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2022年10月31日 (月)

久しぶりにStingの”Nothing Like the Sun”を聴いた。 #Sting

_20221030"...Nothing Like The Sun" Sting(A&M)

このアルバムを聴くのも実に久しぶりのことだ。リリースされたのは1987年だから,もう35年も経過してしまったことに,時の流れを感じざるをえない。当時,私はまだ20代半ばだったが,今や還暦過ぎだもんなぁ。歳をとるわけである。

それはさておきである。"The Dream of the Blue Trutles"でソロ・デビューを果たし,名ライブ”Bring on the Night"を経て,このアルバムをリリースした頃のStingは,そのキャリアにおいてもピークにあったと言ってもよいと思える。このアルバムも佳曲が揃っており,聞きどころ満載である。ゲストも豪華だし。

このアルバムがリリースされた際に,私が注目したのがジミヘンの"Little Wing"におけるGil Evansとの共演であった。私は当時,Gil Evansの音楽にかなり入れ込んでいた時期であり,彼らがどういう共演ぶりを示すかが興味深かったからである。後に彼らの共演はブートレッグ(そちらに関する記事はこちら)でリリースされたりして,その全貌はそちらで聞けばいいし,ペルージアでのライブの模様は映像も残っている。ここでの演奏はGil Evans Orchestraとの共演を謳っているが,そこにはBranford Marsalisのソロを除いてホーンは存在せず,リズム・セクションのみとの共演にしか聞こえず,その辺りはどうなのよ?と思っていた。因みに"English Man in New York"のシングルには,同じくジミヘンの"Up from the Sky"がGil Evansとの共演として収録されているのだが,そっちはホーンも聞こえるので,"Little Wing"のサウンドは意図的にホーンを消したか,あるいはミキシング・レベルを下げたということだったのかもしれないが,これには若干肩透かしを食った思いをしたのも懐かしい。しかし,リズム・セクションのみと言っても,そこは当時のGil Evans Orchestra的なサウンドではあるのだが...。

このアルバムは全体的にはいいアルバムであることは間違いないのだが,シングル・カットされた"We’ll Be Together"がアルバム全体のトーンを崩しているように思えるのはちょっと残念だ。明らかにこの曲だけ,ほかの曲とのバランスがよくないと思うのは私だけだろうか。そこは何とも惜しいと思えるが,それでも星★★★★☆ぐらいには評価してもいいだろう。

冒頭に記した通り,リリースから35年を経ているが,私には古さを感じさせないのは,同時代を過ごしてきたがゆえのことか。若い人にはこういう感覚は通じないのかもしれないな。だとすれば,ジェネレーション・ギャップだな(爆)。

Personnel: Sting(vo, b, g), Manu Katché(ds), Kenny Kirkland(key), Mino Cinelu(perc, vocoder), Branford Marsalis(sax), Andy Newmark(ds), Gil Evans(p), Hiram Bullock(g), Mark Egan(b), Kenwood Dennard(ds), Andy Summers(g), Fareed Haque(g), Mark Knopfler(g), Eric Clapton(g), Rubén Blades(vo), Ken Helman(p), Dollette McDonald(vo), Janice Pendervis(vo), Vesta Williams(vo), René Gayer(vo), Gil Evans Orchestra

2022年10月30日 (日)

私にとっては過不足なしって感じのDeep Purpleのベスト盤。 #DeepPurple

_20221029”Deepest Purple: The Very Best of Deep Purple” Deep Purple(Warner Brothers)

私が洋楽を聞き始める原点の一つとなったのがDeep Purpleの「ライブ・イン・ジャパン("Made in Japan")」であることは,このブログを始めた年に書いている(その時の記事はこちら)。ロックというものに対する私の意識を決定的なものにしたのはDeep Purpleによるところが大きい。それがもはや今から50年近く前のことだ。

かと言って,私はDeep Purpleのアルバムを買い揃えるようなファンではなく,上述のライブ盤以外で保有しているのは数えるほどしかないが,このベスト盤は大昔に買って,いまだに一軍の棚に収まっているもの。現在は曲数を増やした拡大盤(30周年記念盤)も出ているが,私が保有しているのは12曲入りの原典版。一旦,バンドが解散していた1980年にリリースされたこのベスト盤は,70年代のハードロック・バンドとしてのDeep Purpleの代表的な曲を収録していて,私のようなリスナーにとっては丁度いいって感じのものとなっている。基本は黄金期となるMark IIの曲だが,Mark IIIから"Burn"をはずさないところは,この曲に痺れた私としては嬉しかった。

Mark II期は,それこそDeep Purpleの有名曲ばかりで,"The Very Best"はその通り!と言いたくなるようなものだ。もちろん,Deep Purpleのファンにとっては,あれはどうした?という文句も出るかもしれないが,私がまだステレオ装置を持つ前に,ラジオで聞いて馴染みのある曲は網羅されているから,私にとっては満足度は高い。

私がこのCDを購入してから,既に30年以上は経過しているはずだが,これらの曲は70年代という時代を飾った曲だったなぁなんて思ってしまう。こういう懐古的な気持ちになるのが,私の高齢者化の証って気もするが,同時代を過ごした人間にとってはどうやっても懐かしいのだ。これらの曲のほとんどは「ライブ・イン・ジャパン」後に後追いで聞いたものだが,"Burn"に関しては完全リアルタイムで聴いていたからこそ,私にとって思い入れが強い。今聞いても,この曲のイントロは最高だよなぁ。

ということで,私の音楽人生に影響を与えたという意味も含めて星★★★★★。因みに,再結成後のDeep Purpleは聞いたことがない私である(笑)。その頃には関心が別の音楽に向いていたしねぇ。

Personnel: Ian Gillan(vo), David Coverdale(vo), Ritchie Blackmore(g), Jon Lord(org), Roger Glover(b), Glen Hughes(b, vo), Ian Paice(ds)

2022年10月29日 (土)

多様な歌手を迎えながら,見事に一貫性を保ったLeonard Cohenトリビュート。

_20221028"Here It Is: A Tribute to Leonard Cohen" Various Artists(Blue Note)

これは実に素晴らしいLeonard Cohenトリビュート盤である。このブログにおいてはこうしたLeonard Cohenトリビュート盤として"Tower of Song"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,あれはあれで悪くないとしても,ミュージシャン側が自由に対応できることから,明らかな失敗と思えるような歌唱も含まれてしまった。それに比して,このアルバムは,多様な歌手が招かれているにもかかわらず,プロダクションの一貫性が保たれていて,実に趣のあるアルバムとなった。これも偏にLarry Kleinのプロデュースの手腕ゆえである。

このアルバムの一貫性は,バックを支えるメンツがほぼ固定されていて,ヴォーカリストはそこにオーヴァー・ダビングする方式が取られているが,既にバックの演奏でフレイヴァーが明確になっているから,ヴォーカリストには余計な迷いがない。だからこそ,ある意味素直な感情でLeonard Cohenへのトリビュートができるって感じなのだ。2曲はインストによるものだが,そこもバックを支えるメンツの中で,Blue Noteレーベルに所属するImmanuel WilkinsとBill Frisellが各々リードするという形式であるから,コンセプトがぶれないのだ。

どの歌唱,演奏も魅力的に響く中で,私がびっくりしたのはJames Taylorによる”Coming Back to You”である。極めて抑制された歌いっぷりで,ある意味,「いつもの,あの」James Taylorの声らしくないとも言える。James Taylorにさえそうさせてしまうところが,Leonard Cohenの曲の力なのかもしれないし,James Taylor自身のLeonard Cohenに対する想いの反映なのかもしれない。

全体的に落ち着いたトーンで,それぞれのヴォーカリストがしっかりと歌い切ったところが感じられて,高く評価したくなる素晴らしいトリビュート・アルバム。Larry KleinはBilly ChildsとLaura Nyroトリビュート盤を制作し,その後,"The Passion of Charlie Parker"というCharlie Parkerトリビュート盤も制作していて,そのどちらも私はその年のベスト・アルバムの一枚に選んでいるが,本作もそれらと同様に優れた出色のアルバムとなった。味わい深くも実に素晴らしい。星★★★★★。

Personnel: Norah Jones(vo), Peter Gabriel(vo), Gregory Porter(vo), Sarah McLachlan(vo), Luciana Souza(vo), James Taylor(vo), Iggy Pop(vo), Mavis Staples(vo), David Gray(vo), Peter Gabriel(vo), Bill Frisell(g), Immanuel Wilkins(as), Kevin Hays(p, esley), Scott Colley(b), Nate Smith(ds), Gregory Leisz(pedal steel), Larry Goldings(org)

2022年10月28日 (金)

またもストリーミングで聞く「幻想交響曲」:今度はColin Davis+コンセルトヘボウ。

Colin-davis-berlioz ”Berlioz: Symphonie Fantastieque” Sir Colin Davis / Concertgebow Orchestra Amsterdam(Philips)

