今年最初の新作ジャズ・アルバムはFred Hersch & Esperanza Spalding。
"Alive at the Village Vanguard" Fred Hersch & Esperanza Spalding (Palmetto)
新年最初のジャズの新譜はこれからにしよう。彼らがVanguardでライブ録音をしたことは認識されているばかりでなく,実はこの時の模様は5曲だけながら,ダウンロード・オンリーで公開されている。それについては2020年6月に既にこのブログにも書いている(記事はこちら)が,その時はコロナ禍におけるミュージシャン救済を目的としたベネフィット音源であり,Rough Mixというかたちでの公開であったが,ようやく公式にそれがリリースされることになったものである。
Rough Mixは5曲のEP扱いだったのに対し,このアルバムでは8曲に拡大されたヴァージョンとなっている。ここではEsperanza Spaldingはヴォーカルに専念しているが,むしろベースを弾きながら歌うというオプションもあったと思ったというのが元々のRough Mixを聞いた時の感覚だったが,このオフィシャル・リリースで私の感覚に変化が生じるかには実は関心があった。
聞いてみたところ,感覚的には大きな違いはなかったが,Fred Herschのピアノにはリリカルなだけでなく,若干アウト気味なフレージングもあったのだなぁというのが新たな発見と言えば発見であった。しかしながら,やはりEsperanza Spaldingの声がジャズのスタンダードにフィットしているとはあまり思えないところで,折角ならベースをプレイしながらの演奏の方がよかったのではないかという思いはぬぐい切れなかったというのが実感。確かにライブらしい楽しさに溢れていて,聴衆には受けていることも事実だが,Fred Herschとヴォーカリストの演奏なら,よりリリシズムを感じさせるNorma Winstonとの"Songs and Lullabies"とか,Janis Siegelとの"Short Stories"の方に軍配を上げてしまうかなってところである。せっかくだったら,Fred Herschのオリジナル"Valentine"にNorma Winstoneが歌詞をつけた"A Wish"のような曲がもう少し欲しかった。
もちろん,この二人の演奏であるから,おかしなことにはならないとしても,"Girl Talk"のように12分超の演奏をされてもなぁってところは感じてしまったというのが正直なところである。星★★★★。そもそも4年以上寝かさなくてもよかったんじゃない?って思うのは私だけだろうか。EPからだって2年以上経過しているのも何か理由があったのかと問いたくなる。
Recorded Live at the Village Vanguard on October 19-21, 2018
Personnel: Fred Hersch(p), Esperanza Spalding(vo)
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