"Oasis" Roberta Flack(Atlantic)
Roberta FlackがALSで闘病中であることが明らかになったのは1か月ほど前のことだったと思う。難病であるALSの罹患,そして85歳という年齢を考えれば,もはや歌うことがかなわないという広報担当者の弁に間違いはなかろう。彼女の活動のピークは1970年代だと思うが,長きに渡って活躍をした名歌手であることに疑いはない。そんな思いもあって,久しぶりに取り出したのがこのアルバムである。
このアルバムが出たのが1988年のことであるが,私が痺れてしまったのが冒頭のタイトル・トラックであった。Marcus Millerがプロデュースしたこの曲はポップな感覚もあり,なかなかの佳曲だと思うが,私に強い印象を与えたのはDavid Sanbornのアルト・サックスのソロであった。私がこのアルバムをプレイバックするのは,そのSanbornのソロを聞くためのようになってしまっていたのは事実だ。改めてこのアルバムを聞いてみても,その感覚に変わりはない。
だが,今回このアルバムを聞いていて思ったのは,なるほど80年代後半っぽい音だったなぁということだ。時代というか,バッキングの音がかなり分厚い。それは重いという訳でなく,重層的に積み上げられた感じがして,決してシンプルなものではない。Roberta Flackのような歌手にこうしたサウンドがフィットしていたのかと考えれば,やっぱりちょっと違うのではないかなぁと思えてしまった。
それでもそのサウンドをつかさどっているのは相当に豪華な面々で,2曲目の"All Caught up in Love"のエグゼクティブ・プロデューサーはQuincy Jonesである。まぁ,この当時って複数のプロデューサーによってアルバムが制作されるってのはよくあったと思うが,このアルバムもMarcus Millerはじめ,Jerry Hey,Michael Omartian,そして懐かしやAndy Goldmarkがプロデューサーとしてクレジットされている。プロデューサーがそんな感じであるから参加ミュージシャンも多岐に渡るが,やっぱり私にとっては冒頭のDavid Sanbornになってしまうかなぁって感じである。
やはり彼女の歌を聞くなら,もう少しシンプルなバッキングの方がいいかなと思ってしまった次第。星★★★☆。闘病生活に思いを馳せつつ,結構渋い評価になってしまった...。
Personnel: Roberta Flack(vo, p), Michael Omartian(key, ds), Randy Kerber(key, synth), Jason Miles(key, prog), John Barnes(key, prog), Greg Phillinganes(key, prog), Pete Robinson(key, prog), Andy Goldmark(key, prog), Jeff Lorber(key, prog), Mike Boddiker(synth), Barry Miles(el-p, synth), Dan Huff(g), Mike Landau(g), Paul Jackson, Jr.(g), Earl Klugh(g), Chieli Minucci(g), Marcus Miller(b, key, vo), Neil Stubenhaus(b), Nathan East(perc), Buddy Williams(ds), Harvey Mason(ds), Steve Ferrone(ds), Jimmy Bralower(ds), Steve Gadd(ds), Steve Thornton(perc), Paulinho da Costa(perc), Michael Fisher(perc), Don Alias(perc), David Sanborn(as), Larry Williams(sax, key, synth), Dan Higgins(sax), Roger Viam(ts), Jerry Hey(tp), Jeff Bova(prog), Lani Groves(vo), Chude Mondlane(vo), Brenda White-King(vo), Dennis Collins(vo), Mark Stephens(vo), Phil Perry(vo), Simon Climie(vo), Tawatha Agee(vo), Yvonne Lewis(vo), Lori-Ann Velez(vo), Gabrielle Goodman(vo), George Duke(vo), Bob Henley(vo)
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