Ralph TownerとGary Peacockのブートレッグを取り上げて,そう言えば,彼らのライブ音源があったなぁということで取り出したのがこのアルバム。阪神・淡路大震災へのチャリティ・アルバムの1曲として,彼らの来日時の"Nardis"のライブ音源が収められている。それだけでもこのアルバムは価値があると思うが,加えて冒頭を飾るのが,Keith JarrettがNHKの番組のためにレコーディングしておそらくはここでしか聞けない"Paint My Heart Red"(但し,この曲は"Concerts: Bregenz München"で公開済みだが,ここでの演奏はそれとは別のテイク)だったり,Charles Lloyd QuartetやMiroslav Vitousのライブ音源が入っていたりと,ECMレーベルの音楽に関心がある人々をそそる演奏が含まれている。

思い起こせば,阪神大震災が起こった1995年1月17日の前日に,私は両親,家人とともに旅行で伊勢志摩にいた。関西在住の両親とは現地で別れ,私たちは東京方面へ帰った訳だが,その翌朝,TVをつけた瞬間に飛び込んできたのが「神戸が燃えています」という寝ぼけ眼にはにわかには信じられないニュース映像であった。私としては両親の無事を確認すべくすぐさま実家に電話を掛けたのだが,案の定1回目は通じなかったものの,幸い2回目で電話がつながり,両親の無事を確認できた。遠距離での通話ゆえつながったと思ったが,実家は大きな被害を受けたが,生命の無事を確認できて安堵の思いを抱えながら,出社したことは今でも忘れられない。

東日本大震災後にも"Songs for Japan"というチャリティ・アルバムがあったが,私自身にも,多くの人にもさまざまな記憶を残した阪神・淡路大震災に対して,ミュージシャンがこうしたかたちでチャリティ・アルバムを制作してくれたことには善意しか感じない。よってアルバムそのものについてどうこうコメントすること自体不謹慎だと思うし,私としても抵抗があるので,皆さんにこういう音源もあると紹介するに留めておきたい。中古盤であればそれほど入手は難しくないはずだ。

2023年7月24日 (月)

またもブートの話:今回は1993年のRalph Towner & Gary Peacockのデュオ

_20230723 "Hamburg 1993" Ralph Towner & Gary Peacock (Bootleg)

正規盤を残すこの二人のデュオによるブートに関しては,ひと月ほど前に記事にしたばかりだ(記事はこちら)が,またもこのコンビによるブートである。そもそも私はRalph Townerの音楽が非常に好きな人間であるから,ブートだろうがなんだろうが聞きたいと思ってしまうのも事実なのだが,Gary Peacockとのデュオとなれば尚更なのだ。今はなきGary Peacockを偲ぶという意味でも貴重な音源である。

これは放送音源をソースとしているので,音のクォリティについては全く問題ないが,2枚組で100分を越える演奏時間というのが素晴らしいし,ここでは最近聞くことのないRalph Townerのピアノが聞けるのも嬉しい。また,12弦もまだバリバリ弾いているが,Ralph Townerのピアノが実にいいのだ。"My Romance"でのピアノを聞いていると,それこそBill Evansを彷彿とさせる素晴らしい響きだ。

この音源が収録されたのは,日本で言えばNHKの「セッション 20XX」みたいな番組においてだと思われるが,今から30年前の録音でもその瑞々しさは不変だし,こういうブートレッグならばいつでも大歓迎だ。あまり大きな声では言えないが,いい買い物であった。

しかし,このジャケは...って感じだなぁ。

Recorded Live at NDR Funkhaus, Hamburg, Germany on March 26, 1993

Personnel: Ralph Towner(g, p), Gary Peacock(b)

2023年7月23日 (日)

Kurt Rosenwinkelの新作はVanguardでのライブ盤

_20230721"Undercover" Kurt Rosenwinkel (Heartcore)

Kurt Rosenwinkelというギタリストは世の中での評価が非常に高い人である。私も彼のアルバムはそこそこ保有しているし,ライブにも行ったことがある。しかし,リスナーとミュージシャンとの相性というのも存在するのは確かで,私にとっては世の中ほどこの人の音楽に入れ込めないというのも事実なのだ。結局は「好み」の世界になってしまうのだが,このアルバムはメンツのよさもあって購入に至ったもの。私にとってはAaron Parksの参加が大きな要素であったことも事実である。そうは言いながら,Aaron Parksも参加していた"Star of Jupiter"のリリースからは10年以上の時間が経過しているにもかかわらず,このブログで記事にしていないというのは我ながら矛盾している...。

それはさておき,本作は名門,Village Vanguardでのライブ・アルバムである。Kurt Rosenwinkelには"The Remedy"というVanguardでのライブが既にあるが,Vanguardへの出演が許されるということ自体,ミュージシャンとしての評価が確立していることの裏返しだと言ってもよい。このアルバムにおいても,Kurt Rosenwinkelらしいサウンド,フレージングに溢れていて,さすがにレベルが高いと思わせる。まぁ,ここでのクァルテットのメンツを見れば,間違いないというところはあるので,アルバムとしては総体的に楽しめるものと言ってよい。

曲はKurt Rosenwinkelのオリジナルが揃っているが,リズムにもメリハリがついているので,全編ダレることはないのだが,何度か繰り返し聞いてみて,どうも私には強烈に訴求してこない。どうも私はKurt Rosenwinkelに対して厳し過ぎるところもあるとは思うのだが,平均点以上は確保していても,耳を奪われてしまうという感覚が得られないというのが,私のKurt Rosenwinkelのアルバムに対する印象なのだ。それはこのアルバムでも同じで,全く破綻はないが,ついつい聞き流してしまったというのが事実である。ストリーミングで聞いた時はもう少しいい感触だったように思うのだが,改めて聞いてみると星★★★★ってところになってしまうのだ。

私としては"Past Intact"のようなスリリングな展開をもっと聞きたいというのが正直なところだ。Aaron Parksはじめ,リズムの実力も十分なだけに,これは曲のせいなのかもなぁと思っていた私である。

Recorded Live at the Village Vanguard in April 2022

Personnel: Kurt Rosenwinkel(g), Aaron Parks(p, el-p), Eric Revis(b), Greg Hutchinson(ds)

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2023年7月22日 (土)

Bow Wow Wow: 私もつくづくいろいろ持っているなぁ...。

_20230717-3 "See Jungle! See Jungle! Go Join Your Gang Yeah, City All Over! Go Ape Crazy!" Bow Wow Wow (RCA→Great Expectatipns)

CDラックを漁っていると,おぉっ,こんなのもあったなぁなんてのに出くわしてしまう。正直言って,私はニューウェイブとかパンクにほとんど関心を示していない(かつ,例外はあるとは言え,ほとんど保有していない)のに,なんでこのアルバムを保有しているのかは正直なところ記憶にないが,おそらくはこのマネの「草上の昼食」を模したジャケだけが印象に残っていて,購入したはずである。

その程度の認識のアルバムであるから,プレイバック頻度は相当低いと言ってもいいのだが,気まぐれで聞いてみたら,これは結構なファンク・フレイヴァーを持ったアルバムで,4人のバンドとして作られた音としては,結構分厚いリズムに支えられているなぁって感じだった。一種のダンス音楽だよなぁと思いながら聞いていた。まぁ,これはこれでありだとは思いつつ,私の趣味からはやっぱり乖離している音楽だな(苦笑)。ということで星のつけようもないってところなのだが,感覚的にはバンドとしての能力を踏まえて星★★★☆ぐらいか。

