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2022年4月30日 (土)

Joaquin Phoenixの演技の振れ幅におののく「カモン カモン」

Cmon-cmon 「カモン カモン ("C'mon C'mon")」('21,米,A24)

監督:Mike Mills

出演:Joaquin Phoenix,Gaby Hoffmann,Woody Norman,Scoot McNairy

Joaquin Phoenixと言えば,オスカーも受賞した「ジョーカー」での演技が鮮烈であった。「ジョーカー」では狂気の沙汰を演じ切って,実に強烈な印象を残した訳だが,「ジョーカー」の次にこういう作品を選ぶところが,役者としての自負心を感じさせるものであった。そして観ているこっちはその振れ幅に驚いてしまう訳である。

白黒映画ってのがそもそも渋いが,この映画には白黒が似つかわしいと思わせるような映画である。そして,この映画を観ていて,私が感じたのは子育ての大変さってことだった。今や私の娘はまだ学生ながら,成人したこともあって,過去の自分にも似たようなことがあったなぁなんてことを感じていたのである。この映画の子役,Woody Normanが演じるJesseのようなこまっしゃくれたというか,センシティブな子供だったらどうなっていただろうなんて,ついつい自己投影してしまったのであった。その一方で,Joaquin Phoenixの妹を演じるGaby Hoffmannの身勝手ぶりにも辟易とするところに,家族の難しさってのを感じてしまうのである。その辺がリアルに迫ってきてしまう映画と言ってもよい。

劇中でJoaquin Phoenixがいろいろな子供たちにインタビューするシーンが出てくるが,その台詞回しには,脚本も担当したMike Millsの心情が反映されていると思うが,大人びた発言の連続である。彼らが本当に台詞のように感じているならば,将来は明るいと思うが,世の中そんなにうまくは行かないとも思ってしまう。

だが,ある意味淡々と話が進む中で,伯父と甥という関係性の中で,共感のようなものが芽生えていく様を見ていると,子供もいろいろだよなぁなんて,改めて感じてしまった私であった。つまり,観ている私の共感も醸成してしまうというなかなか面白い映画であった。この映画が日本でヒットするとは思えないが,観に行ってよかったと思える映画であった。星★★★★☆。

2022年4月29日 (金)

Milesボックスから今日はカーネギー・ホールのライブ:2枚組になってるって今頃気づく私(爆)。 #MilesDavis

_20220426 "At Carnegie Hall" Miles Davis(Columbia)

Miles DavisのColumbiaレーベルにおけるコンプリート・ボックスを入手して,結構な時間が経過しているが,枚数が多いので,聞くアルバムと聞かないものはかなりわかれてしまう。正直言って本作なんかはこれまで一度も聞いていなかったかもしれない。だって,2枚組になっているのに今頃気づいているのだから,おそらく聞いていない。

中山康樹の「マイルスを聴け!」によれば,このボックスに入っているヴァージョンはコンプリート版として,ライブ当日のセットの通り収録されたもののようだ。何を今更へぇ~とか言ってんだかって気になってしまうが,まぁいいや(笑)。このコンプリート版の目玉は「アランフェス」のライブ演奏の収録ってことになるのだろうが,改めて全編を通して聞いてみると,なかなか面白いアルバムだ。

冒頭の"So What"からして,「あの」イントロがGil Evans率いるオーケストラによって奏でられ,おぉっ!となってしまう(笑)。このアルバムはオーケストラとの共演曲とクインテットの演奏が混在しているが,当時のGil Evansのアレンジを生で再現するのはやっぱり難しいのかなぁと感じるところもあるアルバムである。特に注目の「アランフェス」は,リリカルな演奏だが,まぁこれぐらいはいけるだろうって程度の演奏と言ってよいかもしれない。決して悪い出来だとは思わないが,この曲に限らず,Gil Evansのオーケストラのライブ・レコーディングは難しいと思えるのだ。後にエレクトリック化して,リフはLew Soloffに任せるような演奏なら問題なくても,ここでのオーケストラの編成はライブ音源としてきっちり捉えるのは容易ではなかったはずだ。

なので,そういうことを気にしないで聞けるクインテットの演奏の方が間違いなく楽しめるというのが惜しいと言えば惜しいところ。Milesのことであるから,駄盤ではないが,やっぱり今後もプレイバック頻度は上がらないだろうなぁ。でも聞きようによっては楽しめるので念のため。星★★★★。

Recorded Live at Carnegie Hall on May 19, 1961

Personnel: Miles Davis(tp), Hank Mobley(ts), Wynton Kelly(p), Paul Chambers(b), Jimmy Cobb(ds) with Gil Evans Orchestra<Gil Evans(arr, cond), Ernie Royal(tp), Bernie Glow(tp), Johnny Coles(tp), Louis Mucci(tp), Jimmy Knepper(tb), Dick Hixon(tb), Frank Rehak(tb), Julius Watkins(fr-h), Paul Ingraham(fr-h), Bob Swisshelm(fr-h), Bill Braber(tuba), Romeo Panque(cl, fl), Jerome Richardson(cl, fl), Eddie Caine(cl, fl), Bob Tricarico(cl, fl), Danny Bank(cl, fl), Janet Putnam(harp), Elvin Jones(perc), Bob Rosengarden(perc)>

2022年4月28日 (木)

追悼,Radu Lupu

Radu-lupu

ネットを見ていたら,Radu Lupuの訃報を見つけて愕然としてしまった。去る4月17日に亡くなったとのことである。

Radu Lupuは2019年に引退はしていたが,2012年11月8日の東京オペラシティにおけるオール・シューベルト・プログラムを聴けたのは幸いだったとしか言いようがない。

私にとってはRadu Lupuと言えばシューベルトである。シューベルトのピアノ曲の魅力に気づかせてくれたのは間違いなくこの人だった。訃報に接して,私がプレイバックしたのはD960であった。あの繊細なリリシズムを生で聴くことはできなくなったが,彼が遺した音源は不滅である。改めて素晴らしいピアニストであった。

R.I.P.

2022年4月27日 (水)

Tord Gustavsenの新譜:内省的な響きが思索へ誘う。 #TordGustavsen

_20220425 "Opening" Tord Gustavsen(ECM)

待望のTord Gustavsenの新作の登場である。前作"The Other Side"が2018年だったので,4年近くの時間が経過している。私はこれまでTord Gustavsenの音楽を基本的に高く評価してきた。辛めの評価をしたのは"Restored Returned"ぐらいで,その内省的で美しい響きにはまいってしまうというのが常なのだ。そんなTord Gustavsenの新作も,私の想像そのままの響きが届けられたと言ってもよい。

これまでのアルバムからはベーシストが交代しているが,Steinar Raknesが一部で響かせるアルコの響きやエレクトロニクスの活用が,見事にTord Gustavsenの音楽と相乗効果を生み出すという感じである。いつもながらのことではあるが,これだけ内省的な響きを出されれば,聞いている方は思索ための時間を取ることが可能になりそうだとさえ思ってしまう。世の中が騒々しい中で,こうした時間を与えてくれるこういう音楽は貴重だ。10曲目の"Ritual"のみ,ほかと違ったアブストラクトな感覚を持つものとなっているが,これはこれでありだと思えるものの,やっぱり浮いている。

前作をレビューした時にも書いたのだが,私はTord Gustavsenの音楽を聞いていると,宗教的なところを感じてしまうが,ほぼ全編を通じて,静謐な中に静かな祈りでも捧げたくなるような音楽なのだ。こういう音楽をライブで聞いたらどうなってしまうんだろうと思ってしまうが,部屋で聞いていたら,久しぶりに膝を抱えたくなってしまった(笑)。ちょっと甘いと思いつつ,星★★★★☆。

Personnel: Tord Gustavsen(p, electronics), Steinar Raknes(b, electronics), Jarle Vespestad(ds)

2022年4月26日 (火)

