「オフィサー・アンド・スパイ」:Polanskiを観るのは久しぶりだが,相変わらずいいねぇ。
「オフィサー・アンド・スパイ("J'accuse")」(’19,仏/伊)
監督:Roman Polanski
出演:Jean Dujardin,Louis Garrel,Emmanuelle Seigner,Grégory Gadebois,Vincent Perez
Roman Polanskiの映画を観るのは「ゴースト・ライター」以来だから,随分久しぶりのことだ。しかし,フランス本国では2019年に公開されていた映画が,今頃になって日本で公開ってのはさすがに時間が経ち過ぎではないのかと思ってしまう。それでも,「ゴースト・ライター」にも感じられた静かなサスペンスってものを感じさせて,撮影当時は既に80代半ばを過ぎていたと思しきRoman Polanskiの創造力は,Clint Eastwood同様のエネルギーを感じると言わざるをえない。そういう意味では公開されてあだけでもよかったと考えることにしよう。
この映画,ドレフュス事件の歴史的背景を知っていれば,更に興味深く見られるかもしれないが,予備知識なしでも十分い見応えのある映画になっている。ドレフュス事件は反ユダヤ感情による大冤罪事件ってことが,この映画を見ていれば明らかになるが,Polanskiはまさに映画のタイトル通り,その事件や経緯を「弾劾」している。そもそも現代の"J'accuse"は,映画にも登場するエミール・ゾラが,新聞に掲載したこの事件に関する告発記事のタイトルから取られていることは,おそらくフランス人,あるいはフランスの歴史に詳しい人ならわかるのだろう。それに比べると「オフィサー・アンド・スパイ」ってタイトルは,米国でのタイトル,”An Officer and A Spy”に基づくものとしても,ちょっと訳が分からないって気がしてしまう。
それはさておきである。この映画に描かれていたことが,本当にあったということ自体が恐ろしいが,まだそれを修正する力をフランスという国が持っていたのはよかったとしても,反ユダヤの感情ってのは実に根深かったのねぇなんてついつい思ってしまう。そうした背景を描きながら,正義対国家権力という構図はありがちとは言え,結構キリキリした感覚を覚えさせてくれるのが,まさにPolanskiの描くサスペンスであったと思う。
演出や演技に加えて,19世紀後半のパリを再現した美術も立派であった。また,撮影の若干暗い色調もPolanskiっぽいなぁって思っていた私であった。私にとっては実に面白く観られた映画だが,無茶混みだった「トップガン マーヴェリック」と対照的な観客の少なさ,劇場のスカスカ度には笑ってしまった。まぁ仕方ないって言えば仕方ないが,もったいないねぇ。星★★★★☆。
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