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2023年3月31日 (金)

Mompouのピアノ曲:菜種梅雨にはぴったりだった。

_20230326-2 "Federico Mompou: Música Callada" Stephen Hough(Hyperion)

先日の菜種梅雨のような陽気で雨の日が多いと,私はついつい現代音楽に手が伸びてしまう。それは先日取り上げたArvo Pärtの「鏡の中の鏡」でも同じだったのだが,今回はMompouの「沈黙の音楽(aka ひそやかな音楽)」である。私はこの曲の演奏はECM New SeriesのHerbert Henckのものを保有しているのだから,また敢えて買う必要もないだろうと言われてしまえばその通りなのだが,別のCDとの併せ買いで購入したもの。ECMとHyperionでは随分エンジニアリングも違うだろうってこともあった。

Stephen Houghというピアニストは不勉強にして初めて聞いたが,英国ではKnightに叙せられているので,Sir Stephen Houghと呼ばねばならないな(笑)。それはさておき,Stephen Houghは90年代にMompouのアルバムをリリースしているので,約四半世紀を経てこのMompouの代表作と言われているこの4部作をレコーディングすることは,ある意味必然だったのかもしれない。

この「沈黙の音楽」はタイトル通り,静寂感に満ちた音楽であり,私はこういう音楽を聞いていると雨音とシンクロさせたくなってしまうのだ。我ながらワンパターンな思考回路だと思いつつ,そういう感覚をご理解頂ける方にご理解頂ければよい。もちろん,天候に関わりなく,こういう音楽を聞きたくなることはあるものの,コンテンポラリーなピアノ曲というのは私にとっては雨音とこそフィットするっていう感覚だ。もちろん,それは豪雨ではなく,しとしとと降る雨の音でなければならないのだが。

音楽的にどうこうとか,技巧的にどうこうとかを語る資格は私にはないが,自分が過ごす環境や時間とのマッチング度合いを考えると,これはArvo Pärtの音楽同様,私にとって精神衛生上大変良い効果を持つ音楽だと言いたい。この演奏がよかったので,90年代にStephen Houghが録音したMompouのアルバムも発注してしまった私であった。

もはや自分の嗜好へのフィット感だけでの評価となるが,こういう音楽を必要とすることがあると痛切に感じることもあって,星★★★★★だ。結局こういう音楽が好きなのだ。

Recorded on October 22-24, 2020

Personnel: Stephen Hough(p)

本作へのリンクはこちら

2023年3月30日 (木)

Simon Phillips Protocol@Blue Note東京参戦記

Simon-phillips

Simon Phillipsが自己のバンド,Protocolで来日するのは4年ぶりだと本人も語っていたが,その4年前のライブには私も行っていて,当ブログでも記事にした(記事はこちら)。前回は現メンバーになってから初の来日で,当時はこのメンバーでのアルバムもリリースしていなかったが,昨年,"Protocol V"が発表されてのライブで,どのような変化があったかを期待して出掛けてきた。

いつもながらのタイトなノリには興奮させられたが,私が何よりも驚いたのがギターのAlex Sillの成長ぶりであった。前回のライブでも私は「ギターの新人、Alex SillはAllan Holdsworth的あるいはFrank Gambale的なスムーズなピッキングで聞かせるところがあった」なんて書いているが,そのフレージングは進化し,バンド内におけるポジションも前回よりはるかに上がっている感じがした。ソロでもバッキングでも実に印象的なプレイだったと言ってよい。

Alex Sillに限らず,バンドとしてのコンビネーションは前回よりはるかに進化し,曲の激しさもあって,場内の興奮度は相当上がっていたと言ってよいと思う。還暦過ぎの私とて,半ばヘッドバンギング状態になってしまったではないか(爆)。はっきり言って燃えてしまった(笑)。こういう興奮度って,ロックのライブに行かなくなって久しい私には結構重要だよなと思いつつ,ハード・フュージョンのよさを体現しているこのバンドの演奏を大いに楽しんでしまったのであった。やっぱりいいねぇ,Simon Phillips。アルバム,聞き直そうっと。尚,上の写真はBlue Note東京のサイトから拝借。

Live at Blue Note東京 on March 28,2023 2ndセット

Personnel: Simon Phillips(ds), Jacob Scesney(as, ts, ss), Alex Sill(g), Otmaro Ruiz(key), Ernest Tibbs(b)

2023年3月29日 (水)

Arvo Pärtの「鏡の中の鏡」:この上なく美しい響き。夢見心地とはこれのことか。

_20230326 "Arvo Pärt: Speigel im Spiegel" Benjamin Hudson / Sebastian Klinger / Jürgen Kruse(Brilliant Classics)

ECMの総帥,Manfred EicherがECM New Seriesを立ち上げたのはエストニアの作曲家,Arvo Pärtの音楽を世に広めるためだったという話もあるが,そのArvo Pärtの邦題「鏡の中の鏡」を聞いていると,まさにEicherの指向と合致しているよなぁって気がしてくる。

一般の現代音楽に感じられる難解さなんてものは皆無であり,ミニマリズムの中から浮き上がる美的な感覚は,もはやアンビエント・ミュージックと呼びたくなる。この「鏡の中の鏡」はその後もさまざまな楽器編成で連作として発表されているが,ここに収められたものが初出の編成(ヴァイオリン+ピアノ,ヴィオラ+ピアノ,チェロ+ピアノ)ということになるようだ。それに"Für Alina"ほかの3曲を加えた全6曲には心地よい響きだけが収められていると言ってよく,まさに夢見心地になるような音楽なのだ。

音楽に刺激を求めるリスナーにとっては全く無縁の音楽と言えるだろうが,私にとっては精神衛生上実に好ましい音である。心がささくれ立った時に確実に役立つと思える美的音源。素晴らしい。星★★★★★。

Personnel: Benjamin Hudson(vln, vla), Sebastian Klinger(cello), Jürgen Kruse(p)

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2023年3月28日 (火)

Kendrick Scottの新作:相変わらずレベルが高い。

_20230325-3"Corridors" Kendrick Scott(Blue Note)

これまでは自身のグループ,OracleでのアルバムをリリースしてきたKendrick Scottが,今度はサックス,ベースとのトリオで作り上げたアルバムである。クレジットにあるように,The Jazz Galleryの委嘱プログラムによって制作されたようなので,これは一時的なプロジェクトと捉えるべきだろう。本作ではロックダウン期の心の動きを反映しているようなことをKendrick Scottが語っており,収められているのはメンバーとの共作を含むKendrick Scottによるオリジナル8曲に,Bobby Hutchersonの"Isn’t This My Sound Around Me?"を加えた全9曲。そのBobby Hutchersonの曲は,McCoy Tynerとの"Manhattan Moods"というアルバムが初出らしいが,シンプルなメロディ・ラインながら結構魅力的に響くのが面白い。

こういう編成であるから,どんなサウンドにするのかが興味深いところである。激しくやることもできれば,地味に(笑)やることもできるが,私の感覚では後者。どちらかと言えば,内省的な感覚がする演奏が多い。Kendrick Scottという人は,ドラマーとして勢いを発揮することもできるが,バンド・リーダーとしてトータルな音楽をOracleでも聞かせてきたことを考えると,こうした展開もありかなぁと思う。ただ,曲によっては相当Kendrick Scottは煽りを入れているのだが,それがうるさく感じさせないところが彼の技である。そうした中で私が感じるのは,ここで受ける感じがサックスがWalter Smith IIIゆえのサウンドになっているということだ。これがクリポタだったら全然違う音楽になっていたはずだと想像をめぐらしてしまう私である。まぁ,Kendrick Scottが目指した世界を表現するにはWalter Smith IIIの方が適していたということだと思うが,やや線が細く感じるのも事実なのだ。まぁそれでも,"Threshold"なんて相当いいが...。

