Eric Kazの未発表音源集の枯れた味わい。
"1000 Years of Sorrow" Eric Kaz (Spice of Life)
このブログにも何度か登場しているEric Kazである。私にとってEric Kazと言えば,誰が何と言おうと,Eric Justin Kaz名義でリリースした"If You’re Lonely"ということになるが,それだけでなくCraig Fullerとの双頭アルバムもよかった。しかし,そんなアルバムを残しながら,Eric Kazのアルバムが売れたって話は聞いたことがない。なので,このアルバムが2002年に出た時も,ソロ・アルバムとしては"Cul-de-Sac"以来28年ぶりだったという超長いインターバルであった。
とは言っても,このアルバム,当時の純粋な新作という訳ではなく,70年代の未発表音源が中心になっているのだが,ここに収められた曲が,何とも味わい深いのだ。Eric Kazが一人で宅録したようなデモ音源みたいなものもあるので,リリースを目的として作られたものではなかったのかもしれないが,ここで聞かれるシンプルさが全然気にならないぐらいいい曲が揃っているのだ。こういうのを聞いていると,むしろいろいろなミュージシャンにカヴァーされる曲を作った作曲家としてのEric Kazの立ち位置がわかりそうなものだ。
そして,本作には"The Romance"も含まれているが,この曲は私にとってはArt Garfunkelの"Scissors Cut"に収録されたヴァージョンが印象深い。この曲,本国アメリカ盤ではカットされて,"Bright Eyes"と置き換えられるという憂き目にあったが,なぜか国内盤には収録されていたものだ。私は"Scissors Cut"は日本盤の曲順,曲目こそあるべき姿だと思っているが,そこに含まれていたこの曲が作曲者,Eric Kaz本人によって歌われるのは実に感慨深いのだ。ライナーには,この曲はLinda RonstadtやBonnie Raittにより歌われることを意識していたようなことをEric Kazが書いているが,"Scissors Cut"のことは知らなかった,あるいは失念していたとしか思えない。それほどArt Garfunkelの名唱だったのだ。だから私はこのアルバムを聞いて,また"Scissors Cut"の国内盤を聞きたくなるという効果もあったのであった。
まぁ,アルバムとしては拾遺集であるから,評価が難しいところなのだが,この枯れた味わいに免じて甘いとは思いつつ半星オマケで星★★★★☆としてしまおう。結局のところ好きなのだ(笑)。
Recorded in 1974, 1975, 1978, 1979 and 2002
Personnel: Eric Kaz(vo, p, key, synth, g, b, ds, hca), Nick Jameson(g, b), Andy Robinson(ds, vo), Billy Mundi(ds)
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