Viktoria Mullovaのヴァイオリン・リサイタル:面白いプログラムであった。

私には実に珍しいことだが,今月に入って3度目のクラシックのコンサートである。クラシックに関しては,こんな頻度でコンサート・ホールに通うのは多分NYCに住んでいた頃以来のことである。あの頃は結構Carnegie Hallとか複数の定期会員になっていたから,そこそこの頻度では行っていたと思うが,それでもジャズやロックを聴くのも忙しかったので,クラシックだけで月3回は行ってないかもなぁ。まさに気まぐれと言われてしまえばその通りだが,今回の主役であるViktoria Mullovaは亡き父のお気に入りだったようで,遺品として彼女のCDが結構残っていたのだ。そんなこともあって,父は彼女の生は聞いていないと思うので,父に代わってというつもりで聞きにいった。
場所は三鷹の武蔵野市民文化会館小ホール。キャパ429人というナイスなホールだ。私が前にここを訪れたのはDanny Grissettのライブまで遡る。ブログでチェックしたらもう10年近く前のことである(記事はこちら)。それはさておき,Viktoria Mullovaというヴァイオリニストはもう少しメジャーな存在だと思っていたが,このホールでもフルハウスにならないというのはちょっと不思議なことであった。いつものことながら,武蔵野市民文化会館でのコンサートは聴衆の平均年齢が無茶苦茶高いのだが,武蔵野市民にはViktoria Mullovaの知名度はそれほどでもなかったのか?って気がしてしまう。
だが,今回のリサイタルは面白いプログラムであった。第一部はピリオド楽器(ガット弦)によるベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ4/7番,第二部がモダン楽器に持ち替えて,武満徹の「妖精の距離」~Arvo Pärtの"Fratres"の連続演奏+シューベルトのロンド ロ短調D895というもの。しかも前半は伴奏はフォルテピアノ,後半はモダン・ピアノという徹底ぶりであった。この構成でのヴァイオリンの音色の違いを味わうのも一興であったが,現代音楽にはまっている昨今の私にとっては,武満~Pärtが面白かった。武満の「妖精の距離」はアブストラクトでありながら,そこはかとないロマンティシズムを感じられる一方,Pärtの"Fratres"はダイナミズムもありながら,個性的な響きを生み出していて,聴きながら,おぉっ,いいねぇなんて思っていたのであった。その後にシューベルトを持ってきて,多分アンコールはベートーヴェンのソナタ5番からだったと思うが,ピリオド楽器とモダン楽器の聞き比べみたいなかたちで演奏が聞けるってのは初めての体験であったし,大いに楽しんだ私であった。
全く余談ながら,Viktoria Mullovaのポートレートを見て,彼女も随分老けたなぁと思ったら,私より年長者だったのねぇ。しかし,ヴァイオリンの腕には全く問題はなかったし,ピアノのAlasdair Beatsonは堅実かつ適切な伴奏ぶりであった。さて,クラシックは次は何を狙うかねぇ...(笑)。
Live at 武蔵野市民文化会館小ホール on November 21, 2022
Personnel: Viktoria Mullova(vln), Alasdair Beatson(fortepiano, p)

« 眠れぬ夜の始まり:祝FIFAワールドカップ開幕。 | トップページ | Bob Seger:アメリカン・ロックの典型 »
「クラシック」カテゴリの記事
- 人生初の声楽リサイタルを聞きに,お馴染みイタリア文化会館に出向く。(2025.02.02)
- またもブート(まがい)の話:今度はBernsteinのマーラー5番。(2025.01.22)
- Martha Argerichが弾くリスト。強烈としか言いようがない。(2025.01.20)
- 今年最後の音楽記事は,残念ながら来日できなかったHilary Hahnの無伴奏ヴァイオリン。(2024.12.30)
- 2024年の回顧:ライブ編(2024.12.17)
「ライブ」カテゴリの記事
- Mike Stern@Cotton Club参戦記(2025.03.13)
- SF Jazz Collective@Blue Note東京参戦記。(2025.03.08)
- Nate Smith@Billboard Live東京参戦記(2025.03.01)
- Jazz Pulse@Cotton Club参戦記(2025.02.27)
- 人生初の声楽リサイタルを聞きに,お馴染みイタリア文化会館に出向く。(2025.02.02)
« 眠れぬ夜の始まり:祝FIFAワールドカップ開幕。 | トップページ | Bob Seger:アメリカン・ロックの典型 »
コメント