正直に言ってしまうと,Oracleでやっている音楽と,本作の音楽とどっちが好きかと言えばOracleの方なのだが,これはこれでKendrick Scottによる新たなチャレンジとして受け止めることにしたい。星★★★★。いずれにしても,Kendrick Scottが有能なミュージシャンであることは疑いようもなく,レベルが高いことはいつもながらのことである。

Personnel: Kendrick Scott(ds, vo), Walter Smith III(sax), Reuben Rogers(b)

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2023年3月27日 (月)

これまた長年ECMを支えてきたBobo Stensonの新作。

_20230325-2 "Sphere" Bobo Stenson Trio(ECM)

先日のRalph Townerに続いて,長年ECMレーベルにアルバムを残してきたBobo Stensonの新作である。Bobo StensonのECMでの初リーダー作は"Underwear"だと思うが,それがリリースされたのが1971年だから,既に半世紀以上前のことである。年齢的にはRalph Townerより若いBobo Stensonだが,ECMでのキャリアはこの人の方が長いということになるのだから,それって結構凄いことだよねぇと言いたくなる。

それはさておき,Bobo Stensonの音楽というのは冬のイメージである。美的な感覚と抽象性をミックスした音楽はいつもながらというところであるが,一聴した段階では前作"Contra la Indecisión"より抽象性が高いように感じられた。それをよしとするかどうかはリスナー次第ってところだが,私にとっては問題はないものの,アルバム全体としては前作により魅かれるってところだろうか。

しかし,今回もこのトリオらしい演奏であり,この世界にはまってしまうと,どうしても抜けられない魅力があると感じる。このトリオ,レパートリーにクラシックや現代音楽の作曲家を取り上げることが多いが,今回はシベリウスをやっているし,2曲を取り上げたSven-Erik Bäckもスウェーデンのクラシック系の作曲家である

私の中ではBobo Stensonの音楽は現代音楽のピアノ作品のような感覚を与えてくれるイメージもあるが,更にいかにも北欧的なサウンドがマッチして,いかにも彼ららしい音楽を楽しんだのであった。ちょっと甘いかなと思いつつ,星★★★★☆。

Recorded in April 2022

Personnel: Bobo Stenson(p), Anders Jormin(b), John Fält(ds)

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2023年3月26日 (日)

Joe Henryの新作が超シブい。

_20230325 "All the Eye Can See" Joe Henry (ear Music)

Joe Henryの新作がリリースされた。前立腺がんで闘病していたと聞いていたが,こうしてまた新作が聞けることは実に嬉しい。今回のアルバムはコロナ禍を踏まえて,Joe Henryがソロでレコーディングしたものに,さまざまなゲストがリモートで録音した演奏をアドオンしたもので,いかにもコロナ禍らしい制作過程で作られた作品。

Joe Henryについては,私はシンガーとしてもプロデューサーとしても全幅の信頼を置いていると言っても過言ではない。たまにプロデュース作品にイマイチなものもあるが,平均点は極めて高く,昨年もJoe HenryがプロデュースしたAoife O’Donovan のアルバムをベスト作の一枚に選んでいる。今回はどうか。

闘病生活の影響もあるだろうし,コロナ禍という状況により,決してチャラチャラしたところのない真摯な音楽だと言えるが,一種の寂寥感さえおぼえさせる音楽であり,その辺りは聞く人によっては何がいいのかと言いたくなるかもしれない。しかし,この制作過程を考えれば,ゲストの演奏/歌唱とのフィット感が素晴らしく,そこにプロデューサーとしてのJoe Henryの技量の素晴らしさを感じさせる。そして,多様なゲストの参加も,Joe Henryの人徳ってところか。

それにしても渋い音である。Joe Henryの音楽が私への訴求力が高いのはいつものことであるが,前作"The Gospel According to the Water"とも共通する感覚もあり,今回もやっぱり痺れてしまった。この人の作る音楽はいつもながら実に素晴らしいと改めて感じた私である。星★★★★☆。

Personnel: Joe Henry(vo, g), Jay Bellrose(ds, perc), Floriane Blancke(Celtic harp), Daphne Chen(vln), Tyler Chester(b, p, org), Keefus Ciancia(p), Rose Cousins(vo), Madison Cunningham(vo, g), Bill Frisell(g), Lisa Hannigan(vo), Levon Henry(ts, as, a-cl), Daniel Lanois(el-p, org, b, pedal-steel), The Milk Carton Kids<Joey Ryan, Kenneth Pattengale>(vo), JT Nero(vo), David Piltch(b), Marc Ribot(sitar-g), Allison Russell(vo), John Smith(g), Tony Trundle(vln), Francesco Turrisi(accor, banjo cello), Patrick Warren(p, org, key)

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2023年3月25日 (土)

久々に"Star People"を聴いた。

_20230324"Star People" Miles Davis(Columbia)

久しぶりにこのアルバムをMilesのColumbiaボックスから引っ張り出して聴いた。実は私にとってこのアルバムのプレイバック頻度はMilesのアルバムにおいて決して高くない。なんでなんだろうかと思っていて,改めて今回聞いて思ったのは,このアルバムが当時のMilesバンドの持っていたヘヴィな感覚を再現できていなかったからではないかと思ってしまった。それはこのアルバムの音のせいが大きいと思うが,これよりずっと音のいいブートがありそうだと感じてしまうぐらい大したことのない音なのだった。私のオーディオ・セットなんてシャビーなものだが,それでもこの音はいかんだろう。

Gil Evansが関わっていたり,ブルーズを吹いたりと話題にはなったのだが,例えば"Speak"におけるスピード感の欠如は痛いと思えるし,フェード・アウトが続くことも気に入らない。私が観たMilesのライブとの感覚の違いが大き過ぎたということもあったと思える。

もちろん,Milesのことであるからおかしな演奏はしていない。十分にカッコいい演奏ではあるが,やっぱり気に入らないんだよなぁ。これを聞くならほかのアルバムを聞くってことで,星★★★☆。なんだかもったいないねぇ。

Personnel: Miles Davis(tp, synth), Bill Evans(ts, ss), Mike Stern(g), John Scofield(g), Marcus Miller(b), Tom Barney(b), Al Foster(ds), Mino Cinelu(perc)

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2023年3月24日 (金)

遅ればせながらWBC雑感。

Wbc

終わってみれば,7戦全勝でWBCを制覇した侍ジャパンの見事な戦いであった。勝てば勝ったで,難癖をつけたがるメディアもいるようだが,勝てば官軍である。

確かに村上やダルビッシュは本調子ではなかったかもしれないが,準決勝,決勝での村上の働きはそれまでの不調を帳消しにするものだったし,ダルビッシュは投手陣の精神的支柱であったことを考えれば,チームへの貢献は非常に大きかったので,不調を補って余りある。

そして何よりもナショナリズムを刺激する国別対抗戦という仕掛けは,FIFAワールドカップ同様の盛り上がりを日本にもたらしたことを考えれば,日本国民にポジティブな心理を与えたことは間違いないだろう。これがスポーツの持つ力だと思いたくなった。

今回のWBCの主役は誰がどう見ても大谷であることは間違いないが,吉田の活躍,そして何よりも投手力が他国を圧倒していたことは特筆に値するだろう。

準々決勝までは楽勝ペースで来ていた日本が準決勝でメキシコに追い詰められた時には,正直負けを覚悟したのだが,絵に描いたような逆転劇に興奮しない人間はいなかったろう。そしてサヨナラのホームを踏んだ周東の快足は,あの劇的勝利におけるファイン・プレーであった。

そして決勝戦の最後の大谷vsトラウトというまさに漫画でもないような展開は,全ての野球ファンが見たかった対戦だったのではないかと思える。そういう意味で今回のWBCに文句をつける奴らは論外,あるいは目立ちたいだけのろくでなしだ。私は全ての試合をライブで見た訳ではないのだが,結局全試合見ているということで,私も十分楽しませてもらった。

ということで,おめでとう,侍ジャパン。次回,米国が最強投手陣を揃えてきた時の勝負が今から楽しみである。

2023年3月23日 (木)

