DOMi & JD BECK:若いのに凄いねぇ...。
"NOT TiGHT" DOMi & JD BECK(Apeshit / Blue Note)
このアルバムはブログのお知り合いのSuzuckさんが取り上げられていて,その記事を拝見して,散歩しながらストリーミングで聞いたのだが,何ともいい具合のメロウ・グルーブ感が気になり,結局購入したもの。
フランス出身のキーボード奏者,Domi Lounaは2000年生まれ,ドラムスのJD Beckに至っては2003年生まれのまだティーンエイジャーという若い二人によるユニットなのだが,この完成度は結構凄いことだと思ってしまう。ゲストは迎えているものの,基本的なサウンドはこの二人だけで作り上げていているのだが,この何でもできてしまう感には驚かされる。
ストリーミングでながら聞きで聞いていた時はよくわからなかったのだが,JD Beckの叩き出すドラムスのニュアンスは実に細かいし,Domiのキーボード・ワークも見事なものなのだ。それをセルフ・プロデュースで作り上げてしまう才能は大したもので,Anderson .Paakが自身が設立したApeshitレーベルに迎えたというのもうなずける。しかもこのアルバムはそのApeshitと名門Blue Noteの2レーベルが並列的にリリースするというもので,これだけでも凄いことである。
まぁ,本作をジャズの文脈だけで捉えようとするとかなり無理があると感じられるものであり,コンテンポラリーな音楽の多様な要素を吸収して出来上がった作品と言ってよいと思える。そこから生み出されるグルーブ感が何とも心地よいのである。私が最も感心してしまったのはKurt Rosenwinkelが参加した"Whoa"である。この手の音楽にはギターって不可欠と思っていたのだが,このアルバムでギターが参加しているのはこの"Whoa"1曲のみなのだ。だからこそ,Kurt Rosenwinkelのギターの突出感が生まれるというのも,彼らの計算ずくだったとすれば,それこそ恐ろしい。そしてこのKurt Rosenwinkelのソロが何ともカッコいいのである。
また,ThundercatやMac DeMarco,Snoop Dogg,Busta Rhymes,そしてAnderson .Paak等のゲストの使い方も適材適所って感じである。ジャズ界からはなんとHerbie Hancockが参加して,懐かしのヴォコーダーで歌っているが,ピアニストというよりもヴォーカリストとしての参加の意味合いのように感じさせるのは,Domi Lounaを立てたってことだろうか。
こんな最小限のユニットでこんな音楽を作り出してしまうということこそ,驚きのデビュー作と言ってよいように思う。そうした驚きも含めて星★★★★★としてしまおう。音的にはローファイな感覚もあるが,おそらくそれも計算の上ってところか。いやはや凄いですわ。
Personnel: Domi Louna(key, vo), JD Beck(ds, vo), Thundercat(b, vo), Mac DeMarco(vo), Herbie Hancock(p, vocoder), Anderson .Paak(vo), Snoop Dogg(vo), Busta Rhymes(vo), Kurt Rosenwinke(g), Lara Somogy(harp), Leah Zeger(vla, vln), Isaiah Gage(cello), Chloe Tallet(fl, piccolo), Stephen Pfeifer(b)
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コメント
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閣下、ありがとうございました。m(_ _)m
面白い作品でしたね。
ぱっと見の外見に騙されずに、ちゃんと音楽を聴くといいですよね。
若い人の技術と発想には、頭が追いつきません。。
でも、音楽に身を任せれば、それで良いということで。汗
私の投稿のリンクを置いていきますね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/08/post-2591cc.html
投稿: Suzuck | 2022年9月 3日 (土) 09時57分
Suzuckさん,こんにちは。リンクありがとうございます。
>閣下、ありがとうございました。m(_ _)m
こちらこそご紹介ありがとうございました。
>面白い作品でしたね。
>ぱっと見の外見に騙されずに、ちゃんと音楽を聴くといいですよね。
Suzuckさんの間口の広さに驚愕です。そもそも,よくこういうのを聞こうと思いましたよね。そのことが素晴らしいです。
>若い人の技術と発想には、頭が追いつきません。。
>でも、音楽に身を任せれば、それで良いということで。汗
はい。音楽に関しては,気持ちよく時間が流れていく一方,彼らの技量に驚かされました。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年9月 3日 (土) 17時07分