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2022年3月31日 (木)

”Quest II":メンツが固定されたのは本作から。 #Quest #DaveLiebman #RichieBeirach #RonMcClure #BillyHart

_20220326-3"Quest II" Quest(Storyville)

長年に渡ってグループとしての活動を続けるQuestであるが,現在も活動しているかはわからない。Questとしての音源は私の認識する限りは2013年にダウンロード・オンリーで出たのが最後であるが,しかし長年に渡って固定メンツで活動を続けてきたのは凄いことである。バンドとしてのQuestのメンツが固定されたのがこの第2作からということになるが,彼らの演奏は大概においてハイブラウなので,聴くには相応の覚悟がいる(笑)。実のところ,Questのプレイバック頻度においては第1作と第3作が高く,この第2作は正直頻度が高まっていない。ほかのアルバムだってそんなまめに聞いている訳ではないのだが,このアルバムはもう少し聞いていてもよさそうなものなのだが...。まぁ,ジャケで損をしているって話もあるな(爆)。

このアルバムをプレイバックしたのはいつ以来なのかも全然覚えていないが,今回改めて聴いてみて,やっぱりハイブラウだ。この弛緩するところがないのがこのバンドらしいのだが,襟を正して聞かなければって感じになってしまうから,気楽には聞けないのだ。Richie Beirachだけであれば,リリカルな演奏もあるが,BeirachがDave Liebmanと一緒にやると,途端に音楽が変わるところが実に面白いというか,この二人には特殊なケミストリーが働くのかとさえ思ってしまう。それでもこの二人が一緒とは言っても,"Pendulum"(あのボックスも久しく聞いていない...)のようなアルバムとはちょっと感覚が違うから,やはりこの4人ならではなのかもしれない。

このアルバム,私にとっては彼らのアルバムの中では,"Of One Mind"とまでは行かなくても,若干ハードルが高いと思わせる響きがあると今回感じたのが,プレイバック頻度が高まらない理由か。それでも"Third Visit"とかを聞いていると,ついつい興奮してしまうのだが...。しかし,1980年代にこのような音楽をやっていても,売れなかっただろうなぁと思いつつ,本作が日本国内で廉価盤が出ていることには感動すら覚える。星★★★★。

いい機会だから,彼らの音源を聞き直してみるか(ほんまか?)。

Recorded on April  17,1986

Personnel: Dave Liebman(ss, fl), Richie Beirach(p), Ron McClure(b), Billy Hart(ds)

2022年3月30日 (水)

"My Life in the Bush of Ghosts":若い頃はこのアルバムがよくわかっていなかった。 #BrianEno #DavidByrne

_20220326-2 "My Life in the Bush of Ghosts" Brian Eno & David Byrne(Sire)

私はTalking Headsの"Remain in Light"が強烈に好きである。このアルバムは"Remain in Light"と同時期に制作され,リリース時期もそんなに違わないもので,ある意味関係性が非常に強い作品と言われていたと思うが,リリースされた当時は,実はこのアルバムの何が凄いのかよくわかっていなかった。本作は私はアナログLPがリリースされた時点で購入していたが,当時は理解が及ばず,結構早い時期に売ってしまったはずなのだ。その後,CDで再購入しているが,プレイバック頻度は決して高くなかった。

改めてこのアルバムを聞いてみると,強烈なリズム・フィギュアは"Remain in Light"に近いものを感じるのだが,このアルバムのポイントはサンプリングであり,サウンド・コラージュなのだということが,リリース当時の私にはわかっていなかったのだなと今更のように感じた私である。恥ずかしながら,このアルバムの本当のカッコよさを体感したのは,今回が初めてだったかもしれない。それほど,私は本作をちゃんと聞けていなかったということだ。これはかなり恥ずかしいことだ。

このアルバムが制作されたのは1979~80年という時期であるが,そうした時代にこの音を生み出していたという尖鋭性こそ,改めて評価しなければならないと感じた。サンプリングそのものはほかのミュージシャンもやっていたかもしれないし,この作品の前から行われていたかもしれないが,サンプリングを一般化させたという意味で,本作が果たした役割は大きいはずである。そして,制作から40年以上経過しても古さを感じさせないのが凄い。

これほどのアルバムの魅力に気づくのにこれほど時間が掛かってしまったのはもったいなかったように思う。しかし,一生気づかずにいるよりは,こうして本作に改めて触れて,魅力の一端でも理解できたのはよかった。手持ちのソフトを気まぐれでもプレイバックすることの重要さを再確認した次第。まさに温故知新。星★★★★★。実に素晴らしい。本当に尖った人たちである。

Recorded between 1979 & 1980 at Various Venues

Personnel: Brian Eno(g, b, synth, ds, perc, etc.), David Byrne(g, b, synth, ds, perc, etc.), John Cooksey(ds), Chris Frantz(ds), Dennis Keeley(perc), Mingo Lewis(perc), Prairie Orince(perc), Jose Rossy(perc), Steve Scales(perc), David van Tiegem(ds, perc), Busta Jones(b), Bill Laswell(b), Tim Wright(b)

2022年3月29日 (火)

今年のオスカーはほぼ予想通りの結果となったが,見事にばらけたって感じ。 #Oscars2022

今年のオスカーが発表となったが,ほぼ下馬評通りの結果となり,驚きはほとんどないものになったが,特定の作品が独り勝ちということなく,見事にばらけたというのが正直な感想である。因みに最多受賞は「Dune / デューン 砂の惑星」の撮影,編集,音響等の6冠だが,見事に主要なところははずしているのが,いかにもオスカーらしい...。注目の作品賞は,直前になって急速に作品賞候補として有力と言われることが多くなった「コーダ あいのうた」がその勢い通り受賞となった。もともと有力と言われていた助演男優賞のTroy Kotsurはさておき,この作品が脚色賞まで獲ってしまったのはちょっとした驚きであった。

この映画,フランス映画「エール!("La Famille Bélier")」のリメイクであるが,設定やストーリーラインは「エール!」とほぼ同じのようである。それを脚色と言ってよいのかというと,少々疑問が残る。これなら「ドライブ・マイ・カー」が村上春樹の複数の短編を翻案したことの見事さの方が「脚色」としては上ではないのかついつい言いたくなる。「コーダ あいのうた」はこのブログにも書いた通り(記事はこちら),いい映画であり,私も好きな映画だが,脚色としてのオリジナリティってそんなにあるのかなぁって感じてしまうのも事実である。逆にカンヌが「ドライブ・マイ・カー」に脚本賞を送ったことは優れた審美眼の裏返しのようにも思えてくる。そうは言っても「エール!」を見たわけではないので,今度ストリーミングで観てみることにしよう。

そのほかは未見のものもあるので,何とも言えない部分はあるが,相当評価の高かった「パワー・オブ・ザ・ドッグ」がJane Campionの監督賞のみに留まったのはNetflix制作ゆえの部分があるように思える。そのほかにノミネートされたNetflix系の作品も黙殺されているのも,そういう感覚を強くさせるが,そもそも「ドント・ルック・アップ」もそこそこ面白い映画だが,それほどのものか?って感じもあったのは事実。

一方,「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」が長編ドキュメンタリー賞を受賞したのは素晴らしいし,何よりも「ドライブ・マイ・カー」の国際長編映画賞の受賞は予想通りとは言え,快挙であった。

私は脚本の面白い映画は確実に面白いと思っているので,次に観に行くなら,今回脚本賞を獲った「ベルファスト」だな。

尚,今年一番サプライズはWill SmithによるChris Rockビンタ事件ってことになるのだろう。詳細はよくわからないが,Chris RockのジョークにWill Smithがキレたってことらしい。理由はあるとしても,業界のベテランが場をわきまえないと出入り禁止になっちゃうよなぁ,ってところで,Will Smithは主演男優賞は獲ったものの,オスカー・イベントに汚点を残したと言われても仕方ない。

2022年3月28日 (月)

週末に観た「The Batman ザ・バットマン」:この暗さがいいんだけど,長いねぇ。 #TheBatman

The-batman 「The Batman ザ・バットマン」('22,米,Warner Brothers/DC)

監督:Matt Reeves

出演:Robert Pattinson,Zoë Kravitz,Jeffery Wright,Paul Dano, Colin Farrell, John Turtullo,Andy Serkis

私はChristopher Nolanが撮った「バットマン」シリーズは好きで,Blu-rayでも保有しているぐらいだが,その後のBen Affleckがバットマンを演じた「ジャスティス・リーグ」は機内エンタテインメントで観たはずが,Ben Affleckじゃないだろうって意識が強かった。加えて,DCのキャラ総出演みたいなところは行き過ぎ感があったのも事実で,感想として「暇つぶしにしかならない」なんて書いている(笑)。

