衰え知らずのCharles Lloydの新作は三部作の第一弾。もはや「幽玄なる響き」だ。
"Trios: Chapel" Charles Lloyd(Blue Note)
今年84歳となったCharles Lloydという人には「衰え」という概念はないらしい。今回のアルバムも3つの異なるトリオによる三部作の一つというのだから,創造に対する取り組みは更に盛んになっているとさえ思ってしまう。
今回のパートナーはECMにもデュオ作を残すBill FrisellとThomas Morganである。彼らの音源を聞いていれば,本作でもだいたいどういう感じになるだろうという予想はつくが,こちらが想像している通りの音と言ってもよい。内省的な響きを感じさせながら,もはやこの音は主題にも書いた通り,「幽玄」と言い換えてもいいとさえ思えるものだ。
この三者による対話には刺激は乏しいと感じるリスナーがいても不思議はない。しかし,これはそもそも刺激を求めるべき音楽ではないのだ。Marvelsではアメリカーナ的な音を出しているCharles Lloydがここでやっている音楽は,Marvelsとはタイプを異にしているが,それでもやっぱりCharles Lloydだと思わせてしまうところは凄い。
冒頭のBilly Strayhorn作"Blood Count"からそうしたCharles Lloydらしさが横溢しているが,それに続くオリジナルに混じって演じられるBola de Nieve(Villa Fernandez Ignacio Jacinto)の"Ay Amor"を,アルバム"Tone Poem"に続いて演奏しているということは,この曲を相当気に入っているということかもしれないが,それぐらい哀愁溢れるメロディ・ラインを持つ曲で,これが実によい。更にそれに続く"Beyond Darkness"で聞かせるアルト・フルートの響きには心底痺れてしまう。最後に収められた"Drotea’s Studio"は,少々牧歌的な雰囲気も醸し出して,ストイックさも感じさせる幽玄さから,やや弛緩に向かう終幕も実にいい雰囲気だと思える。
やはりCharles Lloyd, 恐るべき老人と言わざるをえない。星★★★★☆。因みにCharles Lloydのバンド,Marvelsは最新のDown Beatの国際批評家投票で,#1 Jazz Groupに選出されているってのも凄いことで,ここでも恐るべき老人ぶりは実証されている。
Recorded Live at Elizabeth Huth Coates Chapel, Southwest School of Art, San Antonio, Texas
Personnel: Charles Lloyd(ts, a-fl), Bill Frisell(g), Thomas Morgan(b)
本作へのリンクはこちら。
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コメント
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こんにちは。
Marvelsの時のチャールス・ロイドもけっこういいのですが、その選抜メンバーでの、ある意味素朴な感じもするこのトリオ、もともとメンバーが好きなメンバーばかりということもあって、何度も聴きました。
さすがロイドは年齢を感じさせない演奏ですし、ここまでやってくれると、うれしくなりますね。3部作の2作目が今月下旬に出るようなので、楽しみにしています。
当方のリンクアドレスは下記の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2022/07/post-047763.html
投稿: 910 | 2022年8月 6日 (土) 18時36分
910さん,こんばんは。リンクありがとうございます。
>Marvelsの時のチャールス・ロイドもけっこういいのですが、その選抜メンバーでの、ある意味素朴な感じもするこのトリオ、もともとメンバーが好きなメンバーばかりということもあって、何度も聴きました。
Marvelsはアメリカーナの世界ですが,これは違う方向性ですね。何をやってもさまになってしまうところがCharles Lloydの凄いところって気がします。
>さすがロイドは年齢を感じさせない演奏ですし、ここまでやってくれると、うれしくなりますね。3部作の2作目が今月下旬に出るようなので、楽しみにしています。
日本に来た時のライブなんかでは時差ボケを感じさせたりして,年齢相応みたいなところもありますが,アルバムでは本当に矍鑠としていますね。私もかくありたいと常々思っています(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年8月 6日 (土) 21時11分
閣下、リンクをありがとうござました。m(_ _)m
>年84歳となったCharles Lloydという人には「衰え」という概念はないらしい。
御意!!
ロイドの自由な発想や歌心と、フリゼールやモーガンとの相性の良さがよく出ていて、ロイドらしいポップでカラフルな演奏でした。
で、、それぞれの楽器が声となって、素敵なハーモニーとなっている多幸感に溢れた演奏ですよね。
次作も楽しみです!!
私のリンク先を置いていきます!
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/07/post-510b22.html
投稿: Suzuck | 2022年8月 7日 (日) 13時59分
Suzuckさん,こんにちは。りんくありがとうございます。
>ロイドの自由な発想や歌心と、フリゼールやモーガンとの相性の良さがよく出ていて、ロイドらしいポップでカラフルな演奏でした。
>で、、それぞれの楽器が声となって、素敵なハーモニーとなっている多幸感に溢れた演奏ですよね。
はい。どうすれば年齢を重ねてもこういう活動ができるのかということを教えて欲しいです。まさに不老不死を具現化してますね。
>次作も楽しみです!!
3部作の完成が楽しみですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年8月 7日 (日) 16時31分