Matt Slocumの新作:水彩画のようなタッチと言うべきか。穏やかな気分にさせてくれる。 #MattSlocum

_20220424"With Love and Sadness" Matt Slocum(Sunnyside)

Matt Slocumの前作,"Sanctuary"はなかなかよく出来たピアノ・トリオによるアルバムであった(記事はこちら)。前作のピアノは最近新作をリリースしたGerald Claytonだったが,本作ではTaylor Eigstiに代わり,Walter Smith IIIがテナーで加わるという布陣である。ベースは引き続きLarry Grenadierであるから,これはなかなか期待できるメンツである。

そして,本作でも前作同様,趣味のよい音楽を聞かせてくれるが,これは決して「熱い」ジャズではない。私が受けた感覚は主題のように,水彩画とでも言いたくなるような淡さを感じさせるタッチと言えばいいだろうか。一言で言えば穏やかな音楽なのである。だが,その背後にあるテーマは結構深いものであり,差別を含めたネガティブな社会的な問題からの解放や変化という観点で,収められた7曲の組曲の中でマイナー・キーからメジャー・キーへ転換していくというものだ。それでも,最後の"America Revisited"はPat Methenyの"This Is Not America"にインスパイアされたものとある。"This Is Not America"がハリケーン・カトリーナによる被害に対する音楽的回答であったというMatt Slocumの理解に対して,その後のアメリカは進化したかどうかについては疑問を提示しているから,楽観的な視点で書かれてはいないということになるが...。だが,そうした背景を理解しなくても,純粋に音楽だけでも楽しめるものだと思える。ただ,Matt Slocumの心象を含み置けば,音楽に対する感覚も異なって来るとは思う。

更にMatt Slocumが本作でこだわったのはアナログによる制作であったとライナーにはある。そうした意味では本来はアナログLPでA面からB面への流れで聞いて欲しいというところなのだろう。

いずれにしても,Matt Slocum自体の日本における知名度はまだまだってところだろうが,本作にしろ,前作にしろ,更に注目されてよいアルバムであり,Matt Slocumは作曲能力も含めてなかなかの才人と思う。そうした意味も含めて,星★★★★☆としよう。

Recorded on June 30, 2021

Personnel: Matt Slocum(ds), Walter Smith III(ts), Taylor Eigsti(p, el-p), Larry Grenadier(b)

2022年4月25日 (月)

「インファナル・アフェア」:もう香港ではこんな映画は作れないのか...。

Infernal-affairs 「インファナル・アフェア ("Infernal Affairs")」('02,香港)

監督:Andrew Lau, Alan Mak

出演:Andy Lau, Tony Leung, Anthony Wong, Eric Tsang, Kelly Chen, Sammi Cheng

後にMartin Scorseseによって「ディパーテッド」としてリメイクされ,オスカーまで獲ってしまったという映画のオリジナルを久しぶりにDVDで観た。私がこのシリーズを観たのは,全て機内エンタテインメントだったと思うが,改めて観てみて,これが実によく出来たもので,ハリウッドがリメイクしたくなるのもよくわかるって感じであった。

だいたい100分強でストーリーがスピーディに展開するってのがいいし,弛緩する隙を与えないって感じである。かつ,おそらく最初から3部作作ることを念頭にシナリオが書かれていたと思われるところも,作品としての企画力は大したものだと思う。

しかし,この映画のような香港ノワールというジャンルは香港の中国化によって,表現には制約を科せられることもあって,もはや風前の灯と言ってもよいかもしれないし,「香港映画」そのものが存在し得なくなるような気がしてならない。昨今,私が知らないだけかもしれないが,香港映画についてあまり聞こえてこないのは,コロナ禍のせいもあるだろうが,映画人が香港を出て行ってしまうということも十分考えられるだろう。

この面白い映画を観ながら,そんなことを思っていた私であった。星★★★★☆。残り2作もそのうち見ることにしよう。

2022年4月24日 (日)

超爽快!坂田明と森山威男のデュオが発掘された。

_20220419 「ミトコンドリア」坂田明&森山威男(Trost)

私がフリー・ジャズに求めるものは「ぐうぁ~」(笑)という音の塊によって生み出される爽快感と言ってもよい。私にとってフリー・ジャズは深刻ぶって聞く音楽ではない。小難しいことを考えるのでなく,身体を揺らすように煽って欲しいのだ。山下洋輔トリオの演奏なんてのはその筆頭みたいなところがあるが,その山下トリオをかつて支えた坂田明と森山威男の86年のデュオ・ライブ音源が突如発掘されて,なぜかオーストリアのTrostレーベルからリリースされた。しかもミキシングをやっているのはJim O'Rourkeってなんでやねん?

それはさておき,この二人がデュオをやれば,大体どういう音になるかは想像できるのだが,結果は予想通り。笑ってしまうのは,こういう音楽を教会でやってしまうってことだが,これが強烈である。坂田明らしいフレージングを煽る森山威男のドラムスによるパルスに興奮しない奴はもぐりだと言いたくなる。冒頭の坂田明のクラリネット・ソロからして期待が高まるが,全編を通して,こういうのをやってくれ!というこちらの期待に応える音を出し続ける二人である。

しかも,ディスク1の最後では懐かしの"Ghosts"をやっているし,「モントルー・アフターグロウ」同様,「赤とんぼ」を引用する坂田明であり,ディスク2冒頭では「キアズマ」もやってしまうというサービスぶりである。「ダンス」の途中では「チュニジアの夜」は引用するわ,坂田の裏で森山は叩きまくるわで,まさにこれこそ爽快感満点のフリー・ジャズである。

よくぞこんな音源を発掘してくれたと言いたくなるアルバム。星★★★★★としてしまおう。たまりまへん。

Recorded Live at 柏教会 on May 24, 1986

Personnel: 坂田明(as, cl), 森山威男(ds)

2022年4月23日 (土)

「未知との遭遇」をちゃんと観たのは初めてかもなぁ...。

Photo_20220417202301「未知との遭遇("Close Encounters of the Third Kind")」('77,米/英,Columbia)

監督:Stephen Spielberg

出演:Richard Dreyfus, François Truffaut, Teri Garr, Melinda Dillon, Cary Guffey

これも先日,家人が出掛けている間に観た映画。

私が一番映画を観ていたのは中学生の頃で,高校生になってオーディオ・セットを手に入れてからは映画より音楽が主になってしまったことは以前にも書いたことがあると思う。なので,この映画は丁度私が音楽に軸足を移した頃で,当時の大ヒット映画でありながら,ちゃんと観た記憶がない。大昔にレンタル・ビデオで見たかもしれないが,それも記憶の彼方である。そもそも「E.T.」だって見たことがないんだから何をかいわんやである。

それでもって,この映画をNetflixで観た訳だが,Spielbergらしいファンタジーだよねぇって思ってしまう。宇宙人の捉え方は性善説と性悪説にわかれるところだが,これはもう完全に前者である。そのこと自体には私としても全然問題はないと思うのだが,この映画の問題点は,間延びしたシナリオだと思ってしまう。Richard DreyfusたちがDevils Towerを目指すシークエンスは明らかに冗長だし,説明不足の部分もあるので,尺はもう少し短くできたと思う。

そうした観点では,この映画は決定的な傑作とは思えないのだが,気持ちよく観られる映画であることは間違いない。私にとってはRichard Dreyfusの妻を演じるTeri Garrとか懐かしい限りだが,当時の彼女はファニー・フェイス的あるいはコメディエンヌ的な役が多かったなぁなんて改めて思ってしまった。懐かしの「警部マクロード」(笑)。ってことで,この映画自体は,Douglas Trumbllの特撮が見事なことも併せて星★★★★ぐらいでいいだろう。

2022年4月22日 (金)

”It’s a Blue World”:ムーディという言葉はこのアルバムのためにある! #MelTormé

_20220416-2 "It's a Blue World" Mel Tormé (Bethlehem)