だが,この新たに制作された新作は,巷の評判も結構よいので,観に行ったもの。やはりバットマンというキャラクターは「暗さ」というものを持っていないといかんというのをこの映画を観ていて感じさせたが,悪役リドラーを演じるPaul Danoがかなりエグい。悪役がちゃんとしているとバットマン映画はちゃんと見られるってことの証である。加えてペンギンを演じるColin Farrellの特殊メイクが強烈。誰もColin Farrellとわからんやんけ!と言いたくなるようなメイクぶりである。

ストーリーについてはどうこう言うのは野暮ではあるが,この暗い雰囲気はなかなかよく出来ていたと思うので,星★★★★。因みにキャット・ウーマンを演じたZoë Kravitzって,Lenny Kravitzの娘だったのねぇ。へぇ~って感じである。

それにしてもバットマン映画で3時間近い上映時間というのには驚いたが,なかなか面白くできているので,長さはそんなに感じさせない。だが,映画ってのはもう少しコンパクトに作って欲しいと常々思っている私である。理想は1時間40分から50分ぐらいがいいところだと思うのだが,昨今はどんどん映画の上映時間が長くなっているのがトレンドなのか?まぁ007だって2時間40分越えだったのだからそういうもんなんだろうと思ってしまう。昔だったらインターミッションが入る尺だが,途中でトイレに行きたくならないように準備するのも大変だ(苦笑)。

まぁそうは言っても,世界中で大ヒットして,もの凄い興行収入を短期間で上げているから,時間とかは関係ないってことかもなぁ。

2022年3月27日 (日)

プレイヤーには集中力を強いるであろうMorton Feldmanの音楽。 #MortonFeldman #Kronos Quartet #高橋アキ

_20220326 "Morton Feldman: Piano and String Quartet" Kronos Quartet with 高橋アキ(Nonesuch)

以前,このブログにMorton Feldmanの"For Benita Marcus"を取り上げたことがあって,主題として「これぞミニマルの極北って感じ。」なんて書いている(記事はこちら)。そこにも書いた通り,「音数も決して多くないのだが,延々とピアノ・ピアニシモのような音量で,淡々とピアノが演奏される」音楽は,演奏するのも大変だろうと思わせるに十分な集中力を要するものと感じた。

このアルバムはタイトル通り,ピアノと弦楽クァルテットで演じられるものであるが,ミニマリズムと言う観点では"For Benita Marcus"同様のものであり,弱音での演奏が約80分に渡って行われるものだが,1人でも大変そうな音楽を5人で演奏するのだから,並大抵な集中力では演奏できないものと言えるのではないか。一方聴く側にとっては,これはもはやアンビエントに同化するものであり,集中して聴くもよしだが,どちらかと言えば気がついたら流れているって感じの方がフィットしそうである。もし,これをライブの会場で聞いていたら,聴衆にも集中力を求めるというものであり,おそらく私には耐えられないだろうという感じである。

聴き方は人それぞれであってよいと思うが,考えようによってはこれほど厳しい音楽もないとさえ感じることもありかもしれない。何事も突き詰めると凄い世界が待っていることの証である。こういう音楽に点をつけること自体無意味とさえ思いたくなる。私にとってはアンビエント・ミュージックとして流しっぱなしにするというのが,この音楽との一番の相対し方。

いずれにしても,私にとっては高橋アキとKronos Quartetの共演ということが,このアルバムを購入した理由であることは間違いないが,こんな音楽やっちゃうなんて,全く凄い人たちである。

Recorded in November 1991

Personnel: Kronos Quartet<David Harrington(vln), John Sherba(vln), Hank Dutt(vla), Joan Jeanrenaud(cello)>, 高橋アキ(p)

2022年3月26日 (土)

Tierney Suttonのジャズ心が素晴らしい。 #TierneySutton

_20220325 "Unsung Heroes" Tierney Sutton(Telarc)

これは実にいいアルバムだ。以前,このブログでTierney SuttonがJoni Mitchellにトリビュートした"After Blue"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,そこにはこのアルバムが行方不明みたいなことが書いてあるが,その後,ちゃんとラックに収まっていながら,ちゃんと聴くのは久しぶりのこととなった。そして,これが実にいいのだ。

Herb Wongがライナーにも書いているが,Tierney Suttonはヴォーカリストだけでなく,ジャズの楽器奏者の演奏を意識しながらヴォーカル・スタイルを作っているらしい。そして本作はそうした奏者にインスパイアされたことを示すために付いたタイトルだから"Unsung Heroes"な訳だ。その志やよしってところである。

ピアノのChristian Jacobを筆頭に,落ち着いた中にも見事な演奏を繰り広げる伴奏陣も素晴らしいが,何よりもTierney Suttonの歌いっぷりが魅力的。私はジャズ・ヴォーカルのよい聴き手ではないが,この人の声は妙な癖がなく,実に魅力的に響くのである。そして主題にあるようなジャズ心が強く感じられるのがBuddy Childersのラッパを伴った”Bernie’s Tune"だと思う。このスキャットを交えた歌いっぷりこそが,彼女の魅力ではないかと思ってしまう。また,"Joy Spring"を本人のアレンジで,ラッパとギターだけをバックにして歌ってしまうのもセンスがいい。更に2曲でGary Fosterをゲストに迎えるという人選も渋い。わかっているねぇって感じなのだ。"Spring Is Here"はKenny Barronのアレンジを採用したりしているところもぴったりはまっているところは,自分を活かす術を知っているという感じである。

選曲も一般的なジャズ・ヴォーカルよりも,奏者が採用しそうな曲が並んでいると言ってもいいかもしれないところが,このアルバムのポイントと言ってもよい。このアルバムを購入したのはもう20年以上前のことになるが,今聞いても全然魅力が失われていないのは大したものである。この普遍的な魅力はもっと知られてもよいと思う。放置していたことを反省して星★★★★★としてしまおう。だからと言って,私が保有する彼女のアルバムは相変わらず本作と"After Blue"の2枚のままなのだが...(苦笑)。

Recorded on September 8-10, 1999

Personnel: Tierney Sutton(vo), Christian Jacob(p), Trey Henry(b), Ken Wild(b), Ray Brinker(ds), Gary Foster(a-fl, as), Buddy Childers(fl-h), Alan Kaplan(tb), Jamie Findlay(g)

2022年3月25日 (金)

よどんだ時代にはアゲアゲのChaka Khanが必要だ(笑)。

_20220324 "Dance Classics" Chaka Khan(Warner Brothers)

世の中,コロナ禍の長期化だけでなく,ロシアによるウクライナ侵攻という許しがたい事態が発生していて,気持ちも上がっていかない今日この頃であるが,そうしたよどんだ気持ちを少しでも解放していくためには,アゲアゲの音楽が必要だってことで,今日はChaka Khanである。

このアルバム,日本で制作されたコンピレーションなのだが,それこそ踊れると言わずとも,還暦過ぎの私でも身体が反応してしまうような曲が並んでいる。これだけの曲が並べば,もはやメリハリもへったくれもなく,踊らにゃ損っていう気持ちになってしまうよねぇ(笑)。

まぁ編集方針として"Tearin’ It Up"がロング・ヴォーカル・ミックスとインスト版,"I’m Every Woman"がオリジナルとリミックス版と各々2回ずつ収められているのはどうなのよ?って気もする。両方人気曲だとは言え,ほかに入れられる曲もあっただろうし,これはちょっとやり過ぎかなぁという感じなのはご愛敬だが,それでもChaka Khanかくあるべしってところだろう。

いつ聞いても最高にカッコいい"I Feel for You"も入っているし,人気曲”What Cha' Gonna Do for Me?"も入っているが,後者は「空耳アワー」での「あっちから突っ込んで,こっちから突っ込んで」という空耳が頭から離れなくなってしまっていて,ついついそのフレーズで歌ってしまった私...(爆)。我ながらアホであるが,この曲がHamish StewartとNed Dohenyの共作曲だと知ってへぇ~となってしまった。Hamish Stewartはわからないでもないが,Ned Dohenyは実に意外。

2022年3月24日 (木)

久々に聴いても実に素晴らしい"First Song"なのだが,Billy Higginsがよく聞こえん(爆)。 #CharlieHaden #BillyHiggins #EnricoPieranunzi

_20220323 "First Song" Charlie Haden / Billy Higgins / Enrico Pieranunzi(Soul Note)

名手3人が揃えば優れたアルバムが出来てしまうという最たる事例と言ってもいいのではないか。お馴染みCharlie Hadenの名曲"First Song"で幕を開けるが,冒頭から実に痺れる演奏である。全編を通じて,美的なものとスウィンギーなものが交錯する実にいい演奏だと思う。これはメンツの妙でもある訳だが,ミュージシャンとして相性のよさを感じる。

演奏については全く文句はないのだが,私の耳が悪いのか,最近難聴の気が出ているせいなのか,はたまたオーディオ・セットがしょぼいからなのかわからないのだが,Billy Higginsのドラムスのミキシング・レベルが低過ぎやしないか?もちろん,サトルなドラミングもこなすBilly Higginsのことであるから,意図的にそういうドラミングをしている部分もあるだろう。私はドラムスの音を前面に押し出せと言うつもりはないが,もう少しバランスをよくしてもよさそうなものではないか。ちょっとそこが惜しいと思うのは私だけだろうか?