奇しくもBurt Bacharach追悼作となってしまった”The Songs of Bacharach & Costello”。

_20230319-2

”The Songs of Burt Bacharach & Elvis Costello" Burt Bacharach / Elvis Costello / Various Artists(Universal,

先日,惜しまれつつ世を去ったBurt Bachrachの生前からリリースが予告されていたElvis Costelloとの作品集がデリバリーされた。結果的には追悼作品のようになってしまったのは返す返すも残念なことであるが,このアルバムを聞いて改めて,音楽界の巨人,Burt Bacharachを偲ぶこととしたい。

私がゲットしたのは2枚組の輸入盤だが,1枚目はBurt BacharachとElvis Costelloの共演盤であえる"Painted from Memory"のリマスター音源。私はもともとこのアルバムを保有しているので,その素晴らしさはわかっているつもりだったが,改めて聞いてみても実に沁みる。いい曲をいい歌い手が歌えばいいに決まっているというのを実証している。もはや"Painted from Memory"がリリースされてから四半世紀というところにも時の流れを感じるが,それでもここに収められた曲は,エヴァーグリーンと呼んでいい出来の曲ばかりだと言いたい。

そして,注目すべきは新録音や未発表曲を含んだCD2ということになるが,これは正直言って玉石混交って感じが強い。痺れる曲もあれば,う~むと言いたくなる曲もあるが,特に私にはJenni Muldaurと相性が悪いって感じだ。そんな中で,私にとって驚きだったのは"Photographs Can Lie"のような曲が既にリリースされていたってことである。これは2018年にリリースされたElvis Costelloの"Look Now"に含まれていた曲とのことだが,そのアルバムだって聞いたことがなかったし,そこでこの二人のコラボが聞けるなんてことも,全く認識していなかったことを恥じたくなるほどいい曲なのだ。無知とは恐ろしいと改めて感じたのであった。

結局のところ,このアルバムを聞いて,予め才能ある人間同士が組めば,相応の作品が生まれるとはわかっていても,こっちの期待値をはるかに上回る成果をこの二人は残したということを改めて実感した私であった。そうしたことも含めて星★★★★★。参加メンバー多数なので,Personnelは省略するが,どこから聞いても楽しめることは間違いない。

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2023年3月22日 (水)

素晴らしいメンツによる北川潔のリーダー作。

_20230317-2 "Ancestry" 北川潔(澤野工房)

米国をベースに活躍を続ける北川潔のバンド・リーダーとしては初作のはずである(リーダー作としてはこの前に"Solo"ってのが出ているようだ)。これがリリースされたのが2004年のことだが,私はラックの肥しにしてしまっていて,これまでに何度聞いたかもわからないぐらいのレベルに留まっていたのだが,久々に聞いてみたらこれが実によかった。北川潔のオリジナル4曲に,ジャズマン・オリジナルやスタンダードを6曲という構成もバランスがよいが,何よりもこのアルバムを魅力的なものにしているのがメンツ。何てたってKenny BarronにBrian Bladeであるから,そもそも悪いはずがないだろうと思ってしまう盤石の布陣だ。

冒頭の北川潔のオリジナルであるタイトル・トラックから快調そのもので,これで完全につかみはOKだろう。全編を通じて演奏はコンベンショナルそのものであるが,その後長きに渡って共演を続けるKenny Barronのフレージングも魅力的なら,Brian Bladeならこのセッティングなら絶対失敗はないよなと思わせるに十分。ベーシストのリーダー作だけに,ベース・ソロに結構なスペースが割かれているが,趣味のよいエンジニアリングによって,ベースがいい音で録れているのも好感度が高い。

ジャズマン・オリジナルではTadd DameronとWayne Shorterが2曲ずつチョイスされているが,この辺りに北川潔のジャズ的な出自を感じる。そうした中で,先日亡くなったWayne Shorterの2曲の選曲には偶然とは言えども,やはり感じるところが大きかった。

いずれにしても完璧とは言わずとも,聞きどころ十分の佳作。星★★★★。こういうのを埋もれさせてはいかんなぁ...(苦笑)。

Recorded on November 25 & 26, 2003

Personnel: 北川潔(b), Kenny Barron(p), Brian Blade(ds)

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2023年3月21日 (火)

Cedar Waltonの"Pit Inn":こういうアルバムはついつい酒が進んでしまう...(笑)。

_20230318-2 "Pit Inn" Cedar Walton(East Wind)

日本のレーベルとして,内外のミュージシャンの優れたアルバムをリリースしたEast Windレーベルの業績は過小評価してはならない。これもそんなEast Windレーベルの一枚であるが,私がこれを入手したのは随分後になってからのことだ。しかし,これを初めて聞いた時,もっと早く聞いておけばよかったと思ったのも事実である。

Cedar Waltonと言えば,Jazz Messengers以来,リーダー,バイ・プレイヤーとして数々のアルバムを残しているが,正直なところ,存在感としては地味と言ってもよい。しかし,その実力たるや見事なもので,"Eastern Rebellion"のシリーズを愛聴しているリスナーが,私も含めて結構多いことも十分認識している。

本作はそのCedar WaltonがEastern Rebellionでも組んだトリオで,笠井紀美子と共演するために来日した折に,タイトル通り,新宿ピットインでライブ・レコーディングしたものだ。聞けばわかる通り,この安定感は見事としか言えないレベルで,聴衆も尋常ではない盛り上がりっぷりを示している。オリジナルはいい曲書くねぇと思わせるものばかりだし,そこに加わるジャズマン・オリジナルもこのトリオにジャスト・フィットである。

こういう演奏を聞いていると,ついつい酒の量も増えるって感じの演奏であり,今回もついつい飲み過ぎた(爆)。歴史的名盤とかそういう類ではないが,日頃の生活の潤いを増すのに貢献すること必定(笑)のナイスなライブ盤。星★★★★。

Recorded Live at 新宿ピットイン on December 23, 1974

Personnel: Cedar Walton(p), Sam Jones(b), Billy Higgins(ds)

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2023年3月20日 (月)

Ralph Townerの新作が届く。実に素晴らしい。

_20230319"At First Light" Ralph Towner(ECM)

Ralph TownerがECMからの最初のアルバムとなる"Trios / Solos"をリリースしたのが1973年。即ち,半世紀に渡ってECMというレーベルにおいて,代表的なミュージシャンの一人として活動を続けてきたという事実からして凄いことだと思う。そんなRalph Townerももはや83歳の大ベテランであるが,年齢をものともせずの新作がリリースされたので,早速聴いている。

ミュージシャンを含めて指を使う職業についている人はボケることはないとよく言われるが,この新作におけるRalph Townerの演奏はテクニカルな問題もなく,全く年齢を感じさせないもので,Charles Lloydと並んで80過ぎてもまだまだ凄いという思いを新たにする。本作は2017年の"My Foolish Heart"以来のECM作ではあるが,全編に渡ってRalph Townerらしいギターが聞けて,Ralph Townerの大ファンとしては本当に嬉しくなる出来だ。

昨今のRalph Townerは12弦ギターを弾くことは少なくなったが,本作もクラシック・ギターのみでの演奏。Ralph Townerの弾く12弦好きの私としては,1曲ぐらい入れて欲しいなぁというところもあるのだが,そこは今でも現役での演奏が聞けるだけで満足せねばなるまい。オリジナルを中心にスタンダードや"Danny Boy"を交えるプログラムもRalph Townerらしいものだが,どこから聞いてもRalph Townerだとわかってしまう音色,フレージングが素晴らしい。

私のCDラックにおいては数少ない別格扱いをしているRalph Townerゆえ,私としては新作がリリースされただけでも嬉しいのだが,この年齢にしてこの演奏ということに,私は星★★★★★となってしまうのだ。やはりこの人の演奏は私の琴線をくすぐる。私はOregonとソロで2回,Ralph Townerのライブに接する機会はあったものの,前回(2019年)の来日は見逃しているだけに,是非元気なうちにもう一度来日して欲しいと思う私である。