アルバム・ジャケに写るAnnabella Lwinはリリース当時まだ14歳だったらしいが,年端も行かぬ女子にこんなポーズを取らせたので,問題になったというのも時代を考えれば当然だが,何でもかんでもコンプライアンスと喧しい現代においては,更に問題になったかもしれない。まぁこういうジャケで制作したのも策士Malcolm McLarenの入れ知恵だったかもしれないが(笑)。

Personnel: Annabella Lwin(vo), Matthew Ashman(g), Leigh Gorman(b), Dave Barbarossa(ds)

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2023年7月21日 (金)

"Opus de Jazz":先日ランダム再生で聞いて,改めて魅力に気づく。

_20230717-2 "Opus de Jazz" Milt Jackson (Savoy)

先日,移動中にとあるジャズ・アルバムをプレイバックした後,ランダム・プレイに入ってプレイバックされた曲に反応してしまったのであった。ヴァイブはどう聞いてもMilet Jacksonなのだが,これは何のアルバム?このテナーって誰だっけって思っていたら,このアルバムの"Opus Pocus"であった。そう言えば,このアルバムも久しく聞いていないなぁってことで,改めて聞いてみたのが本作である。

このアルバムとて,我が家の一軍の棚には収まっているのだが,なかなかプレイバックの機会ってないよなぁなんて思ってしまい,だから家人から「死ぬまでに何回聞くわけ?」と揶揄されるのだが,それでもこうして改めて聞く機会が持てるのだからいいのだ。まぁ,ストリーミングでアルバム再生すればいいって話もあるが,やはり媒体の方が感じが出る。

私がランダム・プレイの"Opus Pocus"に反応したのは,同曲でテナーを吹いているFrank Wessのこのアルバムでの印象がフルートの方が強かったからということもあった。これまでもその程度の聞き方しかしていなかったことの裏返しではあるが,こうして温故知新の機会を与えてくれるのもストリーミングの利点ということは言えると思う。そうは言いつつ,このアルバムの裏ジャケには"A Hi-Fi Recording for Flute Vibes Piano Bass Drums"なんて書いてあるんだから,フルートの印象が強いのは当たり前なのだが...。

楽器編成もあるし,ピアノもHank Jonesなので,まぁゴリゴリ感があるジャズではなく,MJQの路線に近い作品と言ってもよいかもしれないが,Milt Jacksonらしく決してツボをはずさない演奏が楽しい。気楽に聞けるのもこの作品の美点だと思う。星★★★★。

Recorded on October 28, 1955

Personnel: Milt Jackson(vib), Frank Wess(fl, ts), Hank Jones(p), Eddie Jones(b), Kenny Clarke(ds)

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2023年7月20日 (木)

Bettye LaVetteの新作が届く。これまたいいねぇ。

_20230717"LaVette!" Bettye LaVette (Jay-Vee)

私が初めてBettye LaVetteの音楽に接したのが"Interpretations: British Rock Songbook"で,それが2010年のことであった。それ以来,Bettye LaVetteのアルバムについては結構このブログにも取り上げてきた(と言っても前作"Blackbird"については書いていない...)が,伴奏がロック的な部分もあって,私のツボにはまる音楽であり続けている人である。そのBettye LaVetteの新作だが,今回のテーマはRandall Bramblettというのが渋い。

Randall Bramblettは南部のミュージシャンとの親交が深いので,そうしたサウンドはソウル・ミュージックとも相性がよいというのは想像もつくところだが,これがまた想像以上のよさで,Bettye LaVetteの選曲に対する審美眼は本当に外れがないと思ってしまう。この企画を考えたのがBettye LaVette本人なのか,プロデューサーを兼ねたSteve Jordanなのかはわからないが,今回のアルバムも私を痺れさせるのに十分なものであった。

Bettye LaVette本人の歌唱あってのアルバムなのはもちろんなのだが,このアルバムが私に訴求してくるのは,そのバックを固めるミュージシャンたちの演奏である。Steve WinwoodやJohn Mayerをゲストに迎えているのに加え,James Carterがバリサク,テナーを吹いていたり,Pino PaladinoとSteve Jordanの鉄壁のリズムが支えているのを考えれば,悪くなりようがないではないか。以前ここでも取り上げた,あの素晴らしかったBob Dylan集のメンツにChris Bruceまで加わってしまえば,これが最高なのは間違いないのだ。素晴らしい。星★★★★★。

Personnel: Bettye LaVette(vo), Steve Jordan(ds, perc), Larry Campbell(g, lap-steel, pedal-steel, cittern), Chris Bruce(g), Leon Pendarvis(el-p, p), Pino Palladino(b), Cliffton Anderson(tb), Kevin Batchelor(tp), James Carter(bs, ts), Tawatha Agee(vo), Cindy Mizelle(vo), Anthony Hamilton(vo), Ray Parker Jr.(g), Rev. Charles Hodges(org), Jon Batiste(p), John Mayer(g), Steve Winwood(org), Pedrito Martinez(perc), Monte Croft(vib)

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2023年7月19日 (水)

山下洋輔トリオ,早稲田再乱入ライブ盤が届く。

Photo_20230717064601 「村上春樹 Presents 山下洋輔トリオ 再乱入ライブ」山下洋輔トリオ (TokyoFM)

山下洋輔トリオがバリケード封鎖された早稲田大学において演奏した時の模様を収めた「ダンシング古事記」から半世紀以上の時を経て,山下洋輔トリオが早稲田に再乱入するというライブが告知された時には驚いた。しかもプロデュースをしたのが村上春樹である。私もそのライブに参戦すべく申し込みはしたものの,あえなく抽選にはずれ,ストリーミングでの中継も見ていないが,その時の音源がFM東京からアナログ盤でリリースされると知って,値段は高いが,これは聞かずにいられんということで,FM東京に直販で発注していたものがデリバリーされたので早速聞いてみた。

演奏が行われたのは2022年の7月であるから,およそ1年の時を経てのリリースとなったが,演奏されたのは当然バリケードなどない大隈講堂である。当たり前だが山下洋輔のMCもおとなしいものである。しかし,この演奏を聞いていると,この時,既に山下洋輔80歳,中村誠一75歳,森山威男77歳の全員後期高齢者ということが信じがたいほどの激しいフリー・ジャズである。私が驚いてしまったのは,近年はコンベンショナルな演奏をすることが多かった中村誠一が,実に野太い音でテナーとソプラノを咆哮させていたことだ。山下洋輔と森山威男の音は想像がついたとしても,この中村誠一が加わったトリオで,ここまでの演奏をするとは思えなかったというのが正直なところだが,全く衰えるところなしの素晴らしさと言いたい。場所がそうさせるのか,あるいはイベントそのものがそうさせるのかというところもあるが,69年当時の血気盛んとは違ったかたちでのフリー・ジャズも実に感慨深かった。これはリリースされただけでも★★★★★としたくなる演奏。

振り返ってみれば,40年近く前になるが,私の学生時代,当時の山下洋輔トリオ+1を早稲田祭に招聘したのも懐かしい。その後,山下洋輔のプレイ・スタイルはやや変化する中で,私も歳をとったが,何年経ってもこういうフリー・ジャズの爽快感を感じ続けていたい。

Recorded Live at 早稲田大学大隈講堂 on July 22, 2022

Personnel: 山下洋輔(p), 中村誠一(ts, ss), 森山威男(ds)

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2023年7月18日 (火)

Coltraneの命日に発掘盤が届く。

Evenings-at-the-village-gate "Evenings at the Village Gate" John Coltrane with Eric Dolphy (Impulse!)