極論すれば,ピアノとベースのデュオ・アルバムのようだとさえ思ってしまう私であった。演奏は満点でもいいのだが,録音が惜しいって感じで星★★★★☆。ただねぇ,この人たちにCharlie Parkerの"Si Si"のような曲はあんまりフィットしていると思えないのだが...。

Recorded on April 26, 1990

Personnel: Charlie Haden(b), Billy Higgins(ds), Enrico Pieranunzi(p)

2022年3月23日 (水)

Barney Wilen:このアルバムは結構懐かしい。

_20220322 "Wild Dogs of the Ruwenzori" Barney Wilen (IDA)

一時期リーダー・アルバムのリリースが途絶えていたBarney Wilenが,日本で再評価される機運が高まったのはこのアルバムあたりではなかったか?私の記憶の中では,かつて六本木にあったWaveでこのCDを買ったような気がする。そして,当時そのWaveでこのアルバムは結構売れていたように思えるのだが,実際のところは記憶の彼方ゆえはっきりしない。いずれにしても,Waveって今にして思えば相当スノビッシュな場所だったなぁなんて思う。

Barney Wilenはこのアルバムが出た頃は50歳を過ぎたぐらいでミュージシャンとしては脂がのっている時期だったと言ってもよいだろうが,上述の通り,リーダー作がなかなか出ない時期を経てのこのアルバムは,印象的なジャケも売り上げには結構効いたのではないかと思わせるものであった。

それでもって,久しぶりにこのアルバムを聞いてみたのだが,何とも軽いなぁって感じである。冒頭の"Port of Spain Shuffle"なんて,このアルバムにおける人気曲だとは思うのだが,パーカッションが入ることで,ただでさえ軽い感じが更に軽くなるってところである。アルバムではSonny Rollinsの"Little Lu"なんて曲もやっているが,曲はまさにRollinsなのだが,ここでの演奏は,Rollinsがヘヴィー級なら,せいぜいバンタム級って感じの軽さなのだ。軽薄とは言わないまでも全編を通じて黒さもなければ,重みもない。

この音楽が当時の日本で受けたとすれば,それはバブルに踊るそうした時期の雰囲気には合っていたってことなのかもしれないが,今このアルバムを聞けば,私にとってはまぁこういうのもあってもいいけどね...ぐらいの感覚である。

音楽なんて必ずしも深刻ぶって聞く必要はないし,時代も反映するものと思うが,還暦を過ぎた今の私にとっては,必ずしも優先順位が上がらないっていう演奏と言えばいいだろうか。決して悪い演奏ではないのだが,シンセサイザーらしき音も入ったり,エレクトリック・ベースの音もするようなところはどうも中途半端な感じがする。別にそうした楽器の利用を否定はしないが,使い方がイマイチなのが残念。星★★★。

ということで,Barney Wilenなら私は50年代の演奏を聞く方がずっと心地よいってところか。それにしても,IDAレーベルだからかもしれないが,本作も結構な値段で売買されているのには驚いた。結構日本でも売れたはずなんだけどねぇ。

Recorded on November 21-24, 1988

Personnel: Barney Wilen(ts, ss, as), Alain Jean-Marie(p), Eiccardo Del Fra(b), Sangoma Everett(ds), Henri Guedon(perc)

2022年3月22日 (火)

Miroslav Vitousの"Emergence":どれだけ訴求力があるかは別にして,これだけベース・ソロでアルバムを作ってしまうECMは凄い。 #MiroslavVitous #ECM

_20220320 "Emergence" Miroslav Vitous (ECM)

ECMレーベルには結構な枚数のベース・ソロによるアルバムが存在する。ECMレーベルのファンは別としても,ベース・ソロなんて一体どういう人が買うのか?って思ってしまうのだが,自分も結構な枚数買ってるくせに言うなよ!と言われては抗弁不能だ(笑)。

そんなECMからリリースされたMiroslav Vitousによるベース・ソロ・アルバムが本作であるが,いくらECMレーベルの音楽が好きだからと言っても,私もこのアルバムのプレイバック頻度は極めて低い。やっぱり通常の音楽鑑賞のレベルからすれば,ハードルが高いのだ。それでも,Miroslav Vitousらしいアルコとピチカートをうまく混ぜた感じの演奏は,Vitousのベースの技に触れるにはいいと思う。

しかし,全編ベース・ソロってなると,ベーシストはさておき,一般的なリスナーには聞き通すことさえ厳しいものなんだろうと思ってしまう。決して聞きにくい音楽だとは思わないし,言い訳っぽく(爆)"Alice in Woncerland"も演奏しているが,曲の魅力と言うよりも,技のデパートみたいな感じになっているところは否めない。なので,純粋な音楽として評価するのは結構難しいというのが実感で,これを聞いていると,同じECMでもジャズ心全開のMarc Johnsonの"Overpass"がいかに優れたアルバムだったかがわかると思う。まぁ,Vitousは多重録音はしていない(ライナーにも"No Overdub"と書いている)ので,その志こそ認めないといけないんだろうが。ってことで,半星オマケみたいなところで星★★★☆。

Recorded in September 1985

Personnel: Miroslav Vitous(b)

2022年3月21日 (月)

"New Chautauqua":あの頃のPat Methenyって感じ。 #PatMetheny

_20220319-2"New Chautauqua" Pat Metheny(ECM)

振り返ってみれば,私が初めてPat Methenyの音楽に触れたのは,ECMレーベルにおける”Pat Metheny Group"だった。結構リリースされてすぐぐらいに買った記憶があるので,高校2~3年の頃,確か予備校の夏期講習の帰りかなんかで,京都のショップで購入したような気がする。そこで一気に気に入ってしまい,それ以降のアルバムはほぼリアルタイムで聞いてきたし,それ以前のアルバムも後追いで聞いてきた。後追いで聞いたのは"Bright Size Life","Water Colors"ということになるが,私とPat Methenyとの付き合いも長くなったものである。そんな中,実は"Pat Metheny Group"以降で,リアルタイムで買わなかったのがこのアルバムであった。

本作はPat Methenyの多重録音を交えたソロ・アルバムである。私がPat Methenyに惹かれたのは"Pat Metheny Group"におけるバンド・サウンドであったので,その後"American Garage"が出た時点で,彼らの音楽の全部聞きを目指したはずだ。よって,このソロ・アルバムが出た当時は,まだそこまでプライオリティを上げられなかったということだ。そもそもまだ高校生か,予備校通いをしている頃であるから,限られた小遣いでは,買えるアルバムの枚数も少なかったので,それはそれで仕方がなかった。結局入手したのはCDの時代になってからなので,随分後になっての購入となった。

まぁそれでも,冒頭のタイトル・トラックなんかを聞いていると,どう聞いてもあの頃のPat Methenyの音だよなって感じである。後にPat Methenyはテクノロジーも駆使するようになっていくが,この頃はまだシンクラビアとかギター・シンセサイザーも使っていないから,音的にはまだまだ素朴な感じもするが,フレージング自体は今も昔も変わらないってところだ。

なので,今聞いても,相応に楽しめるアルバムではあると思うが,アナログで言えば,A/B面1曲目のタイトル・トラックと"Hermitage"がいかにもPat Metheny的で魅力的に響くように感じる一方,そのほかの曲のクォリティは今一歩かなって気がする。そういうこともあって,ECMのアルバムの中ではプレイバック頻度があまり上がらないというのが正直なところなのだが,やはり私が期待してしまうのが”Pat Metheny Group”,”Travels”,あるいは”Still Life (Talking)のレベルになってしまうからなのかとも思う。まぁ,どうしても期待してしまう,そういうミュージシャンなのである。それを半世紀近く続けているってのも凄いことだが,このアルバムに関しては星★★★☆ってところ。嫌いじゃないけどね(笑)。でも,この頃から15弦ハープ・ギターとか弾いていたのねぇ。それが後のピカソ・ギターになったのかなんて思ってしまった。

Recorded in August 1978

Personnel: Pat Metheny(g, b)

2022年3月20日 (日)

「高橋アキの世界」のCD版を入手。 #高橋アキ

_20220319 「高橋アキの世界(”Piano Space”)」高橋アキ(EMI)

以前,このアルバムをアナログで入手した際にも記事にした私である(記事はこちら)が,現在の私の自室の再生環境ではやはりCDの方が便利,あるいは手軽ってことは否定できないので,チャンスがあれば,2009年に出たCD版も欲しいなぁと思っていた。しかし,ものがものだけ(換言すれば,好き者しか欲しがらない)に,結構中古でも値段が高かった。そこへこのCD版がまぁ納得できる(と言っても定価よりはかなり高い)価格で出ていたので,入手した私である。