Recorded in February 2022

Personnel: Ralph Towner(g)

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2023年3月19日 (日)

雨の日には現代音楽なのだ(笑)。

_20230318「近藤譲:線の音楽」Various Artists(ALM)

ライナーの冒頭に近藤譲が「これは拒絶の音楽を探し求める旅のひとつの道程である。」なんて書いていて,そこからしてハードルが上がりそうだが,私が現代音楽を聞く場合,それは一種のアンビエント・ミュージックみたいになってしまう部分がある。つまり,私にとっては拒絶の真逆みたいな感じで現代音楽に接することが多い,と言うか,私が好んで聞く現代音楽はピアノ音楽がほとんどであり,そこには激しさよりも静謐さが勝っていることがほとんどなのだ。

近藤譲は更に『「線の音楽」は,切目なく続く際限のない音の列といった形体をもち,常に或種の単純さに取り巻かれている。」なんて書いていて,正直言って実に小難しいのだが,私にとってはここでの音列に身を委ねればいいように思ってしまう。

私にとってこういう音楽を聞くのに適しているのは大抵が雨の日って感じなのだが,今回これを聞いたのも雨の日の午後であった。家人が出掛けている間に料理を作りながら,こういう音楽をプレイバックしている私も変態だと思うが,ここでの楽器群の響きが何とも心地よく感じてしまうのである。

ここには複数のミュージシャンが複数の編成で演奏を行っているが,特に面白いと思ったのは篠崎史子がハープの多重録音を行った"Orient Orientation"であった。あたかもプリペアド・ピアノのようにさえ響くハープの音色というのが何ともユニーク。また,バンジョー,ギター2本,大正琴,ハープにハーモニカという何とも奇妙な編成の"Pass"なんかは,普通の人が聞いたら何じゃこれは?としか思えない響きだが,これまた聞いたことがないって感じなのだ。でも料理の邪魔にはならない(爆)。そうは言いつつ,アルバムとしては後半に向かうほど,ハードルは高くなるというところ。

全編を通して,何とも不思議な響きに包まれたアルバムではあるが,こういうのもたまに聞きたくなってしまうという私を不思議に感じる人がいても,まぁそれは仕方ないだろう。でも結局は何だかんだ言って好きなんだよねぇ。

Personnel: 高橋悠治(p), 篠﨑史子(harp),小泉浩(fl),山口恭範(marimba, hca),高橋アキ(p,大正琴,el-p),佐藤紀雄(bjo),志村菊夫(g),曽我傑(g),川合良一(cond),篠﨑功子(vla),篠﨑正嗣(vla),永島義男(b)

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2023年3月18日 (土)

Jeremy Pelt参加のSmallsにおけるライブ音源。

_20230317 "Live at Smalls" Jazz Incorporated(Smalls Live)

先日,Jeremy Peltのライブ・アルバムを取り上げたばかりだが,そう言えばJeremy PeltがSmallsでやった演奏があったなぁと思い,前々から聞いてみたかったので,ネットで中古盤をゲットした私である。このアルバムを聞きたいと思ったのは偏にJeremy Peltのワンホーンだからだが,Louis Hayesのような大ベテランとの共演にも興味があった。

端的に言えば,Jeremy Pelt自身のアルバムよりはリラクゼーション感覚が強いのは,Smallsという場所柄,あるいはLouis Hayesに合わせたって感じがしないでもないが,プロデュースにもJeremy Peltは関わっているので,本人の意向も働いているものと思われる。

しかし,そんな演奏でも,Jeremy Peltのラッパの魅力は十分に感じられるし,ピアノ・トリオもいいメンツが揃っているだけにこれは結構楽しめる。そんな中で最後に収められたJeremy Peltのオリジナル"Shout"はタイトルに偽りなく,ブルージーな中にも熱いJeremy Peltのラッパが聞けて,これにはついつい身体が動いてしまうし,聴衆の反応もヴィヴィッドなのにも頷ける。

まぁ,このシリーズのほかのアルバム同様,音はイマイチなのは惜しいが,それでも演奏としては十分に楽しめてしまう,Smalls Liveらしい演奏。星★★★★。

Recorded Live at Smalls on August 27 & 28,2010

Personnel: Jeremy Pelt(tp), Anthony Wonsey(p), Dezron Douglas(b), Lous Hayes(ds)

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2023年3月17日 (金)

追悼,Bobby Caldwell。

Bobby-caldwell_bw

Bobby Caldwellが亡くなったそうだ。Bobby Caldwellについての私の想いは,10年近く前に書いた彼のベスト盤についての記事の通り(記事はこちら)で,そこから何も変わっていない。晩年は闘病生活を送っていたようだが,特に日本での人気が高い人であっただけに,一定以上の年齢層にとっては,懐かしくもあり,印象深い人でもあったと言ってよい。

まだ71歳というのは今の時代には早過ぎる死だが,それでもBobby Caldwellの書いた曲は,我々の記憶のどこかに残っていくだろう。

R.I.P.

2023年3月16日 (木)

これもアップしていなかったってことで,Jeremy Peltのライブ盤。

_20230314 "Noir en Rouge: Live in Paris" Jeremy Pelt(High Note)

アップしていたつもりで,していなかったアルバムなんて結構あるものだが,これもそんな一枚。私はJeremy Peltのアルバムはそこそこ保有している方だと思うが,昨今,基本的にストリーミングでチェックしてからアルバムを購入するようになってからは,以前のように無条件購入というのは大幅に減っている。Jeremy Peltも本作の後にもアルバムはリリースしているが,そっちはスルーしていて,現状私が現物を保有している最新のアルバムがこれってことになる。

タイトル通りパリでのライブを収めたものだが,編成は当時のレギュラー・クインテットだったはずで,Jeremy Peltのワンホーンにピアノ・トリオ+パーカッションという編成である。

Jeremy Peltについては,このブログでも何枚も記事にしているが,JD Allenやダニグリを擁したクインテットは60年代Milesクインテットの影響濃厚って感じながら,非常に優れたバンドであったと思う。その後のアルバムは正直あまり評価できないと思えるものもあったが,基本的には現在のトランペット・プレイヤーとしては相応に評価しなければならないというのが,私の中でのJeremy Peltの評価だ。ここでもJeremy Peltは優れたフレージングを繰り出しながら,ドライブ感溢れる演奏を展開するこのクインテットは,前述のクインテットと比べても遜色はないと思う。ここでの演奏はコンベンショナルなモダン・ジャズと言ってもよいものだが,ワンホーンならではのリーダーの魅力も発露しながら,バンドのメンバーの実力もよくわかる演奏と言ってよい。実に安定感のある演奏で,ピアノのVictor Gouldはかなりの実力者。Criss Crossからもリーダー作を出しているんだねえ。今度ストリーミングで聞いてみよう。

Jeremy Peltのオリジナル6曲,Victor Gouldのオリジナル1曲,そしてパリという土地柄を反映してか,「シェルブールの雨傘」からそのテーマ曲(英語タイトルは"I Will Wait for You")というプログラムも魅力的な佳作。ちょいと甘いと思いつつ星★★★★☆。

尚,クレジットによると,収録場所はSunset-Sunsideとなっているが,1階がSunside,地下がSunsetという2つのクラブで演奏したのかどうかは不明。出張中にSunsideで私がDave Liebmanのグループを見たのももう12年以上前...。時の流れを感じるわ。

Recorded Live at Sunset-Sunside Jazz Club on September 29 & 30,2017

Personnel: Jeremy Pelt(tp), Victor Gould(p), Vicente Archer(b), Jonathan Barber(ds), Jacquelene  Acevedo(perc)

本作へのリンクはこちら

2023年3月15日 (水)

