富樫雅彦の”Speed And Space”:至極真っ当なフリー・ジャズ #富樫雅彦
"Speed And Space" 富樫雅彦(テイチク→Cinedelic)
富樫雅彦のアルバムははっきり言って難しい(きっぱり)。それでも,富樫が脊髄損傷前にどういう音楽を改めて聴きたいと思っていたのも事実で,そこへこのアルバムがアナログ・リイシューされることを知って,値段がなぁ...と思いつつついつい発注してしまった私である。聞く前からわかっていたことではあるが,正調フリー・ジャズである。
今,この時代にこのアルバムを聞くリスナーがどれぐらいいるかはわからないし,どれほど啓発され,興奮するかも,このアルバムがオリジナルでリリースされた頃とは全く違うと思える。それこそこのアルバムが録音された69年頃は,全共闘の時代であり,フリー・ジャズも学生運動と並行するようなかたちで聞かれていた部分もあるのではないかと思える。極論すれば現状打破に向けた破壊衝動なんて言ってもいいかもしれない。
私は音楽に関して,思想とか哲学とかを結びつけて,小難しいことを言うタイプの人間ではない。Duke Ellingtonは「いい音楽か,悪い音楽しかない」と言ったように記憶するが,私の場合は「好きな音楽か,そうでないか」ってことになる。だが,若い頃は正直言って,こういう音楽には全く耐性がなかったから,高校生の頃であれば,拒否感しか示していなかっただろう。今にして思えば,後期Coltraneの音楽やAlbert Aylerの音楽が発生したタイミングというのは,単なる音楽的な部分だけではなく,時代を反映はしていたと思ってしまうが,それを抵抗感なしに聞けるようになるには,私としても相当な時間が掛かったということはまぎれもない事実なのだ。ここで聞かれる音楽も,私は今回初めて聞いたが,現在のようにフリー・ジャズに対する耐性を身につけてしまえば,おぉ,正調フリー・ジャズだと(笑って)言えるのも確かだが,これが昔の私であれば,何じゃこれは?で終わっていたであろう音楽である。
しかし,今回,このアルバムをアナログでプレイバックしてみて,この音楽は「浴びなければならない」と思わせた。ある程度音量を上げて,富樫雅彦の叩き出すパルスを浴び,彼を支えるミュージシャンのフレージングを体感することが快感を生む。緊張と弛緩が混在するアルバムの流れも実に素晴らしい。素晴らしいレガシーとして,今でも傾聴に値する傑作。星★★★★★。
それにしても,リスナーとしての自分を振り返ってみても,人間変われば変わるものだと思わざるをえないな(笑)。
Recorded on November 22, 1969
Personnel: 富樫雅彦(ds, perc), 佐藤允彦(p, perc), 高木元輝(ts, b-cl, corn-pipe), 池田芳夫(b)
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