Schiffに続いて,今度はKeith Jarrettの「ゴルトベルク変奏曲」だ(笑)。
"J.S. Bach: Goldberg Variations" Keith Jarrett(ECM New Series)
昨日取り上げたAndrás Schiffの旧盤(Decca)のこの曲の演奏を王道と呼んだ私だが,じゃあこれはどうだったのかと取り出したのがKeith Jarrettである。つくづく私もへそ曲がりだ(苦笑)。
Keith Jarrettのクラシックへの取り組みは中途半端なものだったとは思わないし,このブログでも随分前になるが,ヘンデルの鍵盤組曲を褒めている(記事はこちら)。だが,このアルバムが異色なのはKeith Jarrettがチェンバロを弾いていることだろう。当然,Keith Jarrettならモダン・ピアノでやりそうなところをチェンバロでやってしまうところが,またKeith Jarrettのこだわりってところかもしれない。
演奏は冒頭のアリアからゆったりとしたテンポで始まるが,Keith Jarrettならもう少し自由度の高い演奏をしそうだと想像するものの,演奏は実にストレートなものと思える。これがピアノだったらどうだったのかと想像してしまうのがKeith Jarrettのファンかもしれないが,私はこれはこれでありだと思う。実に穏やかな演奏とでも言うべきもので,実に落ち着いた感覚を与えてくれると思う。
もちろん,この演奏が最高の「ゴルトベルク変奏曲」だと言うつもりはない。しかし,本作がおそらくはジャズ・ファンからもクラシック・ファンからも無視される可能性が高いということは不幸だと思う。聞いてみれば悪くないし,いい感じでエコーが掛かったチェンバロの音は魅力的に響くはずだ。そして,このレコーディングが日本で行われたことを喜びたい。
なぜ,Keith Jarrettがチェンバロ演奏にこだわったのかを今一度振り返り,バッハにストレートに対峙したKeith Jarrettのバッハ感を体験するのも一興と思う。星★★★★。
Recorded at 八ヶ岳音楽堂 in January 1989
Personnel: Keith Jarrett(harpsichord)
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