Tennstedtのベートーヴェンを聞く。

Tenstedt_beethovenKlaus Tennstedtと言えば,私の中ではマーラーが中心ってことになるのだが,マーラーの全集のほかに,EMIのボックスも保有している。それに加えて,今日久しぶりに聴いたのが,この放送音源を集めたと思しきベートーヴェン交響曲+序曲のボックスである。まぁ,いかにも怪しげなイタリア製のボックスなのだが,ボックスの裏面には"Authorized by Klaus Tennstedt Enthusiasts Society"なんて書いてあるから,マニアにとっては納得の音源ってことになるのかもしれない。

意外なことに,Klaus Tennstedtは公式な録音としてはベートーヴェンの全集は吹き込んでいないらしい。それを補う音源として捉えればいいが,録音時期はまちまちで,一番古いのが1968年,一番新しいのが92年である。今回聞いたのは4番,5番,7番だったが,やはりTennstedtの演奏は燃えるねぇって思わせる。オケもそれぞれニューヨーク・フィル,キール・フィル,ボストン響とバラバラなのだが,オケの違いなんて関係ないよって感じの盛り上がりっぷりが楽しかった。やはりたまにはこういう音源も取り出して聴かないといけないねぇと思った私である。

こうして聴いていると,何だかんだと言って,私ってTennstedt好きなのねぇ(笑)。

2023年3月14日 (火)

追悼,大江健三郎。

Kenzaburo

大江健三郎が亡くなった。私が大江健三郎の本を読んでいたのはほぼ浪人中に集中している。決して読みやすいとは言えない大江健三郎の本を読んでいたのは,偏に大学受験の対策と言っても過言ではない。現在はどうかわからないが,私が卒業した大学は,受験の不合格者には点数を教えてくれるという制度がかつては存在しており,私が現役不合格となったのは,国語の点数が足りなかったからなのは明らかだった。

国語の点数を上げるためには何をすればいいのかということで,私はほかの科目の勉強はそこそこにして,浪人中は本を読みまくる生活をしていたと言ってよいのだが,その時に読んだのは「個人的な体験」,「万延元年のフットボール」,「洪水はわが魂に及び」,「ピンチランナー調書」,そして「同時代ゲーム」あたりだったと思う。ある意味,大江健三郎の著作を読み通すのは凡人の私にとっては苦行と言ってもよいものだったが,今となっては自分でも頑張ったなと思う。

大学に入ってだらけた生活を送るようになると,大江健三郎の本を手に取ることはほぼなくなってしまったが,振り返ってみると,大江健三郎の本を読むという行為は,自分の人生においてはそれなりの価値があったことだと思いたい。私は現代文学という観点では安倍公房の方が好きではあるが,だからと言って大江健三郎の業績は否定されるものではないし,するつもりもない。日本文学界の巨人がまた一人世を去った。

R.I.P.

2023年3月13日 (月)

WBCと言えばやっぱりJourneyよ(笑)。

Fronters "Frontiers" Journey(Columbia)

WBC真っ盛りの中,TBSでの中継を見ていると,ついつい気になるJourneyの"Separata Ways"である。私はこのネタで2009年,2012年にも同じようなことを書いているので馬鹿の一つ覚えみたいなものだが,やはりどうしても気になってしまうのだ。このアルバムが出たのが1983年だったから,私は当時大学生。新譜としてこのアルバムも買ったが,今はもう手許にはない。

だが,このアルバムに収められた曲は覚えているし,その冒頭を飾った"Separate Ways"はハード・ドライヴィングなノリが好きだった。WBCのテーマとして使うのも適切な選曲だと思える。毎度毎度使っているTBSとしても,今更変えられないってところかもしれないが,侍ジャパンを盛り上げるには丁度ええわって感じがする。

それでもって,私もアホだと思うが,中継を見るとその後ついついこのアルバムをストリーミングで再生してしまうのだ。先日も散歩で出かけた時のBGMはこれだったのだが,ついつい歩くスピードが上がって,いい運動になったのであった(笑)。そういう意味で,私のダイエットにも貢献したってことでまたも登場させてしまった。結局好きなんだろうなってことで。

Personnel: Steve Perry(vo), Neil Schon(g, vo), Jonathan Cain(key, g, vo), Ross Valory(b, vo), Steve Smith(ds, perc)

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2023年3月12日 (日)

無駄遣いだと思いつつ,買ってしまったArt Pepper来日時の記録。

Art-pepper-tokyo-1979 "The Complete Tokyo Concert 1979" Art Pepper(JVC)

無駄遣いだと思いつつ買ってしまうCDやアナログってあるのは,音楽が趣味である以上仕方ないと思っているが,これなんかたまたまネットで情報を見つけてついつい手が出てしまったものだ。

このブログにも何度か書いているが,70年代に復帰した後のArt Pepperと50年代のArt Pepperのどちらがいいかという議論はあっても,私はどちらもよいと思っているクチである。演奏のスタイルは変わったとしても,それがArt Pepperというミュージシャンの変化であって,そうした議論はあくまでも聞き手の好みの問題だから,そんな議論に私は与することをよしとはしていない。だってどっちもよいからだ。

それはさておき,1979年の来日時の演奏は"Landscape"と"Besame Mucho"という2枚のアルバムとしてリリーズ済みだったのだが,これはその2枚の音源となった東京でのライブを演奏順に4枚のに収めたもの。オリジナルで出たヴァージョンはとんでもない価格がついているサイトもあるが,私が入手したのは,昨年タワー・レコード限定でSACDハイブリッドで再リリースしたもの。これを逃せば入手は難しくなるだろうという思いもあって,ついつい発注してしまったというのが正直なところだ。

このオリジナルとなる2枚のアルバムについては聞いた記憶はないが,そこは手抜きのないArt Pepperを信じての購入である。もう一つのポイントはドラムスがBilly Higginsだってことだったが,Billy HigginsとはArtist House盤"So in Love"ぐらいしか共演がないと思えるので,これはやはり聞きたい。日頃Art PepperはCarl Burnettのようなイモ・ドラマーを使っていたので,その違いは大きいはずだからだ。

結果から言えば,やはりArt Pepper,手を抜かない。実にクォリティの高い演奏をしているではないか。どこから聞いても楽しめてしまうライブ盤である。Art Pepperにはこれより優れた演奏はある。ライブ音源で言えば,私にとってはElvin JonesとやったVanguardでの演奏が最高だという思いは変わらない。しかし,ここで聞かれる演奏でも十分レベルは高く,そこにいた聴衆は幸せだったはずだ。

私はArt Pepper最後の来日となった81年のライブを,本作と同じく芝の郵便貯金会館で聞いているが,その時の印象が甦るというところだ。本当に真摯に演奏に取り組むミュージシャンだったという思いを抱かざるをえない好盤。Tony Dumasのベースの増幅した音は好みではないが,甘いの承知で星★★★★☆としよう。尚,下に掲げたアルバムがオリジナルで出たもの。

Recorded Live at 郵便貯金会館 on July 16 & 23, 1979

Personnel: Art Pepper(as, cl), George Cables(p), Tony Dumas(b), Billy Higgins(ds)

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2023年3月11日 (土)

久々に聞いたRick Margitzaのアルバム。

_20230304-4"This Is New" Rick Margitza(Blue Note)

久しぶりにこのアルバムを聞いた。これは中古でゲットしたもののはずだが,入手した国内盤の帯にはあたかもRick MargitzaとJoey Calderazzoの双頭アルバムのように書かれているが,あくまでもRick Margitzaのリーダー作である。発売元の東芝としてはRick Margitzaだけでは厳しいと思ったのかもしれない。

全9曲中,2曲がMargitzaのオリジナルである以外は,スタンダード+Ornette Colemanの"When Will the Blues Leave?"という構成だが,冒頭のタイトル・トラックからこれはなかなかいいのではないかと思わせる出だしである。だが,私の感覚は2曲目で"On Green Dolphin Street"でよからぬ方向へ向かう。はっきり言って,奇を衒ったアレンジには「若気の至り」を感じざるをえないのだ。