昨日,このアルバムが未着だと書いたところに,記事のアップ後にこのアルバムがデリバリーされた。ネット上の予定では10日後ぐらいに到着予定となっていたのが,Coltraneの命日に届くというのは「計算か?」と穿った見方をしてしまった私だが,家人が出掛けた隙を狙っての爆音再生である。

まず"Impressions"が先行公開された段階で,音としては大したことがないことはわかっていた。しかし,そうした音質上の瑕疵を問題としないぐらいリスナーを興奮させるところが,John Coltrane,そしてEric Dolphyたる所以だ。

いきなり"My Favorite Things"がフェード・インのようなかたちで始まるが,まずはEric Dolphyがあのフルートの音でアドリブ,並びにテーマを吹く。音のバランスは「ステージの上に吊るされた1本のRCAリボンマイク」で録音したということだから,推して知るべしと思ってもらえばよく,妙にElvin Jonesのバスドラが腹に響くという感じだが,まぁ許せる範囲である。同じプライヴェート録音的なものなら,音としては所謂白盤"Live on Mount Meru"(それに関する記事はこちら)の方がいいとは思うが,そんなことより発掘されたこと自体を喜ぶべきである。Dolphyに続いて登場するJohn Coltraneのソプラノがこれまたエグい!まさにキレッキレである。もはやこれで「くぅ~っ,たまらん!」と声まじりの吐息が洩れること必定。

それに続く"When Lights Are Low"のような曲がJohn ColtraneとEric Dolphyにフィットしているかは別にして,ここではDolphyがいきなりのバスクラで先発し,これが原曲無視(笑)的な強烈なソロを聞かせてくれるではないか。DolphyはDolphyであって,Dolphy以外の何ものでもないと思わせるに十分な,ここでのバスクラを聞いてまた感動である。そして,その後のColtraneのソプラノは一体何なんだ!と言いたくなるような演奏。これで興奮しないやつはもぐりだと言いたくなる。スタンダードで一丁上がりみたいな感覚ゼロ。ここでもひえ~っとなってしまった私である。

そして先行公開されていた"Impressions"だが,改めて聞いてみると,ここでのColtrane,狂っていると言われても仕方がない猛烈なフレージングを連発して,興奮度Maxである。Dolphyのバスクラ・ソロもたまりまへん。このあたりになると,Elvin Jonesのスネアやタムの音も結構しっかり聞ける感じになっているのも興奮度を高める(シンバルはあまり聞こえないが...)。

それに続く"Greensleeves"もフェード・イン気味で始まるが,これまた原曲無視みたいな冒頭のColtraneのソロである。ここでのMcCoy Tynerのソロもいいねぇ。いやはや凄いバンドである。

そして最後は"Africa"で締めるが,22分を越えるこの演奏ではベース・ソロも登場するが,それがReggie Workmanなのか,Art Davisなのかはわからない。あるいはライナーのReggie Workmanの言にあるように,彼らの2ベース・フォーマットだったのかもしれない。しかし,冒頭のColtraneとDolphyの絡みからして興奮ものだとしても,この曲ではElvin Jonesのドラムス・ソロが聞きものとなっていて,バンドとしての完成度の高さは実証されている。それでもってこのアルバムでのColtraneのテナーはここだけかなって感じであるから,それはそれで貴重な響きであるが,テナーだってキレまくりなのである。

もちろん,ColtraneとDolphyの共演を聞くならば,この発掘音源を聞く前に,Vanguardのコンプリート盤を聞く方が正しいとは思うが,この強烈さを前にして,これを聞かなければ2023年リリースのジャズ・ディスクは語れないというのが実感。もうちょっと音が良ければなぁとは思うものの,1961年8月というタイミングに,NYCのジャズ界に何が起こっていたかを知るのに適した素晴らしいドキュメント。因みにEric Dolphyが"Five Spot"を吹き込んだのがこの約1か月前のはずだ。私が生まれてすぐの頃にはNYCでは凄いことが起こっていたということを改めて感じてしまった。こんなものを聞かされたら星★★★★★しかなかろう。

尚,甚だ余談であるが,私がNYCに住んでいた90~92年のタイミングでは,まだこのVillage Gateというヴェニューは存在していた。だが,もはやジャズのライブのプログラムはほとんどなかったはずなので,私がこの場所を訪れることは結局なかったというのは,今にしてみればもったいなかったかもしれないな。

Recorded Live at the Village Gate in August, 1961

Personnel: John Coltrane(ss, ts), Eric Dolphy(as, fl, b-cl), McCoy Tyner(p), Reggie Workman(b), Art Davis(b),Elvin Jones(ds)

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2023年7月17日 (月)

今年もこの日がやってきた。

A-love-supreme-deluxe-edition 本日,7月17日は私が齢をまた一つ重ねる日であり,John Coltraneの命日でもある。このブログにおいては例年,John Coltraneについて書くというのが恒例となってきた。今年はEric DolphyとのVillage Gateにおける共演の未発表音源がリリースされるという大きなニュースがあったが,残念ながらまだ現物が私の手許には届いていない。Apple Music等では全曲が聞ける状態になっているが,それはまた改めてとすることにしよう。

そんなこともあって,私が聞いていたのが,"A Love Supreme"のデラックス・エディションに収められていたライブ音源。このアンティーブにおけるライブ音源そのものは以前からよく知られていたものなので,目新しさというものではないが,正規盤としてリリースされたことに意義があるというものだ。オリジナル「至上の愛」よりも演奏時間は長くなり,やはりこれは貴重な音源であったと思ってしまう。

A-love-supreme-antibe 元々は放送音源なので,音自体にも問題なかったし,往時のブートレッグとしては価値のあるものであった。改めてこういう音源を聞いて,John Coltraneの偉大さを感じるとともに,さっさとVillage Gateの音源を現物で聴きたいと思ってしまった私である。早く来ないかな(笑)。

Recorded Live in July 1965

Personnel: John Coltrane(ts), McCoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)

本作へのリンクはこちら

2023年7月16日 (日)

Amazon Primeで見た「バンク・ジョブ」。実話ベースとは信じ難い。

The-bank-job 「バンク・ジョブ("The Bank Job")」('08,英/米/豪,Lionsgate)

監督:Roger Donaldson

出演:Jason Statham, Suffron Burrows, Stephen Campbell Moore, James Falkner, Richard Lintern, David Suchet

先日,Amazon Primeで見たのがこの映画。前にも書いたと思うが,Jason Stathamの一時期の映画の出方っていうのは,昔ならばCharles Bronson的だよなぁと思ってしまう。それだけ金を稼げるスターだってことだろうが,ブレイクしたのは「トランスポーター」あたりだったか。

それはさておき,この映画,実際にあった銀行強盗事件(Baker Street Robbery)に基づいているらしいというのにはびっくりだが,強盗事件以外の部分はフィクションのようだ。しかし,舞台となっている銀行,犯人たちがアジトとして入った店や隣の店は実際の店の名前を踏襲しているし,実話をうまく脚色して,それなりのストーリーに仕立てたシナリオ・ライターの功績は大ってところだ。いい暇つぶしになったってことで,甘いの承知で星★★★★。

余談ながら,冒頭からエロいシーンが出てきて,家人が出掛けていてよかったなんて思ってしまった私である(爆)。

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2023年7月15日 (土)

Pat Methenyの"Rejoicing":プレイバックの頻度が高まらない訳...