ストリーミングで「幻想」を聞くシリーズ2回目。今回はColin Davisがアムステルダム・コンセルトヘボウを振ったこの74年盤。多分,この盤は以前聞いたことはあるはずだが,買ったか,買っていないかは自信がない。父が保有していたものを聞いたのかもしれないし,あるいは別の機会だったか。

Colin Davisはベルリオーズの曲を相当数レコーディングしていて,"Complete Orchestra Works"なんてボックスも出ているぐらい,ベルリオーズに熱心だった人である。そういうことを意識して聴くと,ここでも実に真面目に演奏しているのがわかる。2楽章にはコルネットが入っているし,ちゃんとリピートすべきところはリピートするというかたちを取って,ベルリオーズの意図に忠実な演奏だと思える。

そもそも私は2楽章にコルネットが入る演奏を偏愛する傾向が強いのは,以前このブログにも書いた通りだが,ちゃんとコルネットを入れたこの演奏を改めて聴いて,ベルリオーズのスペシャリストたらんとするColin Davisが,真っ向勝負に出たって感じがした。

私の中では,これまでColin Davisとコンセルトヘボウのコンビと言えば,ストラヴィンスキーになってしまっていたが,今回この演奏を聞いて,Colin Davisとベルリオーズのつながりを再認識したのは遅きに失したと言えばその通り。だが,これも一つの温故知新だと開き直ることにしよう。

上述した通り,この演奏は真っ向勝負の真面目な演奏であり,Karajanの鐘のようなギミックなんて何もない。しかし,曲に愚直に対峙するという姿勢はある意味清々しいのだ。逆に言えば,真面目過ぎて決定的な個性はないとも言えるのだが,個性的であればいいというものではない。実のところこれは曲としての「幻想」の演奏の一つのあるべき姿,あるいはスタンダードと言ってもいいものなのかもしれないなぁなんて漠然と思っていた私である。いずれにしてもオーセンティックないい演奏である。

さて,次は誰が出てくるか...。Colin Davisの別ヴァージョンだったりして(笑) 。

2022年10月27日 (木)

Curtis Mayfieldにマジで痺れる。 #CurtisMayfield

_20221026 "Curtis/Live" Curtis Mayfield(Curtom/Rhino)

今更ながらって気がしないでもないが,Curtis Mayfieldである。このライブ盤を聴いていて,思ったのが何とも言えないセクシーな感覚である。と言っても,決して下品な「エロ」ではない。Curtis Mayfieldの声と,ほぼミディアムで展開されるファンクについつい身を委ねたくなるという意味だ。

アッパーでもダウナーでもないのに,これほど痺れるソウルがあるか?と言いたくなるような素晴らしい歌唱と演奏にはもう何も求めるものはない。これぞ完璧なライブ盤ではないか。このアルバムが収録されたThe Bitter EndはしぶとくNYCで生き残っているクラブだが,残念ながら私は訪れる機会がなかった。私のNYC在住中はクラブ通いはほぼジャズに限定されていたようなもので,ロック系が多いBitter Endには縁がなかったのだが,200人そこそこのキャパで,この演奏が行われていたとすれば,昇天間違いなしだったと言わざるをえない。

Donny Hathawayのライブ盤の片面もBitter Endでの録音だったが,ここにはこういうグルーブを生み出す「マジック」が存在したと思いたくなる至高のライブ・アルバム。Carpentersの"We’ve Only Just Begun"のアダプテーションなんて,くぅ~っとなるしかないし,こんなものを聞かされたら痺れる以外にはないのだ。星★★★★★。

Recorded Live at the Bitter End in January, 1971

Personnel: Curtis Mayfield(vo, g), Craig McMullen(g), Joseph "Lucky" Scott(b), Henry Gibson(perc), Tyrone McCullen(ds)

2022年10月26日 (水)

James Taylorのライブ盤:それにしても凄いバック・バンドである。 #JamesTaylor

_20221025 "(Live)" James Taylor(Columbia)

James Taylorの1993年にリリースされたライブ・アルバムである。本作のダイジェスト版みたいな"(Best Live)"ってのもあるが,私が今回久々に聴いたのは2枚組の方。ダイジェスト版が12曲に対し,こっちは全30曲で,聴き応え十分。ほぼJames Taylorの当時のライブを完全収録って感じだろう。それだけに今聴いても,十分満足のできるライブ盤であることは間違いない。James Taylorの歌いっぷりはこっちが期待する通りだしねぇ。

今やJames Taylorと言えば,米国における「国民的歌手」みたいな位置づけであろうが,それはおそらくこのアルバムがリリースされた時も似たような感覚だったのではないか。だから,James Taylorのバックを務めるということは,サポートするミュージシャンにとっても相応の価値がある仕事なのだろう。それは主題の通り,ここに集まったバックの面々を見れば,それこそ実力のあるミュージシャンの集まりである。ここではそういう観点で,このアルバムを眺めてみよう。

バック・バンドのリーダー,あるいはミュージカル・ディレクターは,本作のプロデュースも兼ねたDon Grolnickだろう。ドングロ(笑)はピアノに専念し,そのほかのキーボードは元24丁目バンドのClifford Carterが担う。そしてギターがMichael Landau,ベースがJimmy Johnson,ドラムスは現在ならSteve Gaddってところだろうが,この時は今は亡きCarlos Vegaが務めている。バンドはこれだけの実はベーシックな編成ながら,鉄壁の布陣。こういうのを真の実力者集団と言う。通常だったら,アルバムのレコーディングならありうるメンツをライブで集めてしまうのがJames TaylorのJames Taylorたる所以だろう。

コーラス隊も豪華である。Valerie Carterに加え,David Lasley,Kate Markowitz,そしてArnold McCullerである。自分たちでもリーダー作を持っている面々がバックでライブでコーラスをやっているってのも凄いと思わせる。まぁ,彼らは様々なレコーディングにバッキング・ヴォーカリストとしてクレジットされているから,こういう仕事もありだろうが,現場でこの人たちがバックに並んで歌っているのを見たら壮観だったろうねぇと思ってしまう。

こんなメンバーに支えられて歌ってるんだから,James Taylorも気持ちいいに違いない。ってことで,悪かろうはずなしってところか。90年代のアルバムも改めて聞いてみようと思わせるナイスなライブ盤であった。星★★★★☆。やっぱり国民的歌手だ(笑)。

2022年10月25日 (火)

Aubrey JohnsonとRandy Ingramの”Play Favorites”はライブを更に上回る好印象。 #AubreyJohnson #RandyIngram

_20221024"Play Favorites" Aubrey Johnson & Randy Ingram(Sunnyside)

先日,彼らのライブを武蔵野スイングホールで観た時に,リリース前のこのアルバムを入手したことは既に書いた(記事はこちら)。早速これを聴いてみたのだが,ライブはライブでよかったとしても,このアルバムは更に好印象を与える。

何がよいか。それはRandy Ingramのピアノの響きが適切なことである。ライブではPAのせいもあったのかもしれないが,ちょっと打鍵が強過ぎるように感じられた彼のピアノ(換言すれば弾き過ぎ) が,ここではリリカルさが感じられるレベルのサウンドになっていて,Aubrey Johnsonの声とのフィット感がこちらの方が優れているように思える。ここで聞かれるピアノの音は,Fred Hersch的な感覚もあり,こうしたセッティングのアルバムにはこういう音がよいのだ。

そして,ライブでも演奏された曲のセレクションが実に趣味がいいということを改めて感じる。ライブでも好感触であったJoni Mitchellの"Conversation"は,若い頃のJoni Mitchellの声を彷彿とさせるようなAubrey Johnsonの声,そして歌いっぷりである。そして,Lyle Maysの”Close to Home”のポルトガル語版である"Quem é Você"はここでも実によい。

いつも書いているように,私はジャズ・ヴォーカルのよい聴き手ではないが,これは選曲からしてジャズの範疇を越えていると思えるし,Aubrey Johnsonの声や歌い方も「もろ」ジャズ・ヴォーカルって感じではないから,私としてはこういうアルバムなら全然OKなのである。だが,"I'll Remember April"にスキャットでLennie Tristanoの"April"を交えたり,"Born to Be Blue"をブルージーに歌うところなどには,ジャズ的な部分も忘れていないことを感じさせるのが,またまた評価したくなるポイントである。Aubrey Johnsonの声は”Born to Be Blue"のような曲には若干クリーン過ぎるようにも思えるが,こうした曲を入れるところはジャズ・シンガーとしての矜持と捉えたい。

いずれにしても,このセンスの良さを評価して,ちょっと甘いと思いつつ,星★★★★★としてしまおう。リピートしてプレイバックできるところがいいアルバムの証左である。尚,本作は11/4にリリースが予定されているので,ご関心のある方は是非。

Recorded on May 27, 28 and June 10, 2022

Personnel: Aubrey Johnson(vo), Randy Ingram(p)

2022年10月24日 (月)

改めて歌のうまさに驚かされるKenny Rankinのベスト・アルバム。 #KennyRankin

_20221023 "Peaceful: The Best of Kenny Rankin" Kenny Rankin(Rhino)

