北欧のリリシズム溢れるAlex Riel最新作。
"Our Songs" Alex Riel / Bo Stief / Carsten Dahl(Storyville)
ブログのお知り合いの皆さんが取り上げられていて,気になったアルバムを入手したもの。実はアルバムが届いて,現物をプレイバックする前に,ストリーミングで聴いたのだが,どうもピアノの硬質な音が気になってしまい,PCで試聴した時との印象の違いに少々戸惑った。しかし,現物を聴いてみると,いい塩梅の音で,これが非常に心地よい。
このアルバムはメンバーのオリジナルに加え,ジャズマン・オリジナルやスタンダード,そして北欧の民謡やクラシック音楽を演じたものだが,基本的にはバラッド集となっていて,そこには主題の通り,北欧らしいリリシズムを感じずにはいられない。
冒頭からKeith Jarrettの"My Song"で始まり,つかみはOKなのだが,これからというところでの,4分足らずでのフェードアウトははっきり言っていただけない。それに続く2曲目の"Høstdansen"は実に現地のフォークソング的な響きを持つのだが,これは3者の共作オリジナル。この辺りはへぇ~って感じだが,お国柄みたいなのを感じさせるものである。
そして3曲目がいきなりの"Moon River"という選曲にはちょっと驚くが,これがまたリリカルで,落ち着いた演奏なのだ。次のニールセンの曲は合唱曲「フューンの春」からの1曲というチョイスだが,デンマークの同胞のよしみってところか。その後ではCarsten DahlのオリジナルでAlex Rielに捧げた"The Poet",スウェーデン民謡"Vem Kan Segla Förutan Vind"をはさんでの3曲が気になる。
その3曲とは"My Funny Valentine","Stella by Starlight",そして"Giant Steps"なのだ。まぁ,バラッド集と書いたこのアルバムにおける"My Funny Valentine"と"Stella"のチョイスはわかるとして,"Giant Steps"が実に変わっている,と言うか,この曲をこのテンポでやるのを聞いたことがないわというぐらいのスロー・テンポである。これには驚くリスナーが多いと思うが,それでも演奏として成立しており,こういうやり方もあるのかと思わせるに十分。意表を突かれる展開とはこのことである。そして,スウェーデンとデンマークの民謡で締めるという構成だが,終曲の"Drømte Mig en Drøm"が素晴らしい余韻を残すような演奏であり,これを最後に持ってくるところが憎い。完全に術中にはまったって感じだ。
ということで,久しぶりに北欧系のリリシズム溢れるピアノ・トリオを聞いたと思わされるアルバムを聞かせてもらった。星★★★★☆。やはりお仲間の情報は重要だと改めて思った次第。余談ながら,Bo Stiefと言えば,Bob Bergも参加したNiels Lan Dokyの"The Truth: Live at Montmartre"以来ってところだが,あのアルバムからはもう35年近く経過していたのねぇ...。
Recorded on June 8 & 9, 2021
Personnel: Alex Riel(ds), Bo Stief(b), Carsten Dahl(p)
« Carly Simonの懐かしのアルバム。 | トップページ | 映画の感動が甦る「サマー・オブ・ソウル」のサントラ盤。 »
「新譜」カテゴリの記事
「ジャズ(2022年の記事)」カテゴリの記事
コメント
« Carly Simonの懐かしのアルバム。 | トップページ | 映画の感動が甦る「サマー・オブ・ソウル」のサントラ盤。 »
閣下、おはようございます。
リンクをありがとうございました。m(_ _)m
確かに、「My Song 」、惜しかったですね。
「Giant Steps」って、速いか変態化か、、って、イメージなので、
こんな綺麗なバラッドにもなってしまうんだ、と、驚きました。
そして、「Jag Vet En Dejlig Rosa 」って、好きな曲なのですが、
北欧の人たちがトラッドを弾く時には、ヤン・ヨハンセンの影響ってすごいなぁ、、って、感じます。
私のリンクです。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/01/post-eaa5f1.html
投稿: Suzuck | 2022年2月 5日 (土) 08時31分
ベテランが下手に凝らずに聴かせてくれる北欧ムードで、大変良かったと思っています。
ドラマーのリーダー・トリオって結構聴かせるモノが多いですね。
Kiethの"My Song"をもう少しじっくり聴かせて欲しかったと残念に思うのですが、・・・・
改めて1970年代のオスロでのKieth Jarrett「MY SONG」を聴き直してみましたが、後半のKiethのピアノ・ソロのムードはやはり一枚上でした。
それでも全体としてのアルバムの出来は良いですね
リンク有り難う御座いました、私の方からもよろしく ↓
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2022/01/post-6718db.html
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年2月 5日 (土) 10時17分
Suzuckさん,こんにちは。リンクありがとうございます。
>確かに、「My Song 」、惜しかったですね。
惜しいと言うより,これは完全に制作の間違いだと言い切りたいぐらいいけません(きっぱり)。
>「Giant Steps」って、速いか変態化か、、って、イメージなので、
>こんな綺麗なバラッドにもなってしまうんだ、と、驚きました。
はい。これは実に意外ながら,曲の別の魅力をあぶり出しましたよね。
>そして、「Jag Vet En Dejlig Rosa 」って、好きな曲なのですが、
>北欧の人たちがトラッドを弾く時には、ヤン・ヨハンセンの影響ってすごいなぁ、、って、感じます。
さすが欧州通(笑)。私はJan JohanssonはStan Getzのバックで弾いているぐらいしか印象がないので,何とも言えませんが,お国柄,あるいは国民性みたいな感じなんですかね。Getzのアルバムを聴き直してみます。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年2月 6日 (日) 14時54分
photofloyd(風呂井戸)さん,こんにちは。リンクありがとうございます。
>ベテランが下手に凝らずに聴かせてくれる北欧ムードで、大変良かったと思っています。
まさにその通りで,実にいいアルバムでした。
> Kiethの"My Song"をもう少しじっくり聴かせて欲しかったと残念に思うのですが、・・・・
100%同意です。この判断ミスは痛いです。
> それでも全体としてのアルバムの出来は良いですね
はい。いいアルバムをご紹介頂きありがとうございました。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年2月 6日 (日) 14時58分