今年最後のライブを締めくくったBanksia Trioの見事な演奏@武蔵野市民文化会館

まだまだ沈静化とは言わないが,コロナ禍もだいぶ落ち着いてきて,ライブ通いも徐々に復活してきた私であるが,今年のライブの締めくくりとして行ったのが,武蔵野市民文化会館小ホールにおける須川崇志率いるBanksia Trioのライブである。相変わらず(自分も含めて)高齢者比率の高いこのヴェニューであるが,8分の入りってところか。私は市民ではないので,一般の入場料であるが,それでも2,800円でこのトリオを聞けるのはありがたい。
彼らのこれまでの2枚のアルバムは,北欧系にも通じる日本のピアノ・トリオとは思えない響きを持っていて,素晴らしい美的な緊張感を醸し出していた。彼らの2ndアルバムを聞いた時,ライブはどうなってしまうのか?なんて書いているが,ライブでもそうした感覚を変わりなく生み出すところが凄い。
こうした音楽をやっているだけに,さぞや深刻,あるいは自己陶酔的な顔でやっているのかと思っていたら,リーダー須川崇志はさておき,ピアノの林正樹のにこやかな表情にはある意味驚いてしまった。やっている音楽と表情の落差が大きいのだ(笑)。
出てくる音はまさに美的で,極めて細かいニュアンスを生み出してしまうだけでなく,3者のヴィヴィッドな反応ぶりが素晴らしい。1曲目に演奏していたのは"I Should Care"だと言っていたと思うが,原曲を「破壊」するのではなく,「解体」して「再構築」するという感じか。そういう意味では普通の,あるいはコンベンショナルなピアノ・トリオでは決してない訳だが,このレベルの高さは半端ではない。
このトリオ,3者が全て素晴らしい実力者であるが,私はドラムスの石若駿のプレイぶりにびっくりしてしまった。スティック,ブラシ,マレットのどの使いっぷりも実に的を得たものであり,こういうドラマーがバックにいれば,演奏も楽しかろうと思ってしまった。そして林正樹のピアノのフレージングは見事だし,リーダー須川崇志のベースも実にうまく,ずっと唸りっぱなしの私であった。
休憩をはさんで約2時間,彼らの演奏を堪能した私であった。須川崇志がMCで3rdアルバムをレコーディング済みと言っていたので,おそらくは来年のリリースを首を長くして待ちたいと思わせるに十分な演奏ぶりであった。Banksia Trio,恐るべし。
Live at 武蔵野市民文化会館小ホール on December 22, 2022
Personnel: 須川崇志(b, perc),林正樹(p),石若駿(ds, perc)
« ジャズ・ヴォーカルはあまり聞かない私だが,今日はJune Christy。 | トップページ | Glenn Gouldの”Goldberg Variations”のアナログ盤を買うのも無駄遣いと言えば無駄遣いだが...。 »
「ライブ」カテゴリの記事
- Dan Penn~Spooner Oldhamをビルボードライブ東京で観た。(2023.09.28)
- 還暦過ぎてブルックナーの生演奏初参戦。(2023.09.15)
- Mike Stern~Jeff Lorber@Cotton Club参戦記。(2023.09.12)
- 今度は山田和樹が振るバーミンガム市響をサントリー・ホールで聞いた。(2023.07.02)
- Charles Dutoit,86歳,その矍鑠たる指揮ぶりに驚き,感動した。(2023.06.27)
「ジャズ(2022年の記事)」カテゴリの記事
- 2022年の回顧:音楽編(その2:ジャズ)(2022.12.30)
- 今年最後のライブを締めくくったBanksia Trioの見事な演奏@武蔵野市民文化会館(2022.12.24)
- George Bensonの20世紀の活動を振り返る好アンソロジー。(2022.12.26)
- ジャズ・ヴォーカルはあまり聞かない私だが,今日はJune Christy。(2022.12.23)
- この静謐さがたまらない:Ketil BjørnstadとDavid Darlingのデュオ第2作(2022.12.22)
« ジャズ・ヴォーカルはあまり聞かない私だが,今日はJune Christy。 | トップページ | Glenn Gouldの”Goldberg Variations”のアナログ盤を買うのも無駄遣いと言えば無駄遣いだが...。 »
コメント