Kit DownesのECMにおけるトリオ作。これはいいねぇ。
ECMは結構な数のアルバムがリリースされるし,ストリーミングもあるので,以前よりは購入ペースは落ちていて,現物を買うのは自分の趣味に合いそうなものに限定している。Kit Downesは既にECMでアルバムもリリースしているが,これまで私は未聴であった。そんな中,リリースされたのがこのアルバムであるが,これはブログのお知り合いのご紹介などもあって,ストリーミングで試聴することもなく発注したものだが,これが当たりであった。
Kit Downesは英国出身らしいが,私にとっては英国のジャズというのは結構つかみどころがなく,フリー的なアプローチの演奏に印象が強いものが多いが,一方,コンベンショナルな演奏をするミュージシャンも存在する。そうした中で,ここで聞かれるような演奏をする英国のミュージシャンは,あまりいないとは思うのだが,ぱっと思いつくところはJohn Taylorあたりになるだろうか。そこはかとなく抒情性も感じさせながら,清冽な響きを聞かせるピアノ・トリオという感覚を与えるもので,こうした響きにはスウェーデン出身のベーシスト,Petter Eldhの影響もあるかもしれない。
若干,アブストラクトな展開を示す部分はあるものの,決して聴きづらいというほどのものではなく,スポンテイニアスでありながら,美的でもあるという,いかにもECMのピアノ・トリオらしい「美味しさ」を感じさせる演奏と言えばよいだろう。アルバム・タイトルである"Vermillion"は朱色の意味(アルバム・カヴァーもブルー基調の中,タイトルだけ朱色になっている)であるが,暖色の持つ温かみというよりは,全面的に寒色系ではないものの,どちらかと言えばクールな響きということのように思える。それが私の趣味にずっぽしはまるのである。
メンバーのオリジナルに加えて,最後をジミヘンの"Castles Made of Sand"で締める辺りは,やっている音楽はジミヘンには全然つながらないように思えるところで実に興味深いが,ここでの演奏を聞いて,ジミヘンを想起することは不可能って感じの演奏に仕立てていて,曲はあくまでも素材。私が不勉強なだけで,今頃言うなとお叱りを受けそうだが,またもECMから注目に値するピアニストが登場って感じである。星★★★★☆。
Recorded in May and June, 2021
Personnel: Kit Downes(p), Petter Eldh(b), James Maddren(ds)
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こうした品格すら感じさせ、なんとなく陰影がありながらも、しっかりと詩情を印象づけるところは見事でした。ECM世界も考慮しての世界観を構築したのだろうと思いますが、もともと持っているスリリングなところもチラっと見せ、トリオの三者の味が詰まってましたね・・・この表現には、さすがアメリオの技術が貢献していると思いました。
ユーロ・ジャズの今や一つの世界となっていますね。
リンクさせてください ↓
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2022/03/post-880954.html
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年3月 7日 (月) 23時21分
photofloyd(風呂井戸)さん,おはようございます。リンクありがとうございます。
>こうした品格すら感じさせ、なんとなく陰影がありながらも、しっかりと詩情を印象づけるところは見事でした。
おっしゃる通りです。
>もともと持っているスリリングなところもチラっと見せ、トリオの三者の味が詰まってましたね
私はこのアルバムを聴いていて,実にバランスの取れた音楽だと思っていました。小難しさを感じさせないところも見事でした。英国からこういう音楽が生まれてくるところに驚きさえ感じました。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年3月 9日 (水) 09時52分
こんばんは。
実にECMらしいピアノ・トリオではありました。フリーのような動きも見せるも、主だったところはそうでもなくて、寄り添ったり、それぞれが違うベクトルで演奏する場面もあったりと、好みのサウンドではありました。
ただ、少々聴く人を選ぶアルバムかなあ、という気もしています。
当方のブログアドレスは以下の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2022/03/post-eb3275.html
投稿: 910 | 2022年3月10日 (木) 20時01分
910さん,おはようございます。リンクありがとうございます。
>実にECMらしいピアノ・トリオではありました。フリーのような動きも見せるも、主だったところはそうでもなくて、寄り添ったり、それぞれが違うベクトルで演奏する場面もあったりと、好みのサウンドではありました。
そうですね。ECMらしさが感じられるもので,クールな感覚の受け入れ方で,評価は変わるかもしれません。私はこの人たちは初聴きでしたが,こういうサウンドがツボにはまってしまいました。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年3月11日 (金) 07時58分
閣下、リンクをありがとうございました。
私も、頭に真っ先に浮かぶのはジョン・テイラーです。汗
陰影と抒情、、インタープレイと、ざ・ECMという感じでした。
次は、どうくるのか、、楽しみなような、、怖いような。。
私のリンクです。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/02/post-e80974.html
投稿: Suzuck | 2022年3月11日 (金) 12時31分
Suzuckさん,こんにちは。リンクありがとうございます。
>私も、頭に真っ先に浮かぶのはジョン・テイラーです。汗
おぉ,そうでしたか。それは結構嬉しいです。
>陰影と抒情、、インタープレイと、ざ・ECMという感じでした。
そうですよねぇ。レーベルのポリシー,カラーが極めて明確なのは前からですが,だからファンが多いんでしょうねぇ,ECM...。やっぱりManfred Eicherは大した御仁です。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年3月11日 (金) 17時48分