ただでさえジャズ・ヴォーカルをあまり聞かない私であるが,男性ヴォーカリストとなると更に輪を掛けるって感じである。Al Jarreauなんかは純粋ジャズ・ヴォーカルとは言いづらい中,誰のアルバムを持っているかなぁなんて考えると,思いつくのはこのMel TorméとJohnny Hartman,Frank Sinatra,Jimmy Rushing,それにMark Murphyぐらいではないか。

それはさておき,このアルバム,実にムーディである。ムーディ以外の表現が見つからないと言ってもよいバラッド・アルバムであり,それを歌うのがMel Torméのヴェルヴェット・ヴォイスと来ては,もはやとろけそうな気分になる。還暦過ぎたオヤジがどういうシチュエーションで聞くのよ?って言われてしまいそうだが,気まぐれである(笑)。しかし,気まぐれで聞いても,これだけ素晴らしい歌唱を聞かされてはまいってしまう。

Mel Torméは私が保有するほかのアルバムではスウィンギーな歌唱も聞かせるが,ここではバラッドに絞っての歌唱となっているのが本盤の最大の特長であり,美点。これはバラッド・シンガーとしてのMel Torméの実力を示した作品であり,ジャケットの素晴らしさも含めて評価すべきアルバム。このアルバムが作り出すムードに痺れてしまい,ついつい評価も甘くなり,星★★★★★。

ただねぇ,一点文句を言っておけば,私の保有する国内盤(多分中古で入手)はリリースされた時期が随分前(90年頃?)ということもあって,クレジットに関しては全然配慮していないというか,情報があまりにも欠落している。確かにライナーの解説はそれなりに施してあるものの,アレンジャーが誰かもはっきりとはわからないというのはさすがによくないと思える。昨今は裏ジャケのコピーが付くのは当たり前になってきたが,この国内盤のリリース当時はそういうこともなかったということだ。こういうところはまだまだCDそのもののリリースに関しても発展途上だったと考えてもいいかもしれない。まぁ,30年以上前では仕方ないか。

Personnel: Mel Tormé(vo)

2022年4月21日 (木)

久しぶりに「でかくて重いMyung-Whun Chungボックス」を開ける(笑)。

_20220417 "Rimsky-Korsakov: Sheherazade / Stravinsky: L'Oiseau de Feu Suite" Myung-Whun Chung / Orchestra de l'Opera Bastille (DG)

韓国で編集されたと思しきチョン・ミュンフンの33枚組ボックスを私が購入したのは11年前のことである。その時にもボックスのことは記事にしているが,音楽については何も書いていなかった(その時の記事はこちら)。当時の記事にも書いているが,DGにおけるチョン・ミュンフンのレパートリーってのは一筋縄ではいかないというのは今も同様に感じる。今回,このボックスを取り出すのも久しぶりなのだが,買ってから全然聞いてないなぁと感じるほど放置状態が続いていた。

そうした中で,今回聴いたのが「シェヘラザード」と「火の鳥組曲」のカップリングである。変わったレパートリーが多いチョン・ミュンフンにしては往時のよくある名曲の組合せってのが珍しいということもあるし,当時のチョン・ミュンフンの指揮っぷりを考えれば,こういう曲も聞いてみるのもたまにはいいかって感じで取り出したものである。

正直言って,ストラヴィンスキーはさておき,私の場合,リムスキー・コルサコフなんて聞く機会は滅多にない。このアルバムのほかに唯一保有しているリムスキー・コルサコフは父の遺品のコンドラシン/ACO盤だけである。オーケストラを鳴らすにはいい曲だとは思うが,こういう曲は決して私の趣味じゃないんだから聞く頻度が上がらないのは当然で,オケの演奏ならほかの曲を優先するってのが正直なところ。まぁ,それでもこ こでの早めのテンポでかっ飛ばす「シェヘラザード」ってのも久々に聞いて,そのダイナミックな演奏に高揚感を得たってところである。こういう音楽はボリュームを上げて聞かなければダメなので,家人のいぬ隙をねらって(笑)聞くしかない。ということで,これを聞いたのも先日の週末に家人が出掛けた合間のことであった。

カップリングの「火の鳥組曲」は1919年版だが,この曲も聞かないなぁ。通常聞いているのはバレエ音楽の方だから,組曲の音源はこれぐらいしか保有していないはずである。それを放置しているのだから,聞くチャンスなんてほとんどなかったと言ってもよいのだが,「魔王カスチェイの凶悪な踊り」なんて,文字通り凶悪感がたっぷりで面白かった。それでもこの曲のフィナーレを聞いていると,ついついYesのライブのオープニングを思い出してしまうのが常の私なのだが...。

いずれにしても,たまにこういう音楽を聞くと新鮮な気分を得られるところもあって,やはり「放置」はいかんと思ってしまった。

2022年4月20日 (水)

Amazon Primeで観た「サンダカン八番娼館 望郷」:田中絹代が凄い!

Photo_20220417195801 「サンダカン八番娼館 望郷」(’74,東宝)

監督:熊井啓

出演:栗原小巻,田中絹代,高橋洋子,田中健,水の江瀧子

先日,1974年のキネ旬ベストテンの第1位に輝いた本作をAmazon Primeで観た。この1年近く,BSで再放送されていた「黄金の日日」を見て,栗原小巻にはまってしまったというのがこの映画を観た一番の理由ではあるが,非常に評価の高いこの映画が公開された頃は中学一年ではさすがに見に行くこともなかったので,改めてということで鑑賞したもの。それでもタイトルだけは妙に記憶に残っていた作品だが,結論から言えば,田中絹代が凄い。

栗原小巻はまだ20代後半ぐらいでその美貌の素晴らしいことは言うまでもないが,この映画は栗原小巻の美貌だけで終わる映画ではない。一番凄いのは田中絹代だとしても,その若い頃を演じた高橋洋子も素晴らしい演技で,彼女たちの演技があってこそ,この映画は一級品になったと言いたい。それに比べると当時の田中健の大根役者ぶりが微笑ましいぐらいであるが,まずは田中絹代である。

老境に達しつつ,悲しい過去を抱えながら,凛としたところを見せる田中絹代の演技だけ見ているだけでもこの映画は価値があると言いたくなる。ある意味飄々としているという感覚もあるのだが,ラスト近くの栗原小巻との別れのシーンには単純に涙した私である。まじでうまい。高橋洋子の造形はややステレオタイプかなって気がしないでもないが,それでも田中絹代と高橋洋子の前では,栗原小巻は主役でありながら,完全に食われてしまっていると感じられるほど,この二人のインパクトが強い。

物語としてはかなり陰鬱なところがあるので,観て爽快になる映画ではない。むしろ見ていて辛くなる瞬間の方が多い。しかし,過去の歴史を振り返り,そういうこともあったのだということを噛みしめながら観るべき映画である。そしてとにかく田中絹代,そして高橋洋子があまりにも素晴らしいということは強調しておきたい。加えて,水の江瀧子の私のイメージを覆すここでの演技も見事であった。星★★★★☆。

2022年4月19日 (火)

ようやく到着:Brad Mehldauの新作。やっぱりこれは問題作だよなぁ。 #BradMehldau

Jacobs-ladder-cover_20220418182601 "Jacob’s Ladder" Brad Mehldau(Nonesuch)

NonesuchにプレオーダーしていたBrad Mehldauの新作がようやくデリバリーされた。発送通知から1か月以上ってのは,いくら何でも掛かり過ぎとは思うが,まぁ仕方ない。ついてきたオマケは裏ジャケ写真にBrad Mehldauのサインが入ったものだが,これは「う~む」って感じだなぁ(苦笑)。

