Charles Dutoit,86歳,その矍鑠たる指揮ぶりに驚き,感動した。

Charles Dutoit(以下デュトワと記す)が来日して,新日本フィルを指揮する2日間の2日目を,家人ともどもサントリー・ホールに聞きに行った。今回のプログラムは「牧神の午後への前奏曲」,「火の鳥組曲」,そして「幻想交響曲」というなかなかないもので,そもそも「幻想」を偏愛する私としてはどうしても聞きたいと思わせるものであった。しかもデュトワは既に86歳である。とっくに後期高齢者のデュトワに次があるかはわからないと思ったこともあった。しかし,そんな思いを一笑に付されるようなデュトワの矍鑠とした指揮ぶりだったとしか言いようがない。
映画「Tar/ター」において,James Levineと共にセクハラ指揮者として実名を挙げられたデュトワは,世界のオーケストラとの関係は悪化している。一方,日本においてはそれほど問題視されていないということなのかもしれないが,もちろんそうした疑惑に対して批判的に捉える人もいるだろう。それでもサントリー・ホールはほぼ満席(チケットはソールド・アウトだったらしい)の聴衆であったから,やはりデュトワに対する期待が勝ったということだろう。私でさえ行く気になるぐらいだから,きっとそうなのだ(笑)。
タクトを使わずに振った「牧神の午後への前奏曲」で静かに滑り出した前半であるが,私は「火の鳥組曲」における「カスチェイ王の魔の踊り」におけるダイナミズムにまず圧倒され,Yesがライブのオープニングで使う「終曲」にもぐわ~っと盛り上がっていたのであった(笑)。
だが,今回の私にとっての目玉はあくまでも「幻想」である。以前,このブログにも書いた通り,私は「幻想交響曲」に関しては何枚もアルバムを保有していた(過去形。今は6~7枚を残す程度)こともあり,オーケストラ音楽としての「幻想」には若い頃から親しんできた。だから,今回デュトワがどのような演奏を聞かせるのかには非常に興味があった。第1楽章から弦をよく鳴らしているなぁとは思っていたが,CDやレコードの再生では完全に把握できない弦楽器群の分離した響きを生で,そしてそれを手に取るように堪能できたことは感慨深かった。それは私がいくらこの曲が好きでも,いつも冗長性を感じてしまう第3楽章にさえ当てはまったのだから,これは大したことなのだ。
「幻想」においては第2楽章のワルツが大好きな私であるが,私はコルネット入りの演奏を好んでいるので,コルネットが入らない第2楽章にはいつも違和感を覚えてしまうのだが,ここは響きの美しさで補ってくれて文句なし。そして終盤第4,第5楽章は「火の鳥」同様の強烈なダイナミズムで押し切った演奏は,実によかった。「幻想」を聞いた~っていう満足感を覚える演奏であった。
演奏後の聴衆の反応も強烈で,何度もカーテン・コールに応えるデュトワを見て,デュトワ本人にとっても満足のいく演奏だったのではないか。今更ながら,やっぱりオケの演奏はいいよねぇと改めて感じた私である。さぁ,次は山田和樹とバーミンガム市響だ。そっちも楽しみにしておこう。
Live at サントリー・ホール on June 25, 2023
Personnel: Charles Dutoit(cond),新日本フィルハーモニー交響楽団
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