このブログでもKenny Rankinは既に取り上げたことがあるが,私の表現力の乏しさから,この人についてはいつも同じようなことを書いているような気がする。それは歌のうまさであったり,フェイクの入れ方の素晴らしさになる訳だが,このベスト・アルバムを久しぶりに聴いても,同じような感想しか出てこない。

Kenny Rankinの場合,オリジナルはオリジナルでよい曲は揃っているのだが,カヴァー曲を歌っても,完全に自分の世界に染めてしまう「崩しっぷり」が見事なのだ。このベスト盤で言えば,私が唸ってしまったのが"While My Guitar Gently Weeps"。このベスト盤には"Blackbird"や"Penny Lane"も収録されているが,The Beatlesの曲はメロディ・ラインと曲としてのイメージが確立してしまっていて,それを「崩す」ってことは相当歌手としての自信がないとできないことだと思えるのだ。

このベスト盤を聴いて感じるのは,ソングライターとしても,歌手としても,今一度再評価すべき人ではないかと思える曲のよさ,歌唱の素晴らしさである。このベスト・アルバムはKenny Rankinがまだ存命中にリリースされたものだが,レパートリーは1967年~80年のアルバムから取られていて,その後のアルバムからは選曲されていないのはレーベルとの契約ゆえかどうかはわからない。しかし,私がこのブログで取り上げたのが遺作となった2002年"Song for You"と88年のBottom Lineでのライブなので,それを遡ったかたちで,Kenny Rankinのキャリアを眺めるという観点では,私としては大いに意味があった。温故知新の意味を含めて星★★★★★。

尚,ベスト・アルバムゆえ参加ミュージシャン多数のため,細かいPersonnelは省略。

Personnel: Kenny Rankin(vo, g, p, el-p)

2022年10月23日 (日)

”Tarkus”:テンション高き名作なれど,画竜点睛を欠いた...。もったいない。 #EL&P

Tarkus "Tarkus" Emerson,Lake & Palmer(Manticore)

私はプログレも結構聞くが,EL&Pについては優先順位が低かったというのが正直なところ。そして,EL&Pと言えば「展覧会の絵」だよなぁと思ってきたクチなので,保有している作品も少なく,本作はストリーミングでは聞いていても,ちゃんと聞いたことがあったとは言えない。それが気まぐれでCDをゲットしたので,改めてこのアルバムを聴いて感じたことを書いておこう。

タイトル・トラックの"Tarkus"はこれぞプログレとでも言うべき曲であり,テンション高く,演奏も素晴らしいと思う。これだけを聞くだけでも,このアルバムは保有する価値があると思う。アナログ時代のB面に転じた後半は,小品集の趣ではあるが,こちらも悪くはないが,タイトル・トラックとのギャップはそれでもかなりあるが,許せる範囲である。そこへ来て,最後の最後に収められた"Are You Ready,Eddie?"がアルバムの雰囲気をぶち壊すのが何とも痛いし,もったいないとしか言いようがない。この1曲のせいで,このアルバムの価値は少なからず下がったと言わざるをえないのだ。

本人たちはお遊びのつもりだったかもしれないが,これさえなければ,傑作と言ってもよかったかもしれないアルバムを,タイトル・トラックのみで評価したいと思うリスナーを増やしたであろう作品。タイトル・トラック並みのテンションを維持できれば星★★★★★であったものが,この画竜点睛を欠くエンディングにより星★★★★とせざるをえなくなった。

Personnel: Keith Emerson(key), Greg Lake(b, g, vo), Carl Palmer(ds, perc)

2022年10月22日 (土)

Aubrey Johnson~Randy Ingramライブ参戦記@武蔵野スイングホール #AubreyJohnson #RandyIngram

Aubrey-johnson-randy-ingram久しぶりに武蔵野スイングホールに行ってきた。ブログを紐解いてみると,私が最後にこのヴェニューを訪れたのは,Benny Greenのライブで,2018年11月まで遡る(その時の記事はこちら)。その後のコロナ禍があったので,間があくのは仕方ないが,ほぼ4年ぶりとは...って感じであった。

それでもって,今回聴きに行ったのがAubrey JohnsonとRandy Ingramのデュオである。ヴォーカルとピアノのデュオを聴くには,キャパ180席の武蔵野スイングホールは丁度いいって感じだろう。しかし,今回のライブ,告知期間が短く,危うく見逃すところであったが,私がチケットを買った時にはまだまだ空席があって,今回も2列目のほぼ中央というナイスな席で彼らのライブを観てきたのであった。それでもまだ空席があったのはやはり告知期間の短さゆえか。ちょっともったいない。

Aubrey Johnsonは何かと言えばLyle Maysの姪ってことになってしまうが,独立したヴォーカリストとしても相応の実力を持った人である。私は彼女のライブも一度目撃していて,それは2017年12月のNYC出張中に観たFred HerschのPocket Orchestraにおけるライブであった(その時の記事はこちら)。そこにも「スキャットを中心とした歌唱で,インプロヴィゼーションも交え,ジャズ的なフレイヴァーを加えていた」なんて書いている。今回のライブにおいても結構な頻度でスキャットを交えていたのはジャズ的な点である。

しかし,Aubrey Johnsonは典型的なジャズ・ヴォーカルと言うよりは,もっと間口の広いヴォーカリストで,かつポルトガル語の歌も結構歌うというところにも彼女の指向が出ているようにも思う。声も華憐な感じだしねぇ。だから,ジャズ・ヴォーカルのライブだと聞いて来場した,このヴェニューらしい平均年齢の高い聴衆のイメージに彼女の歌が合致していたかはわからないが,最後はアンコールも2回で,やんやの喝采を受けていたのは,彼女の人懐っこそうな笑顔に癒される部分もあったのではないか。

Play-favorites 今回のライブは,11月4日にリリースされるご両人による新作"Play Favorites"のプロモーションの意味合いもあったと思うが,2部構成で演じられた曲のほとんどが,今回の新作からであった。私は今回,発売前のCDを多分持ってきているだろうとは思っていたが,案の定であり,現地でCDをゲットした私であった。そこではオリジナル,スタンダードに加えて,Jobim,Joni Mitchell,更にはBillie Eilishまで歌ってしまうのだから,上述の通りの「間口の広さ」である。

どの曲もなかなかに魅力的であったが,特に私に響いたのがJoni Mitchellの"Conversation"であった。曲そのものが魅力的なのは確かだが,非常に素晴らしい歌いっぷり,弾きっぷりであった。更にJobimの"Olha Maria"とJimmy Webbの"Didn’t We"をメドレーで歌ってしまうのはいいセンスだよなぁと思っていた。そして,Lyle Maysの初リーダー作に収められていた"Close to Home"にポルトガル詞を乗せた"Quem é Você"が非常に美しかった。これってMilton Nascimentoも歌ってるんだねぇ...。

Randy Ingramのピアノは,流麗なフレージングって感じだったが,打鍵の強弱がもう少しあってもいいかなと思えたのも事実である。私には打鍵が強いパターンがちょっと多いように感じられたので,"Quem é Você"で聞かせたようなリリカルなトーンをもっと交えてもよかった。そうは言っても,購入したCDを聞くのも楽しみになるような歌唱,演奏であった。スキャットとピアノでユニゾンのフレーズを展開するところなんて,結構スリリングだったし,そういうところは実にジャズ的であった。

いずれにしても,今回のライブは別のコンサートのチケットを買うために,武蔵野市民文化会館のサイトを見ていて,たまたま開催を知ったものだったが,行けてよかったと思えた一夜であった。CDについては改めて記事にしたいと思う。

Live at 武蔵野スイングホール on October 21, 2022

Personnel: Aubrey Johnson(vo), Randy Ingram(p)

2022年10月20日 (木)

"Playboys":西海岸らしい軽快さ。

_20221019 "Playboys" Chet Baker & Art Pepper(Pacific Jazz)

"Picture of Heath"のタイトルでも知られるアルバムである(そちらのジャケは下)。こちらがオリジナルで,"Picture of Heath"が再発盤らしい。Art Pepperの2曲以外がJimmy Heathのオリジナルで固められているのが,"Picture of Heath"というタイトルとなった理由だと思うが,こちらの雑誌"Playboy"の表紙風のジャケットではなかなか再発されることが少なく,一時期は結構高値が付いていたように思う。その"Playboys"と"Picture of Heath"だが,収録された曲は同じなのだが,曲の並びが違っていて,アナログで言えばA面とB面がひっくり返っている。

ジャケについては,Playboy誌のオーナー,Hugh Hefnerから訴訟沙汰にすると脅されて変更したということらしいが,そうなっても仕方ないようにも思えるようなジャケではある。

Picture-of-heath まぁそれはさておきである。Jimmy Heathのオリジナルについては,フィラデルフィア出身のHeathがアレンジメントも担当しているが,いかにも西海岸的な軽快な感覚に溢れたアルバムとなっている。決してテンションは高いとは言えないし,私のようにArt Pepperの演奏に陰影を求める人間にとってはちょっと軽過ぎるかなぁと感じない訳でもない。それでもこういう軽快感を持つ演奏ってのもまた楽しいものなので,星★★★★。たまに聞くには丁度ええわってところで。