音源としては既にダウンロード音源では聞いていたのだが,これはやはり問題作と言ってよいだろうし,基本的なテーマとしては「プログレ」があるのに加え,そこに宗教が絡むというところが難しい。その「プログレ」も,ロック的な音よりも,高度な技術の積み上げと「コンセプチュアル」という方法論的なところが重視されていているって感じか。ひな形として選ばれているのはRush,Gentle Giant,そしてYesであるが,おぉ,これぞプログレって感じさせるのは2曲目"Herr Und Knecht"ぐらいのもので,全体的なサウンドとしては,プログレと言うにはロック的要素が希薄なのである。

そういう意味で,プログレを好んで聞くリスナーにとっても,Brad Mehldauのジャズ・ピアノを期待するリスナーの双方にとって???となってしまうのではないか。だが,Brad Mehldauというミュージシャンの出自を考えれば,これまでのレパートリーに含まれていたロック曲の多さは明らかであったし,Beatles,Neil Young,RadioheadからSoundgardenまで何でもありだったのだ。これまでのアルバムではプログレシッブ・ロック・バンドのカヴァーは"10 Years Solo Live"でPink Floydの"Hey You"をやったぐらい(確かBBCのプログラムでもやっていたな)しかないはずなので,一気にプログレ・カヴァーが爆発したって感じだと言ってもよい。そうした出自も理解した上で私はBrad Mehldauの追っかけをしているので,この路線には全く問題は感じない。

だが,そこで出てくる音が,上述の通りロック的にならないところは意図的なものとしても,私のような年代のリスナーは"Herr Und Knecht"みたいなのをもっとやってくれた方が嬉しいと思うのだ。そうは言っても,Brad Mehldauはロック・ミュージシャンではないし,全編そういう音楽を作る気もなかろう。これはBrad Mehldauによる「プログレのアダプテーション」であって,プログレそのものだと思ってはならないというところだろう。コンセプトはしっかりしているし,Chris Thileがヴォーカルを担当する"Tom Sawyer"もいい出来だと思う。私はこうしたBrad Mehldauのチャレンジを前向きに捉えるので,多少の贔屓目があることは否定しないが,私個人としてはアルバムとしての評価は決して悪いものではない。最高評価にはできないとしても,最後に出てくる"Starship Trooper"が昔のYesのファンとしてはあまりに嬉しく,オマケも込めて星★★★★☆。

でも評価は絶対分かれるし,好き嫌いも分かれるに違いない。やっぱり問題作だ(笑)。7月に来日する時のプログラムは,ソロ,"After Bach"路線,それとコンチェルトだもんなぁ。変幻自在にもほどがある(爆)。

Recorded between April 2020 and January 2021

Personnel: Brad Mehldau(p, el-p, key, synth, org, ds, perc, vo, etc.), Marc Giuliana(ds), Paul Power(b-ds), John Davis(prog, sampling), Joel Frahm(ss, ts), Joris Roelofs(b-cl), Lavinia Meijer(harp), Motomi Igarashi-de Jong(linore), Pedro Martins(vo, g), Chris Thile(vo, mandolin), Becca Stevens(vo), Luca van den Bossche(vo), Tinkerbell(vo), Tobias Bader(vo), Safia McKinney-Askeur(vo), Timothy Hill(vo), Damien Mehldau(vo), Fleurine(vo), Cécile McLorin Salvant(vo)

2022年4月18日 (月)

Simon Phillips参加のJudas Priest:まだこの頃はヘビメタってよりハード・ロックだな(笑)。 #JudasPriest #SimonPhillips

Sin-after-sin "Sin after Sin" Judas Priest (Columbia)

先日,Simon Phillipsの新譜"Protocol V"を取り上げたところが,私がSimon Phillipsの名前を初めて意識したのは"801 Live",そしてJeff Beckの"There And Back"であった。前者は1976年のレコーディングだから,Simon Phillipsはまだティーンエイジャーだったというのは実に信じがたいことであった。後者は1980年だから,まだ20代前半という年代からは考えられないようなテクニシャンであった。

そんなSimon Phillipsは70年代からセッション・ドラマーとして活動していて,ヘビメタ・バンド,Judas Priestにも本作だけ参加している。今やJudas Priestはヘビメタの代名詞みたいになっているが,改めて本作を聴いてみると,ヘビメタと言うよりも,まだまだハード・ロックと言ってよい音である。Roger Gloverがプロデュースしていることもあって,Deep Purple的なところもそこはかとなく感じる。そうは言ってもアルバム後半になってヘビメタ風味が強まるので,バンドとしては過渡期だったのかなって感じだ。

そんな中でのSimon Phillipsであるが,本作のレコーディングが1977年前半だから20歳になるかならないかぐらいの頃であるが,何でもできちゃうのねぇって感じの余裕の叩きっぷりには,若い頃から凄いドラマーだったってのを改めて感じざるをえない。まぁ,私としては,Simon Phillipsつながりでこのアルバムをストリーミングで聞いたので,Judas Priestのファンからは何言ってんだかって感じかもしれないが,ある特定のミュージシャンから,日ごろ縁のないバンドの音も聞くのだから,それはそれで経験値の積み上げってことで(笑)。そういう意味では,ストリーミングあってこその音楽体験だよなぁ。

Recerded between January and March 1977

Personnel: Rob Halford(vo), K.K. Downing(g), Glen Tipton(g, p, org), Ian Hill(b), Simon Phillips(ds, perc)

2022年4月17日 (日)

またも高橋アキのピアノにはまる:”Piano Transfiguration”    #高橋アキ

_20220416"Piano Transfiguration" 高橋アキ(カメラータ・トウキョウ)

私は現代音楽のピアノ曲にかなりはまっていると言ってもよいが,その中でもPeter Serkinと高橋アキは別格の位置づけにある。大概,この二人が演奏する現代音楽のピアノ曲は私に訴求するところが大きいのだが,今回も例外ではなかった。購入したのは数か月前だが,記事のアップができていなかったのをようやくという感じである。このアルバムは高橋アキが献呈されたり,初演したりという縁のある作曲家の作品が揃っているが,まさに現代音楽における高橋アキという人のポジションを感じさせるものと言ってよい。

ディスク1冒頭の尹伊桑の"Interludium A"は「ザ・現代音楽」とでも表現したくなるようなダイナミズムを感じさせる曲だが,こういうのをライブ・レコーディングしてしまうというのが凄い。このアルバムにはもう1曲ライブ音源が入っていて,そちらはMorton Feldmanのその名も"Piano"である。ある意味,ダイナミズムとミニマリズムという「対極」にあるような2曲を同じ演奏会でやってしまうのも素晴らしいが,それをライブ・レコーディングしてしまうというのは,技術に加えて,集中力と自信がなければ成り立たないものだと思える。そのこと自体に私は感動すらおぼえてしまうのだ。凄い人である。

そのほかの4曲はライブではないが,それらも私の現代音楽のピアノ好きを十分に満足させてくれる逸品。だが,私としてはライブで録られた2曲ゆえにこのアルバムを更に高く評価したい。まじでたまりませんなぁ。星★★★★★。

Recorded at 豊洲シビックセンターホール(Live)on October 17, 2017 and at 三重県総合文化センター on February 14, 2018

Personnel: 高橋アキ(p)

2022年4月16日 (土)

Brad Mehldauの新譜:いつになったらデリバリーされるのやら...