音源はまたゆっくりと聞くチャンスがあるとして,こういうのが家人からすれば無駄遣いってことになるのだろうが,まぁいいのである。この超弩級のアルバムが手軽に再生できるようになったことを素直に喜びたい。

そう言えば,高橋アキについては「ピアノ・トランスフィギュレーション」もまだ記事をアップしていなかったなぁ。まずはそっちをちゃんと聞かねば(笑)。

2022年3月19日 (土)

Brad Mehldauの新作,"Jacob’s Ladder"がリリース。現物は現在空輸中...。 #BradMehldau

Jacobs-ladder-cover_20220319072101 "Jacob’s Ladder" Brad Mehldau(Nonesuch)

Brad Mehldauの新作のリリース日を迎えて,既にストリーミングでも公開されている。私はオマケ欲しさに現物を米国から飛ばしているので,現物はまだ手許にないが,Nonesuchからダウンロード音源が届いているので,まずは聞ける範囲で聞くことにしよう。既に一部の音源は公開されていたが,今回のテーマは「プログレ」である。

まだ全部聞けてはいないが,私がのけぞったのが2曲目,"Herr und Knecht"である。まさにプログレ,現代に蘇ったEmerson, Lake & Palmerみたいな音ではないか。Brad Mehldauはロックの曲をカヴァーもしているし,越境型の共演もこなすので,自身の音楽体験にロックがあることは間違いない。そして,ここではRush,Gentle Giant,そして私は聞いたことのないPeripheryをカヴァーしつつ,プログレに対するオマージュを徹底して発露したって感じである。最後の"Heaven"には美的なピアノ・フレーズに続いて,Yesの"Starship Trooper"から"Life Seeker"まで登場するのにはまじでビックリした。

コンヴェンショナルなBrad Mehldauを好むリスナーにとっては,こういう音楽は反感を呼び起こすかもしれない問題作と言ってよいが,もともとがBrad Mehldauはジャズ・フィールドに留まらないプレイヤーなのだと私は思っている。詳しくは現物が届いてから改めて書くが,ここまで徹底してやってくれれば文句も出ない。

2022年3月18日 (金)

2003年に出たJames Taylorのベスト盤。やっぱりいいねぇ~。 #JamesTaylor

_20220312-5 "The Best of James Taylor" James Taylor(Warner Brothers)

James Taylor,アメリカの国民的歌手と言ってもよい人である。実にいい曲を書き,心地よく歌う。この人のことを嫌いな人なんていないのではないかとさえ思ってしまう。

本作は2003年に出たベスト・アルバム。私は結構James Taylorのアルバムは保有しているが,全部という訳ではないので,こういうベスト盤も重宝するのだ。新曲1曲を含む全20曲を聞けば,まぁJames Taylorの主だったところは聞けるが,その後出したアルバムもいいが,キャリア全般を俯瞰するなら,まずはこれぐらいからってのは悪いアイディアではない。

まぁ,今の若い人たちがJames Taylorの音楽を聞いても,全然刺激がないと感じるかもしれないが,我々の世代はこの音楽を聞いて郷愁を誘われればいいのだ(きっぱり)。ブックレットにある若々しいJames Taylorの写真を眺めて,時の流れを感じるもよしってところである。そんな気分にさせてくれる名曲群。いいねぇ。星★★★★★。

Personnel: James Taylor(vo, g), Red Rhodes(g), Danny Kortchmar(g, perc), David Spinozza(g), Dan Dagmore(steel-g), John Sheldon(g), Carole King(p), Craig Doerge(p), Kenny Ascher(key), Clarence McDonald(key), Nick DeCaro(org), Bill Payne(key), Clifford Carter(key), John London(b), Bobby West(b), Leland Sklar(b), Andy Muson(b), Tony Levin(b), Willie Weeks(b), Russ Kunkel(ds, perc), Rick Marotta(ds), Jim Keltner(ds), Steve Jordan(ds), Ralph McDonald(perc), Milt Holland(perc), Victor Feldman(vib, perc), Bobby Hall(perc), Peter Asher(perc), Airto Moreira(perc), Joni Mitchell(vo), Carly Simon(vo), David Crosby(vo), Graham Nash(vo), Andrew Gold(vo, harmonium), Leah Kunkel(vo), Randy Brecker(vo), Eliane Elias(vo), Kenia Gould(vo), Zbeto(vo), Curtis King(vo), Michael Brecker(ts), David Sanborn(as), Gayle Levant(harp), Byron Berline(fiddle)

2022年3月17日 (木)

Wynton Marsalisの初リーダー作。みんなで盛り上げていたねぇ。 #WyntonMarsalis

_20220312-4 "Wynton Marsalis" Wynton Marsalis(Columbia)

ラッパは異常にうまいが,ジャズ・ファンからは必ずしも愛されないというのが私のWynton Marsalisに対する感覚である。それは偏にこの人のジャズ原理主義者的な発言や態度が反感を買っているというところはあると思うのだが,Art Blakey & the Jazz Messengersでシーンに登場してきた時はこれは凄いという評価が主流だっただけに何とももったいない気もする。加えて,ラッパがうま過ぎて,破綻がないところに居心地の悪さを感じるジャズ・ファンもいるようにも思う。

私がこの人に感じるのは,原理主義者的側面に加え,「お行儀のよさ」である。クラシックもやってしまうってところもあるかもしれないが,同じラッパでもLee MorganやFreddie Hubbardに感じる部分と明らかに違う雰囲気と言えばいいだろうか。こういう風に書くと,私はWynton Marsalis全否定のようにも聞こえてしまうかもしれない。しかし,例えばアルバム"J Mood"については「ツボにはまった時の恐ろしさ」(記事はこちら)なんて書いているように,全否定ではない。但し,そこにも書いているように「ジャズ原理主義者としてのWynton Marsalisにははっきり言って辟易とさせられる部分があり,それによるトラッドを模した彼の演奏形態も私は全然いいと思ったことはない。」ということであり,いい演奏をしていることもあるのは厳然たる事実なのだ。認めるべきところは認めつつ,それでも反感の方が強いって感じなのだ。

そんなWynton Marsalisの初リーダー作が本作である。私がこのアルバムを入手したのはColumbia Legacyから再発された際なので,随分後になってからのことである。しかし,本作はHerbie Hancockがプロデューサーとなり,Wynton Marsalis自身のクインテットだけでなく,Herbie Hancock~Ron Carter~Tony Williamsがリズムを支える演奏もあるという構成になっていて,力が入っていたのである。これはWynton Marsalisを世に出そうという強い意志の表れであるが,破格の待遇と言ってもよかったと思う。

演奏は全然破綻がないもので,質は高いと思う。だけどねぇ,ここでやっている"Sister Cheryl"なんて全然面白くないんだよねぇ。この曲はTony Williams自身のBlue Noteレーベルでの演奏の方がはるかによくて,この高揚感のなさはなんでそうなるの?って感じしかしない。そのほかは所謂新主流派的な音を80年代に再現してみましたってところ。私としてはWynton Marsalisにはこれよりずっといいアルバムがあると思うので,どうしても評価は高まらない。うまいけどね。ということで,星★★★☆ってところで十分だろう。それにしても,ここでもRon Carterのベースの音は品がないこと甚だしい。

Recorded in 1981

Personnel:Wynton Marsalis(tp), Branford Marsalis(ts, ss), Herbie Hancock(p), Kenny Kirkland(p), Ron Carter(b), Clarence Seay(b), Tony Williams(ds), Jeff Watts(ds)

2022年3月16日 (水)

こんなのもあったねぇってことで,Patrick Moraz。 #PatrickMoraz

_20220312-3 "The Story of I" Patrick Moraz(Virgin)

私がこのアルバムを保有しているのはPatrik MorazのYesつながりゆえってところになると思う。Patrick MorazがYesに参加したのはアルバム"Relayer"だけであるが,1975年のライブ映像も残っている。その映像はその昔,レーザーディスクで持っていたが,今はもう手許にはない。まぁ,今ではYouTubeという便利なものがあるので,いつでも見られるが。

"Relayer"は実にスリリングなアルバムだとは思うが,Yesのイメージとちょっと違うと感じさせる部分があるのは事実である。私は決して嫌いなアルバムではないが,Rick Wakemanのイメージを持って聞くと,違和感を覚えるリスナーがいてもそれは不思議ではない。そうした変化はPatrick Morazが加入したからと言う理由だけで生まれるものではないと思うが,少なからずバンドのサウンドに影響を与えたことは間違いないところだろう。

そのPatrick Morazがリリースした初リーダー作がこれである。正直言って,このアルバムを取り出したのも無茶苦茶久しぶりだったのだが,本作もクレジットを見ていて,こんなメンツだったのか!なんて思ってしまった。ベースはJeff Berlinだし,ドラムスは前半がAl Mouzon,後半がAndy Newmarkという強烈なリズム隊である。そんなリズムに乗って展開される音楽はやはりかなりハードでハイブラウ。Rick Wakemanがやる音楽とは明らかにタイプが異なる。