Recorded on October 31, 1956

Personnel: Chet Baker(tp), Art Pepper(as), Phil Urso(ts), Carl Perkins(p), Curtis Counce(b), Lawrence Marable(ds)

2022年10月19日 (水)

ストリーミングで「幻想交響曲」を聞く。今回はKarajan。

Karajan ”Berlioz: Symphonie Fantastieque” Herbert von Karajan / Berliner Philharmoniker(Deutshce Grammophon)

私のクラシック音楽の聴き方は相当偏っていると前にも書いたが,特に一方ならぬ偏り方を示したオーケストラ音楽がベルリオーズの「幻想交響曲」である。昔はかなりの数の「幻想」を保有していたが,今や手許に残っているのはCDが数枚って感じか。しかし,このブログを紐解いてみると,Myung-Whun Chung,Charles Munch,そしてJean Martinonと記事にしている。こんな曲は「幻想」を置いてほかにない。

以前のように,また改めて「幻想」のCDを集めようなんて気にもならないが,世の中,便利な時代になって,ストリーミングで大概の演奏は聞けるのだから,それで十分である。そこで気まぐれで聞いたのがKarajanのこの演奏である。私はKarajanという人の音楽を真っ当に聞いてきたとは決して言えないのだが,それは完全に天邪鬼だと言ってもよい。まぁ,聞かなくてもレベルが高いのはわかってますって感じか(笑)。

そんな私ではあるが,この演奏は実は今回まで聞いたことがなかった。その理由は「鐘」のせいだと言ってもいいかもしれない。この演奏は5楽章の「鐘」の響きが,私が学生の頃からよく知られていて,「幻想」好きの私としては,それをギミックと感じて,聞くのを避けてきたと言ってもよい。それから40年近くを経て,初めて聞いたが,演奏としては実にKarajanらしいというか,極めて平均点の高い演奏で,安定感のあるパフォーマンスは,多くのリスナーに受け入れられるだろうなぁと思ってしまった。2楽章のワルツなんて綺麗なもんだし,「断頭台への行進」もリスナーが期待するようなものだろう。そこに強力な「個性」を付け加えるものとして採用されたのが,ここでの「鐘」の音だったのかもしれないが,私にはこれは策に溺れたって気がする。こんなことをしなくても,「いい演奏」,「真っ当な演奏」として受け入れられたはずだと思えるのだ。そこが気に入らないとしても,演奏としてはレベルが高いので星★★★★。この辺がアンチではないとしても,Karajanに全く思い入れのない私のこの演奏に対する正直な感想。

久しぶりに「幻想」熱が高まってきた(笑)ので,さて,次は誰のを聞くかなぁ...。

2022年10月18日 (火)

Federico Felliniと縁遠かった私が初めて観た「8 1/2」。シュールな映画である。

8-1_2「8 1/2」('63,伊/仏)

監督:Federico Fellini

出演:Marcello Mastroianni, Anouk Aimée, Claudia Cardinale, Rossella Falk, Barbara Steele

長年映画を観ている私だが,どんな名匠でも縁遠い人ってはいるってことで,私にとってはFelliniもその一人である。真っ当に見た記憶があるのは「道」ぐらいではないかと思うし,その「道」すら記憶は曖昧になる程度。そんな私であるから,Felliniの映画を語る資格は全くないのを承知で,「午前十時の映画祭」でこの映画が掛かるのを知って見に行ってきた。

いやぁ,これは難しい。主題の通り,はっきり言ってしまえば,冒頭からしてかなりシュールな映画なのだが,私のような単細胞の人間にはこれはハードルが高いと思ったというのが正直なところである。主役のMarcello Mastroianni演じる映画監督,GuidoがFellini自身の心象風景を投影したものだというのはわかるとしても,過去と現在,現実とイメージが混在,交錯するこの映画は決してわかりやすいものではないし,エンタテイメントと言うには,劇中にも出てくるが,「前衛性」が勝ってしまっている気がする。

誤解を恐れずに言えば,こういう映画を評価するのは業界人か,相当のスノッブっていう気もして,どんなにいい映画だとしても,私には合わないというのが正直なところである。それが私の映画鑑賞上の限界と認めなければならない(きっぱり)。Marcello Mastroianniのセリフにも出てくる「混沌が映画だ。人生は祭りだ」というのがこの映画を象徴していると言ってよいが,その「混沌」具合が,私のような凡人には辛いのだ(笑)。

まぁ,Felliniとしては,映画の「芸術」としてのレベル向上という意図があったと思わせるに十分な,相当難しくも厳しい映画。その意義は認めつつも,観ている側には結構辛い部分もありなので,星★★★★。私としてはMarcello Mastroianniの渋い美男ぶりと,眼鏡をかけたAnouk Aiméeのクール・ビューティぶりが最も印象的(爆)。いずれにしても,私には難しい映画であった。はっきり言ってしまえば,私にとっては「いい映画」だからと言って「好きな映画」とはなりえない典型。ますますFelliniの映画を観る機会が減るかもと思わせる作品であった。

観ようと思えば,Blu-rayでもDVDでも観られる映画ではあっても,劇場で観ることに意義を感じる私にとって,「午前十時の映画祭」はこの映画についてもいい機会を与えてくれたが,それにしても時折襲ってくる睡魔と戦うのに苦労したと告白しておこう(苦笑)。

2022年10月17日 (月)

追悼,Ronnie Cuber。

Ronnie-cuber_20221016092601

先日,Ronnie Cuberが亡くなった。自身のリーダー作はバップ・フィーリング溢れるものが多かったように思うが,それとは別に様々なミュージシャンのバックでのホーン・セクションとしての働きは,Brecker Brothers並みにもの凄い数に及ぶはずである。

私がRonnie Cuberのライブに接したのは,2016年にJohn Tropeaのバンドで来日した時だけであるが,そこでも彼ららしい強烈なグルーブを聞かせてくれたのも懐かしい。

_20221016 私がRonnie Cuberのリーダー作として保有しているのは,Xanaduからの初リーダー作だけだが,上述のライブ時に,バーでたたずむRonnie Cuberを目ざとく見つけてサインをもらったのだが,3色のペンのどれでもうまく書けず,この写真ではよくわからないかもしれないが,右の状態のように彼のサインが3色入り混じってしまったのも懐かしい。それもまぁ今となっては懐かしくも佳き思い出である。

また,ほぼRonnie Cuberの逝去に合わせるようにリリースされたのが,The Gadd Gangから故人となったRicahrd TeeとCornell Dupree以外の3人を集めたWDR Big Bandとの共演作。これは今年の初めにレコーディングされたようだが,Ronnie Cuberに死の影は全く感じられない。

Gadd-gomez-cuberいずれにしても,私はリーダー,あるいはバリトン・サックス奏者としてのRonnie Cuberのいい聴き手だったとは思わないが,改めてストリーミングで彼のいろいろなアルバムを聞いて,在りし日のRonnie Cuberを偲びたい。

R.I.P.

2022年10月16日 (日)

久しぶりにマイキーの"Give and Take"を聞いた。 #MikeStern

_20221012 "Give and Take" Mike Stern(Atlantic)

このブログには何度も書いているが,私はかなりのマイキーことMike Sternのファンである。だから,彼のリーダー・アルバムは多分(?)全部保有しているし,参加作も結構持っている。まぁ,どれを聞いてもマイキーのアルバムは同じっていう気もするし,その中で違いを見出すのがファンだって気もするが,このアルバムなんかは,どちらかと言うとジャズ・フレイヴァーが強いアルバムと言ってよい。ゲストにMichael BreckerやDavid Sanbornを迎える曲もあるものの,このアルバムは基本的にギター・トリオのフォーマットと言ってもよい。しかもJohn Patitucciはアコースティック・ベースで全面参加,多くの曲でJack DeJohnetteがドラムスというのは,おぉっ!となってしまう。

こういうフォーマットでの演奏は,今はなき55 Barでのマイキーのギグを思い起こさせるところがある。55 Barではスタンダードも交えつつ,せいぜいサックス入りのクァルテットぐらいでの演奏が基本で,スタンダードも交えた演奏をしていたから,ここでのコーラスを効かせた演奏とかぶるところがある。こんな編成でも,55 Barにおいてでも,マイキーは結局はオーヴァードライブを踏んじゃう(笑)のだが,このアルバムではそうしたいつものパターンよりも,ジャズ・ギタリスト的アプローチの方が勝っているって感じである。もちろん,フレージングは「いつもの」マイキーそのものなのだが,アルバムとしてはそろそろ新機軸を打ち出そうとしていた時期だったのかもしれない。