Brad Mehldauの新作"Jacob’s Ladder"については,「現在空輸中」と以前書いた。ダウンロード音源は聞けるものの,ちゃんと記事を書くのは現物が届いてからということで考えているのだが,発送通知をNonesuchから受け取って既に1か月が経過したのに,まだ来ない。プレオーダーでついてくるオマケ欲しさに発注したのに,プレオーダーの意味がないってところ。世の中,サプライチェーンも混乱しているとは言え,この時間の掛かり方は異常。そもそも米国内の手続きに無茶苦茶時間が掛かっているのはなんでやねん?と言いたくなる。まぁ,待つしかないのだが,Nonesuchからは国際便は8週間程度掛かることがあると言ってきたが,こんなに待たせるのだったら送料下げて欲しいもんだよなぁ。

2022年4月15日 (金)

Eliane Eliasのベスト盤:コンピレーションとしてはどうなのかねぇ...。 #ElianeElias

_20220413 "Perspectiva: The Best of Eliane Elias" Eliani Elias(Somethin’ Else)

Eliane Eliasに何を求めるかってのは結構難しい。このブログで彼女のリーダー・アルバムとして"Dreamer"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,それもボサ・ノヴァ・アルバムだったように,ブラジル出身だけにそういう音を求めるリスナーも多いように思う。しかし,現在の旦那であるMarc JohnsonとのアルバムやSteps Aheadでの仕事を聞けば,決してブラジル音楽(それも歌もの)に留まる人ではない。

このコンピレーションはおそらくは日本編集によるものだろうから,国内制作のアルバムからの選曲ということになっていると思う。そもそも国内制作ゆえのつくりってのが根底にあるから,一般的なEliane Eliasのイメージに基づくものとなっているのはそういうもんだろう。

しかし,そうだとしても,プロデューサーあるいはコンパイラーが明示されていないのは,ベスト盤としてはどうなのよ?って思ってしまう。こういうベスト盤は選曲のみならず,曲順ってところにもセンスが表れると思うのだが,責任者を記載しないのは,無責任の誹りは免れない。ついでに言っておけば,曲ごとのパーソネルを記載するのも筋で,それをしないところにSomethin’ Elseあるいは東芝EMIのいい加減さを感じてしまうのだ。

これはここに収められた音楽の質とは関係ない話かもしれないが,売れればいいのか?って感じさせると言いたくもなる制作姿勢が気に入らない。演奏には特に文句はないし,相応に楽しめるが,こういう作りをしてしまうレコード会社は,ミュージシャンに対するリスペクトが足りないと言わざるをえない。そういうことをEliane Elias本人はわかっていたのだろうか...?あるいはこのCDの購買層には関係ない話だったというのだろうか?

我ながら理屈っぽいとも思いつつ,やっぱり納得がいかない。

2022年4月14日 (木)

Al Jarreauについてはほとんど記事にしてなかったようだ。 #AlJarreau

_20220412 "Live: Look to the Rainbow" Al Jarreau(Warner Brothers)

長年このブログを運営していても,全然取り上げていないミュージシャンってのも結構いると思う。だが,Al Jarreauについては何も書いていなかったのはちょっと意外であった。まぁ,私もAl Jarreauの大ファンってことはないし,やっぱりこの人の歌い方は癖が強くて,イマイチ趣味ではないってのが事実である。そうは言っても,"This Time"とかはよく聞いた方だが(笑)。

振り返ってみれば,私がAl Jarreauの歌を初めて聞いたのはFMで流れていた本作からの"Take Five"か,David Sanbornと一緒に来日した時の模様を収めた「ゴールデン・ライブ・ステージ」(古っ!)の放送だったように思う。その頃はへぇ~とか思った程度だと思うが,その後,"All Fly Home(邦題は「風のメルヘン」だったか?)"のアナログを買ったりしたのが高校生の頃。その後はつかず離れずって感じで接してきたが,このライブ盤を買ったのは随分後になってからのことだったはずだ。

この人の歌い方ってのはパーカッシブな感覚で,歌がうまいのはわかるんだが,声に特徴があるので,多分好き嫌いは分かれると思う。まぁ伴奏のコンテンポラリーな感覚と相まって聞けるっていう感じで,この人の声と歌だけだと,私にはちょっと厳しいものだっただろう。だが,改めてこのアルバムを聞いてみて,当たり前のことではあるが,やっぱり歌はうまかったと思う。それでも「アクロバティック」とも言われた歌い方は,何回も聞いていれば飽きるだろうから,その後,Jay Graydonをプロデューサーに仕立てて,よりコンテンポラリー感を強めたのは正解だったように思う。

それでも,Al Jarreauにとっては多分これが出世作みたいな位置づけにあるだろうし,今回聴いても結構懐かしいなぁなんて思ってしまった。でもねぇ,あんまり技巧に走るより,"Casino Lights"でRandy Crawfordと歌っていたぐらいの感覚の方がいいなぁと感じる私である。結局,Al Jarreauに対して思い入れがないので,これもまぁいいんじゃないって感じか。星★★★☆。

余談ながら,このCDは収録時間を1枚に収めるために,アナログ2枚組に若干手を入れているようだが,ほとんど気にならないのは私がAl Jarreauに入れ込んでいないからだな(爆)。

Recorded Live in Europe in January and February, 1977

Personnel: Al Jarreua(vo), Tom Canning(key), Abe Laboriel(b), Joe Correro(ds), Lynn Blessing(vib)

2022年4月13日 (水)

Gerald Claytonの新作をストリーミングで聞いて思うこと。 #GeraldClayton

Gerald-clayton_20220409165201 "Bells on Sand" Gerald Clayton(Blue Note)

昨今CDの購入枚数が減っているのは,ストリーミングで大概の音源は聞けてしまうからだが,本作も購入まではいかずとも,Charles Lloydが1曲のみとは言え,参加していることもあって,ストリーミングで聞いた。

ここで展開される基本的に静謐で美しいピアノ・タッチで展開される音楽は,Brad Mehldauを想起させる部分があったと言ってもよいかもしれない。それはそれで楽しめるのだが,聞いた瞬間からこのアルバムのハイライトは9曲目に収められたCharles Lloydとのデュオ,"Peace Invocation"だと確信した私である。

ここでの演奏があまりに素晴らしいので,私がGerald Claytonに期待したいのはCharles Lloydとのデュオ・アルバムを制作することである。それぐらい鮮烈な印象を残す演奏であった。この演奏がYouTubeにアップされていて,これを聞いてもらえば,私の言いたいことはわかってもらえると思う。

さすがにこの1曲だけで購入には至らないが,その他の演奏も優れているので,これは買ってもいいかなと思える一作。でもやっぱりCharles Lloydだ(きっぱり)。

2022年4月12日 (火)

Simon Phillipsの新作到着。相変わらずのカッコよさ。 #SimonPhillips

_20220411 "Protocol V" Simon Phillips(Phantom)

国内盤はとっくに出ていたものの,輸入盤のデリバリーが遅れていたSimon Phillipsの新譜がようやく届いた。既にストリーミングでは聞いていたので,そのカッコよさは認識していたが,確実に現物が欲しくなるような出来であった。昨今,輸入盤の入荷に時間が掛かるのは,グローバルでのロジスティクスに問題があるからだろうが,それにしても時間が掛かり過ぎである。Brad Mehldauの新譜だってまだ来ないしねぇ...。

それはさておきである。Simon Phillipsのバンド,Protocolのアルバムも第5作となった。Protocolの第1作はワンマン・レコーディングだったはずので,バンド形式としては4作目ということになるが,前作と本作の間にアナログのライブ盤が出ているので,あまり何作目ってのは意味がないって話も...。今回は編成を変えたバンドでの初作ということになるが,彼らのライブは既に私は2019年にBlue Note東京で聞いている(その時の記事はこちら)。あれももう3年近く前になってしまった。

その時から,聴衆を興奮させる演奏を繰り広げるグループであったが,本作でもSimon Phillipsらしいタイトな演奏の連続には嬉しくなってしまう。まさにProtocolかくあるべしなのだ。メンバー・チェンジしようがしまいが,Protocolの音楽ってのは不変の魅力があると思えてしまう。逆に言えば,どれを聞いても同じに聞こえるって話もあるが,ファンにとってはそれでいいのだ。予定調和が必要な時もある(きっぱり)。ハード・フュージョンかくあるべし。

常々,Simon Phillipsの音楽には「タイト」という形容詞が似つかわしいと思っている私だが,本作もいつもながらなタイトなノリに大いに乗せられてしまった私である。ついつい評価も甘くなるのはいつものことだが,今回も星★★★★☆。

