Joaquin Phoenixの演技の振れ幅におののく「カモン カモン」
「カモン カモン ("C'mon C'mon")」('21,米,A24)
監督:Mike Mills
出演:Joaquin Phoenix,Gaby Hoffmann,Woody Norman,Scoot McNairy
Joaquin Phoenixと言えば,オスカーも受賞した「ジョーカー」での演技が鮮烈であった。「ジョーカー」では狂気の沙汰を演じ切って,実に強烈な印象を残した訳だが,「ジョーカー」の次にこういう作品を選ぶところが,役者としての自負心を感じさせるものであった。そして観ているこっちはその振れ幅に驚いてしまう訳である。
白黒映画ってのがそもそも渋いが,この映画には白黒が似つかわしいと思わせるような映画である。そして,この映画を観ていて,私が感じたのは子育ての大変さってことだった。今や私の娘はまだ学生ながら,成人したこともあって,過去の自分にも似たようなことがあったなぁなんてことを感じていたのである。この映画の子役,Woody Normanが演じるJesseのようなこまっしゃくれたというか,センシティブな子供だったらどうなっていただろうなんて,ついつい自己投影してしまったのであった。その一方で,Joaquin Phoenixの妹を演じるGaby Hoffmannの身勝手ぶりにも辟易とするところに,家族の難しさってのを感じてしまうのである。その辺がリアルに迫ってきてしまう映画と言ってもよい。
劇中でJoaquin Phoenixがいろいろな子供たちにインタビューするシーンが出てくるが,その台詞回しには,脚本も担当したMike Millsの心情が反映されていると思うが,大人びた発言の連続である。彼らが本当に台詞のように感じているならば,将来は明るいと思うが,世の中そんなにうまくは行かないとも思ってしまう。
だが,ある意味淡々と話が進む中で,伯父と甥という関係性の中で,共感のようなものが芽生えていく様を見ていると,子供もいろいろだよなぁなんて,改めて感じてしまった私であった。つまり,観ている私の共感も醸成してしまうというなかなか面白い映画であった。この映画が日本でヒットするとは思えないが,観に行ってよかったと思える映画であった。星★★★★☆。
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