ここで聞かれるマイキーのフレージングを「いかにも」と言うのは簡単だ。しかし,誰が聞いてもマイキーだってわからせる個性だと言ってもいい訳で,私がマイキーが好きなのもそういうところなのだ。先日取り上げたScott Hendersonも参加したVital Tech Tonesのアルバムでも"Giant Steps"をやっていて,そちらは奇をてらい過ぎだったと思うが,ここでのマイキーの演奏はそういうことはしないのだ。ある意味「わきまえている」のがマイキーの偉いところだと言い切ってしまおう。

やっぱり好きだぜ,Mike Stern。NYCに出張する機会ももはやないシニア従業員の私としては,早く日本にまた来てくれと思わざるをえないが,まぁ来年あたりにはきっと来てくれるだろう。まぁNYCに行っても,もう55 Barはないしねぇ。チャージが高かろうが,マイキーを見られりゃいいのである(笑)。星★★★★。

全然記憶になかったのだが,このアルバムにもきっちりマイキーのサインをもらっていたので,写真を貼り付けておこう。だが,いつもらったのか全く覚えていない(爆)。ミーハーだと言われようが,好きなものは好きなのだ。Fred Hersch,Wayne Krantzと並んで,サインをもらった回数が多いのがマイキーってことで。ついでにピックも何回ももらっている私。

Personnel: Mike Stern(g), John Patitucci(b), Jack DeJohenette(ds), Don Allias(perc), Michael Brecker(ts), David Sanborn(as), Gil Goldstein(p)

_20221012-2

2022年10月15日 (土)

Hilary Hahnの新作をストリーミングで聞いた。ドボルザークのヴァイオリン協奏曲って初めて聞いたかもなぁ。 #HilaryHahn

Hilary-hahn "Eclipse" Hilary Hahn(Deutsche Grammophon)

私の父は若い頃,ヴァイオリンを弾いていたこともあって,結構な数のヴァイオリンのレコードを保有していた。父が亡くなって,その一部は私が受け継いだが,その影響もあって,クラシックのCDの数はそんなに多くはないものの,意外とヴァイオリンのアルバムは持っているって感じか。

Hilary Hahnについては,父の生前には意識していなかったと思われる。私が保有しているのは,父の遺品ではなく自分で買ったのが一枚だけである。チャイコのヴァイオリン協奏曲に,ヒグドンのコンチェルトをカップリングしたものだったが,そのCDを聞いて,古典と現代,両方できてしまうところが実に魅力的に響いたと感じた。

今回の新作はドボルザークとサラサーテに,アルゼンチンのヒナステラって人のコンチェルトを組み合わせるという,なかなかないプログラム。後者2曲はライブ録音って,へぇ~ってところである。私のクラシックの聞き方は相当偏っているので,ドボルザークのヴァイオリン協奏曲ってのは初めて聞いたと思うが,これって結構盛り上がる曲なのねぇ,ってストリーミングを聞きながら感じていた私であった。ドボルザークのコンチェルトと言えばチェロだろうって気がするが,ライブで聞いたら結構これは盛り上がるんじゃないのって感じの曲調であった。

そもそもカップリングされたサラサーテの,ビゼーの「カルメン」のメロディをアダプテーションした「カルメン幻想曲」だって聞いたことはなかったし,ヒナステラなんて名前すら知らない(爆)が,ピアソラはヒナステラの弟子だったらしいって知って,またまたへぇ~である。だが,このアルバムを聞き通すと,それなりのプログラム性,あるいはHilary Hahnの技を感じさせる構成だと思ってしまった。「カルメン幻想曲」なんてエキゾチックな感じが出ているしねぇ。

こういうアルバムは購入するというところまではいかないとしても,ストリーミングで聞けてよかったって思える作品であった。日頃,この手のアルバムを聞いていないので,たまに聞くといいねぇと思ってしまうっていうのも事実である。まぁ,ストリーミングはストリーミングなので,星はつけないが,結構楽しんでしまったことは間違いない。

何だかんだ言って,ヴァイオリン好きは父の影響なんだろうなぁ。

Recorded on April 22-27 and June 17 & 18, 2021

Personnel: Hilary Hahn(vln),Andrés Orozco-Estrada(cond), Frankfurt Radio Symphony Orchestra

2022年10月14日 (金)

富樫雅彦の”Speed And Space”:至極真っ当なフリー・ジャズ #富樫雅彦

Speed-and-space "Speed And Space" 富樫雅彦(テイチク→Cinedelic)

富樫雅彦のアルバムははっきり言って難しい(きっぱり)。それでも,富樫が脊髄損傷前にどういう音楽を改めて聴きたいと思っていたのも事実で,そこへこのアルバムがアナログ・リイシューされることを知って,値段がなぁ...と思いつつついつい発注してしまった私である。聞く前からわかっていたことではあるが,正調フリー・ジャズである。

今,この時代にこのアルバムを聞くリスナーがどれぐらいいるかはわからないし,どれほど啓発され,興奮するかも,このアルバムがオリジナルでリリースされた頃とは全く違うと思える。それこそこのアルバムが録音された69年頃は,全共闘の時代であり,フリー・ジャズも学生運動と並行するようなかたちで聞かれていた部分もあるのではないかと思える。極論すれば現状打破に向けた破壊衝動なんて言ってもいいかもしれない。

私は音楽に関して,思想とか哲学とかを結びつけて,小難しいことを言うタイプの人間ではない。Duke Ellingtonは「いい音楽か,悪い音楽しかない」と言ったように記憶するが,私の場合は「好きな音楽か,そうでないか」ってことになる。だが,若い頃は正直言って,こういう音楽には全く耐性がなかったから,高校生の頃であれば,拒否感しか示していなかっただろう。今にして思えば,後期Coltraneの音楽やAlbert Aylerの音楽が発生したタイミングというのは,単なる音楽的な部分だけではなく,時代を反映はしていたと思ってしまうが,それを抵抗感なしに聞けるようになるには,私としても相当な時間が掛かったということはまぎれもない事実なのだ。ここで聞かれる音楽も,私は今回初めて聞いたが,現在のようにフリー・ジャズに対する耐性を身につけてしまえば,おぉ,正調フリー・ジャズだと(笑って)言えるのも確かだが,これが昔の私であれば,何じゃこれは?で終わっていたであろう音楽である。

しかし,今回,このアルバムをアナログでプレイバックしてみて,この音楽は「浴びなければならない」と思わせた。ある程度音量を上げて,富樫雅彦の叩き出すパルスを浴び,彼を支えるミュージシャンのフレージングを体感することが快感を生む。緊張と弛緩が混在するアルバムの流れも実に素晴らしい。素晴らしいレガシーとして,今でも傾聴に値する傑作。星★★★★★。

それにしても,リスナーとしての自分を振り返ってみても,人間変われば変わるものだと思わざるをえないな(笑)。

Recorded on November 22, 1969

Personnel: 富樫雅彦(ds, perc), 佐藤允彦(p, perc), 高木元輝(ts, b-cl, corn-pipe), 池田芳夫(b)

2022年10月13日 (木)

ストリーミングで聞いたMichael Breckerのライブ音源。想定通りの音である。 #McichaelBrecker #MikeStern

Michael-brecker-fabrik "Live at Fabrik, Hamburg 1987" Michael Brecker(Jazzline)

ストリーミングで何か新譜はないかと漁っていたら,これがヒットしたので聞いてみた。Michael Breckerのおそらくは当時の放送音源をソースとするライブ音源である。メンツは以前取り上げたJazz Doorからの1989年のライブ(記事はこちら)と同じ。ジャケ写真からもわかる通り,マイキーことMike Sternも入っているから,どういう音かは1989年のライブからも大体想定可能である。曲も"Nothing Personal"と"Original Rays"はかぶっているしねぇ。

やっている曲は89年のライブとあまり変わらないって感じがあるが,私にとって嬉しかったのはマイキーの"Upside Downside"をやっていることである。89年ライブでは"Gossip"をやっていたので,それなりにMichael Breckerもマイキーを立てていたってことになるのだろう。演奏は録音のせいかAdam Nussbaumのドラムスがちょっと軽めで,私としてはもっとヘヴィーな感覚を打ち出して欲しいところだが,まぁいいや(笑)。でもフレージングはBreckerがキレッキレ。イントロでは,スクラッチみたいな音をEWIで出していて,結構遊びが感じられるのもライブらしい演出である。

また,2曲目の"Choices"でも冒頭ではMiles Davisのミュートを模した音をEWIで出して,途中で"Jean Pierre"も引用するという確信犯的な対応であるが,そのバックのマイキーの音が,Milesバンド時代をまた思い起こさせてついつい笑ってしまった。

それにしても,ツアー・バンドながら,いいメンツを揃えてしまうというのが,当時のMichael Breckerのアーティスト・パワーって気もするが,マイキーとの相性もよく,結構楽しめるのは間違いないところ。ライブ音源らしい長尺の演奏が聞けるだけでなく,私としては当時伸び盛りのJoey Calderazzoが聞けることも嬉しいのだ。こういう音源が残っているのであれば,どんどん出して欲しいものである。私としては,媒体まで買おうとは思わないし,ストリーミングで聞ければいいというレベルだが,それでもウォーキングの友とかには丁度ええわってところで,いい時代になったものだ(笑)。星★★★★。