_20230713 "Rejoicing" Pat Metheny (ECM)

私はPat Methenyのリーダー作はほぼ全て保有していると思うが,それらの中でプレイバックの頻度が高いものと,低いものが出てくるのは仕方がないことである。そんな中でこのアルバムはどちらかと言えば低い方になってしまうのには訳がある。

冒頭からオーセンティックなジャズ・ギター・アルバムと言ってもよい響きの中で,いかにもPat Methenyらしいフレージングが散りばめられており,実に楽しめるアルバムなのだ。しかし,その流れを完全に分断してしまうのが7曲目のPat Methenyのオリジナル,"The Calling"なのだ。ギター・シンセで演じられるこの曲はハードなフリー・ジャズとなっていて,明らかに浮いている。本作にはOrnette Colemanの曲が3曲含まれているし,Pat Methenyは後に"Song X"をOrnette Colemanと吹き込む。またアルバム"OffRamp"においても,タイトル・トラックはOrnette Colemanへのオマージュを捧げているが,この"The Calling"は更にアバンギャルドが高いので,初めて聞いた時はのけぞってしまったし,その印象が強過ぎたのであった。

アナログ盤であれば,A面だけ聞いていればいいやってことにもなるし,CDでも6曲目でプレイバックを止めてもいいのだが,私が保有しているのはCDなので,止めるのを忘れて7曲目に至るとはぁ~...となってしまう(笑)。そういう経験が何度か重なるとついついプレイバックする気が失せてくる。だから"The Calling"という曲は実に罪作りな曲なのだ。

私は決してフリー・ジャズに耐性がない訳ではない。しかし,そんな私にとっても"The Calling"はやり過ぎとしか思えないのは,アルバムとしての統一性を失わせたことによるものだ。Pat MethenyはDerek Baileyとの共演盤や"Zero Tolerance for Silence"のような破壊的なアルバムを作ってしまうこともあるから,それも含めてPat Methenyだよねということではある。しかし,いくらファンだからと言っても何でも受け入れられる訳ではないのだ。ということで,全体としてはいいアルバムだと思う一方,1曲の違和感が勝ってしまうという不幸なアルバム。星★★★★。

Recorded on November 29 & 30, 1983

Personnel: Pat Metheny(g, g-synth), Charlie Haden(b), Billy Higgins(ds)

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2023年7月14日 (金)

またもブートレッグの話:Herbie Hancockはいるが,Headhunters番外編ってところか。

_20230711-2"Barbican 1998" Herbie Hancock & the Headhunters (Bootleg)

先日クリポタのブートレッグの記事を書いたが,それと同タイミングで入手した1枚がこれである。"Headhunters"と言えばHerbie Hancockの大ヒット・アルバムであるが,これはHerbie Hancockから独立したHeadhuntersが,"The Return of the Headhunters"をリリースした時期のライブ音源である。そのアルバムにはHerbie Hancockはゲスト参加しているが,あくまでもゲストであり,リーダー作ではない。だが,HeadhuntersだけではなかなかロンドンのBarbicanでのライブは難しかろうから,Herbie Hancockが一肌脱いで,Herbie Hancock and the Headhuntersとしてライブを行ったってことであろう。

ソースは当時BBCでの放送音源らしいから,音としては問題ないが,シャープさに欠けるのはブートだけに仕方ないところ。このブートには全6曲が収められているが,最初の4曲が"The Return of the Headhunters"からのもので,最後の2曲がお馴染み"Watermelon Man"と"Chameleon"というレパートリーである。アルバムのリリースを受けたかたちなので,Herbie Hancockとしても,相当Headhuntersに華を持たせたって感じもするので,Herbie Hancockが前面にバリバリに出てきているという感覚は希薄で,Bennie Maupinの方が目立っているって気がする。私が感じてしまうのは,これならHerbie Hancock & the Headhuntersと言うよりも,The Headhunters with Herbie Hancockと呼ぶ方が正確ってところだ。まぁそうは言っても,再編Headhuntersの音というのも懐かしい感じもして,曲はイマイチ感もありながら,これはこれでってことにしておこう。

でもねぇ,この手のHerbie Hancockのライブを聞くなら"Flood"を聞いてりゃいいかなっていうのも正直な感想。ブートならではの演奏の貴重度は否定しないが,結局はその程度。お買い上げの場合,あまり期待せずにどうぞ(笑)。同じブートなら,Live under the SkyでのRock It Bandの方がずっといいと思う。

Recorded Live at Barbican, London on July 1, 1998

Personnel: Herbie Hancock(key), Bennie Maupin(ts, ss, as, b-cl), Paul Jackson(b), Mike Clark(ds), Bill Summers(perc)

2023年7月13日 (木)

ロッカーとしてのRod Stewartの魅力。

_20230711 "Foot Loose & Fancy Free" Rod Stewart (Warner Brothers)

バカ売れした"Da Ya Think I’m Sexy"を含む"Blondes Have More Fun"の前作に当たるのが本作だが,私はこのアルバムが結構好きで,主題の通りロッカーとしてのRod Stewartの魅力がよく出ていると思っている。

基本的にRod Stewart Groupという自身のバンドをコアに,ゲスト・ミュージシャンを迎えて制作された本作は,いろいろなタイプの曲が揃っているが,基本はロックだったよなぁと改めて思う。"Blondes Have More Fun"も同じようなメンツで吹き込まれているのだが,"Da Ya Think I’m Sexy"のせいで(笑)印象が違ってしまっているように思う

冒頭の"Hot Legs"からブチかましてくれるこのアルバムは,アナログであればA面に当たる前半の曲の方が私にとっては印象深いのだが,それでもB面に入っている"You Keep Me Hanging on"や,ラストの"I Was Only Joking"もあるから,これは全編を通じていいアルバムだと言わざるをえない。

そしてこのアルバムを魅力的にしているのがバンドのコアのメンバーである。何てたって,ドラムスはCarmine Appiceなのだから,当時相当話題になったと記憶している。しかもベースはJeff Beckの"Blow by Blow"でお馴染みPhil Chenなのだから,このリズムだけでタイトになるのは当然だ。

私としてはもはや手許に残っているRod Stewartのアルバムはそれほどない中で,これは絶対売ることはないと確信しているナイスなロック・アルバム。星★★★★☆。

