Christian McBrideのファンク心に満ちた3枚組ライブ。
"Live at Tonic" Christian McBride(Ropeadope)
Christian McBrideという人は,さまざまなフォーマットで演奏をしていて,いかなる編成においても,質の高い音楽を聞かせるという稀有なベーシストだと思う。私が初めて彼の演奏を見たのは,まだ彼がティーンエイジャーだったが,今や彼も50歳を過ぎた堂々たる中年だが,私自身が既に還暦を過ぎているのだから,もはや長い年月が過ぎ去った。いずれにしても,リーダーとしての資質もはっきりしており,ベーシストとしてのみならず,立派なミュージシャンとしてキャリアを積んできたことは誠に喜ばしい。
本作はそんなChristian McBrideがファンク・フレイヴァーを炸裂させたライブ盤である。本作がレコーディングされたTonicというヴェニューには私は行ったことがない(そもそもとっくにクローズしている)が,出ているメンツを見れば,だいたいJohn ZornやらFred Frithらの尖ったアバンギャルド系が多い中で,Christian McBrideは異色にも思える。だが,そこはここでコンベンショナルなジャズをやるChristian McBrideではないということで,当時リリースされた"Vertical Vision"のレコーディング・メンバーによるファンク色濃い演奏をしている。
本作は3枚組の大作なので,通しで聞くってチャンスはなかなかないのだが,今回,暇にまかせてぶっ通しで聞いてみた。3枚のうち,1枚目がレギュラー・バンドとしてのクァルテット,2枚目,3枚目は各々ゲストを迎えた演奏ということになるが,2枚目,3枚目のディスクは曲目がほぼ"XX Jam"となっていて,ライナーにもあるように完全即興で演奏が行われたようである。だからと言って,フリー・ジャズということではなく,一定のビートを供給しながら,ジャム・バンド的なノリで演奏をするって感じである。
そうしたこともあって,ファンク的なノリは楽しいのだが,やはり演奏は冗長に流れるというところは否定できない。これがライブの場にいれば,全然違うと思うが,CDとして聞くと,やはりまとまりには欠けるという部分があって,この辺りが評価の分かれどころだろう。そうした意味ではレギュラーでの演奏の1枚目には私には文句はないが,2枚目,3枚目のゲストを迎えたセッションは,カッコいい瞬間も多々あるものの,評価は下がらざるをえないというのが正直なところである。ゲスト陣もギタリスト陣はいいとしても,2枚目のJason Moranはミスキャストのように思える。バンドにはGeoffrey Keezerがキーボードでいるのだから,そこにピアノを入れる意味もあまりなかった。
まぁ,こういうアルバムはノリを楽しめばいいのだという考え方もあるが,やはりこれはちょっとなぁって気がする。だが,Christian McBrideが何でもできてしまうところが明らかになっているという点は認めなければならないだろう。また,ここでのRon BlakeやGeoffrey Keezerはかなりカッコよかった。星★★★☆。
Recorded Live at Tonic on January 10 & 11, 2005
Personnel: Christian McBride(b), Ron Blake(ts, ss, bs, fl), Geoffrey K(b), Ron Blake(ts, ss, bs, fl), Geoffrey Keezer(key), Terreon Gully(ds) with Charlie Hunter(g), Jason Moran(p), Jenny Sheinman(vln), DJ Logic(turntable), Scratch(beat box), Eric Krasno(g), Rashawn Ross(tp)
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