豪華メンツによるAlex Sipiaginの新作をストリーミングで聞く。
"Mel’s Vision" Alex Sipiagin(Criss Cross)
Alex Sipiaginのアルバムは大体がよく出来ていて,非常に平均点が高いミュージシャンだと思っている。だからと言って全部買いをしている訳ではなく,昨年リリースした"Ascent to the Blues"はスルーしてしまっていた。このブログで最後に彼のアルバムを取り上げたのはその前の"Upstream"に遡る(記事はこちら)。そこでもCriss Crossレーベルのことを書いているが,創設者Gerry Teekensの死によって,一時期存続が危ぶまれたものの,その後も活動は継続され,本作のような新譜がリリースされることは実に喜ばしい。そして,このいかにもCriss Crossらしい豪華なメンツには期待が高まる訳だ。
そうは言っても,この時代,何でもかんでもフィジカルな媒体を購入するという訳でもないので,まずはストリーミングで聞いてから購入を検討というのが,本当に好きなミュージシャンを除いた私の昨今の行動パターンなので,本作もまずはストリーミングで聞いてみた。
Criss CrossのWebサイトによれば,もともとGerry TeekensにはAilex Sipiaginにスタンダードのアルバムを吹き込ませたいという考えがあったようだが,Teekensの死によって,その計画は頓挫していた。新生Criss Crossに吹き込まれた本作では,「スタンダード」という訳ではないが,Don Friedman, McCoy Tyner,Ornette Coleman, そしてCharlie Mingusのジャズマン・オリジナル(それもなかなか珍しい選曲である)を交えたアルバムになっている。そこにSipiaginのオリジナル2曲,クリポタのオリジナル1曲,そしてウクライナ民謡"Vesnianka"が加わるというプログラムである。
このアルバムを聞いていると,やはりSipiaginとクリポタというフロントは強烈だし,リズム・セクションもパワフルである。アルバムとしても相応に楽しめることは間違いない。だが,ストリーミングで聞いているせいもあるかもしれないが,このアルバムを買いたい!ってところまでには至っていないというのが正直なところだ。このメンツとしては珍しいとも言えそうなDon Friedmanの"Summer's End"をはじめ,スロー・チューンの方に意外なよさを感じてしまうのが,私の天邪鬼なところと言ってもいいかもしれないが,アルバム全体でSipiaginとクリポタの対位法的なアプローチが出過ぎじゃないのって気もしてしまう。各人のソロは素晴らしいと思うが,アレンジメントとしてはどうかなぁってところだ。また,Ornetteの"Bird Food"を2テイク入れる必要性についても疑問を感じる。
だがこれだけのメンツである。がっかりさせられることはないが,私にとっては当面はストリーミングで聞いていればいいやって感じである。星★★★★。
Recorded on April 22, 2022
Personnel: Alex Spragin(tp, fl-f), Chris Potter(ts), David Kikoski(p), Matt Brewer(b), Johnathan Blake(ds)
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