Personnel: Rod Stewart(vo), Jim Cregan(g, vo), Gary Grainger(g), Billy Peek(g), John Jarvis(key), Phil Chen(b), Carmine Appice(ds, vo), Fred Tackett(g), Steve Cropper(g), David Foster(key), Nicky Hopkins(key), John Mayall(harp), Phil Kenzie(sax), Richard Green(vln), Paulinho Da Costa(perc), Tommy Vig(perc), Mark Stein(vo)

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2023年7月12日 (水)

Santanaの1stアルバム:この荒々しさが魅力であった。

_20230710 "Santana" Santana (Columbia)

このアルバムについては,Legacy Editionに収められているWoodstockでの音源について記事にしたことがあるが,本編については書いていなかったので改めて取り上げてみたい。

私は長年Santanaのアルバムを聞いているが,私にとっての最高傑作は以前にも書いた通り,今も昔も"Caravanserai"である。しかし,いかにもSantanaって感じのサウンドはこの1stもしくは第2作"Abraxas"あたりではないかとも思える。特にこの1stはその荒々しさのようなところが魅力だと思う。とにかくデビューに当たっての,当時のバンドの勢いのようなものをそのままパッケージングしたような感じが何とも刺激的である。

後になってもライブで取り上げられることが多かった"Soul Sacrifice"は,Santanaを象徴する一曲だと思うが,アルバムを通じてロックとラテン・パーカッションを融合したことによる興奮度こそ,初期Santanaの魅力であったし,それを支えたバンドのメンバーの実力も見事なものだったと思う。リーダーに加えて,Gregg Rolie,Michael Schrieve,そしてChepitoを擁したバンドは,やはり強烈であった。懐かしくもあり,私にとっては今でも興奮できる音楽。ついついノってしまうのだ(笑)。星★★★★☆。

Personnel: Carlos Santana(g, vo), Gregg Rolie(vo, p, org), Dave Brown(b), Michael Shrieve(ds), Jose Chepito Areas (timbales, conga, perc), Mike Carabello(conga, perc)

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2023年7月11日 (火)

映画版「逃亡者」:DVDでだが,ちゃんと見たのは初めてか?

Fugitive 「逃亡者("The Fugitive")」(’93,米,Warner Brothers)

監督:Anthony Davis

出演:Harrison Ford, Tommy Lee Jones, Sela Ward, Julian Moore, Joe Pantoliano, Andreas Katsulas, Jeroen Krabbé

買ったきり,老後に見ればいいやと思っているDVDを山ほど持っている私だが,この映画も少なくともDVDではこれまで見たことがなく,映画そのものも今回初めて見たような気がする。David Janssen主演の懐かしのTVシリーズ(と言っても,私は見た記憶はほとんどないが...)のリメイク作品。

ストーリーは詳しく書くとネタバレになるので伏せるが,シカゴに舞台を移し,TVシリーズからは大幅に時間軸を短縮したもの。シカゴの街並みがかなり出てくるが,私はシカゴ自体はあまり馴染みがないものの,あぁ,あれはあそこかぁぐらいの感覚で観ていた。そしてシカゴの冬は厳しいが,そういう感じが映画の隅々に表れていた。

この映画,オリジナルTV版のクリエイターであるRoy Hugginsがエグゼクティブ・プロデューサーを務めているのが面白い。よっぽどこの登場人物に思い入れもあり,また製作に関わるだけの財力ももたらしたってことだろうが,映画としてもなかなかよくできている。はっきり言ってストーリーはかなり強引に展開すると言ってもよいが,この映画でオスカーの助演男優賞を獲ったTommy Lee Jonesの好演もあって,緊張感もありながら,エンタテインメントとして楽しんだ私であった。もちろん,Harrison Fordは脂が乗り切っていると言ってよい時期であるから,まぁおかしなことにはならないってところだろう。期待して劇場に足を運んだとしても失望することはなかったと思える映画。星★★★★☆。

エンド・クレジットを見ていたらサックス吹奏はWayne Shorterの文字が。意外なところでWayne Shorterの名前を見つけて,やっぱりちゃんとエンド・クレジットまで見ないといかんと思った。

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2023年7月10日 (月)

Bryan Adams:売れたよねぇ。

_20230707 "Waking up the Neighbours" Bryan Adams (A&M)

これが唯一保有するBryan Adamsのアルバムである。今年の春先に来日公演もしたまだまだ現役のBryan Adamsだが,本作を購入したのは私の在米中のことだから30年以上前ってことになる。当時"(Everything I Do) I Do It for You"がバカ売れしてたのを受けて,私はこのアルバムを買ったと記憶している。この"(Everything I Do) I Do It for You"だが,全英チャート16週連続1位というとんでもない記録を持っているぐらい売れたのだ。だからと言って,その後,私自身はBryan Adamsのアルバムを買い揃えようという気にまではならなかったが,このアルバムは当時よく聞いたものだ。

私がBryan Adamsの音楽に初めて接したのは,遡って何かのコンピレーションに入っていた"Summer of '69"だったはずだが,当時は軽快なロックだなぁという印象を持っていたように思う。ロックにもいろいろあるが,こうした軽快さが時代に合っていたという気もするし,少々ハスキーなBryan Adamsの声が多くのリスナーに訴求したようにも思える。

まぁ,こういう音楽なので,幅広いリスナーに訴求はするだろうなぁと思うが,ある意味インダストリアル・ロックと言われても仕方がない聞き易さである。Richard Marx辺りが売れていた時期と重なるのは偶然ではないように思う。いずれにしても,私も売らずに持っているんだから,決して嫌いじゃないが,今回取り出して聞いたのも何年ぶり?みたいな感じだったので,次に聞くのはさていつになるのやら(笑)。

但し,Bryan Adamsの名誉のために言っておくと,音楽としての水準はそこそこ高いので,未聴の人は一度聞いてみても損はしない。ということで星★★★★ぐらいにしておこう。売れに売れただけあって,"(Everything I Do) I Do It for You"は今聞いても佳曲だったと思う。

Personnel: Bryan Adams(vo, g), Keith Scott(g), Mickey Curry(ds), Dave Taylor(b), Tommy Mandel(org) with Phil Nichols(key, prog), Robbie King(org), Bill Payne(p, org), Larry Klein(b), Ed Sheamur(key), The Tuck Back Twins(vo)

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2023年7月 9日 (日)

「永遠と横道世之介」を読んで思った「あまちゃん」との同質性。

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「永遠と横道世之介」吉田修一(毎日新聞出版)

私はデビュー以来,長年に渡って吉田修一の本を結構読んでいる。この人の本はこの「横道世之介」シリーズのような軽いタッチの作品と,「悪人」のようなヘヴィーでシリアスな作品が混在しているのが特徴だが,私はどっちも評価している。昨今はあまり彼の本も読んでいないが,「横道世之介」シリーズ完結編が出たとあっては,これは読まずにいられない。

私はこの「横道世之介」シリーズが相当好きで,これまでも「横道世之介」,「続 横道世之介(現在は「おかえり横道世之介」と改題)を読んでいるが,続編を読んだ時にこのブログに書いた「登場人物が全て善良に思えるという,性善説に則ったような」感覚は,殺伐とした現代において貴重だし,読後の爽やかさに読書の楽しさをつくづく感じさせてくれる作品であった。それはこの完結編でも一切変わることがなく,前2作を読んだ人ならば,満足すること間違いない。本作を含めたシリーズ全体で星★★★★★としたい。

