改めて生オケを聴きたくなり,今回は「アルプス交響曲」ほか。

昨年,Nelsons/ボストン響でショスタコの5番を聞いて以来,オーケストラの生演奏の魅力を再確認してしまった私である。その後,Slatkin/N響でコープランドを聞いて,今度は山田和樹が振る読響で,リヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」を聞くべく,久々にサントリー・ホールに行ってきた。私がサントリー・ホールに行ったのは,Brad Mehldauのトリオを聞きに行って以来だと思うが,このホールでオーケストラを聞くのは,はるか昔のSinopoli/フィルハーモニアのマーラーの「復活」以来ではないか?あれは私が地方勤務をしている頃だったので,1987年のはずである。何とまぁって感じだが,それだけオーケストラのライブとは縁遠い生活を送っていたってことだ。考えてみれば,なんてこった!ってところだ(爆)。まぁ,一時期はクラシックだけでなく,ライブそのものからも離れていたから,仕方ないと言えば仕方ないのだが...。
それでもって,ショスタコで目覚めたというのはやはり「大編成」オケの魅力である。「アルプス交響曲」はその編成の大きさもあって,これは聞きに行ってもいいなと思って,急遽参戦したのであった。実のところ,チケットを買ったのは3日前という実に気まぐれだったのだが,今回もオーケストラのサウンドを十分に楽しんだと言える。
今回の演奏会では第一部で矢代秋雄の交響曲を演奏したのだが,これが予想以上に面白かった。現代音楽的な響きと言うよりも,私には和風の旋律も交えた映画音楽のように感じられる瞬間もあった訳だが,吹奏陣,打楽器陣の活躍の場も多く,山田和樹が飛びながら(本当にジャンプしていたのだ:笑)指揮しているのには思わず笑ってしまった。しかし,この曲も編成は非常に大きなもので,オケのダイナミズムを感じさせるに十分であった。
そしてメインの「アルプス交響曲」であるが,正直言ってしまえば,私はオケのレパートリーとしては人気のあるリヒャルト・シュトラウスの交響詩を好んで聞いてきたとは言えないし,「アルプス交響曲」とて,その音楽の物語性は劇的だとは思いつつ,まぁそれはそれでいいじゃんぐらいの思い入れの無さである。まぁ,それでも今回の演奏では客席に別動隊のバンダも配して,大編成オケならではの演奏であった。ただ,この曲が夜に始まり,夜に終わるという構成ゆえ,聴衆の熱狂は誘いにくいところもあるような気がする。実に安直な言い方をすれば,フィナーレは「ぐうゎ~っ」(笑)と終わって欲しいというのが私の感覚である。それはこの曲の本質を理解しておらん!とお叱りを受けそうだが,ライブは熱量を上げたいと思ってしまうのだ。この曲自体は中盤にその「ぐうゎ~っ」が来てしまうから,そこで上がった熱量を維持できればそれはそれでいいのだが,それが難しいのも事実のように思える。
いずれにしても,やはり生演奏はいいよねぇと改めて感じさせてもらった一夜ではあったが,私は矢代の交響曲の方がリヒャルト・シュトラウスよりも楽しんでしまったかもしれないな。さて,次は何に行こうかな(笑)。
Live at サントリー・ホール on January 19. 2023
Personnel: 山田和樹(cond),読売日本交響楽団
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