しかし,私は入手できたからいいようなものの,相変わらず輸入盤の流通はよろしくないのは何とかならんのかねぇ。強烈な円安で輸入盤の値段も上がり気味だしなぁ。困ったものである。

Personnel: Simon Phillips(ds), Jacob Scesney(ts, as), Alex Sill(g), Otmaro Ruiz(key), Ernest Tibbs(b)

2022年4月11日 (月)

昨日に続いて,今日もJoe Sample:有名曲をカヴァーした”Invitation”。 #JoeSample

_20220409 "Invitation" Joe Sample(Warner Brothers)

昨日,Lalah Hathawayとのアルバムをアップして,最近これも聞いてないなぁってことで取り出したのが本作。冒頭の"Black Is the Color"という曲はよくわからないが,それ以外はジャズ界でも相当有名な曲が並んだカヴァー・アルバムなのだが,そこはJoe Sample,完全にJoe Sampleカラーに染めている。

はっきり言ってしまえば,このアルバムにジャズ的な要素を求めることは適切ではなく,原曲の美しさをそこはかとなく感じさせながら,主題はJoe Sampleのピアノ・タッチを聞かせるための作品と言ってよい。普段ならアップ・テンポで演奏されそうな曲もしっとりしたバラッドに仕立てられている。しかもオーケストラの伴奏に乗ってなのだから,このアルバムでプロデューサーであるTommy LiPumaが狙ったのはそっちの線のはずである。

このアルバムを聞いていれば,心地よく時間が流れていくが,多少なりとも「ノリ」を重視するリスナーにとっては物足りなく響くものだと思う。しかし,アルバムそのものが上述のようなねらいで作られているのだとすれば,それはそれで仕方がないことである。時代が時代なら「ジェットストリーム」でプレイバックされそうな音楽でと言ってもよい。

Joe Sampleの音楽というのはよく小売店のBGMでも使われていたが,本作はそうした音楽と異なって,購買意欲をそそるようなビートの音楽ではないので,通常のJoe Sampleのアルバムとは性格が異なる。しかし,相当有名な曲をやりながら,完全にJoe Sampleの音楽になってしまっていること自体が,Joe Sampleがスタイリストであることの証。例えば,Horace Silverの"Nica's Dream"がここでの演奏のようになってしまうってのを楽しめるかどうかが,このアルバムに対する評価を分けるだろう。ジャズ原理主義者からすれば,Horace Silverに対する冒涜となるかもしれない(笑)。一方,私にとっては,刺激はないが,実に美しい音楽としてこれはこれで全くOKであり,これもJoe Sampleの個性。星★★★★。

Personnel: Joe Sample(p, synth), Cecil McBee(b), Victor Lewis(ds), Lenny Castro(perc) with Orchestra

2022年4月10日 (日)

Joe SampleとLalah Hathawayの組合せならまぁ間違いない(笑)。 #JoeSample #LalahHathaway

_20220408-2 "Song Lives on" Joe Sample Featuring Lalah Hathaway(PRA)

Lalah Hathaway,今は亡きDonny Hathawayの娘である。父も素晴らしいシンガーだったが,ちゃんとDNAを引き継いでいる。それはRobert Glasperの"Black Radio"シリーズでもはっきりしていたし,このブログで取り上げた彼女のライブ・アルバムでも実証されている(記事はこちら)。そのLalah HathawayがJoe Sampleと組めば,大体どういう音になるかは予想がつくし,まぁ間違いないのだ(笑)。

このアルバムがリリースされたのは1999年のことだが,記憶は定かではないのだが,私は確か中古で買ったような気がする。いくら間違いない組合せだとは思っても,私の中での優先順位は必ずしも高かった訳ではない。だが,改めて聞いてみると,やっぱり間違いなかった。Joe Sampleの粒立ちのよいピアノに乗って,Lalah Hathawayが歌うってのはやはり惹かれるものがある。まぁ注目は"Street Life"ってことになってしまうだろうが,テンポを落とした"Street Life"は,オリジナルのRandy Crawford版とは結構感じが違っていて,それはそれでいいとして,決してそれだけのアルバムではない。

まぁ,"Fever"みたいな選曲はどうなのよ?って気もするが,私にはむしろ,Joe Sampleのアルバム,"Spellbound"に収められていた"All God's Children"に歌詞をつけた"Come Along with Me"みたいな曲が実に魅力的に響く。結局,Joe Sampleの書く曲が魅力的なのもあるが,そこに重なるのがLalah Hathawayなのだから,私のようなリスナーの琴線に触れるのだ。"When Your Life Was Low"とか”One Day I Will Fly Away"なんてはまり過ぎである。

大概のJoe Sampleのアルバムがそうであるように,本作も気持ちよく聞けるアルバム。星★★★★。ただねぇ,ボートラの”It’s Sin to Tell a Lie"は感じが違い過ぎて,蛇足気味だが。

Personnel: Joe Sample(p, el-p), Lalah Hathaway(vo), Kirk Whalum(ts), Michael Thompson(g), Jay Anderson(b), Walfredo Reyes, Jr.(ds), Lenny Castro(perc)

2022年4月 9日 (土)

"Touchdown"は"Touchdown"でも今度はBob Jamesね(笑)。 #BobJames

_20220408 "Touchdown" Bob James(Tappan Zee)

先日,Michael Heiseの同名タイトルのアルバムを取り上げた際,「"Touchdown"と言っても,Bob Jamesではない」なんて書いたもんだから,調子に乗って,今日はBob Jamesの"Touchdown"である。

70年代後半にリリースされたこのアルバムはBob Jamesの第6作。アメリカン・フットボールのタッチダウンは6点だから,それに掛けてのタイトル。いずれにしても,結構流行ったアルバムである。前にも書いたが,私はDave GrusinとBob JamesだったらDave Grusinの方を評価していた方なので,当時もこのアルバムは耳にしてはいても,当時購入には至らず,買ったのは廉価盤CDが出た際であった。 

このアルバムを聞いていると,Bob Jamesの作品は聞き心地がよいのは事実であるが,"Angela"のような曲に顕著だが,イージー・リスニング的にも響く部分があると思う。Rhodesの響きは心地よいし。David Sanborn,Hubert LawsやEarl Klugh等のゲスト陣も適材適所だと思う。Earl Kulghに関しては,ここでの共演が後の"One on One"や"Cool"につながったと思えば,それなりの意義はあったとも言える。

聞くのに集中を要しないという点では,使い勝手のいいアルバムではあるが,スリルとかタイトさとかは希薄。Bob Jamesの単独リーダー作では一番売れたかもしれないこのアルバムであるが,リリースから40年以上経っても,そんなに古臭いと思わせないところは立派。まぁそうは言っても評価としては星★★★☆ぐらいでいいだろう。嫌いじゃないけど...(笑)。私にとってBob Jamesは,Lee Ritenour在籍時のFourplayかDavid Sanbornとの"Double Vision"が双璧だな。

Personnel: Bob James(el-p, p, synth), Eric Gale(g), Hiram Bullock(g, vo), Earl Klugh(g), Richie Resnioff(g), Gary King(b), Ron Carter(b), Steve Gadd(ds), Idris Muhammad(ds), Ralph McDonald(perc), Mongo Santamaria(perc), David Sanborn(as), Hubert Laws(fl) with Horns and Strings

2022年4月 8日 (金)

またも無駄遣い?"All Things Must Pass"50周年記念盤の3CD版を入手。 #GeorgeHarrison

_20220405-2"All Things Must Pass 50th Anniversary" George Harrison(Capitol)

何も言うことのないGeorge Harrisonの傑作である。私は2017年版のアナログと30周年記念盤のCDを保有しているのだから,敢えてこれを買わなくてもいいかなと思っていたのだが,結構なお買い得価格って感じのものがあったので,ついつい買ってしまった。さすがにスーパー・デラックス・エディションまでは買わないが,今回はオマケ1枚が付いた3枚組である。