このアルバムを吹き込んだ当時,Rick Margitzaは30歳ちょっと手前ってところだが,既にMiles Davisとも共演していたということもあってのBlue Noteとの契約だったこともあり,相当の期待が掛けられていたはずである。逆にそれが気負いになっていると感じてしまうような,ここでのアレンジと言うべきだ。普通にはやらないんだぜって感じだろうが,実力はあるんだから普通にやればよかったのにねぇと思ってしまう。続く"Body & Soul"をピアノレスでやるぐらいに留めればいいものを,"On Green Dolphin Street"は明らかにやり過ぎかつ成功しているとは言い難い。それは私がこの曲を好きだから余計にそう思ってしまうところはあるとしても,やはり気に入らないのだ。"Just in Time"とかも軽快でいい演奏だけに,もったいなさが増幅してしまう訳だ。

同じようなことは"Invitation"にも言える。どうしてこの曲のメロディ・ラインを崩す必要があるのか?アドリブ・パートは普通にやっているのだから,テーマだって普通にやればいいのにってところだ。全曲のアレンジはRick Margitzaとなっているから,この頭でっかちさが明らかなやり口は歓迎できない。

せっかくいいソロを聞かせる場面もありながら,リスナーに違和感をもたらすようなアレンジメントを施したことが減点材料となり,星★★★☆。Bob Hurstのベース音は素晴らしいし,Jeff Wattsの煽りもいいのにもったいないねぇ。こういうのはプロデューサーのMatt Piersonがビシッと指導すべきであった。尚,Joey Calderazzoは自身のリーダー・アルバムの方がずっといいのはまぁ仕方ないな(笑)。

Recorded on May 27 & 28,1991

Personnel: Rick Margitza(ts), Joey Calderazzo(p), Bob Hurst(b), Jeff Watts(ds), Tim Hagens(tp)

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2023年3月10日 (金)

今頃になって聞いたJakob Bro~Joe LovanoによるPaul Motianトリビュート。

_20230304-3 "Once around the Room: A Tribute to Paul Motian" Jakob Bro / Joe Lovano(ECM)

リリースされたのは昨年だが,入手に手間取り,今頃になって本作を聞いている。昨年,新譜として聞いていたら,ベスト盤の候補になっていたかもなぁと思わせるアルバムであった。

Joe Lovanoと言えば,Paul Motian Trioのメンバーとして,Bill Frisellと共に共演を重ねた縁があるし,ECMにもそのトリオでアルバムを残している。一方のJakob BroもPaul Motianと共演歴があるだけでなく,そのギターのサウンドは,まさに幽玄と言った感じの響きを持つものであり,Bill Frisellに近いものも感じる。そんな二人がPaul Motianへのトリビュート・アルバムを作ることには違和感はなかった。そして,ここにはPaul Motianとの共演歴のあるLarry Grenadierのほか,Paul Motianに加えてBill Frisellとアルバムを残しているThomas Morgan,そしてリーダー作,"Dear Someone"にPaul Motianを迎えたほか,George Gazoneのアルバムでも共演しているAnders Christensenがエレクトリック・ベースということで,縁もゆかりもあるミュージシャンが集結しているところにPaul Motianの人徳を感じる。更にPaul Motianに代わってドラムスを叩くのがJoey BaronとJorge Rossyとあっては,鉄壁の布陣と言わず何と言うって感じだ。

そして流れてくる音楽は,Paul Motianが生きていれば,こういう感じで演奏したかもなぁという感覚を与えるものであり,正調トリビュートって感じである。ただ,こういうサウンドに対してベースが3人,ドラマーが2人必要かというとその辺りは若干疑問もあるものの,演奏自体はレベルが高い。Jakob Broには珍しく,ギターを歪ませる瞬間もあり,へぇ~ってなってしまった私である。参加するミュージシャンたちのPaul Motianへのリスペクトを感じながら聞きたい,あっという間に40分弱が過ぎていくアルバム。星★★★★☆。

Recorded in November 2021

Personnel: Jakob Bro(g), Joe Lovano(ts), Larry Grenadier(b), Thomas Morgan(b), Anders Christensen(el-b), Joey Baron(ds), Jorge Rossy(ds)

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2023年3月 9日 (木)

David Crosbyを偲んで"CSN"ボックスを聞いている。

 

David-crosby-2

"CSN" Crosby Stills & Nash(Atlantic)

Csn_20230304104401 今年の1月に惜しくもこの世を去ったDavid Crosbyだが,その楽歴を振り返るのであれば,やはりCS&N,もしくはCSN&Yになるよなぁってところで,私がここのところ聞いていたのが,91年に編纂されたこのコンピレーション。これは私がNYCに在住している頃リリースされたものだが,この頃はこうしたコンピレーションを結構買った記憶がある。Led Zeppelin,Yes,King Crimson等,大体は70年代に活動のピークを迎えていた人たちのコンピレーションである。こうしたボックスっていうのはキャリアを総括するという意味で,その編纂に対する取り組みが結構重要だと思うが,このボックスはよく考えられたボックスだったと思う。

このボックスに収められた音源には,別ミックスだとか,完全未発表だとかの音源も収められているだけでなく,各メンバーのソロ作までカヴァーしているところがいいのだ。David Crosbyの場合は,本人のソロに加えてCrosby & Nashとしての音源も含まれている。CSNというタイトルが付いているだけに,Neil Youngのソロ作はここには入っていないが,そういうものだと思って聞けばいいし,CSN&Yとしての曲はそこそこ入っているから,看板には偽りはないのだ。

このボックスは4枚組だが,CS&N,CSN&Yとしての活動のピークはディスク1と2に収められた曲に集中していると考えてよいのは仕方のないところではある。だが,ディスク3に収められている"Just a Song before I Go"はシングルでもそこそこヒットしたはずで,なかなかの佳曲だったなぁなんて改めて思ってしまうし,彼らのハーモニーはまだまだ健在であった。彼らの生み出したハーモニーは今聞いても魅力的だし,振り返っても凄いグループだったなぁなんて今更のように思ってしまう。ディスク1に収められた"Blackbird"を聞くとそうした思いが強くなる。はまり過ぎである。

こうした音楽を生み出したDavid Crosbyのキャリアを振り返るのであれば,Byrdsでの活動にも触れるべきだろうが,まずはこのボックスだけでも彼の業績は素晴らしいものだったということがわかる。享年81歳ということで,文句は言えないところではあるが,惜しい人を亡くした。

R.I.P.

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2023年3月 8日 (水)

Nate Smith+Kinfolk@Blue Note東京参戦記

Nate-smith-at-blue-note-tokyo

クリポタ以来のBlue Note東京でのライブはNate Smithと彼のバンド,Kinfolkであった。私は何度かNate Smithのライブを観ているが,クリポタのUndergroundさえフルハウスにならなかったことを考えると,今回も集客が心配だったのだが,何のことはない。月曜日の1stセットからソールド・アウトの大盛況であった。

演奏はNate Smithらしいタイトなドラミングを堪能できただけでなく,アルト/ソプラノのJaleel Shawのブロウ,更にはヴォーカルのAmma Whattの歌唱も素晴らしく,演奏を堪能した私であった。亡きRoy HargroveのRh Factorと同様のノリで,Rh Factorを継げるのはこのバンドではないかと思ったぐらいである。

基本コンテンポラリーな演奏が続く中で,私が最も感銘を受けたのが,先日亡くなったWayne Shorterの"Yes or No"であった。トリビュートする気持ちが強く表れた演奏は,正調4ビートではあったが,このバンドのポテンシャルも感じさせるものだったと思う。ほかの曲でも"Footprints"のフレーズを交えたりと,改めてWayne Shorterのジャズ界における偉大さも痛感したのであった。