そして主題に関してであるが,現在再放送されている「あまちゃん」は再ブレークと言ってもよい状態で,毎日のようにネットに情報が上がってきている。かく言う私も毎日録画して見ているクチだが,Blu-rayも持っているんだから,敢えて録画しなくてもいいだろう?というのも尤もな話だ。しかし1日15分という時間を楽しむこと自体には相応の楽しさがあるのも事実なのだ。「あまちゃん」を見ていても,「笑い」の方が若干勝っているとは言え,笑いと涙が同居している部分があるが,私は同じような感覚をこの横道世之介シリーズには感じてしまうのだ。そう言えば,「あまちゃん」の登場人物も基本は善良な人ばかりだ。

今回もくすっとしながらこの本を読んでいる時間の方が多かったが,そこにいい塩梅に泣かせる逸話も入り込んで,これはやっぱり「あまちゃん」と同じだなと思ってしまうのだ。だからどっちも好きなのだってことになるが,改めて第1作から読み返そうかなんてさえ思ってしまった。これも「あまちゃん」再放送が終わったら,Blu-rayで見直そうとするのと同じ感覚だな。

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2023年7月 8日 (土)

"The Return of Art Pepper":麻薬禍からの第一回(?)復帰後のアルバム。

Return-of-art-pepper"The Return of Art Pepper" Art Pepper (Jazz West→Blue Note)

Art Pepperと麻薬は「切っても切り離せない」ような関係と言ってよいかもしれない。特に彼が本来ならもっと活躍できていたであろう時期に,麻薬のせいで娑婆に出てこられなかったというのは,ジャズ界にとっては痛恨事だったと思ってしまう。

Art Pepperは70年代に復帰した後がいいか,50年代に活躍していた時期がいいかの議論は永遠に続いていくだろうが,これは音楽に対する好みもあるから,リスナーがどっちがいいとか,どっちもいいとか判断すればいい話で,論争するような話ではないと思っている。因みに私は「どっちもいい」である。

ただ,やはり惜しかったなぁと思うのは,初リーダー作"Surf Ride"をリリースした後,最初の収監があって,これからって時期を刑務所で過ごしたのは痛い。そして,ここでいう"Return"はまさにムショからの第一回(正確には第二回らしいが...)の娑婆への"Return"である(笑)。本作以降,50年代後半のArt Pepperの活躍ぶりは見事なものだが,またも61年に刑務所行きとなり,長期間を刑務所と療養施設で過ごしたのは本当にもったいなかった。それでもって70年代にシーンに真の意味で復帰した後には,音色やフレージングに変化があったことは衆知の通りであるが,それで好き嫌いがわかれるというのもわからないではないとしても,ミュージシャンには変化はつきものだと思えばいいのだ。

_20230705それはさておきこのアルバムである。私が保有しているのはBlue Noteから再発されたCDで,オリジナルの本作に収められていた10曲に,5曲の別セッションのボーナス・トラックが入ったもの。ジャケも写真は一緒だが,タイトル表示等には違いがある。このボートラはIntroレーベルから出た"Collections"というアルバムからのチョイスで,必ずしもArt Pepperのリーダー作と言えるものではないので,あくまでもオマケと考えればよいだろう。まぁそうは言ってもArt Pepperが比較的目立つ曲をチョイスしているように思えるので,しっかりした編集方針だと思う。最後に入っている"Straight Life"なんか凄くいいしねぇ。

"The Return of Art Pepper"本編はいかにも西海岸というプレイヤーによる2管クインテットだが,私としてはArt Pepperはワンホーンが一番と思っていることから,このアルバムの優先順位は必ずしも高くならない。しかし,久しぶりに聞いてみると,これより優れたArt Pepperのアルバムはあるとしても,決して悪くないアルバムで,西海岸らしい軽快さが楽しい。そして全10曲中8曲をArt Pepperのオリジナルが占めているところに,「復帰」への意欲が感じられるというところか。評価としては星★★★★ぐらいが妥当と思う。

Recorded in August, 1956 and on January 3, 1957

Personnel: Art Pepper(as, ts), Jack Sheldon(tp), Russ Freeman(p), Leroy Vinnegar(b), Shelly Manne(ds), Red Norvo(vib), Gerald Wiggins(p), Ben Tucker(b), Joe Morello(ds)

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2023年7月 7日 (金)

Rushのライブ盤:それにしても凄い演奏能力としか言えない。

_20230704 "Different Stages: Live" Rush (Atlantic)

ドラムスのNeal Peartが亡くなって,活動を完全に停止したRushであるが,バンドとしてはかなりの数のスタジオ・アルバム,そしてライブ・アルバムを残している。これはNeal Peartが,娘と妻を相次いで亡くすという不幸により活動を停止する直前の97年の音源を中心とした演奏がDisc 1とDisc 2に,そしてもう1枚が78年のロンドンにおける演奏をDisc 3に収めた3枚組である。ロンドンの音源はオマケのような位置づけと思えばよいだろうが,それにしても全編を通じて強烈な音源であった。

本編と言ってよいDisc 1と2については97年6月のシカゴの音源がメインで,そこに97年のほかのヴェニューの音源が4曲,更に94年の音源が3曲含まれている。これらの音源とDisc 3のロンドンの演奏では随分印象は違うが,バンドの創成期から演奏能力は突出していたことは明らかだ。これらの間にあるのはテクノロジーの進化による演奏の幅広さってことと思えばよい。

Brad Mehldauが"Jacob's Ladder"において,彼らの"Tom Sawyer"を取り上げていたのにはびっくりしたし,Brad MehldauがRush,あるいはプログレの影響を受けていたということにも驚かされたが,それもさもありなんと改めて感じさせるようなサウンドであった。とにかく3人のバンドとは到底思えない音の分厚さこそがRushの真骨頂だろう。

そんなRushに私がのめり込めない理由は,Geddy Leeのヴォーカルにあるのだが,残念ながら私は彼の声には魅力を感じていないのだ。だが,ここでのライブ演奏を聞くと,それほど違和感は覚えなかったものの,それよりも何よりもやはり彼らの演奏能力に圧倒されたというのが実感である。トリオでこんな演奏をされてしまってはやはりびっくりしてしまうというところだろう。"2112"全曲も収めたレパートリーも魅力的であり,それも含めて星★★★★☆。聞き通すのは大変だし,体力もいるが,それもまたよしってことで。

Recorded Live Mainly at World Amphitheater, Chicago on June 14, 1997 and at Hammersmith Odeon, London on February 20, 1978 

Personnel: Geddy Lee(b, vo), Alex Lifeson(g, vo), Neal Peart(ds, perc)

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2023年7月 6日 (木)

よくよく見たらWayne Krantzも2曲で参加していたSteps Aheadの"Yin Yang"。

_20230703 "Yin Yang" Steps Ahead (NYC)

何だかんだと言って結構な枚数のSteps AheadのCDを保有している私である。結局好きだってことだが,音楽性は時の流れとともに変化して,このアルバム辺りは最もフュージョン色濃厚な時期ではないかと思える。以前にも書いたとがあるが,私はこのアルバムのコア・メンバーにギターのJimi Tunnelを加えた編成でのライブをNYCのBlue Noteで観ている。派手さはなかったが,いいバンドだったという記憶が甦るが,改めてこのアルバムを聞いてみた。

