ようやく読了:「街とその不確かな壁」。
4/13日に発売されたこの村上春樹の新作を約3週間弱でようやく読了した。つくづく私も本を読むのが遅くなったと思う。それはさておき,この本の出自はいろいろなメディアでも取り上げられているから皆さんご存知だと思うが,私が読み始めて最初に思ったのが,「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」との同質性であった。物語の二重構造がそう思わせたのは間違いないが,現実と「意識下の感情」のようなものが交互に描かれるかたちを取りつつ,最後の第三章まで読むと落とし前がつけられるというかたちは,いかにも村上春樹的であるが,やはりこの物語性は満足度が高い。
アンチ村上春樹の読者からすれば,またいつもの村上春樹じゃねぇか!という批判もあるかもしれない。しかし,この一種の訳のわからなさから感じる感覚こそ,村上春樹の小説の魅力であり,真骨頂だと思う。私は長年,村上春樹の小説を読み続けているが,そのどれにも相応の魅力があるとしても,近年の作品の中ではこの小説が最も楽しめたように思う。喜んで星★★★★★とする。
いずれにしてもほかの小説からも感じられる,村上春樹的パラレルな構造におけるストーリーテリングは,結局「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」から始まったのかもしれないなぁと改めて思った次第。やっぱりあれは傑作だったし,一番好きな作品だったかもしれないと今更ながら思う。
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