残念だったのは,私がギターのBrad Allen Williamsの前に座っていたこともあるかもしれないが,ギターの音が目立ち過ぎで,せっかくのJaleel Shawの音がよく聞こえないバランスの悪さであった。しかもこのバンドで一番いけていないのがこのBrad Allen Williamsというのにはう~むとなってしまった私である。それを除けば,このライブは十分に楽しめたし,Nate Smithのリーダーとしての才覚も十分感じられた好ライブであった。

Live at Blue Note東京 on March 6, 2023, 1st Set

Personnel: Nate Smith(ds), Jaleel Shaw(as, ss), Brad Allen Williams(g), Fima Ephron(b), 大林武司(p, el-p), Amma Whatt(vo)

2023年3月 7日 (火)

"Eye of the Beholder":Elektric Bandのアルバム数々あれど,これが一番好きだな。

_20230228-3 "Eye of the Beholder" Chick Corea Elektric Band(GRP)

主題の通りである。Chick CoreaのElektric Bandは都合7枚のスタジオ・アルバムを残しているが,私がそれらの中で一番いいと思っているのが本作である。このアルバムにはEric MarienthalとJohn Patitucciの個別のライブの際,彼らのソロ・アルバムとともに本作を持って行ってサインをもらっているのがその証だ。

曲としてのキャッチーさには若干欠けるかもしれないが,Elektric Bandの曲ってのは大概そういうものだと思っていれば,全然気にならない。むしろ,このアルバムのいいところはElektric Bandでありながら,Chick Coreaのアコースティック・ピアノがかなりフィーチャーされていることだと思っているのだ。Elektric Bandなんだから,テクノロジーを前面に押し出してもよいのだが,本作は敢えてアコースティック感を出しているように感じられるところが逆に魅力的に響く。

いずれにしても,このバンドはテクニシャン軍団がタイトにビシビシきめるところが一番の魅力だと思う。このアルバムもリリースからもはや35年というのには驚いてしまうが,全く古びた感じがしないのは大したものだと思う。

Chick Coreaは亡くなっても,彼の残した音楽は魅力的なものが多かった(もちろん駄盤もあるが...)なぁとつくづく思ってしまったのであった。星★★★★☆。

Personnel: Chick Corea(p, synth), Eric Marienthal(sax), Frank Gambale(g), John Patitucci(b), Dave Weckl(ds), John Novello(synth)

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2023年3月 6日 (月)

Wayne Shorterを偲ぶなら,やっぱりこっちにしようってことで,”Adam’s Apple"。

_20230304 "Adam’s Apple" Wayne Shorter(Blue Note)

昨日,Wayne Shorterを偲んで,"Heavy Weather"について書いた私だったが,Wayne Shorterを追悼するならやっぱりBlue Note盤だということで,改めて取り出したのがこのワン・ホーン・クァルテット盤である。この頃はまだソプラノを吹いていないが,Wayne Shorterのテナー・サックスを堪能するにはワン・ホーンが最適ということでのチョイスとなった。

冒頭のタイトル・トラックから痺れるような音である。ここでの演奏を聞いていると,Wayne Shorterという人を失った喪失感が強まるが,それでもこうした演奏はレガシーとして受け継がれていくのだからよしとせねばならない。

改めてクレジットを見ると"502 Blues"ってのはJimmy Rowles作だったのねぇと気づいて,思わずへぇ~となってしまった。Jimmy RowlesとWayne Shorterって簡単には結びつかないと思うが,Wayne Shorterのオリジナルって言っても通じそうな演奏だ。このアルバムには"Footprints"のようによく知られたWayne Shorterのオリジナルも入っていて,まさに聞きどころ満載であった。

Wayneshorterthecollector 私がこのアルバムをアナログ,CDの双方で保有しているのはなんでだろうと思ったのだが,その理由は次のようなものと思い出した。確かラズウェル細木の漫画に書いてあったことに影響されてのことだったようにも思う。このアルバムのCD版にはボートラとして"The Collector"が入っているのだが,この曲,もともとキング・レコードがBlue Noteレーベルの未発表音源シリーズの一枚である"The Collector"として発掘したものだ。

_20230304-2 ところが,後年になって,このアルバムに収められた別セッションのみの音源を集めたアルバムが,"Etcetra"としてリリースされたのだが,そこからは"The Collector"がはずれ,新たに"Toy Tune"が加わっている。"The Collector"のアナログを保有している私にとって,CDとしてこの時の演奏を揃えるためには,"Adam's Apple"のCDと"Etcetra"を入手する必要があったということだ。我ながらよくやるわとは思うが,こうした行動を取った頃には,私はアナログ再生環境が必ずしも整っていなかったので,CDに依存していたということだと思う。

今にしてみれば,この"Etcetra"というアルバムは"Adam's Apple"に比べると,メンツもベース以外は同じにもかかわらず,若干地味に聞こえるところがある。しかし,Wayne Shorterのオリジナルに加えて,Gil Evansの"Barracudas"とかもやっていて,これはこれでちゃんと聞いておいて損はない。今回のWayne Shorterの訃報を受けての聞き直しとなったが,温故知新の機会を与えてくれたと思っている。

やはりこういう演奏の方がWayne Shorterらしいなとついつい思ってしまうが,ここ暫くはWayne Shorterの音源を一日一枚プレイバックしていくって感じになりそうだ。尚,下記のデータは"Adam’s Apple"のもの。

Recorded on February 3 & 24,1966

Personnel: Wayne Shorter(ts), Herbie Hancock(p), Reginald Workman(b), Joe Chambers(ds)

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2023年3月 5日 (日)

Wayne Shorterを偲んで,"Heavy Weather"を聞く。

_20230303 "Heavy Weather" Weather Report(Columbia)

Wayne Shorterを追悼すべく,何を聞こうか迷う。いの一番に取り出したのは"Speak No Evil"だったのだから,それについて書けばいいのだが,暫く聞いていなかったこのアルバムを取り上げることにした。Weather Reportの活動は初期から後期に至って,その編成ごとに違った魅力があるとは思うが,ポピュラリティという観点では,ジャコパスがいた頃がピークだったのは間違いないと思う。そのジャコパスがアルバム単位で全面参加したのは本作からであった。

本作以降暫くのWeather ReportにおけるWayne Shorterのポジションは,今にして思えば微妙なところがあった。実質的なリーダーはJoe Zawinulであることは間違いないし,このアルバム以降,ジャコパスが目立ってきて,Wayne Shorterの役割は?という感がない訳でもない。しかし,サウンドとしてはWayne Shorterのサックスの音なしにWeather Reportは成り立たない訳で,バンドとしての均衡を保つ上で,Wayne Shorterが果たした役割は大きい。このアルバムではWayne Shorterはアシスタント・プロデューサーとしてクレジットされているという点からも,そうしたバランスを保つ重しのような役割を担っていたように感じてしまう。

正直言って私はWeather Reportのアルバムを聞く頻度よりは,Wayne Shorterのリーダー作,特にBlue Noteレーベル聞くかねぇの作品を聞く頻度の方が高いのはバンド・サウンドの中のWayne Shorterよりも,プレイヤー,コンポーザーとしてのWayne Shorterが聞きたいという欲求からにほかならない。そういう意味で私はいいWeather Reportの聞き手ではないのだが,それでも1983年のLive under the Skyにおける演奏には興奮させられたのも懐かしい。

それにしても,このアルバムを改めて聴いて感じたのは,Wayne Shorterのソプラノの音はまさにOne & Onlyだったなぁということだ。Joni Mitchellのアルバムにおいても,Wayne Shorterはソプラノ専門だったと言ってよいが,Joni Mitchellが求めたのは,この誰が聞いてもWayne Shorterだとわかるヴォイシングだったんだろうなぁと思ってしまった。

それでもWeather Reportというバンドは,Wayne Shorterにとって重要なバンドであったことは間違いない事実だし,改めて彼らの音源を聞いてみるかと思ってしまった私であった。さて,何から聞くかねぇ...。

