Cate Blanchettの演技に痺れる「Tar/ター」。クラシック好きなら尚楽しめるはず。
「Tar/ター ("Tár")」(’22,米,Universal)
監督:Todd Field
出演:Cate Blanchett, Noémie Merlant, Nina Hoss, Allan Corduner, Julian Glover, Mark Strong, Sophie Kauer
いやいや,これは強烈な映画であった。クラシック音楽界を舞台とするというのもなかなか凄いことだが,Cate Blanchettの演技が実に素晴らしい。ワンカットで撮っているシーンも多いが,その長台詞を完璧にこなしているだけでなく,全編を通じた鬼気迫る演技には誰しもが息を呑むはずだ。指揮者への成りきりぶりも見事と言うしかない。
この映画も2時間38分という尺の長さなのだが,この上映時間の長さを全く感じさせないストーリー展開を実現した脚本,演出も見事であり,先般のオスカーでこの映画が無冠に終わったというのはある意味信じがたい。
Cate Blanchett演じる主人公が首席指揮者を務めるのがベルリン・フィルという設定もあり,劇中ではマーラーの5番とエルガーのチェロ協奏曲が重要なファクターとして登場するが,ここまでフィクションの中でクラシック音楽が演じられるのも珍しい。しかも演奏したドレスデン・フィルをCate Blancehttが実際に指揮しているというのだから,これまた凄いことである。プロ根性もここまで行くと,マジで恐ろしいと言うべきか。チェリストを演じるSophie Kauerはプロのチェリストで,演技経験なしだったそうだから,こっちもなかなかである。サウンドトラックのジャケは劇中にも出てくるが,Abbadoがベルリンを振ったマーラー5番に倣ったものというのも凝りっぷりが凄いのだ。しかも発売元はDeutsche Grammophonだしなぁ。
また,クラシック界におけるハラスメントが背景として描かれることもあって,業界で問題を起こした関係者の実名もばんばん出てきて,これまた凄いなぁと思ってしまった。とにもかくにも,全編緊張感に満ちた展開で,強烈なドラマが描かれるこの映画は高く評価せざるをえない。星★★★★★。
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