レコーディングから45年以上を経過しているから,音としては若干古臭さを感じさせるのは事実だが,甘い声のヴォーカルやそのバックの部分がある意味牧歌的な部分を感じさせる一方で,歌なしで展開されるキーボード・ソロの激しさ("Indoors"あたりに顕著)の対比が強烈である。このテンションの強弱に戸惑うリスナーがいても仕方ないかなという感じもする。もともとPatrick Morazがジャズ・バンドを組んでいたこともあるかもしれないが,その当時からこういう感じだったのかねぇと思ってしまう。

まぁ,それでもなかなかユニークなアルバムで,久々に聴いてへぇ~となってしまった私であった。何回も繰り返し聴きたくなるものでもないが,これはこれで相応に聞きどころのある音楽であった。星★★★☆。

Personnel: Patrick Moraz(key, vo, marimba, perc), John McBurnie(vo), Vivienne McAuliffe(vo), Ray Gomeperc), z(g), Jeff Berlin(b), Alphonse Mouzon(ds), Andy Newmark(ds), The Percussionists of Rio De Janeiro(perc), Jean-Luc Bourgeois(perc), Auguste de Anthony(g), Jean Ristori(cello, b), Phillipe Staehli(perc), Rene Moraz(tap, perc), Veronique Mueller(vo) 

2022年3月15日 (火)

The Very Tall Band:この人たちのライブは観る機会がなかったなぁ。 #OscarPeterson #MiltJackson #RayBrown

_20220312-2"What’s Up?" The Very Tall Band(Telarc)

本作は98年11月にNYCのBlue Noteでライブ・レコーディングされたものだが,この時の演奏は本作に先立って"The Very Tall Band"というアルバムがリリースされていて,これはその残りテイクってことになる(前作の記事はこちら)。

"The Very Tall Band"は父の遺品のCDであった。私はOscar Petersonのリーダー・アルバムはほとんど保有していないのだが,父が遺してくれたものはちゃんと売らずに手許に残してある。だからと言って,聴く頻度が高い訳ではないが,Milt Jacksonは自分でもアルバムを結構持っていることもあって,このコンビネーションならエンタテインメント性に富むハード・スウィング間違いなしだよなぁなんて思ってしまう。そのアルバムがあるものだから,珍しくも自分でこのアルバムを買ったものと思う。

このレコーディング時には3人とも古希を過ぎているが,実に矍鑠としたもの。Milt Jacksonは翌年亡くなってしまうとは思えない演奏ぶりである。はずさないのだ。亡くなった父はジャズを聞き始めたのは晩年になってからのことであったが,息子の私とはジャズに対する嗜好は違っていて,どちらかと言えばこのアルバムに聞かれるようなスウィンギーな演奏を好んでいた。しかし,私が父の日に送ったKenny KirklandやBrian Bladeのアルバムも気に入っていたようだし,Thelonius Monkが好きだったようなのも面白かった。雑食なのは父も息子も同様である(笑)。

それはさておき,ここで聞かれる演奏はど安定のものと言ってよく,誰しもが楽しんでしまうタイプの音楽と言ってよい。残りテイクとは言っても,クォリティには何の問題もない。本作がリリースされた2007年の暮れににOscar Petersonは亡くなっているので,このリリース・タイミングは単なる偶然ということになるが,それにしても万人が楽しめる演奏をしていたものだと言わざるをえない。星★★★★。

私はこの手の演奏のライブには行ったことがないと言ってもよいが,こういう名人たちの芸には一度ぐらい触れておいてもよかったかなぁと思いつつ,もはや後の祭り。それにしても,ここでドラムスを叩いているKarriem Rigginsはレコーディング当時23歳。爺さんと孫じゃん(笑)。それも凄いよねぇ。

Recorded Live at Blue Note NY on November 24-26, 1998

Personnel: Oscar Peterson(p), Milt Jackson(vib), Ray Brown(b), Karriem Riggins(ds)

2022年3月14日 (月)

GRPレーベル時代に残したLarry Carltonのベスト盤。 #LarryCarlton

_20220312 "Collection" Larry Carlton(GRP)

一時期のGRPレーベルというのは,それこそありとあらゆるフュージョン系ミュージシャンと契約しているような状態だったが,Larry CarltonもGRPから何枚もアルバムをリリースしている。本作はGRPレーベルに所属している1990年に出たベスト・アルバムであるが,2曲の新曲が入っているものの,それ以外はGRPに所属する前の,WarnerやMCAレーベル時代のアルバムからセレクトされているところが特徴的。これはLarry Carltonとの契約のご祝儀みたいな感じで捉えればいいかもしれない。

本作がリリースされた1990年は,私がNYCでの生活を始めた年だが,時をほぼ同じくして「スムーズ・ジャズ」なんて言い方が一般的になってきたと言ってもよい。このブログにも何度か書いているが,当時,NYCにはWQCD-NYというFMステーションがあって,CD101.9とも呼ばれるこのステーションからは「スムーズ・ジャズ」が常に流れているという状態で,約2年間のNYC生活において,私は大いに世話になっていた。スムーズ・ジャズと言っても,アダルト・コンテンポラリー系の音楽も掛かっていたので,フュージョン系ばかりではなかったが,それでも本作に入っているLarry Carltonの曲もよくプレイバックされていたのが懐かしい。

ここでもそういう時代を反映してかはわからないが,ロック・タッチの曲は選ばれておらず,どちらかと言えば「スムーズ・ジャズ」の概念にフィットしそうな曲が並んでいる。Larry CarltonのSignature Songと言えば,通常は"Room 335"になりそうなものだが,アルバム"Larry Carlton"から選ばれているのは"Nite Crawler"というのが象徴的って気もする。一時期Larry Carltonがアコースティック・ギターに傾斜していた時期の曲も結構入っている。このアルバムはゆったり時間を過ごすのに丁度いい感じの構成になっていると言ってもよいだろう。間違いなく心地よく時は流れる効果はあるということで,星★★★★。

クレジットを眺めていて,Doobie Brothersの"Minute by Minute"ではMichael McDonaldがキーボードを弾いていたのねぇ,なんてことに今更気がついた私であった。

Personnel: Larry Carlton(g, b, vo), B.B. King(g), Dean Parks(g), Joe Sample(key), Terry Trotter(key, synth), Michael McDonald(key), Greg Mathieson(key), Alan Pasqua(key), Don Freeman(key), Brian Mann(org, synth), Eric Pershing(key), Abe Laboriel(b), John Pena(b), Pops Popwell(b), John Ferraro(ds), Rick Marotta(ds), Jeff Porcaro(ds), John Robinson(ds), Michael Fisher(perc), Paulinho da Costa(perc), Kirk Whalum(ts), Michael Brecker(ts), Al Jarreu(vo), David Pack(vo), Michele Pillar(vo) with horns

2022年3月13日 (日)

久しぶりにU2を聴いたが,やっぱりカッコいいねぇ。

_20220311 "The Joshua Tree" U2(Island)

このアルバムに限らずなのだが,U2を聴くことが実に久しぶりである。そもそもリリースされて5年近い最新作,”Songs of Experience"だって聞いたことがないのだから,私のU2に対する関心そのものが薄れているってところだろうが,それでも一時代を築いたバンドであることには何の疑いもない。と言いつつ,私も全部聞いている訳ではないので,偉そうなことは言えないが,かつて東京ドームで豆粒のような彼ら(とB.B. King)を観たことは事実として残っている。あれは1989年,バブル絶頂期みたいな頃であった(遠い目...)。

そんな私ではあるが,私が初めて買ったU2のアルバムがこれで,今でも一番好きなのもこれって感じである。曲の素晴らしさというのはもちろんあるのだが,Daniel LanoisとBrian Enoという素晴らしいプロデューサーに恵まれたことこそ,U2がビッグネームとなった要因の一つと言えると思う。どこを切り取っても,素晴らしきロック・アルバムである。よって,このアルバムの評価は星★★★★★しかない。Bonoの声ってのがそもそもあまりにも魅力的であったしなぁ。

一方,誤解を恐れずに言うならば,The Edgeのギターは,デジタル・ディレイさえかませば,大した技量がなくても弾けるじゃねぇかなんて言うことはできる。しかし,ああしたサウンドを生み出すこと自体が「発明」であり,重要だ。ここでも聞かれるギターのサウンドが,後のギタリストのディレイ使いに大きな影響を及ぼしていることこそ評価しなければならない。

いやぁ,久しぶりに聴いても痺れてしまった私である。

Personnel: Bono(vo, g, hca), The Edge(g, vo), Adam Clayton(b), Larry Mullen, Jr.(ds, perc), Brian Eno(key, vo), Daniel Lanois(g, perc, vo)

