Benjamin LacknerのECMデビュー作:作曲能力の高さはわかるんだけどねぇ...。
"Last Decade" Benjamin Lackner(ECM)
Benjamin LacknerというピアニストはBrad Mehldauに師事したらしいとの情報もあり,気になって入手したアルバムである。昨今,私はECMのアルバムの購入も本当に気になるものに限定しているが,本作はメンツもいいし,リリース情報を仕入れた段階で買おうと思っていたもの。
聞いてみると,全編を通じてメロディアスな曲が多く,作曲能力の高さは理解できるし,ECMらしい静謐で美的なアルバムだと言ってもよい。しかし,私は聞き進めていくと,もう少しメリハリをつけてもよかったのではないかと思えてしまった。Mathias Eickのラッパを含めて,抒情的なトーンは魅力的にも響くのだが,全編を通じて一本調子な感覚がぬぐえない。かつ,誰のリーダー作なのかわからないぐらいMathias Eickの露出度が高い。リーダー,Benjamin Lacknerはピアノよりもコンポーザーとしての位置づけが強いようにさえ思えてしまう。
決して演奏が悪いという訳ではない。各人の音色は魅力的で,Mathias EickやManu Katchéの実力は誰しもが認めるところである。そうした中で私がいいと思ったがの,ベースのJérôme Regardの音色であった。Benjamin Lacknerとの共演歴も長く,リーダーの音楽性を理解し,支えるという役割を十分に果たしているし,一曲提供した"Émile"がこれまた魅力的である。
しかし,アルバム全体を聴いていると,昨日取り上げたWolfert Brederodeの"Ruins and Remains"のような感銘が得られないというのが正直なところで,私としては星★★★☆程度の評価となってしまう。"Ruins and Remains"があまりに素晴らし過ぎて,その後に聞いたことが本作の印象を薄くしてしまったとも言えるが,私としてはもう少し痺れる展開があってもよかったと思う。
Recorded in September, 2021
Personnel: Benjamin Lackner(p), Mathias Eick(tp), Jérôme Regard(b), Manu Katché(ds)
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