本作ではコア・メンバーにはギタリストは入っておらず,5人のギタリストがゲストとして参加している。その一人がWayne Krantzだったというのはライナーを見るまで認識していなかったが,へぇ~って感じである。時期としては初リーダー作"Signals"を出した後ぐらいで,シーンでの注目度も上がって来つつある頃だったと考えればいいと思う。まぁ,ここではバックに徹していて,決してWayne Krantzらしさを求めてはいけないが,私としてはあぁそうだったのねぇってところだ。現在はエレクトリック一本で勝負している感の強いWayne Krantzがここでは"Okapi"でアコースティック・ギターを弾いている。Leni Sternとの共演盤でもアコースティックを弾いているが,今となっては珍しいなぁ。

まぁそれはさておきである。この時期のSteps AheadにおいてはサックスのBendik (Hofseth)の存在が気になるところであった。だって,前任はMichael Breckerだからねぇ。本人もプレッシャーもあったんではないかと思うが,善戦していると言ってよい出来である。そして,当時の若手としてのRachel Z.は何とも可愛い感じだったのだが,繰り出すフレーズは鋭いというギャップにライブの場でも「萌え~」となっていたが,本作では4ビートで攻める"Gory Details"をリーダー,Mike Mainieriと共作していて,これまたへぇ~となってしまうが,もう一曲の共作曲"Orion"では全然違うフレイヴァーを聞かせて,これも面白いのだ。

最後はなんでここでまた"Sara’s Touch"?って感じだが,Mike Mainieriの代表曲の一つとして,アンコール・ピース的位置づけと思うことにしよう。いずれにしても,相変わらずおかしなアルバムは作らないMike Mainieriってところだが,このアルバムはキャッチーなところは希薄かもしれないが,そこそこ楽しめてしまうというアルバムであった。ちょっと甘めの星★★★★ってところ。

Personnel: Mike Mainieri(vib, synclavier, perc), Bendik(sax), Rachel Z.(p, synth), Jeff Andrews(b), Steve Smith(ds) with Jimi Tunnel(g), Steve Khan(g), Wayne Krantz(g), Chuck Loeb(g), Dean Brown(g), Victor Bailey(b), Rick Margitza(ts), George Whitty(synth), Bruce Martin(perc, prog), Spencer Cozens(key, synth), Miles Bould(perc, sequence), Alan Thomson(b)

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2023年7月 5日 (水)

先日のCharles Dutoitの幻想がよかったので,N響とのアーカイブ音源を聞いてみた。

_20230702-2 「ベルリーズ:幻想交響曲/ラヴェル:道化師の朝の歌」Charles Dutoit/NHK交響楽団 (NHK) 

先日,生で聴いたCharles Dutoit(以下デュトワと記す)と新日本フィルの幻想がよかったので,以前,デュトワがN響の常任指揮者就任記念コンサートのアーカイブ音源を聞いてみた。

録音されて四半世紀以上経過しているとは言え,96年の演奏なので,もう少しクリアな音で録られていてもよさそうだが,おそらくは放送を目的としたものであろうから,繊細なエンジニアリングが施されているとは言えないのはちょっと残念だが,まぁ音源として残っているだけでもよしとすべきだろう。

この演奏会当日には,本CDの2曲に加えて,Martha Argerichをソリストとするショパンのピアノ協奏曲という強力なプログラムで常任指揮者就任を祝った訳だが,ここでの「幻想」は当時から評判の演奏だったらしい。

まぁ,そうは言ってもやはり生音の魅力に触れてしまった後では,いい演奏だと思っていても,感慨が違うってところなのは仕方がないが,それでもライブ音源としては十分その価値は認められる。これでもう少しクリアに録られていれば...と思わざるをえないが,私が苦手とする「幻想」の3楽章をここでもちゃんと聞かせるものにしているのは立派。短いながらもラヴェルも好印象。星★★★★☆。そう言えば,私はデュトワがモントリオールを振ったラヴェルの全集を持っていたなぁ。久しぶりに聞いてみるか。

ところで,デュトワとN響の関係は,件のセクハラ事件を受けて名誉音楽監督の地位が継続するかどうか疑問視されたが,現在もN響のWebサイトには名誉音楽監督としてデュトワの名前が残っているから,不問としたということなのかもしれないが,N響を振る機会はその後なくなっているようなので,多少なりとも影響はしているってことだろう。

Recorded Live at NHKホール on December 21, 1996

Personnel: Charles Dutoit(cond),NHK交響楽団

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2023年7月 4日 (火)

ブートで聞くクリポタの最新音源。やっぱり凄いわ。

_20230702"Infant Eyes" Chris Potter Quartet (Bootleg)

現在,SF Jazz Collectiveの音楽監督を務めるほか,自身のバンドに限らず,様々なバンドでの活躍ぶりを見れば,クリポタことChris Potterは現在のジャズ界において確固たるポジションを確立したと言えると思っている。そんなクリポタの現在の演奏ぶりをフォローするにはネットを使うという手もあるが,最新動向を短いインターバルでチェックするにはブートレッグに依存せざるをえない。このクァルテットでのピアノがSF Jazz Collectiveでも共演しているEdward Simonである。ベースは自身のリーダー作にクリポタを招くScott Colley,そしてドラムスはFred Herschとの共演も記憶に残るNasheet Waitsというなかなかに強力な布陣である。

このブートは今年3月のウイーンにおけるワンホーン・クァルテットによる演奏を収めたものである。サックス・プレイヤーとしてのクリポタの魅力を味わうにはこのフォーマットが最高だが,それが2枚組に収められているのだからたまらない。最新作"Got the Key to the Kingdom"(同作に関する記事はこちら)からのレパートリーを中心としているが,冒頭がこのライブの少し前に亡くなったWayne Shorterに捧げての"Infant Eyes"からというのがまず泣かせる。Disk 2ではStevie Wonderの"Send One Your Love"をやっているのが珍しい。

ハード・ドライヴィングは曲でも,バラッドでもここでの演奏は最高レベルと言ってよいが,こういうのを聞くと一刻も早い再来日を期待してしまう。もちろん,昨年のBlue Note Tokyo All-star Jazz Orchestraとの共演でもあまりに凄過ぎて,私を落涙させたクリポタであった(その時の記事はこちら)が,更にサックスを堪能できるこうしたフォーマットでも聞きたいのである。そして炸裂するソロ・カデンツァを聞いていると,そんな思いを一層強くさせた罪作りなブートレッグであった。尚,この時の演奏はYouTubeにも映像が約2時間に渡ってアップされているので,そのPart 1の映像を貼り付けておこう。この映像はブートレッグのオマケとしてDVDが付いてきたのだが,このブートレッグの元ネタはおそらくこの映像だろう。

Recorded Live at Porgy and Bess in Vienna on March 12, 2023

Personnel: Chris Potter(ts), Edward Simon(p), Scott Colley(b), Nasheet Waits(ds)

2023年7月 3日 (月)

家人の留守に「カリオストロの城」を見て,また泣いてしまった。

Photo_20230717063301 「ルパン三世 カリオストロの城」(’79,東宝)