Recorded Live at Fabrik, Hamburg on October 18, 1987

Personnel: Michael Brecker(ts, EWI), Mike Stern(g), Joey Calderazzo(p, key), Jeff Andrews(b), Adam Nussbaum(ds)

2022年10月12日 (水)

録りだめしたビデオから,今日は懐かしの「トラ!トラ!トラ!」。

Photo_20221010113901 「トラ!トラ!トラ!("Tora! Tora! Tora!)」(’70,米/日,Fox)

監督:Richard Fleischer,舛田利雄,深作欣二

出演:Martin Balsam,山村總,Jason Robards,三橋達也,Joseph Cotten,田村高廣,E.G. Marshall,東野英治郎

先日BSで放送されていたのを録画しておいたもの。実に懐かしいと言うべき,真珠湾奇襲を描いたお馴染みの映画である。昔は12月になるとこの映画をTV放送していたような気がするが,今見ると144分という尺は,特に前半が間延びした感覚が強い。後半の爆撃シーンはこれでもかというほどの火薬を使いまくっていて,映像的には結構強烈だが,これもドラマとしてはどうなのかねぇという感覚も強い。

映画としての評価は結構難しいものの,この映画で常に話題になるのが黒澤明の降板劇である。日本側の脚本には黒澤明の映画でお馴染みの菊島隆三,小国英雄がクレジットされているから,もともとの黒澤のシナリオもかなり使われているものと思われる。黒澤の降板には諸説あるようだが,黒澤の完全主義やビジネス上の日米の習慣の違い等も挙げられている。しかし,黒澤がこの映画を撮っていたら...と想像すると,それはそれで興味深い。

この映画の一つの美点は,比較的地味な役者を揃えて,キャスティングに依存しないかたちで,真面目にドラマとして描いたことだろうが,日本側では,特に山本五十六を演じた山村總が渋い。いずれにしても,この開戦には日米双方の体たらくがあったことを認識させるだけでも意義があるように思う。いずれにしても,アクションやスペクタクルだけでなく,真面目に撮られた作品であることは認めたい。星★★★☆。後の噴飯ものの「パール・ハーバー」よりははるかにまし(笑)。

この映画の一番の見どころは,朝焼けの中のゼロ戦の離陸から編隊飛行へ至るシーンかもなぁ。

2022年10月11日 (火)

これも一つの無駄遣い:StonesのTシャツが今頃届く。

Stone-t季節は流れ,今や秋の気配が濃厚になった。そんな時期になって,Stonesの欧州ツアーのTシャツがデリバリーされるってのは,これからいつ着るのよって感じでタイミングが悪い(苦笑)。

今年はRolling Stones結成60周年(!)ということで,欧米では大々的なツアーが開催されていたが,彼らを日本で見る機会が再び訪れるかはだんだん怪しくなってきたって気もする。だからこそ,プロモーターは招聘を画策しているのではないかとも思うが,私としては10%ディスカウントのクーポンもあったし,気分だけでもということで,7月ごろ発注していたのがこのTシャツである。

昨今の円安もあって,10%引きとは言っても,送料込みにすると結構な価格になってしまったが,まぁいいや。Tシャツも山ほど持っているだけに,完全な無駄遣いであることは明白だが...。

2022年10月10日 (月)

「鳥のカタログ」:凄い曲だなぁ...。

Photo_20221009211901 「メシアン:鳥のカタログ」児玉桃(Octavia)

児玉桃はECMからリリースした3作がどれも素晴らしく,古典,現代音楽の双方に通じたピアニストであることは明白であり,3作全てを高く評価してきた私である。こうなったらECM以外のアルバムも聞かねばということで入手したのがこの「鳥のカタログ」である。我ながら,またハードルの高い音楽を選んでしまったものである(笑)。

メシアンのピアノ曲と言えば,私はPeter Serkinの「アーメンの幻影」や「幼児イエスに注ぐ20のまなざし」ぐらいしか聞いていない(前者は高橋悠治とのデュオ)が,はっきり言ってどちらも難しいよなぁっていうのが正直なところである。当たり前だが,決して気楽には聞けない。ある程度の覚悟を以て聞く必要があるのだ。そしてこの「鳥のカタログ」に至っては,演奏時間が3時間近いという大曲なのだ。普通はビビる(きっぱり)。

児玉桃はECMの第1作において,既に「鳥のカタログ」番外編のような「ニワムシクイ」を演奏しているが,そこでも素晴らしいパフォーマンスを聞かせていたから,「鳥のカタログ」だってきっといいに違いないという確信はあった。その確信自体は結果的に決して間違ってはいなかったが,それにしてもこれは演奏者にも聴き手にも集中力を求める音楽だというのが実感だ。鳥をテーマにした曲と言っても,素材となる鳥のことを知らないのだから,私としては演奏に身を委ねるしかない訳だが,いかにも「現代音楽」的な響きが連続していて,こういう音楽に耐性がない人には,まじで厳しい音楽だろうなぁと思う。

とは言いつつ,私はこういう音楽ですら聞き流してしまうタイプのリスナーなので,プレイバックしていて明らかな不快感を催さなければ,大概の音楽はOKとなってしまうのだ。そんな私でも,これはある程度集中して聞かないと無理だと思ってしまう音楽なのだから,通常私が好んで聴いている「現代音楽」のピアノとも質が異なると言ってもよいかもしれない。

とにかく,これは凄い曲だっていう感想しか成り立たないが,それを弾き切る児玉桃も凄いよねぇ。私がこの音楽のすべてを理解できているとは思わないが,音源としてリリースすることだけで星★★★★★にしたくなるような曲であり演奏。お見事でした(笑)。

Recorded on February 24-26 and April 16-18, 2009

Personnel: 児玉桃(p)

2022年10月 9日 (日)

まだ音は聞けていないが...:Joni MitchellのAsylum Boxが届く。

Joni-mitchell-asylum-box"The Asylum Albums(1972-1975)" Joni Mitchell(Rhino)

先日,発注していたJoni Mitchellが米国から届いた。関税まで取られちまったが,まぁいいや(笑)。

既に初期の4枚が"The Reprise Albums(1968-1971)"として出ているので,第2弾として後続のアルバムが出るのも確実だと思っていたし,こうしてリリースされると,ついついRepriseボックス同様,アナログ盤を入手してしまったのであった。今回は"For the Roses"から"The Hissing of Summer Lawn"までの4種5枚である。

私は既にJoni Mitchellのアルバムは全てCDで揃えてあるのだから,こういう買い物はそれこそ無駄遣いと言われても仕方がない。紙ジャケでエンボスまで再現した国内盤CDの出来はそれはそれで見事だったとしても,やはりアナログ盤の持つ質感,特にアナログで保有したくなる見事なジャケのセンスを考えれば,ついつい購入してしまうのだ。しかも音源はリマスターされているしねぇ。

こうなってくると,次がまた楽しみになるが,次は"Hejira"から"Shadows and Light"あたりか。それまでにはもう少し円安が収まってくれているといいのだが(苦笑)。

音源はゆっくり楽しませてもらうことにしよう。

2022年10月 8日 (土)

Elton Johnの名曲をキラ星のごときスター軍団が歌うコンピレーション。超久しぶりに聴いた(笑)。

_20221006 "Two Rooms: Celebrating the Songs of Elton John & Bernie Taupin" Various Artists(Polydor)

先日,Elton Johnのベスト盤を取り上げて,そう言えばこんなのもあったなぁということで取り出したのがこのアルバム。Elton Johnとの曲作りの名チーム・メイトであるBernie Taupinとの作品を,まさしく主題の通り,キラ星のごときスター軍団がカヴァーしたアルバムである。

とにかくメンツが強烈。これだけのスターが集まるコンピレーションもなかなかないのではないかと思わせる。そして歌うのがElton JohnとBernie Taupinによる名曲群なのだから,これは悪いはずがないのだ。もちろん,参加したミュージシャンのすべての歌唱がいいとは思わない。しかし,全体を通して聞いてみれば,やはり相応のレベルは確保されていると感じてしまう。

むしろ,これだけのミュージシャンを参加させるだけのパワーをElton JohnとBernie Taupinが書いた曲が持っていることの証。完全にBeach Boys色に染まった"Crocodile Rock"なんて結構笑える。そしてラストを締めるGeorge Michaelの"Tonight"なんかマジでいいねぇ。まぁトータルでは星★★★★ってところだろうが,スター軍団によるアダプテーションを気楽に楽しめばいいってことにしよう。参加ミュージシャンは多数なので,スター軍団の名前だけ書いておこう。下のPersonnelには入っていなくても,Phil Collinsの"Burn Down the Mission"にはSteve Winwoodまで入っているし。ひえ~ってところである。