Personnel: Wayne Shorter(ts, ss), Joe Zawinul(p, key, synth, g, perc, vo), Jaco Pastorius(b, mandocello, steel-ds, vo), Alex Acuña(ds, perc), Manolo Badrena(perc, vo)

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2023年3月 4日 (土)

追悼,Wayne Shorter。

Wayne-shorter-2

Wayne Shorterが亡くなった。演奏活動からは引退状態であったが,この訃報はショックが大きい。私にとっては,ジャズ界においてはBurt Bacharach並みの衝撃である。思えば,Jazz Messengers, Miles Davis, Weather Report,V.S.O.P.,そして自己のクァルテット等のリーダーとしての活躍等,常にジャズ界のトップに君臨してきたと言ってよい輝かしいキャリアであった。

私が初めてWayne Shorterの音楽に接したのは"Super Nova"だったので,ジャズを聞き始めの高校生の最初のハードルとしては高かったが,今やその"Super Nova"を愛してやまないというかたちで,ジャズ聴きとしての私の人生,あるいは成長の支えとなってきたミュージシャンの一人がWayne Shorterであったことは間違いない。1960年代以降のジャズ界を長年に渡ってリードしてきたと言ってよいWayne Shorter。そして,私にとってはJoni Mitchellとのコラボレーションも忘れがたいし,Steely Danの"Aja"で一瞬で場をかっさらったテナーも強烈だった。その影響力はジャズに留まらなかったが,2014年のオーチャード・ホールにおけるクァルテットでのライブを観られたのは幸いだったということにしたい。

こうしてジャズ界,音楽界からまた一人巨人が去った。寂しいことではあるが,これが残酷な時の流れである。

R.I.P.

2023年3月 3日 (金)

更にBurt Bacharachを偲んで,今度はMcCoy Tynerを。

_20230228-2 "What the World Needs Now: The Music of Burt Bacharach" McCoy Tyner Trio with Symphony (Impulse!)

Burt Bacharachが亡くなって,Bacharach関連の音源を聞く機会が増えたが,今回はMcCoy Tynerによる本作である。正直言って,McCoy TynerとBurt Bacharachってミスマッチって感じもするが,晩年のMcCoy Tynerは昔のようにパワーで押すって感じだけではなく,様々なフォーマットで,ソフトな演奏もすることが増えたように思える中での企画アルバム。まぁプロデュースはTommy LiPumaだしねぇ。

曲はBacharach~Davidのよく知られた曲ばかりなので,そうした安心感はあるし,McCoy Tynerのピアノはイージー・リスニング一歩手前みたいなところはあるが,まぁそれなりに弾いているってところだ。しかし,私としては一部で施される相当に仰々しいオーケストレーションには違和感を覚えたと言わざるをえない。

タイトルで"with Symphony"と謳っているので,相応の楽器編成で臨んでくることは想定できるとしても,Bacharachの曲調やここでのMcCoy Tynerの演奏に合うのは"with Strings"ではなかったかと思えるとともに,アレンジメント過剰だと思える部分があるのは否めない。だからと言ってBurt Bacharachの曲の魅力が下がる訳ではないし,McCoy Tynerの演奏に文句を言う筋合いではないのだが,ここでのJohn Claytonの一部でのアレンジは行き過ぎ感が強い。

そうした意味で,このアルバムは私にとってはオーバー・プロデュースってところで,作る側はゴージャスに作った気になっていても,聞いている私の方はそれほど好意的に受け入れられないアルバムになってしまった。何だかなぁって感じが後を引くアルバム。星★★★。

Recorded on March 5-6, 1996

Personnel: McCoy Tyner(p), Christian McBride(b), Lewis Nash(ds), John Clayton(arr, cond) with Orchestra

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2023年3月 2日 (木)

来た!クリポタの新作はアコースティック・クァルテットによるVanguard Live。

_20230301-2 "Got the Keys to the Kingdom" Chris Potter (Edition)

クリポタことChris Potterの待望の新作である。今回は主題の通り,完全アコースティック・クァルテットによる名門Village Vanguardにおけるライブである。Vanguardでのアルバムは"Lift","Follow the Red Line"に続く3枚目だと思うが,Vanguardでのライブ録音が許されること,しかも複数回という自体が,クリポタのジャズ・ミュージシャンとしてのクォリティを示していると思う。

いかなる編成においても,いけている音楽を届けるのがクリポタではあるが,自身のアルバムでこうした完全アコースティックというのはECMのアルバム以来,結構久しぶりのことだと思う。しかも今回はテナー一本で勝負である。今やDown Beat誌の読者投票で#1テナーに選ばれているクリポタである。クリポタの新譜というだけでなく,こうした編成におけるライブには自ずと期待が高まることは言うまでもない。

今回,クリポタを支えるのはオリジナルUndergroundのメンバーでもあったCraig Taborn,そして自身のリーダー作にクリポタを招くScott Colley,そして"The Dreamer Is the Dream"やJoe Martinとのアルバムでも共演したMarcus Gilmoreということで,メンツもクリポタを理解している面々だけにこれはもう間違いない。

クリポタの吹奏にはついついイケイケな感覚を求めがちな中で,このアルバムはちゃんとバランスを取っていて,クリポタのテナー・プレイヤーとしての実力が十分に感じられるアルバムとなっているし,スローだろうがミディアムだろうが,そこで繰り出されるフレージングの見事さにはケチのつけようがない。冒頭の"You Gotta Move"の渋い立ち上がりからまいってしまった私である。その一方で,私としては"Lift"のイケイケ感が懐かしくも感じられるが,これがミュージシャンとしての成熟というものではないかと思ってしまった私である。渋さと興奮がいい具合に混ざり合いながら,まるでVanguardの現場にいるような臨場感に満ちた音が聴けるのも嬉しい。

いずれにしても,現在のジャズ・シーンにおいてクリポタが最も優れたテナー・プレイヤーであることを実証したアルバム。星★★★★★。

Recorded Live at the Village Vanguard in February, 2022

Personnel: Chris Potter(ts), Craig Taborn(p), Scott Colley(b), Marcus Gilmore(ds)

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2023年3月 1日 (水)

強烈なIggy Popの新作。ほんまに後期高齢者?

_20230228 "Every Loser" Iggy Pop(Gold Tooth/Atlantic)

全然認識していなかったこのIggy Popのこの新作の存在を,FBでつながっている大学の先輩の投稿で知って,まずはストリーミングで聞いて,その強烈さに即購入となったもの。Iggy Popは今年の4月で76歳になる正真正銘の後期高齢者だが,このパワーはどこから生まれてくるのかと言いたくなる。

冒頭の"Frenzy"からパワー全開で迫って来るが,バックを支えるのがGuns N' RosesのDuff McKagan,レッチリのChad Smithでは当然か。プロデュースも兼ねたAndrew Wattという人についてはよく知らなかったが,Ozzy Osbourneともやっているのだから,さもありなんってところだ。更には2曲には昨年亡くなったFoo FightersのTaylor Hawkinsも加わっており,その筋のオールスターって感じなのが,Iggy Popのロック界におけるポジションを反映したものだろう。

それにしても,全編に渡って聞かれるストレートでソリッドでハードなロック・サウンドは,コロナ禍で沈滞した世の中への強烈なエネルギーの充填のようにさえ感じられてしまい,私としても聞いていてパワーを注入された気分になってしまった。こういう音楽は無条件に評価したくなってしまう。ある意味,ロックのあるべき姿を体現したものと言いたい。星★★★★★。

それにしても,ブックレットに写るIggy Popの写真のほとんどが上半身に何も身に着けていないのには笑ってしまった。何考えてんだか...(爆)。

Personnel: Iggy Pop(vo), Andrew Watt(g, b, p, key, vo), Josh Klinghofer(g, p, key, org, synth), Stone Gossard(g), Dave Navarro(g), Duff McKagan(b), Eric Avery(b), Chris Chaney(b), Chad Smith(ds, perc), Travis Barker(ds), Taylor Hawkins(ds)

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