結局なんでこんなことをしているかと言えば,ミックス違いの効果を知りたいがゆえである。音はこれから聞くのだが,中身のよさはわかっているのだから,やっぱり今回の注目は音だろうな。

それにしても,このボックス,開けにくいことこの上ない。そういうところが輸入盤の難点ではあるが,安かったからまぁいいや(爆)。

2022年4月 7日 (木)

Richie Beirach共同プロデュースによるMichael Heiseの硬質なピアノ・トリオ作。 #MichaelHeise

_20220405 "Touchdown" Michael Heise(Storyville)

"Touchdown"と言っても,Bob Jamesではない(笑)。これはデンマーク出身のMichael Heiseによるピアノ・トリオ・アルバム。プロデュースはRichie BeirachとMichael Heise本人。ネットで調べてもMichael Heiseの情報になかなかヒットしないが,Storyvilleレーベルの情報によると,Michael Heiseが米国に留学中(?)に結成したトリオらしい。ベースはBrad Mehldauトリオのレギュラー,Larry Grenadierである。

このアルバム,エンジニアリングのせいもあるとは思うのだが,かなりピアノが硬質な音で捉えられていて,甘さというものをほとんど感じさせない。それはBill Evansでお馴染みの"Israel"のような曲をやっても変わらない。ピアノ・トリオに甘さを求めるようなリスナーにはちょっと厳しいかもしれないと思わせるものである。

だが,本作で醸し出されるスリリングな感覚は評価したいと思う。硬質なピアノに加えて,Ali Muhammed Jacksonのハード・ドライヴィングなドラムスもそうした感覚を増幅させたように思える。この人,現在はLincoln Center Jazz Orchestraに所属するAli Jacksonと同一人物のはずだが,このレコーディング当時はまだ20歳になる直前ぐらいだったと思われるが,結構パワフルに叩いているところが,このアルバムの印象をハードにしたようにも思える

そして,リーダーのMichael Heiseであるが,"Israel"以外はオリジナルで固めながら,「強面な」ピアノを聞かせている(裏ジャケに写る本人も相当強面と言えば強面だが...)。その後もリーダー作はリリースしているようだが,昨今の動静はよくわからないのはなぜなのかと思ってしまう。まぁ,こういうスタイルを継続していると,リスナーにも飽きがくるような気がしないでもないが,もう少し活躍してもよかったように思えるような佳作。星★★★★。しかし,本作の国内盤が出ていたとはなぁ...。日本ってのは凄い国である(笑)。

Recorded on February 12, 1996

Personnel: Michael Heise(p), Larry Grenadier(b), Ali Muhammed Jackson(ds)

2022年4月 6日 (水)

今は亡きGregg Allman「祭り」はその曲の素晴らしさとサザン・ロックの魅力を強烈に感じさせる。 #GreggAllman

Gregg-allman"All My Friends: Celebrating the Songs & Voice of Gregg Allman" Variou Artists (Rounder)

Gregg Allmanが亡くなったのは2017年のことであったが,亡くなる前に吹き込んだ"Souther Blood"は涙なくしては聞けない素晴らしいアルバムであった。Gregg Allmanの体調が悪化したのは2016年頃のことと思われるが,それに先立つ死の約3年前に開催されたGregg Allmanの業績を称えるコンサートの模様を収めたのが本作である。私は本作をGregg Allmanが亡くなった後に,追悼を込めて購入したのだが,このブログには記事をアップしていなかった。

このアルバムは,Bob Dylanの30周年記念コンサートと同様の趣のものであり,Neil Youngがそれを"Bob Fest"と呼んだのにならえば,本作はまさに「Gregg Allman祭り」である。そもそもバック・バンドで音楽監督を務めるのがDon Wasってのも凄い(Don Wasは"Southern Blood"のプロデューサーでもある)が,様々なミュージシャンによって繰り広げられるGregg Allmanの曲の演奏からは,Gregg Allmanが書いた曲の私が想定していた以上の素晴らしさが浮かび上がる。そして,何よりもサザン・ロックの魅力が詰まっていると言っても過言ではない。

Allman Brothersのバンド・メイトであるWarren HaynesやDerek Trucksがぴったりはまるのは当然であるが,次から次へと登場するメンツもGregg Allmanの音楽やサザン・ロックへのシンパシーを十分に表出していると思う。まぁカントリー歌手であるEric Churchなんかはサザン・ロックにはヴォーカルの線が細いし,Gregg Allmanの曲に合っていると思えないところもあるが,そこはまぁお祭りってことで許す(笑)。

そしてびっくりしてしまうのが,ギターのJack Pearson。彼も一時期Allman Brothersに在籍していたが,これほどの凄いギターを聞かせるとは...と思わせるぐらいの強烈さであった。彼のスライドを聞いていると,Derek Trucksといい勝負だと感じられる腕前であった。

メンツとしてはBob Dylanほどではないとしても,そこそこのメンツが揃っているし,サザン・ロックの魅力を再認識する上でも意義のあるライブであったと思う。星★★★★☆。因みに,私の保有しているのはBlu-ray付きの3枚組(正確にはCD付きのBlu-rayと言うべきか)であるが,映像版は見たことがない(苦笑)ので,そのうち見てみよう。

Recorded Live at Fox Theater in Atlanta on January 10, 2014

Personnel: Gregg Allman with The Allman Brothers Band, Audley Freed, Brantley Gilbert, Chuck Leavell, Derek Trucks, Devon Allman, Don Was, Dr. John, Eric Church, Jack Pearson, Jackson Browne, Jaimoe, Jimmy Hall, John Hiatt, Keb’ Mo’, Kenny Aronoff, Martina McBride, Pat Monahan, Rami Jaffee, Robert Randolph, Sam Moore, Susan Tedechi, Taj Mahal, Trace Adkins, Vince Gill, Warren Haynes, Widespread Panic, Zac Brown, The McCrary Sisters

2022年4月 5日 (火)

”All for Reason”:この1曲のためにこのアルバムは存在すると言ってもよい。 #Alessi

_20220403"All for Reason" Alessi(A&M)

シングル"All for Reason"が流行ったのは1977年,私が高校生になる年であった。非常にポップなメロディは強く印象に残っていて,いつかアルバムも買おう,買おうと思っていて,ついにそのアルバムを入手したのは昨年になってからのことであった。

それ以来,何度かこのアルバムを聞いているのだが,どうにもピンとこない。と言うより,タイトル・トラック"All for Reason"が曲としてよ過ぎて,完全に浮いている。それぐらいほかの曲が大したことがないと言ってもよい。いかにも売れ選狙いという感じのアルバムのつくりも,曲調がバラエティに富んでいると言えば聞こえはいいが,結局のところ一貫性が感じられないのだ。タイトル・トラック以外で言えば,アナログ盤であればB面1曲目の"London"はまぁ許せるって感じだが,間奏なんかはベタな感じだし,やっぱりこのアルバムは"All for Reason"のためにあるのだというのが結論になってしまう。

これは私が同時代を過ごす中での印象が強いせいもあるだろうが,実際に曲としてよくできているのだから仕方がない。このCD,廉価盤なのでまぁいいやってところだが,私としては1曲のためだけに持っているのもなぁ...って感じである。だからと言って中古で処分しても二束三文で買い叩かれるのが見えているが,"All for Reason"はそれでもいい曲である(きっぱり)。

そう言えば,私は彼らの"Long Time Friends"(邦題は「そよ風にくちづけ」である:笑)も持っていたなぁ。どこにあるかのわからないし,もう売ってしまったかもしれない。Quincy JonesのQwestレーベルから出たのだが,あれも全然面白いと思った記憶がない(爆)。結局私は"All for Reason"1曲を除いてAlessiとは相性が悪いんだろうな。

2022年4月 4日 (月)