2022年3月12日 (土)

火村英生シリーズ最新作。旅情ミステリーみたいな展開である。

Photo_20220311180501 「捜査線上の夕映え」 有栖川有栖(文藝春秋)

私が現在の住まいに引っ越して10年近くになるが,それにより通勤環境が変わり,読書量が大幅に減少したという話は前にも書いたことがある。それに加えてコロナ禍により,在宅勤務が当たり前になってくると,通勤時間すらない訳で,現在の私の読書の主たる時間は入浴中である(笑)。

そんな私がこのところ読んでいたのがこの本なのだが,先日の地方出張の道すがらで結構ページが進んでしまった。まぁ安定の火村英生シリーズってところなのだが,今回は主題のごとく,旅情ミステリーっぽいところがあるのがユニークって感じか。結構淡々とした展開で,実際の警察の捜査ってのはこんなものかもしれないなぁと思わせるが,それでもまぁ面白く読ませてもらった。

淡々としているというのは,ギミック満載の驚きの展開ではない部分によるものだが,設定には若干の無理があったとしても,妙に納得してしまうストーリーだと言ってもよい。読者の嗜好によっては,もっと劇的な展開を求める向きもあろうが,これはこれでありだと思えたということで星★★★★。

2022年3月11日 (金)

これもBrad Mehldau参加音源入りの珍しいライブ・コンピレーション。Charles Lloydとの"Lady Day"収録。 #BradMehldau

_20220310 "The Best of Summer Nights at MOCA" Various Artists(MOCA)

先日もライブ・コンピレーションの"Ludwigsburger Jazz Tage"を取り上げたが,これもBrad Mehldauの参加音源が入っている。これも保有していることに安心しきって,ちっとも聞いちゃいないということで,久々に取り出してみた。

MOCAとはLAにある近代美術館,Museum of Contemporary Artである。そのMOCAにおいて1998年に開催された屋外無料コンサートの模様を収めたもので,あまりよく知らないミュージシャンの音源も含まれているが,私のねらいは主題の通り,Charles Lloydと共演したBrad Mehldau音源にあった。ここでやっているのは,ECMからリリースされた"Water Is Wide"でもやった"Lady Day"である。この14分弱の演奏が実に魅力的で,私のようなBrad Mehldauコレクターでなくても,これ1曲のためだけに保有している意義があるとさえ言いたくなる。

"Lady Day"のリズムはJeffrey LittletonとBilly Higginsなのだが,この二人,最後に入っているBarry Harrisの伴奏もしているから,ここでのCharles Lloyd Quartetは特別編成なのかもしれない。しかし,Billy Higginsは”Water Is Wide"でも叩いているから,この辺りの判断は難しいところだが,それでも演奏がいいのだから,そんなことはまぁどうでもいいっちゃどうでもいい。

いずれにしても,こういうイベントが美術館で無料で開催されるってことが,実に素晴らしいことである。尚,このCDの収録曲は次の通り。

  1. "Born Again" Barbara Morrison
  2. "The Night Has a Thousand Eyes" Billy Higgins(ピアノはCedar Walton,テナーはHarold Land)
  3. "My Ship" Sandra Booker
  4. "African Queen" Bobby Matos
  5. "Moontrain" Joe Bonner & Michael White
  6. ”I've Seen Fire & I've Seen Rain" Ernie Andrews
  7. "Lady Day" Charles Lloyd
  8. "Un Poco Loco" Barry Harris 

2022年3月 9日 (水)

なんだかんだ言いながら,Pretendersって結構好きなんだよねぇ。 #Pretenders

_20220305-4 "Isle of View" Pretenders(Warner Brothers)

主題の通り,私は結構Pretendersというバンドが好きである。アルバムを全部持っているとかいう訳ではないのだが,このバンドのアルバムには何となくはまってしまうのだ。一番好きなのは"Learning to Crawl"であることは今も昔も変わらないが,ベスト盤も長年愛聴している。そんなPretendersの魅力はChrisse Hynde姐さんのヴォーカルに帰結すると思っているが,バンドとしてのサウンドも姐さんの指向を反映したソリッドさを感じさせるところがいいのだ。

そんなPretendersが弦楽クァルテットを従えて,アンプラグドに近い形式で演奏するとどうなるのかってのが,一番の関心事になるのが本作である。私がこのアルバムを聞いて思ったのは,こういうセッティングでやると,ソリッドなロックとして聴いていた曲の別の魅力が浮かび上がるってことではないか。Pretendersの曲ってのはこうして聞くと,改めて魅力的なものが多いことがわかる。そして本当に合うのかと思いがちな弦楽クァルテットとの共演もかなりいい感じに仕上がっている。

後半の"I Go to Sleep"にはBlurのDamon Alburnもゲストとして登場するが,あくまでもゲスト的なので,そこはご愛敬であるが,そんなこと関係なしに久々にこのアルバムを聴いて,Chrisse姐さんの書く曲のよさを感じられたことはよかった。正調Pretendersではないが,これはこれでありだと思ってしまう結局はファンの私(笑)。弦楽クァルテットの響きについつい評価も甘くなり,半星オマケで星★★★★☆。

Recorded Live at Jocob Street Studio on May 1, 1995

Personnel: Chrisse Hynde(vo, g), Adam Seymour(g, harmonium, vo), Andy Hobson(b), Martin Chambers(ds, vo), Duke Quartet: John Metcalfe(vla), Louisa Fuller(vln), Rieland Koster(vln), Ivan McCready(cello), Damon Alburn(p), Mark "Wiff" Smith(perc)

2022年3月 8日 (火)

これもアップしていなかったなぁってことで,Bill Evansの放送録音音源。 #BillEvans

_20220305-3 "The Sesjun Radio Shows" Bill Evans(Out of the Blue)

先日,と言っても結構前にはなるが,ブログのお知り合いが本作を紹介されていて,あぁ,これ持ってたなぁってことで,改めて聞いてみようと思いつつ,時間が経ってしまった。

Bill Evansはその人気を反映して,死後時間が経過しても,未発表音源が次から次へと発掘されているが,これは20gう11年頃にリリースされた未発表ライブ音源である。タイトルからもわかる通り,オランダのラジオの放送音源を2枚のCDにまとめたものであるが,音源は3回のセッションに分かれており,①Eddie Gomezとのデュオ,②Eliot Zigmund入りのトリオ,③Marc Jonnson~Joe Labarberaとのラスト・トリオにゲスト,Toots Thielemansという実に嬉しい構成なのだ。

私はEddie Gomezのベースの音はあまり好きではないのだが,CD1に収められている①,②のセッションを聞いていると,そんなに抵抗がなく,Ron Carterほどは嫌いじゃないんだなと思ってしまう(笑)。特にBill Evansとの共演においては抵抗感が薄れるし,そもそもEliot Zigmundが入った"You Must Be Spring"なんて相当好きなんだから,抵抗がなくても当たり前で,今後はEddie Gomezを毛嫌いせず聞くようにしよう。

そのCD1も安定のBill Evansではあるが,どうも私はCD2ばかりに注意が向いてしまう。何てたってゲストがToots Thielemansである。アルバム"Affinity"におけるBill EvansとToots Thielemansの珠玉と言ってよいバラッド・プレイを知る者ならば,期待して当たり前なのだ。正直言って,私はアルバムとしての"Affinity"を全面支持はしていない(記事はこちら)のだが,この二人の共演には全く文句がなかった。そして,私の評価を低下させたLarry Schneiderがここにはいないので,ますます期待してしまう訳だ。しかもアルバムではやってなかった"Bluesette"もやってるしねぇ。この曲をBill Evansがやっているのはここだけではないか?だとしたら超貴重だよなぁ。まぁ,この曲の主役はToots Thielemansであることは間違いないが,Bill Evansも伴奏もソロもきっちりこなしているし,曲にもフィットしていると思う。

ここでのMarc Johnsonのベースの増幅感(明らかにベースのミキシング・レベルが過剰だろう...)はちょっと残念だが,それには目をつぶるとして,Bill Evansにしても,Toots Thielemansにしても外さないねぇと思わせるに十分な演奏と言ってよい。Bill Evansはこの演奏から約9か月後に亡くなってしまうとは思えないような躍動感を"Nardis"等には感じる。そして歌心は全く変わるところがないのが,Bill EvansのBill Evansたる所以だ。

こういう発掘音源ならいつでも歓迎ってことで,星★★★★☆。尚,本作は現在はジャケが変わったものが2枚に分割されて販売されているようなので念のため。

Recorded Live at De Boerenhofsted ① on December 13, 1973, ② on February 13, 1975, and ③ at De Meerkoet on December 6, 1979

Personnel: Bill Evans(p), Eddie Gomez(b on ①②), Marc Johnson(b on ③), Eliot Zigmund(ds on ②), Joe Labarbera(ds on ③)

2022年3月 7日 (月)