Personnel: Eric Clapton, Kate Bush, Sting, The Who, The Beach Boys, Wilson Phillips, Joe Cocker, Jon Bon Jovi, Tina Turner, Daryl Hall and John Oates, Rod Stewart, Oleta Adams, Bruce Hornsby, Sinead O'Connor, Phil Collins, George Michael

2022年10月 7日 (金)

なぜか突然のBud Powell(笑) #BudPowell

Bud-powell "The Scene Changes: The Amazing Bud Powell Volume 5" Bud Powell(Blue Note)

突然のBud Powellである。私にとってはなかなかBud Powellをプレイバックする機会も少ないというのが実態だが,在宅勤務は「ジャズ喫茶」モードが成立するということで,日頃あまり聞かなかったアルバムも聞きながら仕事ができるのは実にいい環境である。仕事もはかどるしねぇ(笑)。

てな訳で,Bud Powellのように,昨今では聞くこともあまりなくなったようなジャズ・ジャイアンツのアルバムもたまにプレイバックしている私である。今回取り出したのがこのアルバムだが,冒頭の"Cleopatra’s Dream"は以前,CMにも使われていて,Bud Powellを知らなくても,この曲は知っているという人もいるはずだ。そんなBud Powellにもかかわらず,私はこのブログにBud Powellの記事を書いたことがほとんどない。かろうじて取り上げたのが,Max Roachの追悼記事で書いたRouletteの"The Bud Powell Trio Plays(「バド・パウエルの芸術」だったかな...)"と,"Bud Plays Bird"だけなのには,今更ながら驚いてしまう。それは言わずもがなを避けたって感じだと思うが,何も言うことがないジャズ・ピアノの巨人である。

だが,よく言われるように,Bud Powellは晩年に向けて精神を患ったこともあり,絶頂期は非常に短かったと言われる。だが,その絶頂期の音源は"The Bud Powell Trio Plays"のように音がイマイチだったり,"Amazing"のVol.1/2のようにテンションが高過ぎたりってところもあって,しょっちゅう聞きたいって感じの音楽ではないのも正直なところである。もちろん,聴けば凄いねぇと思うのだが,そこに至るまでのハードルが高いってところか。

本作は1958年12月の録音なので,絶頂期からは外れているが,全曲をオリジナルで固めて,演奏も結構いい調子で,この時は調子が良かったのかと思わせる演奏なのだ。まぁバックを支えるのがPaul ChambersとArt Taylorというのも,いいメンツに囲まれている訳だが,この時のBud Powellは往時の凄みはないとしても,一般的なジャズ・ピアノのレベルを考えれば,十分いけていると思える。もちろん,粗探しをすれば,突っ込みどころは結構ある。しかし,ここでのBud Powellは逆に言えば聞き易い訳で,これぐらいが丁度ええわっていう言い方も可能だ。そういう取っつき易さゆえに,記事にはしていないが,一番聴いているのは"Bud Powell in Paris"みたいな感じになっている私なのだが...(笑)。

いずれにしても,これは悪くないし,この取っつき易さはBud Powellとしては結構貴重だと思う。星★★★★。

Recorded on December 29, 1958

Personnel: Bud Powell(p), Paul Chambers(b), Art Taylor(ds)

2022年10月 6日 (木)

久しぶりにVital Tech Tonesを聴く。 #VitalTechTones

_20221005 "Vital Tech Tones" Scott Henderson / Steve Smith / Victor Wooten(Tonecenter)

先日,ブログのお知り合いの910さんが,彼らの2ndアルバムを取り上げられていたのに触発されて(笑),久々のこのバンドである。

このアルバムが出た時は,アルバム・タイトル(バンド名?)を見て笑ってしまったのも懐かしい。Steve SmithのバンドがVital Information,スコヘンのバンドがTribal Tech,Victor Wootenが所属していたのがBela Fleck & the Flecktonesだからって,その組み合わせやんけ!ってことで,何と安直なって思ったからである。まぁ,それでもこのメンツが揃えば,大体どういう音がするかは想像がつくわけだが,まさにその想定通りの音が出てくるのが嬉しいねぇ。

思えば,私は彼らが所属した3つのバンドをすべて生で観ている。スコヘンがTribal Techに加え,自身のバンドでも見ているし,Vital InformationはCotton Clubで観た。Bela Fleck & the Flecktonesは私がNYC在住生活を始めた直後,Radio City Music HallにChicagoの前座で出たのを観たことがある。FlecktonsはリーダーのBela Fleckのバカテク・バンジョーも聞き物だが,私はライブの場ではVictor Wootenに目と耳を奪われていたと言ってもよい。なので,私の記憶には強く残ってきた人であり,自身のバンドもBillboard東京で観ている。結局,私は彼ら全てが気になる人なのだ(笑)。

だから,出てくる音は全く想定通りでも,ついつい反応してしまうのだ。まぁ悪く言えば一本調子ではあるが,これこそ予定調和の世界である。期待値と現実が合致しているのだから,文句はない。そうは言っても,"Giant Steps"は,冒頭のテーマ部分を,これはどうなのよ?って感じの変拍子に仕立てていて,これはいけていないと思わされる瞬間もある。だが,そこから4ビートに転じると,最初からこうやりゃいいのにと思ってしまうのはご愛敬である。

だが,基本的には3人の共作が多くて,もしやこれはインプロヴィゼーションでやったのか?と思わせる部分もあるが,ちゃんと作曲したものだったならば,相当ちゃんと作ったってことになる。だが,名手3人が揃えば,これぐらいはちゃちゃっと出来てしまうのかもなぁなんて思うのも事実である。また,スコヘンの"Dr. Hee"を再演しているのも懐かしいが,このメンツで聴けるってのも嬉しいものだ。

いずれにしても,演奏はやかましいことこの上ないが,何年経ってもここでの演奏にはついつい興奮してしまう私である。もはやハード・フュージョンを越えてロックだな。星★★★★☆。しかし,これがリリースされてもはや四半世紀近く経っているってことに驚愕してしまった。歳を取るわけだ(爆)。

Recorded between January 18-27, 1998

Personnel: Scott Henderson(g), Victor Wooten(b, vo), Steve Smith(ds)

2022年10月 5日 (水)

Charles Lloydのトリオ3部作の第2弾到着。これまた渋くも味わい深い。 #CharlesLloyd

_20221004"Trios: Ocean" Charles Lloyd(Blue Note)

7月に3部作の第1弾,"Chapel"について記事にしたが,その時にもCharles Lloydの衰え知らずの創造力に驚嘆させられた。この第2弾も編成は"Chapel"とは異なるものの,Charles Lloydが与える印象は変わらない。やはりこの人,化け物である。

ここでの演奏はパンデミック真っ只中の2020年9月9日に,ストリーミングで無観客配信された演奏がもとになっているらしく,Charles Lloydの地元,サンタバーバラにおけるライブ音源である。そして,今回のパートナーは,ピアノのGerald Claytonと,ギターのAnthony Wilsonというミュージシャン2世コンビである。Gerald ClaytonはCharles Lloydとも来日していて,私はその時のライブのGerald Claytonのピアノに落涙させられたクチ(その時の記事はこちら)なので,今回の第2弾の注目ポイントとしてはそのピアノの弾きっぷりにあった。

まぁ,ここでもGerald Claytonはレベルの高い演奏を聞かせており,実に満足いく出来である。しかし,前述のライブに接し,Gerald Claytonのリーダー作,"Bells on Sand"における二人のデュオ,"Peace Invocation"を聞いてしまった人間にとってはこれぐらいは当然と感じても仕方がないのも事実だ。一方,ギターのAnthony Wilsonもいい音を出していて,好演でリーダーに応えている。そのサウンド,フレージングからすれば,若干存在感としては地味にも思えるAnthony Wilsonというミュージシャンを連れてきたのは成功している。地味と言っても,リーダー作もあれば,Diana Krallの伴奏もしているのだから,知名度はそこそこあるはずだが,圧倒的には高くないだけである。しかし,ここでの演奏を聞けば,さすがCharles Lloydのお眼鏡にかなうだけのことはあると思わせる。

そこにいかにもCharles Lloydらしいサックスとフルートの音色が加われば,これは悪いはずがない。1曲ブルーズの"Jaramillo Blues"をやっているが,なんとなく雰囲気的に"All Blues"を想起させるメロディ・ラインであった。まぁブルーズなんだから,そういうことがあっても不思議はないが,所謂「どブルーズ」ではないな(笑)。それも何となくいい感じなのだ。やっぱりCharles Lloydのアルバムはレベルが高く,裏切らない。今回も星★★★★☆。

Recorded Live at Lobero Theatre, Santa Barbara on September 9, 2020

Personnel: Charles Lloyd(ts, as, a-fl), Gerald Clayton(p), Anthony Wilson(g)

2022年10月 4日 (火)

音楽シーズン到来! 続々届く新譜群から,今日はKeith Jarrett。 #KeithJarrett

_20221002"Bordeaux Concert" Keith Jarrett(ECM)