監督:宮崎駿

声の出演:山田康雄,増山江威子,小林清志,井上真樹夫,納谷悟朗,島本須美,石田太郎

先日,家人が出掛けた隙を縫って(笑),DVDを取り出して久しぶりにこの映画を観た。なぜ,家人が出掛けた隙かと言えば,私はこの映画のラスト・シーン近くの銭形のセリフで,条件反射的に涙腺がゆるむことがわかっているからである。暗闇ならまだしも,リビング・ルームで映画を観ながら泣いている姿は見せられないってことで,タイミングを見計らったのであった。

私がこの映画を劇場で初めて観たのは,飯田橋佳作座,もしくは飯田橋ギンレイでの「風の谷のナウシカ」との二本立てにおいてであった。私は恥ずかしながら,この時初めて映画館の暗闇で涙するカタルシスというものを感じてしまったのではないかと思えるほど泣かせてもらった。「ナウシカ」のエンディングで号泣,上述の銭形のセリフでまた泣くという経験は今でも忘れられない。それがいつ頃だったかは記憶に定かではないが,まだ大学生の頃だったように思う。「ルパン三世」は初期のTV放映の頃からよく見ていたが,映画を観るために劇場まで足を運ぶほど入れ込んではいなかったから,なんで見に行く気になったのかもはっきりしない。その後,LDでも保有していたし,今はDVDになっているが,何度見たかわからないぐらい好きだし,飽きない。

それはさておき,私を知る人からすれば,こうした映画で泣いている私の姿などは意外中の意外というところだろうが,人にはそれぞれ隠れた一面もあるってことだ(きっぱり)。まぁ,私が涙もろいのは結構バレているような気もするが...。

この映画は笑いあり,アクションあり,そして涙ありという映画で,「ルパン三世」のいいところをフル・カヴァーってところである。ストーリーは何度見ても面白いが,この映画の魅力の一つがクラリスというキャラクターであり,その声を担った島本須美だと思っている。劇中の五ェ門のセリフではないが,まさに「可憐だ」と言いたくなるような造形である。島本須美にとってはこのクラリスとナウシカの声を担当したことで,数多くの人々の記憶に残ったはずである。本当にいい役に恵まれたとしか言いようがない。

本作が今や巨匠と化した宮崎駿の劇場映画第1作だったが,私の中では本作と「ナウシカ」の二本は,宮崎駿という名を記憶に留めさせるに十分なものであった。私にとってはついつい星★★★★★となってしまう映画である。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2023年7月 2日 (日)

今度は山田和樹が振るバーミンガム市響をサントリー・ホールで聞いた。

Photo_20230702073901

私がクラシックのコンサートに足を運ぶ頻度は,ジャズやロックに比べれば低い方だが,先日のCharles Dutoitが振った新日本フィルから間もない6/30に,山田和樹率いるバーミンガム市交響楽団を聞きに,またもサントリー・ホールに出掛けてきた。

今回,当初は全然行く気はなかったのだが,直前割みたいなかたちで¥2,500ディスカウントされていたので,急遽の参戦みたいになった。プログラムも今年生誕150年とあって,やたらに演奏されるラフマニノフの交響曲2番に,樫本大進をソリストとするブラームスのヴァイオリン協奏曲というなかなか魅力的なものであったことも理由と言ってよい。

第一部のブラームスでは樫本大進のヴァイオリンの響きが魅力的であったが,オケとの親和性はどうかなぁって感じていた。特に私が違和感をおぼえていたのが,ヴァイオリン,ヴィオラ・セクションの響きのイマイチ感か。まぁ英国のオケにありがちな,金管,木管が勝ってしまう感じと言えばいいだろうか。だからこそ樫本大進のヴァイオリンが引き立つ結果になるのだが...。

第二部のラフマニノフでもチェロ,コントラバスはいい感じだったのだが,やはりヴァイオリン,ヴィオラの響きに透明感がないように思えた。曲が曲だけに,別にあまりこだわる必要はないと言えばないのだが,コンサートを通じてそうした感覚は消えず,これなら先日の新日本フィルの弦の方が圧倒的によかったとさえ思ってしまったぐらいである。まぁ,そうは言ってもドラマチックでロマンチックな曲想を持つラフマニノフのこの交響曲2番は,ダイナミズムを感じさせる演奏で楽しめたからよい。山田和樹は完全に踊っているって感じなのも笑えた。前回,山田和樹を見たのは読響との「アルプス交響曲」だったが,あの時はあんなに踊ってなかったよなぁなんて思っていた私である。

Photo_20230702084201 それにしても,演奏開始前に前説みたいな感じで山田和樹がこのオケがどうのこうのと喋っていたが,指揮者が前説のごとく登場するってのは初めて見た(笑)。いずれにしても,今回も客席はほぼ満席で,山田和樹は人気あるねぇと改めて感心してしまった。尚,上掲の写真はネットから拝借。

Live at サントリー・ホール on June 30, 2023

Personnel: 山田和樹(cond),樫本大進(vln),バーミンガム市交響楽団

2023年7月 1日 (土)

Søren Bebe:Facebookでのマーケティング戦略に乗って購入したら,欧州トリオの典型みたいな超美的なサウンドであった。

_20230628-2 "Echoes" Søren Bebe Trio (From Out Here Music)

Facebookに広告で表示されていたページを開いてみたら,このアルバムを送料だけで入手可能というものだった。Søren Bebeという名前は聞いたこともなかったが,デンマークのピアニストらしい。ジャケのセンスもなかなかだと思ったので,まぁ送料だけならいいかってことで,試聴もせずに発注と相成った。そして注文のページに行くと,併せ買いを勧める,勧めるって感じで,そこで嫌気もさしそうなものだが,ついでに"Home"なるアルバムも発注して合計1,700円ぐらいってことで,ついついポチってしまった。発注したのが6/21だったのだが,1週間も経たずにサイン入りCDがデリバリーされて,このプロセシングの迅速さは好感度高いって思ってしまった(笑)。

それでもって,初めてこの人の音楽を聞いたのだが,主題の通りである。欧州ジャズに美的な感覚を求めるなら,こういうところが落としどころになるだろうという音が体現されているではないか。はぁ~,これは知らなかった方が悪いって思ってしまった。

デンマークと言えば,コペンハーゲンのカフェ・モンマルトルにおいて数多くのライブ・アルバムが残されていて,米国のミュージシャンにとっても居心地がよかったであろうことは想像に難くないが,Nils Lan Dokyをはじめとする優秀なミュージシャンも多数輩出していて,同地のレベルの高さは保証されているようなものであるが,これほどまでに美的で静謐な旋律を連発されると,こっちもまいってしまうってところである。

本作の購入に際してはSøren Bebeのマーケティング戦略にまんまと引っ掛かったと言ってもよいのだが,これなら引っ掛かっても文句も出ない。むしろ,これまで知らなかった欧州のミュージシャンとの出会いの機会が生まれたとすれば,Søren Bebe本人に感謝したくなると言っては大袈裟か。リーダーを支えるベースのKasper Tagel,ドラムスのAnders Morgensenも実力十分。エンジニアリングも素晴らしく,欧州,それも北欧らしいリリシズムを楽しめてしまった。星★★★★☆。

Recorded in January 2019

Personnel: Søren Bebe(p), Kasper Tagel(b), Anders Morgensen(ds)

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