週末に観た映画:「ナイル殺人事件」。金は掛かっているが,これはちょっとねぇ...。 #ナイル殺人事件

Death-on-the-nile 「ナイル殺人事件 ("Death on the Nile")」('22, 米/英,20th Century)

監督:Kenneth Branagh

出演:Kenneth Branagh, Gal Gadot, Army Hammer, Emma Mackey, Tom Bateman, Anette Bening

私も子供の頃はアガサ・クリスティの小説は結構読んだクチだが,本作の原作「ナイルに死す」は未読であった。また,78年にPeter Ustinovがエルキュール・ポワロを演じた映画も未見であったので,ストーリーは知らなかった訳だが,筋書きはすぐに読めるって感じである。そもそも,同じくKenneth Branaghがポワロを演じた「オリエント急行殺人事件」はスリランカ出張の機内エンタテインメントで観て酷評している(記事はこちら)のだから,筋書きを知らないからと言って,敢えて見に行かなくてもよさそうなものだが,気の迷いである(笑)。

そもそも前作と比べても役者が小粒な感じは否めないのだが,私が笑ってしまったのが,ポワロが髭を伸ばすに至る理由を説明する冒頭のシークェンスである。そこに出てくる塹壕のシーンは「1917」の焼き直しか?と思わせるような演出で,何じゃこれは?とまず思ってしまった。

そこからロンドンのシーンに転じて,その後,お決まりのエジプト観光モードに入っていく訳だ。ロンドンのダンス・シーンはかなりエロいムードを醸し出しており,時代背景にはそぐわない感じもある。それでもその後のエジプトの風景シーンとコスチューム・プレイを加えたレトロな感覚を単純に楽しめばいいって話もあるのだが,仕方がないとは言え話が古臭い。そして,推理小説を原作とするには容易にネタが割れるって感じなのも痛い。むしろ,私が楽しんでしまったのが,原作では作家という設定だったらしいサロメ・オッターボーンがここでは歌手になっていて,そこにかぶさるSister Rosetta Tharpeの歌声だったというのだから困ったものだ。

それでも世界中でヒットしている模様で,公開1か月程度で予算は既に回収しているのだから,この手の映画のファンは数多くいるってことだろう。だが,今回も私にとっては可もなく不可もなしって感じで,「オリエント急行」同様,星★★☆でよかろう。Kenneth Branaghはまだポワロものを撮る気かもしれないが,次はよっぽどの役者でも揃えてもらわない限り,観に行かないだろうなぁ。

2022年3月 6日 (日)

Kit DownesのECMにおけるトリオ作。これはいいねぇ。 #KitDownes #ECM

_20220305 "Vermillion" Kit Downes(ECM)

ECMは結構な数のアルバムがリリースされるし,ストリーミングもあるので,以前よりは購入ペースは落ちていて,現物を買うのは自分の趣味に合いそうなものに限定している。Kit Downesは既にECMでアルバムもリリースしているが,これまで私は未聴であった。そんな中,リリースされたのがこのアルバムであるが,これはブログのお知り合いのご紹介などもあって,ストリーミングで試聴することもなく発注したものだが,これが当たりであった。

Kit Downesは英国出身らしいが,私にとっては英国のジャズというのは結構つかみどころがなく,フリー的なアプローチの演奏に印象が強いものが多いが,一方,コンベンショナルな演奏をするミュージシャンも存在する。そうした中で,ここで聞かれるような演奏をする英国のミュージシャンは,あまりいないとは思うのだが,ぱっと思いつくところはJohn Taylorあたりになるだろうか。そこはかとなく抒情性も感じさせながら,清冽な響きを聞かせるピアノ・トリオという感覚を与えるもので,こうした響きにはスウェーデン出身のベーシスト,Petter Eldhの影響もあるかもしれない。

若干,アブストラクトな展開を示す部分はあるものの,決して聴きづらいというほどのものではなく,スポンテイニアスでありながら,美的でもあるという,いかにもECMのピアノ・トリオらしい「美味しさ」を感じさせる演奏と言えばよいだろう。アルバム・タイトルである"Vermillion"は朱色の意味(アルバム・カヴァーもブルー基調の中,タイトルだけ朱色になっている)であるが,暖色の持つ温かみというよりは,全面的に寒色系ではないものの,どちらかと言えばクールな響きということのように思える。それが私の趣味にずっぽしはまるのである。

メンバーのオリジナルに加えて,最後をジミヘンの"Castles Made of Sand"で締める辺りは,やっている音楽はジミヘンには全然つながらないように思えるところで実に興味深いが,ここでの演奏を聞いて,ジミヘンを想起することは不可能って感じの演奏に仕立てていて,曲はあくまでも素材。私が不勉強なだけで,今頃言うなとお叱りを受けそうだが,またもECMから注目に値するピアニストが登場って感じである。星★★★★☆。

Recorded in May and June, 2021

Personnel: Kit Downes(p), Petter Eldh(b), James Maddren(ds)

2022年3月 5日 (土)

Brad Mehldau参加音源入りの珍しいライブ・コンピレーション。よくよく見ると,結構豪華なメンツであった(爆)。 #BradMehldau

_20220303 "Ludwigsburger Jazz Tage" Various Artists(Chaos)

Brad Mehldauの音源を集めている私であるが,一旦入手してしまうと,保有していることに満足(安心)してしまって,全然聞いていないとかいうことがよくある。これなんかその最たる事例みたいなものである。

これはドイツのルートヴィヒスブルクで開催されたジャズ・フェスティバルでの,90年代前半のライブ音源を集めたコンピレーションで,1曲目にJoshua Redman Quartetに参加したBrad Mehldauの演奏が収められていることから入手したアルバム。上述の通り,保有していることでOKみたいになってしまって,一体誰の演奏が入っていたかも覚えていない。しかし,今回,久々に取り出してみて,おぉっ,こんなメンツだったのかとちょっと驚くような面々であった。

1曲目のJoshua Redman Quartetは昨年,リユニオン・アルバムを出した強力クァルテットであることは認識していたが,アルバム全体は次のような構成となっていた。

  1. Joshua Redman Quartet: "Blues on Monday"(November 14, 1993)
  2. Chick Corea Solo: "Thelonius Monk Medley (Round Midnight / Trinkle Trinkle)"(November 15, 1990)
  3. Oregon: "June Bug"(November 27, 1990)
  4. Kenny Werner Trio: "There Will Never Be Another You"(November 3, 1991)
  5. Kenny Werner’s Uncovered Heart: "Sticky Wicket"(March 14, 1992)
  6. Steps Ahead: "From Light to Light"(November 14, 1993)
  7. Joe Lovano’s Universal Language: "Luna Park"(November 13, 1993)

Kenny Wernerの名前が2曲に見えるが,更に7のJoe Lovanoのバンドにも参加しているのが目立つ。5の"Sticky Wicket"にはRandy Breckerが参加していて,実にナイスなソロを聞かせるているところなどは実にポイントが高い。3のOregonはパーカッションはTrilok Gurtuが務めている時のものだが,私は日頃よりRalph Townerファンとか言っておきながら,この演奏を完全に失念していたのは恥(苦笑)。Steps AheadはサックスがAlex Foster,ドラムスがBilly Kilsonという編成なのも珍しい。

このCD,Paul McCandlessをRalph McCandlessと書いてみたり,Eddie GomezをAndy Gomezと書いてみたりと,かなりデザインやクレジットはいい加減なのだが(苦笑),それでもこのように手持ちの音源をちゃんと見返してみると新たな発見があるという典型例。参加者多数なので,Personnelは省略するが,好き者の皆さんの心はくすぐるかもなぁ(笑)。

2022年3月 4日 (金)

これはリリースされたことも知らなかったBryan Ferryの2020年のライブ盤。    #BryanFerry

Bryan-ferry-rah-live"Royal Albert Hall 2020" Bryan Ferry(Dene Jesmond)

立て続けにRoxy Music系列の記事ばかりアップしているが,昨日Roxy Musicの2001年のライブを取り上げるに際して,ネット・サーフィンをしていたら,Bryan Ferryの2020年のライブ盤がリリースされているのを知った私である。このアルバム,そもそもは収益金を、コロナで影響を受けたBryan Ferryのバンドとクルーに寄付し,彼らが再びライヴで演奏できるまでの支援に充てることを目的としたベネフィット・アルバムのようである。そんなことも全然知らず,リリースから随分時間を経過しての入手となった。ベネフィット・アルバムなので,多少お高い(と言っても大したことはないが...)のには目をつぶろう(笑)。

私はこの前年のBryan Ferryのライブを大阪のなんばハッチで観ている(その時の記事はこちら)。その時の好感触もあるので,これは手に入れないといかんということで,慌てて発注したのであった。本来はBryan Ferryのサイト限定だったようだが,日本だけ限定1,000枚で出たとのことで,私が入手したのもその国内仕様盤である。

