Ondřej Štveráčekの新作登場:Space Projectのライブ盤。
"Space Project Live" Ondřej Štveráček(Stvery)
ジャズ界のおんどれ君ことチェコのテナー・サックス奏者,Ondřej Štveráčekについてはこのブログにも何度も登場し,その都度,結構贔屓にしてきた。John Coltraneの影響を受けたOndřej Štveráčekのテナーは,多くのリスナーの耳を惹きつけるだけの魅力を持つものと思っている。そんなOndřej Štveráčekの前作は"Space Project"というエレクトリック・サウンドを追求したものであり,それまでのイメージを覆す感じで私を驚かせたのであった。そのおんどれ君の最新作がリリースされたので,本人に連絡を取り,チェコから飛ばしたものが先日デリバリーされた。本作はそのSpace Projectによるライブ盤である。
当然,Space Project名義であるから,またエレクトリック路線でブイブイ言わせるものと思わせるのだが,これがちょっと違うのだ。冒頭の2曲こそエレクトリックで始まるが,3曲目の"Spanish"はアコースティックで,John Coltraneフォロワー路線が明確に打ち出され,私としてはおやっ?と思ってしまう。まぁ,Space Projectと言ったって,ドラマーは最近共演の多かったGene JacksonからDavid Hodekに代わっているが,基本的にメンツはいつものメンツなのだから,エレクトリックだろうが,アコースティックだろうがやれてしまうことはわかる。しかし,Space Projectを名乗る以上,路線は明確にした方がよくないか?それに続く"Control"もKlaudius KováčのMcCoy Tynerライクなピアノが聞こえてきるのはいいとして,1分19秒で唐突にフェードアウトしてしまう構成は一体どういうことなんだと思ってしまう。そして,それに続く"The Ferret"はエレクトリックに戻るのだ。この辺に私は戸惑ってしまったというのが正直なところだ。
更にそれに続く"Speed"はDavid Hodekのドラムス・ソロなのだが,これも1分50秒でフェードアウトし,次の"To Nowhere And Back"は13分越えの演奏となっていて,その次の"Sonic"はフェードインから2分弱でフェードアウトと,これらのフェードアウトされる曲はインタールード的なものと解釈すればいいのかと思ってしまう。しかし,それが成功しているかと言えば,そこは少々疑問に感じる。おんどれ君としては,レコーディングしたものは何らかのかたちで音源として残そうとしたのかもしれないし,9曲目の3分程度の"Vibe"がベース・ソロであることを考えると,短い尺の曲はメンバーのショーケース的なものとしたかったのもしれないが,聴き手に違和感をおぼえさせてしまっているのは何とももったいない。
そして,最後が"Maiden Voyage"をアコースティック路線で締める訳だが,私としてはやはりこのエレクトリックとアコースティックの混在,そしてアルバムとしてのプロダクションには中途半端さを感じてしまい,いつものおんどれ君のようにはこのアルバムに没入できなかったというのが正直なところである。
演奏自体は悪いとは思わないので,ここはプロデューサーとしてのおんどれ君に,もう少し修行して欲しいという感じか。いつも贔屓にしているがゆえに辛口になってしまったが,今回は「う~む...」となっても,次にはまた期待したいと思う。星★★★☆。
尚,本作は本人から直接送ってもらったので,ライナーには下の写真のようにサインを入れて送ってくれた。
Recorded Live at U Malého Glena, Prague on March 26, 2022
Personnel: Ondřej Štveráček(ts,effects),Klaudius Kováč(p, synth), Tomáš Baroš(el-b, b), David Hodek(ds)

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