正調ではないかもしれない。しかしこういうバッハも実に楽しい。
"J.S. Bach:Works & Reworks" Víkingur Ólafsson (Deutsche Grammophon)
今回取り上げるVíkingur Ólafssonについては,以前,Phillip Glassの音楽を演奏したアルバムを紹介したことがある(記事はこちら)。実に気持ちのよいアルバムで,その年のベスト盤にも選んだぐらい好きなアルバムであった。その後,Víkingur Ólafssonは順調にアルバムをリリースしているようであるが,昨今,特にクラシック畑の情報は必ずしもチェックが十分ではないので,本作のリリースも知らなかった。しかし,ほかのアルバムとの抱き合わせ購入時に何を買おうかと思っていて,猛烈に気になって購入したものである。
タイトル通りの構成と言ってよいが,1枚目が"Works"として編曲版を含むバッハの曲を演奏し,2枚目が"Reworks"として,エレクトロニクスを交えたアダプテーションした演奏が収められている。昨今,現代音楽のピアノにはまる私としては,"Reworks"への関心が上回っていたのだが,聴いてみるとこれがどちらもよいのだ。
"Works"の方も実は一筋縄ではいかない。レコード会社の情報にもある通り,「親しみ深い曲から少々サプライズ的なあまり注目されていない曲までを選曲」したもので,ある意味バッハをテーマとしたオムニバス盤のような趣もあるのだが,そこに全く違和感がないのである。そうしたところにバッハの音楽の懐の深さを感じる訳だが,更にそれが"Reworks"に至って,バッハの懐の深さを一層感じるというのがこの2枚組である。"Reworks"を聞いていると,Vangelisによる映画「ブレードランナー」を想起する瞬間やアンビエントな感覚もあって,こういうのってはまるんだよなぁ。
こういうプログラムは,クラシック音楽原理主義者からすれば,気に入らないものかもしれないと思いつつ,このピアノの響きに身を委ねれば,心地よいことこの上ないないのだ。やはりVíkingur Ólafsson,侮ってはならないピアニストである。ちょっと甘いとは思うが,星★★★★★としてしまおう。いずれにしても,次回来日する際には,是非とも聴きに行きたいと思った私である。
本作へのリンクはこちら。
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