オスカーで脚本賞を獲った「ベルファスト」を観た。これは実にいい映画であった。 #Belfast #ベルファスト

Belfast「ベルファスト("Belfast")」('21,英)

監督:Kenneth Branaugh

出演:Jude Hill, Catriona Balfe, Jamie Dornan, Ciarán Hinds, Judi Dench

今年のオスカーで脚本賞を獲得したのがこの映画である。常々思っていることだが,脚本のよく出来た映画は面白い。それは近年で言えば「ブラック・クランズマン」然り,「プロミシング・ヤング・ウーマン」然り。だったらこの「ベルファスト」も面白いに違いないという思いがあった。但し,この映画を撮ったKenneth Branaughは「ナイル殺人事件」がいけていなかったというところもあったが,多分こっちは大丈夫だろうってことで観に行ったもの。結果は吉である。

この映画の背景ではアイルランドにおけるプロテスタントとカトリックの争いが描かれているが,宗教というのは一歩間違えると馬鹿げた諍いを生むという最たる事例である。現代は分断の時代と言われるが,そうした現代において分断を描くことにもKenneth Branaughは意義を見出したとさえ思える。そんな背景の中で,この映画はKenneth Branaughの自伝的な映画というかたちで捉えられているが,そこに描かれているのが主人公の少年Buddyの「映画好き」という一面。こういう生い立ちの中で,Kenneth Branaughのような役者が生まれたのねぇということを感じさせるものであった。

そして,この映画,ストーリーの部分は白黒なのだが,そこに織り込まれる映画のシーンを含む「パート・カラー」の使い方がうまいのだ。白黒映画だと思って見ているこっちの思い込みを冒頭から裏切ってくれるが,全編を通じて,一部カラーで映し出されるシーンがよりヴィヴィッドに見える効果があったのも実にうまいと思った。

更にVan Morrisonが担当した音楽も魅力的。私は実はVan Morrisonはあまり得意ではないのだが,映画の中で使われたほかのミュージシャンの曲や,Van Morrisonの歌唱も実に効果的であった。

ということで,この映画は脚本もよくできているのは事実だが,そのほかの映画の構成要素の合わせ技もあって,実にいい映画と言ってよいと思える。星★★★★☆。

2022年4月 3日 (日)

超寡作なSadeのライブ盤を久々に聴く。 #Sade

_20220401-2 "Lovers Live" Sade(Epic)

本当に寡作な人たちである。1984年にデビュー・アルバムをリリースして38年,その間にリリースしたスタジオ録音は6枚だけである。最後にリリースした"Soldiers of Love"からもう12年も経っている。その後,ライブDVD"Bring Me Home Live 2011"からだって11年経過しているのだ。

そんなSadeが初めて出したライブ・アルバムが本作であるが,それまでのリリースのおいしいところは押さえているって感じである。だが,私の場合,Sadeの音楽ってのはライブで観たいっていう感覚ではなく,部屋で聞いてりゃいいじゃんって思ってしまうのも事実である。私がSadeに求めるのは興奮ではなく,落ち着きなのだ。

まぁ,それでもSadeはSadeってことでいい曲が揃っていて,ライブ盤としては楽しめるのだが,私の場合,これよりはベスト盤の方がいいかなってところ。星★★★★。

尚,このライブ,映像版もあるようだが,私は未見ながら曲数は映像版の方が多いので,Sadeのファンの皆さんは,映像版もチェックしないといけませんな。

Recorded in Anaheim and Inglewood, California in September 2001

Personnel: Sade Adu(vo), Stuart Mattehman(g, sax), Andrew Hale(key), Paul S. Denman(b) with Ryan Waters(g), Peter Lewinson(ds), Karl Vanden Bossche(perc), Leroy Osborne(vo, g, fl), Tony Momrelle(vo)

2022年4月 2日 (土)

ついついBilly Holidayはハードルが高いと思ってしまう私...。 #BillyHoliday

_20220401 "The Greatest Interpretations of Billy Holiday" Billy Holiday(Commodore)

ただでさえジャズ・ヴォーカルをちゃんと聞いていない私のようなリスナーにとって,Billy Holidayは高いハードルとして存在している。いかにも「情念」のようなものを打ち出されるような歌唱は,決して気楽に聞けるものではないし,ついつい身構えてしまうのだ。なので,このアルバム(私が唯一保有するBilly Holidayのアルバム)にもなかなか手が伸びないというのが実態なのだが,気まぐれで取り出して聴いてみたが,やっぱりハードルが高い(苦笑)。

このアルバムは1939年と44年のCommodoreレーベルへの吹き込みを集成したものだが,冒頭からして"Strange Fruits(奇妙な果実)"ではこっちもついつい身構えてしまうのだ。この歌詞を見れば,決して気楽に聞けるものではなく,カクテル・ラウンジとかでお気楽にジャズ・ヴォーカルを聞くのとは次元が違うのだ。しかもそれを歌うのがBilly Holidayのあの声である。リラクゼーションとは無縁の世界ではないか。

アルバムの最後には昨今「カムカム・エブリバディ」でも話題の"On the Sunny Side of the Street"が収められているが,この曲さえエモーショナルな感じになってしまうのがBilly Holidayなのだ。こういう人だから,私がこのアルバムを聞いていて思ったのは,Billy Holidayにはスタンダードよりもブルーズの方がフィットするのではないかという感覚であった。Billy Holidayが醸す情念こそ,ブルーズ・フィーリングそのもののように感じたからである。

波乱万丈,かつ薬漬けのような人生を送ったBilly Holidayであるが,そうした人生を投影した歌であり,歌声というのは鬼気迫るという表現が一番であった。凄い歌手だなぁと思いつつ,やっぱり気楽に聴けないというところには変わりはない。だが古い録音でありながら,今でも心に刺さることには間違いない歌唱の数々である。これはどうしても星★★★★★になってしまうんだろうなぁってところ。

Recorded on April 20, 1939, March 25, April 1 & 8,1944

Personnel: Billy Holiday(vo), Frank Newton(tp), "Doc" Cheatham(tp), Vic Dickenson(tb), Tab Smith(as), Lem Davis(as),  Kenneth Hollon(ts), Stan Payne(ts), Sonny White(p), Eddie Haywood(p), Jimmy McLin(g), Teddy Watrers(g), John Williams(b), John Simmons(b), Eddie Dougherty(ds), "Big Sid" Catlette(ds)

2022年4月 1日 (金)

Horace Silver:メロディ・メイカーとしての資質が明らかになるナイスなコンピレーション #HoraceSilver

_20220331 "The Blue Note Years" Horace Silver(Blue Note)

私はHorace Silverのファンって訳ではないので,保有しているアルバムも数枚って感じである。だからこういうベスト盤みたいな趣のアルバムは,大してHorace Silverを聞いていない,あるいは聞いてこなかった私のようなリスナーには丁度いいとも言える。

そして,このアルバムを聞いていると,この曲も知っている,あの曲も知っているみたいな感じになって,ジャズ喫茶やメディアを通じて耳にしていたことが多いと思える。Horace Silverの書くオリジナルってのはメロディ・ラインが実に親しみやすいものと言ってよいが,この1953年から65年の期間のレコーディングからチョイスされた曲を聴いていて,改めてそうした思いを強くした。まぁこの親しみやすさをよしとするか否かは聞く側の趣味ってことになるだろうが,私はメロディ・メイカーとしての資質は大したものだったと今更ながら思う。決して首を垂れながら聞くような感じではないが,楽しくていいじゃんって感じと言えばよいだろう。下世話一歩手前って感じがしないでもないが,ファンキーな響きはやはり魅力的。

こういうのがあるから,改めてHorace Silverのアルバムを聞いてみようなんて気にもなるが,なぜかジャケが印象的な"The Stylings of Silver"からの選曲がないので,折角保有しているのだから,それから聴き直してみることにしよう(笑)。

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