それでもって,このアルバムを聞いて驚いたのは,前年のライブの時とかなりプログラムの入れ替えが行われていたことである。Roxy MusicとBryan Ferryのソロ・アルバムから結構珍しい曲が選ばれていて,ほほぉ~となってしまった私である。演奏自体はスタイリッシュで,Bryan Ferryそのものなのだが,正直言ってBryan Ferryは声も出ていないし,特に後半はかなり厳しいって感じは否めない。音だけだとライブのような視覚的要素もないので,ますます苦しいが,それでもなんばハッチでの感覚を思い出しつつ聞いていればいいやってところである。

しかし,このアルバムには決定的な難点があって,それは音がよくないってことだろう。質の低いブートレッグ並みとは言わないし,ちゃんとしたサウンドボード・レコーディングである。なのだが,高音の抜けが悪く,もごもごっとした感じが否めないのだ。ロックはもう少しソリッドな音でなければならんと言いたくなってしまうような,ぼやけた音である。私のオーディオ・セットはしょぼいものではあるが,これはイコライザーでもう少し手を加えてもよかったんじゃないのか?と言いたくなるようなレベルである。ベネフィットなんだから,あまり文句は言いたくはないが,これでは音を少しでもよくしようという気概が感じられないところが気に入らない。なので,その辺を差し引いて星★★★☆。どうせならもう少しちゃんとしたエンジニアリングをして欲しかった...。

Recorded Live at Royal Albert Hall in March, 2020

Personnel: Bryan Ferry(vo), Jorja Chalmers(sax), Chris Spedding(g), Tom Vanstiphout(g), Richard Cardwell(key), Chloe Beth Smith(key), Marina Moore(vla, vln), Neil Jason(b), Luke Bullen(ds), Hannah Khemoh(vo), Aleysha Lei(vo), Bobbie Oldham(vo)

2022年3月 3日 (木)

2001年の再結成ライブはベスト・ヒットRoxy Musicだったのねぇ。見逃したのはもったいなかった...。 #RoxyMusic

Roxy-music-live "Live" Roxy Music(Eagle)

先日来,Roxy Music関係の音源を聞いていて,これは知らなかったってことで,発注した2001年の再結成ライブの中古盤がデリバリーされたので早速聴いてみた。これが結構よくて,こんな演奏をしているんだったら,ライブに行けばよかったなぁと思っても後悔先に立たずである。

この再結成ライブが行われた2001年は,私が完全にライブから遠ざかっていた時期である。娘が小さかったので,結構家庭第一の生活を送っていたと言っても,信じてくれる人は少ないかもしれないが,ゴルフだって封印していたのだ(笑)。そんな時期のことであるから,ライブは観に行けていないし,恥ずかしながらこうした音源が出ていたことさえ知らなかったのは情けない。

私が1983年に彼らのライブを観た時は,"Avalon"からの曲をコアに据え,そこにRoxyのヒット曲を加えるという感じだった訳で,先日取り上げた”Heart Still Beating"の構成に近かったと言える。しかし,本作はそれこそキャリアを俯瞰するというかたちのレパートリーで構成されているところが違うし,演奏もリユニオンにしてはタイトにまとまっている。唯一,Bryan Ferryのキーが一部の曲で下がってはいるので,違和感ゼロとは言わないが,演奏を聴く上での問題はない。

そして演奏は世界の各地でのおそらくはベスト・テイクを選んだと思われ,"Avalon"でも屈指の人気曲"More Than This"は東京国際フォーラムでの音源であり,現地にいたリスナーにとっては嬉しいものだろう。そもそも,1983年のツアー時にはこの曲を演奏しなかったと記憶しているのだが,どうしてなんだろう?と思っていた。しかし,人気曲なんだから,ここでの音源や,私が行った2019年のBryan Ferryのソロ・ツアーでもやるようになったのはいいことだと思う(でもキーの違いが一番顕著なのもこの曲なのだが...)。

まぁ,それでもこれは満足度の高いライブだっただろうと思うと,やっぱり家庭を顧みず,行っておけばよかった...(爆)。ちょっと甘いかなぁと思いつつ,大いに楽しんだので星★★★★☆。

Recorded Live at Various Venues bwtween July and September, 2001

Personnel: Bryan Ferry(vo, p), Andy McKay(sax, oboe), Phil Manzanera(g), Paul Thompson(ds), Chris Spedding(g), Colin Good(p), Zev Katz(b), Lucy Williams(vln, key), Julia Thornton(perc, key), Sarah Brown(vo), Yanick Etienne(vo), Michelle John(vo), Sharon White(vo)

2022年3月 2日 (水)

録画しておいた映画を観た。今回は「シノーラ」だったが,はっきり言って駄作(笑)。

Joe-kidd「シノーラ("Joe Kidd")」('72,米,Universal)

監督:John Sturges

出演:Clint Eastwood,Robert Duvall,John Saxon, Don Straud, Stella Garcia

結構NHKのBSプレミアムは古い映画を放送するので,観たいと思えるものはせっせと録画している私だが,いかんせん観ている時間がない。取りだめの映画は増える一方なのは困ったものだが,先日ちょっと時間があって,尺の短いこの映画を観ることができた。本作を観るのは多分初めてであったが,シナリオをElmore Leonardが書いているので,多少は期待したのだが,正直言って当てがはずれた。

まぁ,主役のClint Eastwoodをカッコよく撮ろうというのはうまく行っている。しかし,対立する二つのグループの間で味方についたり,敵になったりと,「用心棒」をもっとへなちょこにした感じのようなストーリーは凡庸もいいところである。そもそもそれってありえないだろうというような話の展開があったり,ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが,汽車のシーンは...って感じである。

いかにも適当さが感じられる映画は,監督John Sturgesもこんな映画を撮ってはいかんだろうと思わせる程度の作品。はっきり言って暇つぶしにしかならない駄作。星★★。

尚,邦題の「シノーラ」は映画の舞台となる街の名前だが,確かに主人公の名前の「ジョー・キッド」じゃ何のことかわからんが,「シノーラ」だって何じゃそりゃ?の世界だよな~。

2022年3月 1日 (火)

ほぼ9年ぶりに登場した"Brack Radio"の第3作。 #RobertGlasper

_20220227 "Black Radio III" Robert Glasper(Loma Vista)

"Black Radio"シリーズはこれまで2作がリリースされているが,2枚目が出たのが2013年,それから9年弱の時を経て,第3作が出た。このシリーズは現代のソウル,R&B,ヒップホップをいいところどりのようなところがあって,実に楽しめるものであった。特に私は第1作を高く評価していて,2012年の最高作の一枚にも選んでいる。前2作はRobert Glasper Experiment名義であったが,今回はRobert Glasper単独名義となっている。

それでもって,今回もその筋のミュージシャンを集めてきて,ナイスなアルバムに仕立てるところは,もはやプロデューサーとしての立ち位置の方が強烈に感じられる。これだけのメンツを集める力がRobert Glasperにはあるということにほかならないが,プロデュースだけでなく,作編曲,そしてキーボードの演奏をこなし,明確なリーダーシップを発揮しているところが凄い。

とにかく,このミュージシャンの適材適所の配置ぶりを見て,聴いているだけで,本当にセンスがいいとしか言いようがない。決して尖った音ではないので,これならどのような年代のリスナーにも受け入れられてしまうだろうと感じさせるものであり,やはりこの人の才能は半端ではない。もはやQuincy Jonesの世界である。唯一のカヴァー曲であるTears for Fearsの”Everybody Wants to Rule the World"をLalah Hathawayに歌わせて,Commonがラップを被せるってのもたまりませんな。しかし,それ以外のオリジナル曲のよくできていることも特筆に値する。Ant Clemonsをフィーチャーした"Heaven's Here"のメロウなグルーブにはマジで痺れてしまった。

Robert Glasper,恐るべしと改めて感じさせられたアルバム。星★★★★★としてしまおう。

Personnel: Robert Glasper(key), Isiah Sharkey(g), Marlon Williams(g), Derrick Hodge(b, strings), Berniss Travis II(b), Pino Paladino(b), ThadeChris Dave(ds), Justin Tyson(ds, key), Kenyon Harold(tp), Marcus Strickland(b-cl), Terrace Martin(sax), Jahi Sundance(turntable), DJ Jazzy Jeff(turntable) with Amir Sulaiman(spoken words), Christian Scott aTunde Adjuah(spoken words), BJ the Chicago Kid(vo), Big K.R.I.T.(vo), D Smoke(vo), Tiffany Gouche(vo), Esperanza Spalding(vo), Q-Tip(vo), Yebba(vo), H.E.R.(vo), Meshel Ndegeocello(spoken word), Lalah Hathaway(vo), Common(vo), Musiq Soulchild(vo), Posdnuos(vo), Ledisi(vo), Gregory Porter(vo), Ant Clemons(vo), Jennifer Hudson(vo), PJ Morton(key, vo), India.Arie(vo) & Others

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