Art Pepperの”No Limit”を聴くのも実に久しぶり。
"No Limit" Art Pepper(Contemporary)
Art Pepperの音楽に関しては,50年代から60年代前半までと,70年代になってからの復帰後でどちらがいいかという議論は今でも存在していると思う。前にも書いたと思うが,私としては古い音源の方に愛着はあるものの,復帰後には復帰後なりの魅力があると思っている。
本作は"Living Legend"で本格的に復帰して,3作目のアルバムということになるが,アルトとテナーの両方を吹く"Mambo De La Pinta"に象徴されるような,John Coltraneに影響を受けたと思しき激しいブロウっぷりには今更ながらびっくりさせられる。アルバム全体を通して,Art Pepperに関しては問題ないのだが,このアルバムになかなか手が伸びない理由を考えると,ベースとドラムスにあると今回久しぶりに聴いて思ってしまった。
私が聞いていていかんなぁと思うのがTony Dumasの増幅感ありありのベースで,この音色が相当気持ち悪い。またドラムスのCarl Burnettは昔から私の中では評価が低い人なので,この二人がうるさく感じてしまうのがこのアルバムの難点だろう。このリズム隊を聞いていると,Vanguardでのライブのバック(George MrazとElvin Jones)がいかに優れているかっていうのは明らかなのだ。音も違えば,味わいそのものも違ってきてしまうという感じだ。ついでに言っておけば,ピアノのGeorge Cablesもフレージングはさておき,音がしょぼい。
よって,Art Pepperの演奏は評価できても,収められた音自体で積極的に聞く気がなくなるという不幸なアルバム。"Ballad of the Sad Young Man"とか"My Laurie"のバラッド表現はいいと思えるだけに惜しいねぇ。星★★★☆。因みに"Ballad of the Sad Young Man"は,Art PepperがラジオでRobert Flackのこの歌を聴いて,感動して吹き込みを決意したという意外なエピソードもライナーに書かれている。
尚,CD化に際してタイトル・トラック"No Limit"が追加収録されているが,なんでオリジナルには入れなかったんだろうねぇと思わせるような演奏。国内盤初出時はArt Pepperの写真が使われたジャケットだったのも懐かしい。私はこの写真はあまりいいとは思わないけどね(笑)。
Recorded on March 26, 1977
Personnel: Art Pepper(as, ts), George Cables(p), Tony Dumas(b), Carl Burnett(ds)
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