長年オクラ入りしていたGil Evansのアルバム。確かに売れるという判断はできないよねぇ。
"Where Flamingos Fly" Gil Evans (Artist House)
このアルバムがレコーディングされたのは1971年のことだが,リリースされたのは1981年と10年間もオクラ入りしていたという曰くつきのアルバムながら,Gil Evansの再評価が高まった時期にリリースされて,日本でも非常に高く評価された作品。SJ誌主催のジャズディスク大賞で,1981年度の銀賞に選ばれたのも懐かしい。
そもそもこのアルバムをリリースしたのはArtist Houseレーベルである。Artist Houseっていうのは良質な作品を出しながら,オーナーのJohn Snyderに商売っ気がないというか,売れるとか売れない関係なしにリリースするので,会社が短期間で潰れてしまったのは惜しいとしか言えない。本作だって決して「売れる」音ではないだろうが,それを世に出しただけでも価値はあった。いずれにしても,ある意味ミステリアスに響きながら,このハイブラウな演奏を聞いていると,私みたいにはまるリスナーも多少はいるだろう。だからと言って,しょっちゅうプレイバックしている訳ではないが...(苦笑)。
面白いのはオリジナル音源のプロデュースがあのJohn Simonだということだが,そう言えばJohn Simonはライブの傑作"Priestess"もプロデュースしていたし,David Sanbornのアルバム,"Heart to Heart"にGil Evansを客演させたのもJohn Simonだったので,昔から縁はあったってことだ。しかし,John SimonがプロデュースするThe Bandやその他のSSW系のアルバムと比べると,随分ギャップが大きいと思うのは私だけではあるまい。
このアルバムがほかのGil Evansの作品と異なるのはAirtoとFlora Purimの参加だろうが,確かに彼らの参加が効いている部分があるとしても,全体を通じて聞けば,まごうことなきGil Evansのサウンドである。各々のソロイストも好演であるが,"Zee Zee"におけるJohnny Colesのトランペットや,"El Matador"におけるHoward Johnsonのバリトン・サックスが特に印象に残る。珍しいのはHannibal Marvin Petersonがトロンボーンとしてクレジットされていることだが,これって本当なのか?と思ってしまうが...。
アンサンブルにおいては,後のMonday Night Orchestraのようなメンバーによる自発的なリフはまだここでは登場はしていないが,そうしたところもあって,緻密さではこのアルバムの方が上だと思った。いずれにしても,埋もれさせておくにはあまりにももったいなかった作品。星★★★★☆。しかし,それはもはや廃盤状態となって久しいというのは更にもったいない。私は本作をアナログ,CDでも保有しているが,今更ながら中古CD(国内盤が出たというのは今にして思えば奇跡的...:ジャケは下のもの)をゲットしておいてよかった。
Recorded in 1971
Personnel: Gil Evans(p, el-p), Billy Harper(ts, chime), Howard Johnson(bs, tuba, fl-h), Trevor Kehler(ss, bs), Johnny Coles(tp), Stan Shafran(tp), Hannibal Marvin Peterson(tb), Jimmy Knepper(tb), Harry Loolofsky(t-vln), Joe Beck(g, mandolin), Bruce Johson(g), Herb Bushler(b), Richard Davis(b), Bill Quinze(b), Don Preston(synth), Phil Davis(synth), Lenny White(ds), Bruce Ditmas(ds), Sue Evans(perc, marimba), Airto Moreira(perc, vo), Flora Purim(perc, vo)
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