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2023年2月12日 (日)

Brad Mehldauの新作が届く。ほぼBeatlesで固めているので,紀尾井ホールでのライブの感覚とは異なる。

_20230210 "Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays the Beatles" Brad Mehldau(Nonesuch)

先日の紀尾井ホールでのライブの素晴らしさも記憶に新しいBrad Mehldauの新作である。今回,ほぼBeatles集という告知が成されていたので,ライブにおいても,Beatlesのナンバーは演奏されていたが,その新作がデリバリーされたので,早速聴いた。

新作とは言え,私は以前,本作に関し,収録された演奏が既にブートレッグで聞けてしまっていたので,オフィシャル・ブートレッグか?と書いた(記事はこちら)。ついでに言えば,ブートに関しても記事化している(記事はこちら。私が聞いたブートは,9月19日と20日の2日間のうち,19日はオーディエンス録音,20日がサウンドボードだったが,本作は両日からのベスト・テイクが選ばれている模様なので,そこは存在意義は異なるし,そもそもBrad Mehldau公式音源のコンプリートを目指す私としては無条件購入なのだ。

まぁ,私としては既に聞いてしまっている音源なので,新味や驚きはない。ここは改めて演奏に集中して聞くということが必要になる訳だ。

今回はBeatlesの曲を中心とした編集になっているが,実はこの時の演奏では,ほかにもBeach BoysやZombies,更にはBilly Joelの曲を演奏している。それらの名前はこのアルバムのBrad Mehldau本人のライナーにも登場していて,"Jacob’s Ladder"で聞かれたプログレ愛に加えて,こうしたポップ・フィールドのミュージシャンにも影響を受けていることが明らかになっている。そのほかにもロック界で言えばNeil YoungやRadiohead,更にはNirvanaやSoundgarden等のグランジ系のミュージシャンの曲も取り上げてきたのは,既によく知られたことである。この間口の広さがあって,それを吸収,消化してBrad Mehldauの音楽に仕立てるところがこの人の凄いところなのだ。

私としては,紀尾井ホールでのライブのように,Beatlesの曲にこだわらない選曲こそが,Brad Mehldauのライブの本質だと思っており,受ける感慨も若干異なると改めて感じたが,ここでの演奏が決して悪いということではないことは,ブートで初めて聞いた時,私は「パリの聴衆に嫉妬する」と書いていることからも明らかだ。

だが,改めて聴いてみると,全ての曲がBrad Mehldau向きだったかと言うとそうでもないような気がする。私が最も違和感を覚えるのは"I Saw Her Standing There"なのだが,このストレートなロックン・ロール的なノリは,Brad Mehldauに合っているとはどうしても思えないのだ。また,曲調の影響も大きいが,"Maxwell's Silver Hammer"もBrad Mehldau向きではなかろう。最後をDavid Bowieの"Life on Mars?"の美しくも痺れるような演奏で締めるなら,ここはBeatlesにこだわるよりも,紀尾井ホール的なバランスでの選曲の方がよかったようにも思えるのだ。プロデュースとしては,Beatles集という方がコンセプトが明確なのはわかるが,逆にそれでBrad Mehldauのピアノの魅力の発露が限定的になったようにも感じられるところがある。

それほど,紀尾井ホールでのライブが素晴らしいと思えたことの裏返しなのだが,それでもやはりBrad Mehldauの左手の強力さが強く感じられるのは紀尾井ホールの時と同様。いくつかの曲でミスタッチもあるのだが,それも含めて収録してしまうところも潔い。星★★★★☆。この時の演奏の全貌を知るためにはブートを聞く必要はあるが,普通の人にはこれで十分だろうな。

Recorded at Philharmonie de Paris on September 19 & 20, 2020

Personnel: Brad Mehldau(p)

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コメント

こんにちは。

私はビートルズの洗礼をあまり受けてないので、曲のタイトルからしてもあまりなじみはなく、そういう意味ではけっこう新鮮に聴けました。中年音楽狂さんはブートでほぼ聴けていらしたようですが、オフィシャルには、初のレコーディング曲のようで、その点でも私には良かったのではないかと思ってます。

ブラッド・メルドーのソロ・ピアノでは、選曲もあって、自分の中ではいい位置に来るのではないかと思います。

当方のブログアドレスは以下の通りです。

https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2023/02/post-be258f.html

910さん,こんにちは。リンクありがとうございます。

>私はビートルズの洗礼をあまり受けてないので、曲のタイトルからしてもあまりなじみはなく、そういう意味ではけっこう新鮮に聴けました。中年音楽狂さんはブートでほぼ聴けていらしたようですが、オフィシャルには、初のレコーディング曲のようで、その点でも私には良かったのではないかと思ってます。

私の洋楽聞きの原体験にはBeatlesがありますので,今回のアルバムも大いに楽しみました。

>ブラッド・メルドーのソロ・ピアノでは、選曲もあって、自分の中ではいい位置に来るのではないかと思います。

このアルバム単独としては制作のポリシーとしてのBeatlesメインというのはよくわかります。であるがゆえに,なんで最後がDavid Bowie?って感じはあります(演奏は無茶苦茶いいですが)。この時のライブでは,Beatles以外でも魅力的な曲をやっていましたから,普通のライブのような選曲でもよかったかもしれません。しかし,それはもう”10 Years"でやっているからって言われればその通りなんですが。まぁ,私はブートで補うことにしようと思います。

閣下、こちらのリンクもありがとうございました。
なんだか、タイミングが悪くて、、随分遅くなってしましたが、
こちらも、メルドーの世界を堪能させていただきました。

ライブを聴いてしまうと、若干物足りなさを感じますが、、
それでも、私的には最高ランクです。

こちらも、リンクを置いていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2023/03/post-86145f.html

Suzuckさん,続けてこんにちは。こちらもリンクありがとうございます。

>なんだか、タイミングが悪くて、、随分遅くなってしましたが、
>こちらも、メルドーの世界を堪能させていただきました。

デリバリーのタイミングとかありますからねぇ。私もアップの時期を逃すってのはよくありますね。

>ライブを聴いてしまうと、若干物足りなさを感じますが、、
>それでも、私的には最高ランクです。

はい。紀尾井ホールでのライブの印象が強いですから,あれに比べると...って感じは否めません。私としてはPlays Beatlesより,Plays Rockの方がいいと思うんですけどね。まぁそれでも本作は本作で満足はしていますが。

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