秋口になると,音楽シーズン到来ということで,続々と新譜が届いている。昨今,CDの購入枚数が減少する中でも,やはり音楽シーズンということで,この季節になると購入枚数が自然と増えるってところか。そんな中で今日はこのKeith Jarrettの新譜である。

新譜と言っても,Keith Jarrettは健康状態ゆえにもはや引退状態であるから,蔵出し音源ということになるが,それでも買ってしまうというのがファンの性ってところである。近年のKeith Jarrettのソロは第一部がアブストラクトな現代音楽的な響きが強く,第二部に入ると美メロやブルーズ,あるいはフォーク色を炸裂させるという構成が多かったが,このアルバムも出だしは結構アブストラクトで,あぁ,いつも通りねって感じなのだが,近年のアルバムとしては前半のアブストラクトさは抑制加減で,比較的聞き易い感じがする。その辺は前作のブダペストのライブと近いと言ってもいいかもしれない。それでもやはりアブストラクトさが勝っていることには変わりはないが...。。

このアルバムは最近には珍しく,アンコールの定番となっているスタンダードの演奏が行われていないが,それでも後半の美的なメロディ・ラインは健在なので,構成としてはKeith Jarrettのライブのパターンにははまっている。それをよしとするか否かは,各々のリスナーが考えればいいとして,もはや蔵出ししかないので,どれを聞いても大きな違いはないと言ってもよいだろう。厳しい言い方をすれば,それでも聞くか,もうええわとするかの時期に来ているようにも思える。

全盛期の長大なピアノ・ソロを知る人間としては,そっちを聞いている方がいいような気もするし,こういう短いインプロヴィゼーションを複数やる方が聞き易いというのも一方で事実である。私も長年Keith Jarrettのアルバムを買っては聞いている訳だが,もはや以前のような驚きはなくなっているところは微妙なのだ。

今回のアルバムもこれはこれでいい演奏だが,まぁこの辺でKeith Jarrettのソロ・アルバムは打ち止めでもいいかなって気がしている。それでもKeith Jarrettの快復を祈って星★★★★☆としよう。でもまた出たら買っちゃうかな...(苦笑)。

尚,ストリーミング版では聴衆の拍手がカットされていたが,CDには拍手が入っているので収録時間が若干違う。また,私はECMのCDは極力ドイツ盤を好んで買ってきたが,昨今の円安で国内盤の方が安いというのは困ったもんだなぁ。

Recorded Live at Auditorium de l’Opera National de Bordeaux on July 6, 2016

Personnel: Keith Jarrett(p)

2022年10月 3日 (月)

追悼,燃える闘魂,アントニオ猪木。 #アントニオ猪木

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アントニオ猪木が亡くなった。私の世代にとってはTVでのプロレス中継が盛んだったので,日本プロレス→全日本,新日本,果ては国際プロレスも中継が行われていた。アントニオ猪木については,ジャイアント馬場と袂を分かつ前にタッグを組んでいた時代も知っているし,アニメ,「タイガーマスク」には馬場,猪木が一緒に出てくるしねぇ。そういう時代だったのである。

そうした中で,アントニオ猪木の存在感は一種独特のものがあって,スープレックス等のげ技の切れ味よりも,打撃技や関節技,締め技の方が印象的で,「燃える闘魂」というキャッチ・フレーズもそういうところの方がぴったりくる人だったと思う。いろいろ言われるモハメッド・アリとの一戦を含め,格闘技らしさをまさに体現した人だったようにも思う。

アントニオ猪木と言えばどの技だろうかということで,どれも印象的な中で,今回貼り付けたのがナックルパートと延髄切り。どの写真でもそうだが,この表情こそ猪木の真骨頂だったなぁ。インディアン・デスロックも好きだったし,コブラツイストはどうした,卍固めはどうした,と言われそうだが,正直言って私は卍よりコブラの方がきくのではないかと思っていたりする。卍固めと言えば,ボブ・バックランド戦で猪木が卍を掛けた瞬間に,中継の放送時間終了ってのがあった。当時は生放送もしてたんだよなぁ。

そんな往時を思い起こさせる時代のアイコンがまた一人世を去った...。

R.I.P.

Photo_20221002073301

2022年10月 2日 (日)

Elton Johnのベスト盤:やはり70年代の曲の魅力が凄い。

_20220928 "Greatest Hits 1970-2002" Elton John(Mercury)

私は決してElton Johnの熱心なリスナーではない。保有しているアルバムも限られているが,改めてこのベスト盤を聴くと,実にいい曲を書く人である。ツアーからの引退を表明しているElton Johnであるが,現在の彼には私は興味はないとしても,過去の名曲には感じるところがある。

私が初めてElton Johnという名前を知ったのはラジオの深夜放送で"Saturday Night's Allright for Fighting"を聞いた時だからまだ小学生だったと思う。「土曜の夜は僕の生きがい」って邦題だったなぁなんて懐かしむ私ももはや高齢者であるが,考えてみればそれは1973年だから,ほぼ半世紀前ということにはショックを受ける。

それ以来,Elton Johnの曲にも触れてきたが,今回,このベスト盤を聴いて,やはりディスク1に収められた70年代の曲が素晴らしかったなと思う。"Daniel"然り,"Levon"然り,"Your Song"然り,"Candle in the Wind"然りである。しかしディスク2に入って80年代以降の曲を聞いてみると,全部がいいとは思わないとしても,突発的に素晴らしい曲が出てくるところに,才能は完全には枯渇していないということが明らかになる。

ついでに言うと,私が保有しているのは限定の4曲入りオマケ・ディスクがついた輸入盤3枚組だが,そのオマケに入っているGeorge Michaelとの"Don’t Let the Sun Go Down on Me"が実に素晴らしく,これを聴いた瞬間,無謀にもカラオケで歌うと決意した私なのだ。そんな思いにさせるぐらいいい曲を書く人だと思うし,Elton Johnの業績は永久に不滅と思う。星★★★★★。

国内盤にはボートラが入って,若干曲が違うようだ。また,ほかにも異なるヴァージョンも存在するようではあるものの,私にとっては自分が持っている3枚組でいいが,ヴァージョンにかかわりなく,どれを聞いてもまず間違いないと思う。

2022年10月 1日 (土)

久々のBlue Note東京:何と3年ぶりとは...。

Lee-ritenour-and-dave-grusin

私が海外からのミュージシャンのライブをBlue Note東京で観たのは2019年9月のCamila Mezaまで遡る。コロナ禍もあって,以前のようなライブ通いを停止してしまっていた訳だが,久しぶりにLee RitenourとDave Grusinのライブを観に行ってきた。なんと3年ぶり(!)とは,随分と時間が経過してしまったものだ。以前は「夜の部活」とか言って,年間20本以上ライブに通っていたことからすれば,この3年間の空白は,高齢者となってしまった私にとってはもったいなかったと言わざるをえない。

それはさておき,コロナ禍のせいもあって,Blue Note東京は現在は全席指定にしているようなのだが,今回,速攻で予約したので,かなりいいポジションで観ることができた。そこで,ある意味驚いたのがLee Ritenourの老けっぷりであった。Lee Ritenourってのは「永遠の好青年」みたいな,いつまでも若いイメージがあるが,今年で70歳になっているんだから,見た目が老けるのは当たり前だが,近くで見るとやっぱり年齢相応なんだなと思ってしまった。更にDave Grusinに至っては米寿だ。ミュージシャンは楽器を扱うのに指を使っているからボケないことはわかるが,米寿でまだ現役でライブをやってしまうってのも凄いし,彼らのやっている音楽は,決してヨイヨイのものではなかった。

やっているレパートリーはある意味お馴染みのものであり,目新しさとかは感じられるものではないとしても,レベルは高いもので,私としては佳きフュージョンを楽しませてもらった。やっぱりライブはいいよねぇと思った次第。でもLee Ritenourがドラムスに息子のWesley Ritenourを連れてくるのは理解できない訳ではないが,正直言って息子は親父ほどのミュージシャンではないので,ドラムス・ソロを聞かせても,う~む,イマイチって感覚があったのは惜しい。私がLee RitenourとDave Grusinのライブを観た時のドラムスはWill Kennedyだったが,レベル的にはWill Kennedy級が望ましいと思ったのも事実。

それでも演奏は十分楽しめたし,チャージは高くても仕方がないと諦めるしかない。私がベースのスラッピングの練習によく使う"Rio Funk"をやってくれたのもよかったしねぇ。さて,次は何に行くか(笑)。

Live at Blue Note東京 on September 29, 1st Set

Personnel: Lee Ritenour(g), Dave Grusin(p, key), Melvin Davis(b, vo), Wesley Ritenour(ds)

<追伸>Blue Noteのサイトに当日のセット・リストがアップされていたので,当日のステージの模様ともどもアップしておこう。
1. THE VILLAGE
2. HARLEQUIN
3. STONE FLOWER
4. CHOVENDO NA ROSEIRA
5. ETUDE
6. LETTING GO
7. STOLEN MOMENTS
8. LAY IT DOWN
9. RIO FUNK
EC. L.A. BY BIKE

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