Paolino Dalla Portaの”Tales”:Kenny WheelerとStefano Battaglia参加のクァルテット作。
"Tales" Paolino Dalla Porta(Soul Note)
リーダーには悪いが,このアルバムを購入したのはKenny WheelerとStefano Battagliaの名前に惹かれてのことだったことは告白しておこう。Kenny WheelerとStefano Battagliaの名前を見れば,ECM的な音楽を期待してしまうというのが筋である。もう一点,このアルバム・カヴァーを飾るUgo Mulasの印象的な写真に反応したというのもあったと思う。
しかし,よくよく考えてみれば,今やPaolino Dalla PortaはGlen Mooreに代わってOregonに加入しているし,そもそもはPaolo FresuのDevel Quartetのメンバーではないか。更にはBebo Ferraとのナイスなデュオ・アルバムだってこのブログで取り上げているのに,このアルバムの購入時には完全に意識していなかったはずだ。記憶力の減退は私の年齢ゆえに仕方ないが,リーダーには改めて詫びを入れたくなる(苦笑)。
そして,久々にこのアルバムを取り出して聴いてみたが,冒頭からベースの生々しい音に驚かされる。ベースってのはこういう音で録るんだぜって感じの音となっていて,実に魅力的。そうした思いは全編を通じて継続するが,特に6曲目の"Mbira"のベースの音にも感じてしまう。Kenny Wheelerのラッパも,彼らしい魅力に溢れたサウンドだと言ってよいだろう。
演奏される曲は2曲のStefano Battagliaのオリジナルを除いて,リーダーのオリジナルが6曲という構成で,リーダーとしても力が入っている。そして想定通りと言うべきだろうが,抒情的なるものと,ややアバンギャルドに傾斜した音楽が混在していて,コンベンショナルなジャズと言うよりも,やはり欧州的な響きが顕著である。まぁ,アバンギャルドに展開する2曲目の曲名が"Kandinsky"というのはいかにもだが...(笑)。
ゴリゴリのジャズを好む向きにはちっとも面白くないと言われても仕方がないが,一旦欧州ジャズに触れ,魅力を感じたことがあるリスナーには相応に訴求力を持つアルバムだと思う。例えば5曲目"Il Piccolo Principe"(「星の王子さま」というタイトルだが,それっぽくはない)のように,演奏がやや冗長に感じられる部分もあるし,最後の"Vocal"なんてもう少しコンパクトにやってもいいのではないかと感じることも事実だが,6曲目"Mbira"のスリリングな展開から,7曲目"Tenzin"冒頭の抒情的な響きへの流れ等は非常に魅力的に響き,全体としては星★★★★。とにかくこのアルバム,私のしょぼいオーディオ・セットでも感じる音のよさが魅力も捨てがたい。
Recorded on May 28 and 29, 1993
Personnel: Paolino Dalla Porta(b), Kenny Wheeler(tp, fl-h), Stefano Battaglia(p), Bill Elgart(ds)
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