久しぶりに笠井紀美子の”Butterfly”を聞いた。
以前からこのアルバムは単体でも保有していたと記憶しているが,現在ではHerbie HancockのCBSボックスの一枚として収まっている。私がこのアルバムを元々購入した理由はHerbie Hancockにあることは言うまでもない(きっぱり)が,当時のHerbie Hancockのワーキング・バンド(同じメンバーで来日した時に吹き込んだのが"Direct Step"である)をバックにした笠井紀美子の歌がどうなるかにも興味があった。
結論から言えば,悪くない。しかし,冒頭の"I Thought It Was You"のノリが強烈過ぎて,ほかの曲がかすむというぐらいインパクトが強い出だしであった。何と言っても,ここでのHerbie Hancockのヴォコーダーと笠井紀美子の掛け合いがこのアルバムのハイライトだったと言ってよい。
このアルバムはHerbie Hancockのオリジナルを中心に,どういう出自の曲かよくわからない"Head in the Clouds"に,Stevie Wonderの"As"が加わる。この"Head in the Clouds"の作者であるDiana GrasselliとMarsha Malanetで検索しても,このアルバムしかヒットしないという珍しい曲で,当時のアニメの主題歌みたいな曲調と言っては言い過ぎか。"As"の本家にはHerbie Hancockも参加していたが,それに比べると,これはう~むとなってしまう程度の出来なのは痛い。
Herbie Hancockのオリジナルに関しても,"Maiden Voyage"みたいな選曲はどうなのよ?って言いたくなるところがあって,私としては"I Thought It Was You"の路線で押せばよかったのにと思えてしまうのだ。しかし,一方で"The Piano"で初演された"Harvest Time"をHancockのピアノとしっとりデュエットでやるというのもなかなかいいと思ってしまうが,これは曲の勝利か。その後の"Sunlight"との落差には笑ってしまうが。
いずれにしても,バックの演奏との相乗効果もあって,そこそこ楽しめるのは事実なので,星★★★★。そしてやっぱりPaul Jacksonのベースは強烈。尚,アルバムのクレジットではレコーディングは79年10月となっているが,79年に来日したかどうかはっきりしないものの,これは78年の来日時だと思うがどうだろう。
Recorded in October, 1979
Personnel: 笠井紀美子(vo), Herbie Hancock(p, key, synth, vocoder), Bennie Maupin(ss, ts), Ray Obiedo(g), Webster Lewis(p, key, org), Paul Jackson(b), Alphonso Mouzon(ds), Bill Summers(perc)
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